犬が誤食・誤飲した?それ腸閉塞かも?症状・原因・治療と受診の目安

  1. ホーム
  2. Dr.Nyanのすこやかコラム
  3. 犬が誤食・誤飲した?それ腸閉塞かも?症状・原因・治療と受診の目安

Dr.Nyanのすこやかコラム

コラム記事検索

犬が誤食・誤飲した?それ腸閉塞かも?症状・原因・治療と受診の目安

「愛犬がオモチャやペットシーツを食べてしまった…これって大丈夫?」
このような相談は、実際の診察でも非常に多く見られます。
中には緊急手術が必要になるケースもあります。

このように食べられないモノを食べてしまうこと、飲み込んでしまうことを誤食・誤飲と言います。
誤食・誤飲は軽症で済むこともありますが、命に関わる危険なケースもあるため注意が必要です。

本記事は実際の誤食症例をもとに、典型的な経過をまとめています。
来院時にはすでに症状が進行しているケースも少なくありません

飼い主

せんせい…
何か食べちゃったみたいで、気持ち悪そうなんです…

Dr.Nyan

それは誤食・誤飲の可能性がありますね。
誤食は時間との勝負になることがあります。状態を詳しく確認しましょう

犬がピンブラシのピンを誤食した例
犬の胃内に金属異物(クギ)が確認された症例

飼い主

えっ…こんなものが入ってたんですか!?

Dr.Nyan

はい、異物が確認できます。場所によってはすぐに対応が必要です

「誤食・誤飲」による症状は、食べたり飲み込んだりしたモノにより様々ですし、詰まった場所でも違います。

ここでは「誤食・誤飲」の原因と対処法などについて、Dr.Nyanがわかりやすく説明いたします。

目次

誤食・誤飲の症状|詰まる場所で変わる危険サイン

「誤食・誤飲」による症状は、食べたり飲み込んだりしたモノにより様々です。
しかも飲み込んだことに気が付かず、健康診断などで偶然にレントゲン写真に写っていたなんてこともあります。

もし飲み込んでしまった場合には、食道や胃などに詰まったり傷を付けてしまうこともあります。また飲み込んだモノから溶け出した成分により、胃や腸に炎症や中毒を起こしてしまうこともあります。

犬の消化管内にある異物の位置を示した図

消化管(食道、胃、腸)の異物の位置

飼い主

ちょっと様子見でも大丈夫ですか?

Dr.Nyan

異物の種類や場所によっては危険なので、自己判断はおすすめできません

気管で詰まった異物

食べたものが気管に入ってしまう、そんなことあるとは思えないのですが実際には起こることがあります。
これを「気道内異物」と言います。

気管に詰まれば空気の通りが悪くなり「呼吸するのが辛い状態」となり、場合によっては窒息死してしまうこともあります。
気管に入ってしまった場合には、まず気を落ち着けて背中を叩くなどの対応を行うことが重要です。

もし異物が大きく気管を塞いでしまう気道閉塞にでもなったら、それは致命的な誤食・誤飲となってしまいます!

リスク先生

気道閉塞は数分で命に関わる可能性があります。
迷わず緊急対応が必要です

食道の中の異物

口から飲み込んだモノが、胃の手前部分の食道で詰まる場合もあります。
よく「喉が詰まった」とか「喉詰まり」と言われますよね。

食道に詰まってしまった場合には、以下のような症状が見られます。

  • 吐こうとするのに何も出てこない
  • 吐く仕草をする
  • 喉を掻きむしる
  • よだれを垂らし苦しそうにする
  • 大量のよだれが出る
  • 落ち着かない
  • 呼吸困難になる

食道に詰まった場合、何らかのハッキリとした症状が直ぐに見られるのが特徴です。

胃の中の異物

飼い主

吐きそうなのに出ないって、危険なんですか?

Dr.Nyan

はい、胃に異物が残っている可能性があります
元気そうでも安心できないのが胃の異物なんです

飲み込んだモノが胃の中で止まり、腸の方に流れず詰まる場合もあります。

胃内異物の場合には、

  • 元気そうだけど食欲がない
  • 生あくびすることが多い
  • 吐き気

まるで慢性胃炎になった時のような症状に似ていることも多く、他に何ら症状が見られないこともあります。
健康診断や他の病気でレントゲン検査を撮ったときに、偶然に発見されることもあります。

犬が散歩で石を誤食した例
胃内に多数の石が貯留した誤食症例

また、詰まったモノによっては「胃閉塞」になる可能性も考えられます。
胃閉塞とは、食べたモノが十二指腸へ流れていかないことを言います。

もし胃閉塞を起こしてしまった場合には、以下のような症状が見られます。

  • 吐きそうな感じ
  • 吐き気
  • 激しい吐き気

誤食・誤飲したモノが尖っている場合には、胃に刺さってしまうこともあります。
その際に隣接した臓器である肝臓や横隔膜、肺までも傷を付けてしまうこともあります。

飼い主

完全に詰まるとどうなるんですか?

腸の中の異物

飼い主

ぐったりしてきたら危険ですか?

Dr.Nyan

はい、腸閉塞の可能性があり緊急対応が必要です

飲み込んだモノが胃を通り、腸に詰まることもあります。

腸の中で異物が詰まっているレントゲン画像です

腸の中で異物が詰まっているレントゲン画像です。

もし腸閉塞を起こしてしまった場合には、以下のような症状が見られます。

  • 食欲が無くなる
  • 激しい吐き気
  • くりかえす吐き気
  • ウンチが出ない
  • ぐったりする
  • お腹がふくれる

誤食・誤飲の原因

飼い主

どうしてこんなことが起きるんですか?

Dr.Nyan

特に若い犬は何でも口にしてしまうため、誤食が多いんです

誤食・誤飲は人の場合でも子供に多く見られるように、犬でも「1歳齢以下の若い犬」で良く見られます。
特に仔犬ではペットシーツをビリビリ破ったり、オモチャを噛み壊し食べてしまうなどが多くみられます。

犬がピンブラシのピンを誤食したレントゲン画像
ピンブラシのピンを食べちゃいました・・・

~Dr.Nyan ポイント~
若山動物病院で実際にあった誤食・誤飲事例

今まで経験した誤食・誤飲には

  • スーパーボール
  • 化粧に使うコットン
  • 入れ歯
  • メガネケース
  • お金
  • 指輪
  • イヤリング
  • アイスの棒
  • 焼き鳥の竹串
  • 靴下

…など数えたらキリがありません。

その中でも超〜驚いたのが鳩を丸々食べちゃったことです。

しかも生きた鳩を一口でパクリ・・
飼い主さんはパニック状態での来院でした。

焼き鳥を竹串ごと10本以上も食べちゃった犬もいました。

【参考記事】誤食のことを書いたDr.Nyanのブログです

Dr.Nyan

ボタン電池は特に危険です。体内で化学反応を起こし、粘膜を傷つけてしまいます

誤食・誤飲の主な治療法と費用

誤食・誤飲は触診や腹部のレントゲン検査、エコー検査、バリウム検査(造影検査)、内視鏡検査、血液検査などを行い確認していきます。

気管で詰まった異物の場合

気管に異物が詰まっている場合は、胸を押す、もしくは背中を叩いて吐き出させます。

食道の中の異物の場合

食道の中のモノは、状況に応じて以下の対応をおこないます。

  • 内視鏡を使い取り出す
  • 棒などを使い、胃に流す
  • 手術をする

胃の中の異物の場合

胃の中のモノを取り出すには、以下の方法があります。

  • 飲み込んだモノを吐かせる処置(催吐処置)
  • 内視鏡を使い、可能な限りお腹を切らずに取り出す
  • どうしても取り出せない場合には手術で取り出す
犬の誤食異物を取り出すための内視鏡機器
内視鏡や麻酔管理機器です

最初に催吐処置ができないか検討します。
以下の条件がそろった時に催吐処置おこないます。

  • 飲み込んだ事が確認できる
  • 飲み込んだモノが比較的小さなモノである
  • 飲み込んでから時間がそれほどたっていない

条件がそろわない場合はなるべく切らない方向で取り出せる方法を考えます。

腸の中の異物の場合

腸の中のモノを取り出すには、以下の方法があります。

  • 飲み込んだモノが自然にウンチと一緒に出るまで待つ
  • どうしても出ない場合には手術で取り出す

特に危険な異物の場合

ここからは、特に危険なケースを挙げていきます。

閉塞をおこしている異物

不完全な閉塞の場合、詰まったモノの動きを見ながらの対応になります。場合によっては、時間はかかるが肛門から出てくることもあります。

完全に閉塞してしまった場合には、手術を行い食べたモノを取り出します。

尖った異物

竹串など尖ったものを食べてしまうと、胃に刺さってしまうこともあります。腸の内容物が漏れ出てしまうと、腹膜炎を起こしてしまいます。

激しい痛みだけでなく命の危険もあるため、手術を行います。

ヒモ状の異物

ヒモ状のモノを誤食・誤飲し小腸に詰まった場合、小腸がジャバラ状になり腸の中が広く傷害が生じてしまいます。そのためヒモ状のモノを、手術により取り除かなくてはなりません。

どちらにしても腸が傷ついていたり壊死が見られたら、その部分を切除するなど手術が必要になってしまいます。

誤食・誤飲の治療費

誤食・誤飲の治療は、その症状の程度によって大きな幅があります。重度になると入院や緊急手術も必要となるため、高額になる可能性が高いです。

誤食・誤飲の予防方法

飼い主

やっぱり予防が一番ですね

Dr.Nyan

はい、誤食は防げる事故です

誤食・誤飲は、屋内だけでなく屋外でも起こります。とにかく注意!注意することによって、予防することができます。

躾(しつけ)をする

室内の場合、特に留守中は気を付けましょう。

留守番の際はケージやサークルの中で過ごさせる躾により、誤食・誤飲の機会を減らすことができます。その際にトイレシート(ペットシート)をビリビリに破く場合は、メッシュ付きのトイレトレーを使います。

散歩での拾い食いにも、注意が必要です。
指定の場所にあるモノや与えたモノ以外のモノを、勝手に食べないように躾けることが必要です。

また、口にくわえてしまったモノを、指示で放す躾が出来るようにもしたいものです。犬が飲み込めそうな大きさのモノで遊んでいるときは、何かに気をそらせた隙に取り上げるようにしましょう。

生活環境を見直す

犬が飲み込んでしまいそうなモノは、犬が届く範囲に置かないようにすることが大切です。

犬のオモチャは、小さくて丸飲みできる大きさのモノは避けます。眼を離す時は、オモチャを片付けておくことも大切です。

留守番中や目を離した間の出来事は、何を口にしたか判断できません。そのため普段から室内に危険なものを置かないこと、しっかり管理することを徹底しましょう。

また遊んであげる時間をつくり、コミュニケーションが取れるように見直してみましょう!

誤食・誤飲を起こしやすい犬種

  • 1歳齢以下の若い犬

犬の誤食・誤飲でよくある質問

犬が誤食・誤飲した場合、すぐ病院に行くべきですか?

異物の種類や症状によっては緊急性が高いため、迷った場合はすぐに動物病院へ相談してください。
特にぐったりしている、吐き続ける、呼吸がおかしい場合は緊急です。

様子見でも大丈夫なケースはありますか?

小さく安全なものを飲み込み、元気や食欲があり症状がない場合は経過観察できることもあります。
ただし自己判断は危険なため、必ず獣医師に相談してください。

誤食・誤飲で危険な症状は何ですか?

吐こうとしても出ない、呼吸が苦しい、ぐったりする、食欲がない、何度も吐く、お腹が張るなどは危険サインです。
腸閉塞や気道閉塞の可能性があります。

どのくらいで症状が出ますか?

気管に詰まった場合は数分で症状が出ます。
食道や胃の場合は比較的早く症状が出ることが多く、腸の場合は数時間~数日後に悪化することもあります。

誤食した場合、自宅で吐かせてもいいですか?

自己判断で吐かせるのは危険です。
尖った物や薬品の場合、逆に食道を傷つけることがあります。必ず動物病院で適切な処置を受けてください。

誤食・誤飲の治療方法は何がありますか?

催吐処置、内視鏡による摘出、自然排出の経過観察、手術などがあります。
異物の種類や場所、時間経過によって選択されます。

手術になるのはどんな場合ですか?

腸閉塞を起こしている場合、尖った異物、ヒモ状異物、自然に排出できない場合は手術が必要になります。

誤食・誤飲しやすい犬はどんな犬ですか?

1歳以下の若い犬に多く見られます。
好奇心が強く、何でも口にする傾向があるためです。

誤食・誤飲で特に危険なものは何ですか?

ボタン電池、竹串、ヒモ状のもの、尖ったもの、毒性のある物質は特に危険です。
体内で化学反応や損傷を起こす可能性があります。

誤食・誤飲は予防できますか?

完全に防ぐことは難しいですが、環境管理としつけで大きくリスクを減らせます。
口に入る物を置かない、拾い食いをさせないことが重要です。

誤食してからどのくらいまで吐かせる処置が可能ですか?

一般的に飲み込んでから時間が経っていない場合に限り可能です。
時間が経過すると胃から腸へ移動し、吐かせる処置は適応外になることがあります

まとめ

誤食・誤飲は注意すれば、完全ではないにしろ防ぐことができます。
もし誤飲しても、すぐに症状が現れないものもあります。気がついたら重症化し、命に関わる状態になってしまっている事もある病気です。

「誤飲を見た」とき、または「誤飲したかも」と思ったときにはご相談ください!
誤食・誤飲は見た目よりも危険なケースが多く、「様子見」が命取りになることがあります。
特に吐けない・ぐったりする・呼吸がおかしい場合は緊急です。

迷ったら様子見ではなく、早めの受診が命を守ります。

筆者・若山正之(Dr.Nyan)のプロフィール

獣医師 若山正之 プロフィール写真 小動物臨床 犬猫診療

本記事は、佐倉市で犬・猫の診療を行う獣医師・若山正之が監修・執筆しています。
1975年より小動物臨床に従事し、現在は若山動物病院院長として地域医療に携わっています。長年の臨床経験に基づき、一般診療から予防医療、シニア医療まで幅広く対応しています。特に、病気の早期発見・早期対応を重視し、飼い主様にわかりやすい説明と納得いただける診療を心がけています。また、幹細胞療法や免疫療法などの先進医療にも取り組み、動物の生活の質(QOL)を重視した治療を提供しています。
これまでに一般飼い主様向けのセミナーや講演活動を多数行い、正しい医療知識の普及にも尽力しています。著書に『老犬生活 完全ガイド』『犬と猫の老齢介護エキスパートブック』などがあります。
本記事は最新の獣医療知見と臨床経験をもとに作成していますが、症状や状態によって対応は異なるため、気になる症状がある場合はお早めに動物病院へご相談ください。