犬の膀胱結石症|頻尿・血尿・尿が出ない原因と治療・受診の目安

  1. ホーム
  2. Dr.Nyanのすこやかコラム
  3. 犬の膀胱結石症|トイレが近い・血尿・排尿時に痛がる原因と治療・予防と受診の目安

Dr.Nyanのすこやかコラム

コラム記事検索

犬の膀胱結石症|トイレが近い・血尿・排尿時に痛がる原因と治療・予防と受診の目安

「愛犬が何度もトイレに行くのにおしっこが少ししか出ていない」「おしっこの色がいつもより赤っぽい……」

ワンちゃんのこのようなおしっこの異変に気づいたことはありませんか?これらは泌尿器の病気で非常によく見られるサインであり、その代表格が「尿石症(にょうせきしょう)」です。

尿石症は、おしっこの通り道(腎臓、尿管、膀胱、尿道)にミネラル成分が結晶化・結石となってしまう病気です。結石が粘膜を傷つけて激しい痛みを伴うだけでなく、完全におしっこの通り道を塞いでしまうと、短時間で命に関わる「尿毒症(にょうどくしょう)」を引き起こす大変恐ろしい病気でもあります。

今回は、犬の尿石症(膀胱結石症)の種類や症状、原因、治療法、そして日頃からできる予防策について、千葉県佐倉市の若山動物病院の院長(Dr.Nyan)が詳しく解説いたします。

飼い主さん

せんせい!うちの子がさっきから何度も定位置でおしっこのポーズをするんです。でも、全然出ていないみたいで、なんだかお腹を気にしてソワソワしているんです……

Dr.Nyan

それは「頻尿(ひんにょう)」や「排尿困難」という症状ですね。ワンちゃんにとって非常に不快で痛みを伴っている可能性が高く、背景には「尿石症」が隠れていることがよくあります。

Dr.Nyan

もし結石が詰まっておしっこが「完全に一滴も出ない」状態が24〜48時間以上続くと、体内に毒素が回る尿毒症や、膀胱破裂を起こして命を落とすこともあります。少しでも様子がおかしいと感じたら、一刻も早く動物病院を受診してください!

目次

膀胱結石(尿石)とは

おしっこの中には、体に不要な老廃物やカルシウム、リン、マグネシウムなどのミネラル成分が含まれています。これらのミネラル成分が集まって結晶化し、さらに成長することで「結石」となります。

膀胱結石の大きさは数mmのものから数cmのものまでさまざまで、表面はツルツルしたものからイガイガ、ボコボコしたものまで形状も多様です。

犬の膀胱内に複数の結石が写るレントゲン画像(膀胱結石症)
レントゲン検査で確認された犬の膀胱結石。白く写っている部分が結石です。
砂状から粒状までさまざまな大きさの犬の膀胱結石
砂状の小さな結晶から、大きな結石までさまざまなサイズがあります。
表面がイガイガした犬の膀胱結石の形状比較
膀胱結石には、ツルツルしたものからイガイガしたものまでさまざまな形があります。

犬の尿石症(膀胱結石症)の主な症状

Dr.Nyan

尿石症は、結石がどこにあるか(膀胱なのか、尿道なのかなど)によって症状の出方が変わりますが、飼い主様が日常で最も気づきやすいのは「おしっこの仕方の変化」です。

何度もトイレに行く・おしっこのポーズが長い(頻尿・しぶり)

結石が膀胱の粘膜を刺激したり、尿道を塞ぎかけることで、ワンちゃんは常に強い尿意を感じるようになります。そのため、何度もトイレに行ったり、足を上げたまま(あるいはしゃがんだまま)長い時間おしっこを出そうとして力むような仕草(しぶり)を見せます。

おしっこに血が混じる(血尿)

ザラザラした結石や結晶が膀胱や尿道の粘膜を傷つけるため、出血が起こりおしっこがピンク色・赤色・茶褐色になることがあります。

犬の血尿(膀胱結石症・膀胱炎による赤い尿)
膀胱結石によって血液が混じり、赤くなった犬のおしっこ。

尿石症によって赤く染まったワンちゃんのおしっこ(血尿)の例

排尿時に痛がって鳴く

おしっこをする瞬間に、傷ついた粘膜に尿がしみたり結石が動いて痛むため、「キャン」と鳴いたり、背中を丸めて痛そうに排尿することがあります。

元気がなくなる・お腹を触られるのを嫌がる

下腹部(膀胱のあたり)に常に鈍痛や違和感があるため、元気がなくなったり、抱っこしようとお腹に触れると怒ったり嫌がったりするようになります。膀胱が大きくなりすぎると、お腹が痛くなることもあります。

おしっこが詰まり苦しがる(尿道閉塞)

小さな結石がおしっこをする際に尿道に詰まってしまうと(尿道閉塞)、膀胱がおしっこでパンパンになり、吐き気や脱水、体温低下が始まり、急性腎不全から尿毒症へと進行して極めて危険な状態になります。

Dr.Nyan

尿道が狭いオス犬は、小さな結石でも尿道にスポッと詰まりやすいため特に注意が必要です。完全に詰まると、激しい嘔吐・脱水・体温低下が始まり、急性腎不全から尿毒症へ進行します。一刻を争う緊急事態です!

犬の膀胱内に多数の結石が詰まったレントゲン画像
膀胱内に大量の結石が確認されました。尿道閉塞の原因になることがあります。

膀胱内に結石がいっぱい詰まっています。

受診の目安

以下の症状が見られる場合は、決して様子を見ずにすぐに当院(佐倉市の若山動物病院)またはお近くの動物病院を受診してください。

  • 何度もトイレに行くのに、おしっこが全く出ていない、あるいは数滴しか出ていない
  • おしっこをする時に痛がって鳴く
  • 明らかな血尿(真っ赤な尿・茶褐色の尿)が出ている
  • 元気がなく、何度も吐いている
  • 尿が出にくい、または出ない

犬の尿石症の二大原因(結石の種類)

犬の尿石症で発見される結石はいくつか種類がありますが、全体の約9割を占めるのが「ストルバイト結石」「シュウ酸カルシウム結石」です。これらは原因と対策が大きく異なります。

Dr.Nyan

膀胱結石は一つの原因でできるわけではなく、いくつかの原因が重なることにより出来てしまいます!結石の種類によって治療法も異なるため、まずはどのタイプかを検査で確認することが大切です。

ストルバイト結石(リン酸アンモニウムマグネシウム)

原因:多くは「尿路感染(膀胱炎など)」が引き金となります。ブドウ球菌などの細菌が尿の中に増殖すると、尿をアルカリ性に傾けます。尿がアルカリ性になると、食事に含まれるマグネシウムやリンといったミネラル成分が結晶化しやすくなり、結石が形成されます。また、水分摂取が少なく尿が濃くなること、トイレの回数が少なく膀胱に尿が長時間溜まることも結晶形成を促します。

特徴:食事療法によって「おしっこを酸性に傾ける」ことで、お薬や療法食で溶かすことができる結石です。比較的若い年齢(1〜5歳頃)での発症が多く見られます。

犬のストルバイト結晶の顕微鏡画像
棺桶型に見えるストルバイト結晶。大きくなると結石になります。

顕微鏡で見られるストルバイトの結晶(特徴的な棺桶型の結晶)。これが大きくなってストルバイト結石になります。

シュウ酸カルシウム結石

原因:食事中のカルシウムやシュウ酸の過剰摂取、水分不足による尿の濃縮、体質(遺伝的要因)などが複雑に絡み合って発生します。尿のpH(酸性・アルカリ性)にあまり左右されませんが、やや酸性尿の環境でできやすい傾向があります。加齢による免疫力低下も発症リスクを高めます。

特徴:ストルバイトとは異なり、一度結石になってしまうと食事や内服薬では溶かすことができません。大きくなって悪さをする場合は、外科手術で取り出す必要があります。高齢犬での発症が多く、近年増加傾向にあります。

尿石症の主な治療法と費用

Dr.Nyan

治療は、結石の種類が「溶けるものか・溶けないものか」、そして「尿道に詰まっている緊急事態かどうか」によって決定します。まずは尿検査・レントゲン検査・超音波検査で結石の状態を正確に把握することが大切です。

膀胱結石の検査としては尿検査、レントゲン検査、超音波検査を行います。また場合によっては細菌培養感受性検査や結石成分分析を行います。

犬の膀胱結石が確認されたレントゲン検査画像
白く丸く写っている部分が膀胱結石です。
超音波検査で確認された犬の膀胱結石
超音波検査では、結石が白く光るように見えることがあります。

緊急処置(尿道閉塞の場合)

結石が尿道に詰まっておしっこが出ない場合、まずは細いカテーテルを尿道から挿入し、水圧で結石を一度膀胱の中へ押し戻す処置(尿道カテーテル設置)を最優先で行います。これによりおしっこの通り道を確保し、尿毒症を防ぎます。

内科的治療(食事療法・薬)

主にストルバイト結石の場合に選択されます。マグネシウムやリンの含有量を制限し、尿のpHをコントロールして結石を溶かす専用の「尿石症用療法食」を一定期間与えます。また、細菌感染(膀胱炎)が原因になっている場合は抗生物質をしっかり投与して細菌を駆除します。消炎剤によって頻尿などの膀胱炎症状を取り除くことで、生活の質が大きく向上します。

Dr.Nyan

食事療法を自己判断で途中でやめたり、おやつを内緒であげたりすると、結石はすぐに再発・巨大化します!獣医師が「もう大丈夫」と言うまでは、療法食以外の食べ物は絶対に与えないでください。

外科的治療(手術)

食事で溶けないシュウ酸カルシウム結石である場合や、結石が大きすぎて尿道を塞ぐリスクが高い場合、激しい血尿や痛みが続いている場合は、全身麻酔をかけて膀胱を切開し、結石を物理的にすべて摘出する手術を行います。

手術では結石の取り残しがないこと、膀胱からの漏れがないことを確認することが大切です。膀胱結石を取り出した後は、再発防止のため食事管理が重要になります。

尿石症の治療費の目安

尿石症の治療費は、症状の重さや結石の種類・大きさによって異なります。

  • 軽度(検査・お薬・療法食処方など):約8,000円〜15,000円程度(定期的な尿検査が必要です)
  • カテーテル処置・緊急入院・点滴(尿毒症の治療など):約30,000円〜70,000円程度
  • 膀胱結石摘出手術(全身麻酔・入院費込み):結石の数や犬のサイズ、入院日数によりますが、約15万円〜30万円前後の費用が見込まれます

尿石症の予防方法

尿石症は非常に再発しやすい病気です。日頃の生活習慣を見直すことで、大切なワンちゃんを結石の痛みから守ることができます。

新鮮な水をいつでもたっぷり飲める環境にする

尿が濃くなると、ミネラル成分が結晶化しやすくなります。お家の複数箇所に水飲み場を設け、常に新鮮な水を飲めるようにして尿を薄める(排尿を促す)ことが最大の予防です。飲み水の好みはさまざまなため、飲水量が少ない場合はいろいろなタイプの飲み水容器を試してみましょう。

正しい食事管理(おやつの与えすぎに注意)

カルシウム・マグネシウム・リンなどを多く含むジャーキーや煮干し、ミネラル分の高い人間の食べ物は結石の原因になります。また、ほうれん草などシュウ酸を多く含む野菜の与えすぎにも注意してください。かかりつけの獣医師に相談しながら、適切なフードを選びましょう。

トイレに行く回数を増やし、我慢させない

おしっこが長時間膀胱に溜まっていると、尿中で結晶が成長しやすくなります。お散歩の回数を適切に保ち、室内でもいつでも安心しておしっこができるトイレ環境を整えてあげましょう。

日頃からよく観察する・定期的な検査をする

日頃から水を飲む量、おしっこの仕方、行動の変化に気をつけ、早期発見を心がけましょう。おしっこのトラブルが多い場合には、定期的な尿検査で結晶の段階で早期発見・早期対応することが大切です。

尿石症を起こしやすい犬種

Dr.Nyan

膀胱結石ができるには、犬種が関係していると言われています。遺伝的あるいは体質的に尿石症を発症しやすい傾向のある犬種では、日頃から特におしっこの観察が必要です。

  • ミニチュア・シュナウザー(特にシュウ酸カルシウム結石のリスクが高い)
  • シー・ズー
  • トイ・プードル
  • チワワ
  • ヨークシャー・テリア
  • ウェルシュ・コーギー
  • パグ
  • パピヨン
  • ダルメシアン
  • ブルドッグ

よくある質問

犬が何度もトイレに行くのに尿が出ない時は危険ですか?

尿道閉塞を起こしている可能性があり、命に関わる緊急状態です。すぐに動物病院を受診してください。

犬の尿石症は自然に治りますか?

自然に消えることはほとんどなく、治療が必要です。放置すると結石がさらに大きくなり、尿道閉塞や尿毒症など命に関わる事態に発展する可能性があります。

膀胱結石は手術が必要ですか?

結石の種類や大きさによっては食事療法で溶かせる場合もありますが、シュウ酸カルシウム結石や大きすぎる結石は手術が必要です。

血尿が出たらすぐ病院に行くべきですか?

一時的でも血尿が見られた場合は、膀胱炎や結石の可能性があるため受診をおすすめします。真っ赤な血尿や、おしっこが全く出ない状態はすぐに受診してください。

尿石症用の療法食は、症状が治まったらやめても大丈夫ですか?

自己判断で中断するのは禁物です。見た目の症状が消えても、体質的に結石を作りやすいワンちゃんは市販のフードに戻した途端に再発することがよくあります。必ず定期的に尿検査を受け、獣医師の指示に従って切り替えを検討してください。

ミネラルウォーターを飲ませても大丈夫ですか?

市販の「硬水」ミネラルウォーターは、カルシウムやマグネシウムが豊富に含まれているため、尿石症のリスクを高めてしまいます。ワンちゃんに飲ませるお水は、原則として水道水(またはペット用の軟水)が最も安全で適しています。

尿石症は再発しますか?

体質や食事によって再発しやすいため、治療後も継続的な食事管理と定期検査が重要です。

まとめ

犬の尿石症(膀胱結石症)は、激しい痛みや不快感を伴うだけでなく、進行すると尿道閉塞を起こして命に関わる非常に恐ろしい病気です。

「おしっこの回数が多い」「血尿が出ている」「トイレで長時間おしっこ姿勢をしている」といった、おしっこに関する小さな異変を日常で見逃さないことが、早期発見の何よりの鍵となります。結晶の段階で見つけ出せれば、大事に至らずに済むことも多いため、定期的な尿検査もぜひご活用ください。

少しでも愛犬のおしっこの様子がおかしいと感じたら、我慢させずにすぐ千葉県佐倉市の若山動物病院、またはお近くの動物病院へご相談ください。早期に適切な治療と食事管理を始めることで、結石の再発を防ぎ、健やかな生活を維持することができます。

筆者・若山正之(Dr.Nyan)のプロフィール

若山動物病院院長 獣医師 若山正之(Dr.Nyan)

本記事は、犬・猫の診療を行う獣医師・若山正之が監修・執筆しています。
1975年より小動物臨床に従事し、現在は若山動物病院院長として地域医療に携わっています。長年の臨床経験に基づき、一般診療から予防医療、シニア医療まで幅広く対応しています。

特に、病気の早期発見・早期対応を重視し、飼い主様にわかりやすい説明と納得いただける診療を心がけています。
また、幹細胞療法や免疫療法などの先進医療にも取り組み、動物の生活の質(QOL)を重視した治療を提供しています。

これまでに一般飼い主様向けのセミナーや講演活動を多数行い、正しい医療知識の普及にも尽力しています。著書に『老犬生活 完全ガイド』『犬と猫の老齢介護エキスパートブック』などがあります。

本記事は最新の獣医療知見と臨床経験をもとに作成していますが、症状や状態によって対応は異なるため、気になる症状がある場合はお早めに動物病院へご相談ください。