Dr.Nyanのすこやかコラム
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猫の慢性腎臓病ケア①|水を飲ませるための7つの工夫
本記事は、Dr.Nyan症例集「猫の慢性腎臓病・在宅ケア編」の一部です。実際の診療経験をもとに、慢性腎臓病の猫への水分補給の工夫についてわかりやすく解説しています。
「水をあまり飲まない」「どうすれば水分を摂ってもらえるか」そんなお悩みはありませんか?
慢性腎臓病(CKD)の猫を在宅でケアされている飼い主様から、最も多くいただく相談のひとつです。
腎臓病の猫にとって水分補給は治療と同じくらい重要です。水をしっかり飲ませることで腎臓の負担が減り、病気の進行を遅らせることができます。
なぜ水分補給が重要なのか?
飼い主
水を飲ませるだけでそんなに変わるんですか?
Dr.Nyan
はい。水分補給は腎臓の負担を減らす最も重要なケアのひとつです。
慢性腎臓病の猫は腎臓が尿を濃縮する力(濃縮能)が低下しているため、多量の水分が薄い尿として失われます。その分、意識的に水を飲まないと慢性的な脱水状態に陥ります。
脱水が進むと腎臓への血流が減少し、残存している腎機能をさらに悪化させる悪循環が起きます。水を飲ませることは腎臓を守ることに直結しています。
Dr.Nyan
腎臓病の猫が水をよく飲む理由は「病気のサイン」ですが、逆に飲めなくなると悪化します。「水を飲んでいるか」を毎日確認してください。
猫が水を飲まない理由
飼い主
飲まないのはわがままじゃないんですね?
Dr.Nyan
はい。体調や環境の影響が大きいので、工夫で改善できることが多いです。
猫はもともと砂漠出身の動物で、食事から水分を摂る習性があります。そのため水を積極的に飲まない傾向があります。慢性腎臓病の猫が水を飲まない主な理由は以下の通りです。
- 水の場所・容器が気に入らない
- 水の鮮度・温度が合わない
- 食欲不振で全体的な摂取量が減っている
- 口内炎・歯周病で飲むのが辛い
- ぐったりしていて動けない(進行した場合)
リスク先生
全く水を飲まない・ぐったりして動けない場合は脱水が進んでいる可能性があります。早めにご相談ください。
水を飲ませるための7つの工夫
水飲み場を複数設置する
猫は食事場所の近くの水を嫌う傾向があります(野生では食事場所の近くの水は汚染されていることが多いため)。食事場所から離れた場所に複数の水飲み場を作り、いつでも飲める環境を整えましょう。
- リビング・寝室・廊下など猫がよく過ごす場所に設置
- 猫が移動しやすい低い場所にも設置(関節炎がある場合)
- 最低2〜3か所は設置する

ウォーターファウンテン(流れる水)を使う
多くの猫は流れる水を好みます。ペット用のウォーターファウンテン(循環式給水器)を使うと飲水量が増えるケースが多くあります。

- 常に清潔に保つ(週1回以上の洗浄・フィルター交換)
- 陶器・ステンレス製が衛生的でお勧め
- プラスチック製は劣化・細菌繁殖に注意
流れる水を好む猫がいる一方で、蛇口から直接飲みたがる子や、一晩汲み置きした水を好む子もいます。猫によって好みは大きく異なるため、複数の飲み方を試してみましょう。自動給水器を使う場合は、フィルター交換やぬめり対策など衛生管理も重要です。
容器の素材・形・大きさを工夫する
猫によって好みが大きく異なります。
- 浅くて広い容器がお勧め(ひげが容器の縁に当たるのを嫌う猫が多い)
- 陶器・ガラス・ステンレス製は水の味が変わりにくい
- プラスチック製は避けるか定期的に交換する
- 水位は常に高めに保つ(縁まで水を入れると飲みやすい)

水の温度・鮮度を管理する
- 水はできるだけ常温〜ぬるめ(冷たすぎると飲まない猫が多い)
- 毎日新鮮な水に替える
- 夏場は特に早く傷むため1日2回以上交換する
ウェットフードに切り替える・水を混ぜる

飼い主
フードを変えるだけでも違いますか?
Dr.Nyan
はい。水分摂取量が大きく変わるため、非常に効果的です。
食事からの水分摂取は非常に効果的です。ドライフードはわずか10%程度しか水分を含みませんが、ウェットフードは70〜80%が水分です。
- ウェットフード(缶詰・パウチ)への切り替え
- ドライフードにぬるま湯を少量加えてふやかす
- 腎臓病用処方食のウェット版を使用する
- スープタイプのウェットを活用する
Dr.Nyan
腎臓病の猫にはウェットフードへの切り替えが最も効果的な水分補給法のひとつです。腎臓病用処方食のウェット版を試してみてください。
チキンブロス・スープでフレーバーを加える
ささみの茹で汁や、市販の猫用スープを薄めた「味付きの水」を用意すると、飲水意欲が高まることがあります。ただし塩分・添加物・玉ねぎ成分には注意し、必ず猫用または無添加のものを使用してください。
このように水に少量の無塩・無添加のチキンブロス(鶏のゆで汁)を混ぜると、香りで飲む量が増えることがあります。
普通の水は飲まないのに、香りがつくと飲む」という猫は少なくありません。
- 必ず無塩・玉ねぎ不使用のものを使用する
- 市販のペット用スープ(腎臓対応)も活用できる
- 与えすぎると食事の代わりになってしまうため注意

スポイト・シリンジで直接補水する
全く飲まない場合は、スポイトやシリンジ(注射器の筒)で口の端から少量ずつ水を与える方法もあります。獣医師から指導を受けた上で行ってください。
リスク先生
シリンジでの補水は誤嚥(気管に入る)のリスクがあります。少量ずつゆっくり与えるなど、必ず正しい方法で行ってください。
1日の目安飲水量

飼い主
どのくらい飲めばいいですか?
Dr.Nyan
体重1kgあたり約50mLが目安です。
猫の必要飲水量の目安は体重(kg) × 50mL/日です(例:4kgの猫なら約200mL)。腎臓病の猫はより多くの水分が必要になります。
| 体重 | 1日の目安飲水量 |
|---|---|
| 3kg | 約150mL |
| 4kg | 約200mL |
| 5kg | 約250mL |
| 6kg | 約300mL |
Dr.Nyan
正確な飲水量を把握したい場合は、1日の始めに容器に決まった量の水を入れて、翌朝残量を測ってみましょう。
脱水チェック方法

飼い主
家でもチェックできるんですね?
Dr.Nyan
はい。毎日確認することで早期発見につながります
以下の方法で脱水の程度を確認できます。
皮膚テンタシティテスト
首の後ろ・肩甲骨間の皮膚をつまんで引っ張り、離したときに素早く元に戻るかを確認します。
- すぐ戻る → 脱水なし(正常)
- ゆっくり戻る(1〜2秒)→ 軽度脱水
- 戻らない・テントのまま → 重度脱水(すぐに受診)
歯茎のチェック
指で歯茎を軽く押して白くなった後、ピンク色に戻るまでの時間を確認します(毛細血管再充填時間)。2秒以内が正常で、それ以上かかる場合や歯茎が乾燥している場合は脱水の可能性があります。
Dr.Nyan
脱水チェックを毎日の習慣にしてください。変化に早めに気づくことが在宅ケアの最大のポイントです。
背中の皮膚を軽くつまんで離した時、皮膚がすぐ戻らず“テント状”になる場合は脱水のサインです。工夫をしても飲水量が追いつかない場合は、早めに点滴や皮下輸液についてご相談ください。
リスク先生
水を置いている=十分飲めている」とは限りません。脱水は静かに進行するため、“飲めているか”を毎日確認しましょう。
在宅での皮下輸液について

飼い主
自宅で点滴ってできるんですか?
Dr.Nyan
はい。正しい方法を覚えれば多くの方ができるようになります。
水を飲まない・脱水が続く場合は、在宅での皮下輸液(点滴)をご検討ください。当院では希望される飼い主様に丁寧な指導を行っています。慣れると多くの方が自宅で実施できるようになり、通院の負担が大幅に減ります。
Dr.Nyan
皮下輸液は怖くありません。ご自宅で実施できるよう丁寧に指導します。「どうしても飲まない」という場合はぜひご相談ください。
よくある質問
ミネラルウォーターを与えてもいいですか?
軟水(ミネラル含有量が少ないもの)であれば問題ありません。ただし硬水(カルシウム・マグネシウムが多い)は腎臓に負担をかけるため避けてください。基本的には水道水(日本の水道水は軟水)で問題ありません。
牛乳を与えていいですか?
一般的な牛乳は乳糖不耐症の猫では下痢を引き起こします。ペット用の低乳糖ミルクであれば与えることができますが、カロリーと成分に注意して少量にとどめてください。
全く飲まない場合はどうすればいいですか?
24時間以上全く飲めていない・ぐったりしている場合は脱水が進んでいます。早めに受診して点滴を受けてください。在宅での皮下輸液も検討する段階です。
どの工夫から始めればいいですか?
まず①水飲み場の増設と②ウェットフードへの切り替えを試してみてください。この2つで飲水量が増えるケースが最も多いです。
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まとめ
慢性腎臓病の猫への水分補給は、治療と同じくらい重要な在宅ケアです。一つの方法に固執せず、愛猫の好みを探りながら複数の方法を組み合わせることが成功の鍵です。
「飲まない状態」を放置しないことが、腎臓を守る最大のポイントです。
「全く飲まない」「どんな工夫をしても飲まない」という場合は、在宅皮下輸液も含めて一緒に対策を考えます。遠慮なくご相談ください。
様子見ではなく早めの対策が重要です。
Dr.Nyan
「なんか変かも」と感じたら、様子を見ずにお気軽にご来院ください。
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筆者・若山正之(Dr.Nyan)のプロフィール

本記事は、佐倉市で犬・猫の診療を行う獣医師・若山正之が監修・執筆しています。
1975年より小動物臨床に従事し、現在は若山動物病院院長として地域医療に携わっています。長年の臨床経験に基づき、一般診療から予防医療、シニア医療まで幅広く対応しています。特に、病気の早期発見・早期対応を重視し、飼い主様にわかりやすい説明と納得いただける診療を心がけています。また、幹細胞療法や免疫療法などの先進医療にも取り組み、動物の生活の質(QOL)を重視した治療を提供しています。
これまでに一般飼い主様向けのセミナーや講演活動を多数行い、正しい医療知識の普及にも尽力しています。著書に『老犬生活 完全ガイド』『犬と猫の老齢介護エキスパートブック』などがあります。
本記事は最新の獣医療知見と臨床経験をもとに作成していますが、症状や状態によって対応は異なるため、気になる症状がある場合はお早めに動物病院へご相談ください。