Dr.Nyanのすこやかコラム
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【急性大腸炎】犬の急性大腸炎とは?症状や治療法を解説
急な下痢で幾度もトイレに通う、またウンチに粘膜や血が混じって出てくる!
そんな症状がみられたら「大腸炎」を引き起こしているかもしれません。
せんせい〜
ギューとお腹が痛くなって、ウンチがベチャベチャなの!
どうにかして〜ッ!
あら〜下痢だね、
『大腸炎かもしれないから調べてみようね!
大腸の粘膜に炎症を起こす病気を『大腸炎』と言います。大腸炎には急性と慢性のものがありますが、多くは突然発症する急性の大腸炎です。
『急性大腸炎』になると、お腹が急に痛みだしウンチがしたくなる、そして今すぐトイレに駆け込みたくなるような症状となります。
『急性大腸炎』は良く見られる病気のひとつですが、気をつけていればある程度は防げる病気でもあります。ここでは『犬の急性大腸炎』の原因と対処法などについてDr.Nyanがわかりやすく説明いたします。
※当記事は『犬の排泄の様子や排泄物の写真』を参考画像として載せています。苦手な方はお控え頂くか、十分注意してご覧ください。
急性大腸炎の症状
急性大腸炎は治療しなくても数日で治ったり、治療するとすぐに治ってしまうことが多い病気です。
先生〜
すぐにウンチが軟らかくなってしまうのは、どうしてかしら?
でも、すぐに治っちゃうし・・・
これって、様子をみてて良いのかしら?
下痢になるのは腸が弱いからと決めつけて、放置しちゃダメだよ!
それでは一緒に症状を確認していきましょうね!
下痢になる
急性大腸炎で最も多い症状は『下痢』です。
下痢になると粥状であったり、水分をいっぱい含んだ水状のウンチとなります。
またウンチの中に、粘膜や血液が混じっていることもあります。
下痢の状態です。
血が混じった粘膜ウンチです。
お腹を痛がる
下痢になると同時に、お腹に差し込むような痛みが出ます。
この痛みは痛くなったり痛みが和らいだりと一定のリズムを持ち、下痢が治るにしたがい痛みが薄れてきます。
お腹が痛いのは腸が伸びたり縮んだりするときや、痙攣するときに起こります。
お腹が痛いと背中が丸く、猫背のようになって見えることがあります。
またお腹を軽く押すと嫌がり、お腹を凹ませないようにグッと力を入れてきます。
お腹が痛くて背中が丸くなっています。
トイレに幾度も通う
ウンチがしたくなり、幾度もトイレに通います。
トイレで一生懸命に気張るのですが、何も出てこないこともあります。
トイレに幾度も通いたくなるのは以下のような理由からです。
大腸の粘膜には、ウンチを感知するセンサーがたくさんあります。
そして大腸に炎症が起こると粘膜が過敏になり「ウンチを出せ」と言う指令がセンサーから多発されてしまいます。
そのため大腸の中にウンチが無くても、ウンチセンサーの暴走によりトイレに行きたくなってしまうのです。
急性大腸炎の原因
下痢を起こしてしまう原因について説明するね!
水を飲み過ぎたりフードの食べ過ぎ
水を飲みすぎたり、フードを食べ過ぎたりすると腸の粘膜が刺激され、ぜん動運動(腸が伸び縮みをくり返すことで腸の中の物を肛門の方に移動させる運動のこと)が活発になります。
ぜん動運動が活発になるとウンチが腸内にとどまる時間が短くなるため、ウンチの中の水分が十分に吸収さず下痢になってしまいます。
フードを変えた時や食べ慣れない物を食べた時などでも、同じように下痢を起こすことがあります。
食べ過ぎからの消化不良で、白っぽいウンチになってしまいました。
ウイルスや細菌、原虫や寄生虫などの感染によるもの
ウイルスや細菌、トリコモナスなどの原虫や回虫などの寄生虫などに感染して起こります。
これらが大腸の中で増殖すると腸の粘膜が刺激されぜん動運動が活発になるだけでなく、大腸の粘膜を保護したりする腸液の分泌が多くなり下痢になってしまいます。
感染からの下痢は、腸が必死になって病原体の増殖をおさえ感染源を体の外に出してしまおうという体の防衛反応です。
糞線虫がウンチの中に見られています。
寄生虫の卵がウンチの中から見つかりました。
ストレスによるもの
緊張や不安などの精神的ストレスやお腹の冷えなどから、自律神経の働きに乱れが起こります。
自律神経の乱れは、腸のぜんどう運動のバランスを崩し腸の働きや水分の吸収の度合いを低下させてしまいます。
またストレスにより腸のぜん動運動が活発になれば、同じように下痢になってしまいます。
例えば
- ペットホテルに預けた
- 長時間留守番した
- 花火や爆竹の音がしていた
- 近所の工事による騒音が聞こえた
- 長時間の留守番した
など様々な理由でストレスや不安を感じます。
ストレスから、血混じりの軟らかいウンチがでちゃいました。
ちなみストレスから腸のぜん動運動が悪くなれば、便秘を起こしてしまうこともあります。
その他
急性大腸炎を起こしてしまうものには以下のような原因もあります。
ちなみにこれらは、慢性大腸炎の原因にもなっています。
- 大腸にできたポリープや腫瘍の影響
- アレルギーの症状として
- 腸以外の病気
膵炎など腸以外の病気でも急性の下痢を起こすことがありますので、下痢の原因をしっかりと確かめましょう!
急性大腸炎の主な治療法と費用
下痢なのに下痢止めは使用しないで治した方が良い場合もあります!
整腸剤などの投与で症状が一時的に治ったとしても、原因が取り除かれなければ再発したり慢性化することもあります。そのためには、原因に合った治療を行うことが大切です。
消化の良いフードを使う
下痢をしているときに体力をつけるつもりでフードを与えると、弱った腸に負担をかけ回復が遅れてしまうことがあります。特に感染から起きた下痢の場合には、注意してくださいね!
一般的には、脂肪分の少ないフードは腸に負担がかからない傾向にあります。また症状により、繊維の少ないフードと繊維の多いフードを使い分けます。この使い分けは下痢の状態などでおこないますが、一般的には繊維の多いフードを使うケースが多いようです。
その理由は繊維が多いと、そこに吸われる水分量が多くなり下痢の状態が良くなる傾向にあるからです。
ただ繊維は腸を刺激しますので、下痢の原因や症状によっては使わないほうが良い場合もあります。また対処療法になりますので、使用の際は自己判断しないでかかりつけの動物病院の先生にご相談ください!
下痢をしたら半日絶食して腸を休ませてあげ、その後にフードを少量ずつ与えます。また水分の補給も大切です。
整腸剤や粘膜保護剤を飲ませる
下痢になると腸内の細菌のバランスを崩してしまいます。そのため整腸剤や粘膜保護剤を使用し、腸内環境の改善と大腸の粘膜やぜん動運動を回復させます。
腸内の環境を整えるだけでも、腸内の環境を大きく改善し下痢が治ることがあります。当院では、整腸剤として「ラクトミン、酪酸菌、 糖化菌」が配合されたものを使用しています。
下痢止めを使う
感染の見られない単純な下痢の場合にのみ、下痢止めを使用します。感染から起きた下痢の場合、下痢止めを使ってしまうと治療期間を長引かせるだけでなく症状を悪化させてしまうこともあります。
抗生剤・駆虫剤を使う
細菌の感染によるものであれば、抗生剤を投与します。寄生虫の感染によるものであれば、駆虫剤を投与します。
水分の補給を行う
どんな下痢でも脱水症状にならないように注意することが必要です。水は少量ずつ、こまめに飲ませてあげて腸に負担がからないようにします。
体を温める
お腹を温めることは、大腸の働きを改善する効果があります。また『足湯』も、お腹の冷えやストレスを取り除くのに効果があります!
下痢になりやすい季節か来たので足湯で『腸活』です!
床からの冷えを防ぐような、厚手のベッドを用意してあげるの良い方法です。ベストは『腹巻』です。当院では、お腹の弱い子には腹巻を薦めています!
お腹の冷えには腹巻が一番!
腹巻きがずり落ちないように洋服の上からつけています!
費用
急性大腸炎の原因によって、使用する薬と治療期間が違いから治療費が変わります。
あくまで目安になりますが、糞便検査や下痢止め、消化管保護剤の投与など、一回の治療に3,000~7,000円くらいかかります。しかし重度の下痢などの場合には、その分治療費もかかってしまいます!
急性大腸炎の予防方法
単純な冷えから感染症まで、さまざまな原因が考えられるのが急性大腸炎です。急性大腸にならないためにもフードや生活環境には、十分に気をつけることが大切です。また再発しないように、心がけましょう!
体に合ったフードを選ぶ
腸の弱い犬は、体に合ったフードを与えましょう。
体に合うフードは、日頃から原材料を確認し事前に見つけておかなくてはなりません。そして何が体に合わないかを、あらかじめ知っておく必要があります。
例えば、原材料に「小麦」が入っていると具合が悪くなるなどです。これはアレルギーを持つ犬の場合には、特に必要なことです。
また数種類の体に合ったフードを探しておきます。もし万が一、ひとつが欠品などで手に入らなくても他にも食べられるフードがあるため焦ることがありません!
腸が強い犬でも急にフードを変えると下痢になってしまう場合もありますので、フードの変更は数日かけて徐々に行います。
例えば3日で変更するなら、初日は新しいフードを3割ほど混ぜ、二日目は6割、三日目は全量新しいフードにという感じで変更していきます。胃のとても弱い犬は、さらに時間をかけて変更していきましょう。
好きなフードだからと、食べさせ過ぎにも注意してください。消化不良を起こすものや食中毒を起こす危険性のあるものは、絶対に与えないようにしましょう。
感染の予防をする
寄生虫の感染を防ぐためにも、散歩中に草を噛ませたりするのはやめさせましょう!
特にスーッとしたススキような葉っぱを好きな犬が多いため、犬がそこに集まりやすい傾向にあります。しかもそこでウンチをしてしまう犬もいるため、スーッとした葉の生えている場所は注意が必要です。
犬が集まりやすい場所は、危険地帯と思って下さい!定期的な検便や駆虫剤の投薬により、寄生虫の感染を防ぐようにします。
ストレスを減らす
ストレスは大腸炎を起こすだけでなく、犬の心にまでも悪影響を及ぼすことがあります。ストレスを減らすためにも、遊んであげたり居心地を良くしてあげて下さい。
腹巻をすると、冷えのストレスからお腹を守ってあげられます。また腹巻には腸の動きを改善する効果もありますので、試してみて下さい!
冷えからのストレス防御のため腹巻をしています。
急性大腸炎を起こしやすい犬種
- 犬種にかかわらず発症します
- どの年齢でも発症しますが、若い犬に多い傾向があります
まとめ
犬の急性大腸炎は生活を見直すことでも、予防することができる病気です。また、腸は免疫にも関係のある臓器ですので、腸の健康は全身の健康につながるとも言えます。
下痢になる前に何か気になる兆候が見られたら、早めにご相談くださいね。健康で長生きできるように、お手伝いいたします!