Dr.Nyanのすこやかコラム
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犬の胆泥症|黄色い液を吐く・元気がない原因と治療・受診の目安
ワンちゃんが「黄色い液」や「白い泡」を吐いた経験はありませんか? 「お腹が空きすぎたのかな」と様子を見てしまいがちですが、もしその頻度が増えていたり、なんとなく元気がなかったりするなら注意が必要です。
その黄色い液の正体は、脂肪の消化を助ける「胆汁」という消化液です。そして、この胆汁を溜めておくお腹の中の袋(胆嚢)で、サラサラなはずの液が「ドロドロの泥」のように変わってしまう病気があります。それが「胆泥症」です。
本記事では、複数の症例をもとに解説しています。
飼い主
先生、うちの子、たまに朝方に黄色い液を吐くんです。でも、その後はケロッとしてご飯も食べるから、ただの空腹ですよね?
Dr.Nyan
実は、その『黄色い液(胆汁)』が何度も続くなら、お腹の中の袋にドロドロの泥が溜まる『胆泥症(たんでいしょう)』のサインかもしれませんよ。

胆嚢の中にドロドロした胆汁(胆泥)が大量に溜まっている状態です。

胆泥症は、発症するまでは症状が見られないことがほとんどです。そのため健康診断などで、偶然に見つかることが多い病気です。
恐ろしいことに、この病気は初期にはほとんど症状が出ません。しかし、放っておくと泥が詰まって激痛に襲われたり、最悪の場合は命に関わる合併症を引き起こしたりすることも。
今回は、健康診断で見つかることも多い「胆泥症」について、見逃してはいけない症状や原因、そしてお家でできる食事の工夫まで、Dr.Nyanが解説します。
胆泥症の症状
Dr.Nyan
胆嚢は肝臓と十二指腸に接して存在する袋状の組織だよ!

~Dr.Nyanポイント~
胆嚢と胆泥って何?
「胆嚢」は肝臓と十二指腸をつなぐ管の途中にあります。この胆嚢は、【肝臓で作られた胆汁を濃縮し一時溜めておく袋】です。
胆汁は脂肪を細かく乳化し、消化吸収しやすくする役割を持っています。胆泥はその【サラサラだった胆汁が変質し、泥状になったもの】です。
Dr.Nyan
胆泥症になっても何の症状も見られないこともあるんだけど・・
でもどんな症状がでたら要注意なのか一緒に確認していきましょう!
無症状
胆嚢がある肝臓は「沈黙の臓器」とも言われます。胆泥が少ない場合、胆嚢も肝臓と同様に、何ら症状が見られないことが多々あります。
そのため健康診断などで行った超音波検査で、偶然に見つかることもあります。
消化器症状が見られる
胆泥が増えてくると、胆嚢に炎症が起こり以下の消化器症状がみられるようになります。
- 元気や食欲が落ちる
- 便が軟らかいか水っぽい
- 黄色や緑色っぽいものを吐く
- 発熱する
- 腹痛を起こす
胆泥が増えると、胆汁の流れが悪くなり、脂肪の消化がうまくできなくなることがあります。
その結果、フードを食べた時に脂肪の消化がうまく出来なくなってしまいます。そして消化器症状がみられるようになってしまいます。
さらに併発症がでる場合もあり、
などを引き起こす可能性もあります。

白目が黄色いのって、かなり危険なんですか?
リスク先生
黄疸は胆汁が流れなくなっているサインです!胆管閉塞や胆嚢破裂が隠れていることもあり、緊急性が高い場合があります!
黄疸や腹膜炎を起こす
胆泥症での一番の問題は、胆嚢から流れ出た胆泥が胆管に詰まってしまうことです。胆管が詰まってしまうと、以下のような症状が見られます。
- 胆汁が血液の中に入り込み黄疸になる
- 胆泥が溜まりすぎて胆嚢や胆管が破裂し腹膜炎(腹腔内に強い炎症が起こる状態)を起こす


Dr.Nyan
黄疸を起こす理由の説明だよ。
胆嚢から腸に流れ出なくなった胆汁は、肝臓に溜まります。
その結果、胆汁の成分が血液の中に溢れ出てしまい黄疸となってしまうんだよ!
胆泥が胆管に詰まると、急性胆管肝炎や胆嚢破裂を起こす可能性もあります。その結果、場合によっては命に関わることがあります!
そのようなことが起きないよう、病状をしっかりと把握しておく必要があります。
胆泥症の原因
Dr.Nyan
胆泥症の原因って、ハッキリとはわかってないよ!
以下のようなことが、胆泥症が起こる原因とされています。また胆泥症の裏には、ホルモン異常などの病気が隠れていることがあります。
胆嚢炎から
胆嚢炎は文字通り、胆嚢に炎症が起こることです。胆嚢炎を起こす原因としては細菌感染や、腸炎、膵炎、肝炎などがあげられます。
胆嚢炎を起こすと、胆汁の性状が変わるため胆泥ができやすくなります。その結果、胆泥症を起こします。
内分泌疾患から
甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症などの内分泌疾患になると、胆汁の性状が変わるため胆泥症になりやすくなります。
胆泥症の主な治療法と費用
治療を行うに際しては胆泥の状態などを知るため、超音波検査や血液検査を行います。
Dr.Nyan
超音波検査では正常な胆嚢は黒く見えます。
しかし胆泥が溜まると、胆嚢の中に白っぽい「半月状やモヤモヤした不定形」のものが見られます。
胆泥症が見られた場合には、同時に他の病気があることもあるため肝臓などもチェックします。
胆泥症の治療は、原因や併発症によって異なります。特に症状もなく、また肝臓の障害も併発症もない場合には経過を観察することもあります。
胆嚢に作用する薬を使う
胆汁の分泌を増やしたり、胆嚢の動きを助ける目的で薬を使用することもあります。
肝臓を守る薬を使う
肝臓に障害を伴っている場合には、その治療を行います。また肝臓の機能を改善させるために、タウリンやスルフォアデノシルメチオニン(SAMe)などを使います。
抗生物質の投与
胆嚢炎や膵炎などが関わる場合には、抗生剤を使用します。
基礎疾患の治療
甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症がある場合には、その治療を行います。
フードを変更する
胆汁は、脂肪の消化吸収に関わっています。そのため胆嚢の負担を減らすためにも、フードを低脂肪のモノにします。
胆泥症に効果のある療法食も出ていますので、興味のある方はご相談ください!
外科的な治療を行う
以下のような場合には、手術により胆嚢を切り取ってしまいます。
- 投薬などの治療を行っても胆泥症が進行する場合
- 胆泥が溜まり過ぎてしまい胆嚢が大きくなっている場合
- 胆嚢の壁が薄くなってしまっている場合
- 胆管閉塞の危険が高い場合
外科手術が必要な場合には、外科の動物病院を紹介しております。
治療費

飼い主
気になる胆泥症の治療費は幾らくらいでしょう?
症状の違いや使用する薬、治療期間の違いから治療費が変わります。また症状が重度になっている場合には、治療期間も長く治療費もかかってしまいます!
胆泥症の予防方法

飼い主
胆泥症は一生治療が必要なこともあるため、ならないようにしたいです!
適切なフードの選択
栄養バランスのとれたフードにします。できれば、低脂肪のフードを使用することが効果的です。
基礎疾患を治す
胆泥症の原因となる病気の早期治療は大切です。例えば、甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症などです。
定期的な健康診断を受ける
胆泥症は無症状なことも多いため、早期発見することが大切です。そのため、定期的に健康診断を受けることが重要です。早めに異常が見つかれば、処置も早くでき重症化を防げます。
胆泥症になりやすい犬種
- 中高齢の犬
- 高脂血症の犬
- シェットランド・シープドッグ
- ミニチュア・シュナウザー
- アメリカン・コッカー・スパニエル
- ビーグル
- シーズー
- チワワ
犬の胆泥症でよくある質問
犬が黄色いものを吐くときはすぐ受診すべきですか?
黄色い液(胆汁)を吐く場合、空腹時の一時的なこともありますが、頻繁に吐く、元気や食欲がない、ぐったりしている場合は早めの受診が必要です。胆泥症や胆嚢炎、膵炎などの病気の可能性があります。
胆泥症は自然に治ることはありますか?
軽度で症状がない場合は経過観察となることもありますが、自然に完全に治ることは少なく、進行することもあります。定期的な検査で状態を確認することが重要です。
胆泥症を放置するとどうなりますか?
胆泥が増えると胆管が詰まり、黄疸や胆嚢炎、膵炎などを引き起こすことがあります。重症の場合は胆嚢破裂や腹膜炎につながり、命に関わることもあります。
手術が必要になることはありますか?
薬での治療で改善しない場合や、胆嚢が大きくなっている場合、胆管閉塞のリスクが高い場合には胆嚢摘出手術が必要になることがあります。
胆泥症は予防できますか?
完全に防ぐことは難しいですが、低脂肪の食事、適切な体重管理、基礎疾患の早期治療、定期的な健康診断によってリスクを下げることができます。
どの犬が胆泥症になりやすいですか?
中高齢の犬や高脂血症の犬、シェットランド・シープドッグ、ミニチュア・シュナウザーなどで発症しやすい傾向があります。
無症状でも検査は必要ですか?
はい、胆泥症は無症状のまま進行することがあるため、定期的な超音波検査による早期発見が重要です。
まとめ
胆泥症は犬によく見られる病気です。また早めに見つけられれば、場合によっては経過観察で済む病気でもあります。そのため早く見つけ出すことが大切です!
気になる症状が見られた場合は、お早めにご相談ください。
胆泥症の重症化を防げるよう、お手伝いいたします。!
筆者・若山正之(Dr.Nyan)のプロフィール

本記事は、犬・猫の診療を行う獣医師・若山正之が監修・執筆しています。
1975年より小動物臨床に従事し、現在は若山動物病院院長として地域医療に携わっています。長年の臨床経験に基づき、一般診療から予防医療、シニア医療まで幅広く対応しています。
特に、病気の早期発見・早期対応を重視し、飼い主様にわかりやすい説明と納得いただける診療を心がけています。
また、幹細胞療法や免疫療法などの先進医療にも取り組み、動物の生活の質(QOL)を重視した治療を提供しています。
これまでに一般飼い主様向けのセミナーや講演活動を多数行い、正しい医療知識の普及にも尽力しています。著書に『老犬生活 完全ガイド』『犬と猫の老齢介護エキスパートブック』などがあります。
本記事は最新の獣医療知見と臨床経験をもとに作成していますが、症状や状態によって対応は異なるため、気になる症状がある場合はお早めに動物病院へご相談ください。