Dr.Nyanのすこやかコラム
飼い主様に伝えたい犬猫の病気や日常ケアについての役立つコラムをお届け♪
【回虫症】犬の回虫症とは?症状や治療法を解説
仔犬が痩せているのに、お腹がパンパンに張っている。そんな症状がみられたら「お腹の中に虫」が住んでいるかもしれません。
せんせい〜新入りがお腹痛いって!
どうにかしてやって〜ッ!
せんせい〜ウンチの中に何かモヤシみたいのが出たー
これ何なのかな?
ひょっとして、それって回虫かもしれないよ?
どれどれ見せてごらん?。
ウンチの中に白い虫が見えます。
えええええ〜ッ・・・こんな虫がお腹の中にいるの?
信じたくなぁ〜い!
ウンチの中にいたチョット小さめの回虫です。
実際にお腹の中に住む虫として、代表的なものが『回虫』です。その中でも、犬に寄生するのが犬回虫(Toxocara canis)です。
感染する機会も多く、しかも犬だけでなくヒトにも感染し様々な症状を起こす「犬回虫」の原因や対処法などについてDr.Nyanが説明しますね。
犬回虫症の症状
犬回虫への感染は、主に卵が口から入ることによります。成虫になると小腸に寄生し、体長は4~18cmくらいにまでなります。
回虫の成虫で、体調が18cmもあります。
見た目がミミズの様な細い虫のため、寄生虫の中の線虫というグループに属します。犬の回虫は犬回虫以外に、犬小回虫(Toxascaris leonine)がいますが、両方とも回虫症を引き起こします。
犬回虫に感染しても、なんら感染の兆候が見られないこともあるんだよ!
でもどんな症状がでたら要注意なのか一緒に確認していきましょう!
~Dr.Nyan ポイント~
回虫の卵は数年間生き続ける?!
回虫の卵はウンチと一緒に体の外へ出たときは、まだ未熟な状態で感染力を持ってはいません。しかしその環境の状態でいると、卵は成熟し卵の中に幼虫がいる状態になり感染力を持つようになります。
回虫の卵は丈夫な殻の様なものに守られています。
そのため体の外に出ても生きていくだけの能力を持っています。条件さえ良ければ、体外で感染力を持ったまま数年間は生き続けると言われます。
吐いたり下痢などの消化器症状
成虫は小腸に寄生しますが、無症状のことがあります。
しかしウンチが軟らかくなったり下痢、また吐くなどの症状がみられることがあります。その際に、吐いたモノの中やウンチの中に回虫が出てくることもあります。
また大量寄生した場合に、腸の中の虫により腸閉塞がみられこともあります。仔犬の場合には、下痢や痩せているのにお腹が大きいなどの症状が見られることがあります。
混合感染で重症化
他の寄生虫やウイルスとの混合感染には、注意が必要です。
犬の回虫と一緒に、他の寄生虫に感染していることが多々あります。例えばジアルジアやトリコモナス、コクシジウムなどの原虫です。これらの寄生虫との混合感染により、回虫は駆除しても症状が治らないこともあります。
またパルボウイルスやコロナウルスなどの、消化器症状を起こすウィルスに感染している場合にも注意が必要です。これらの感染は、場合によっては入院での治療が必要となります。特に仔犬の場合には全身状態の悪化がひどく、死に至ってしまうこともあります!
犬回虫症の原因
犬回虫症の原因は、犬回虫の寄生だよ!
回虫の卵は丸い形をしておりウンチと一緒に出て来ますが、小さく眼では見えません。そのため検便を行い、回虫の卵を見つけることで診断します。繰り返す下痢や治らない下痢などの際には、早めに検査を行うことが大切です。
犬回虫に感染する経路は、主に3つと言われます。
口からの感染
ウンチと一緒に出た犬回虫の卵は、その落ちた場所で成熟します。回虫症は、その幼虫が中にいる卵を口にしてしまうことで感染します。これを『経口感染』と言います。
回虫の卵です。
妊娠中の母犬から胎仔への感染
回虫に感染した母犬の胎盤を通じて、子宮内の仔犬に感染することがあります。これを『胎盤感染』と言います。
母犬の母乳からの感染
回虫に感染した犬が妊娠・出産すると、母乳の中に幼虫が出てきて仔犬に感染します。この母から仔へ、乳汁を介しての感染を『経乳感染』と言います。
母犬に回虫が寄生していると仔犬にも感染します。
~Dr.Nyan ポイント~
とても怖い臓器幼虫移行症(トキソカラ症)って?
犬回虫はヒトにも感染するため、人獣共通感染症として注意が必要な寄生虫です。
本来の宿主が犬である犬回虫は、ヒトに寄生しても成虫にはなれません。
そのためヒトに感染して腸の中に寄生できなくても、肺や肝臓などの組織に寄生してしまうことがあります。このように幼虫が様々な臓器内に入り、重大な症状が現れるのが『臓器幼虫移行症(トキソカラ症)』です。
ヒトの臓器幼虫移行症には、熱や咳など風邪のような症状や、肝臓障害などを起こす内臓移行型
それと眼や脳に規制し、失明や視力障害、痙攣などを起こす眼移行型があります。
犬回虫症の主な治療法と費用
耳の中の検査をするんだよ!
犬回虫と鉤虫などの他の寄生虫や感染症を併発してしまうと、ちょっと厄介です。しかし一般的には、犬回虫を殺してしまえば結構治りは良いと言われています。
駆虫薬
線虫駆除薬を使うことで、駆虫することができます。
一般的には、パモ酸ピランテルを含む薬剤(ドロンタールプラス錠、バイエル)を使用します。またイベルメクチンやミルベマイシンオキシム製剤を使うこともあります。
飲ませるのが難しい場合には、背中に垂らすスポットオン剤を使用します。これにはセラメクチン(レボリューション、ゾエティス)などを使用します。
これらの駆虫薬を定期的に投与することで、予防することもできます。
抗生剤や輸液剤の投与
嘔吐や下痢、発熱や元気・食欲の低下などの症状がみられる場合には積極的な治療が必要になります。
また症状によっては、抗生剤や輸液剤などを使用した治療を行います。
治療費
気になる犬回虫の治療費は幾らくらいでしょう?
感染の度合いや使用する薬、治療期間の違いから治療費が変わります。
体重にもよりますが、ウンチの検査と駆虫剤の内服タイプの投薬で治療費は4,000円くらいです。しかし混合感染や併発症などで重度の消化器障害にまでなっている場合には、治療期間も長く治療費もかかってしまいます!
犬回虫症の予防方法
犬回虫はヒトにも感染する怖い寄生虫なので、感染しないようにしたいです!
散歩で注意
回虫の卵を口にする機会が多いのは、散歩の際が一番多いと考えらえます。またドッグランなど、犬が多く集まる場所にも注意が必要です。
ヒトのトキソカラ症を防ぐためにも、子供の集まる公園や遊び場ではウンチをさせないようにしましょう!
チョットした注意で予防できたり重症化することが防げますよ!
清掃の徹底
ウンチの中の回虫の卵が感染力を持つには、ある程度の時間がかかります。そのためウンチをしたら、すぐに処理すると感染のリスクは低くなります。
また散歩時にウンチしたら、ウンチを地面に埋めることは感染力を持つ回虫卵で環境が汚染されることを意味します。ウンチは持ち帰り、感染のリスクを減らすようにしましょう!
定期的に検便を行う
新たに犬を迎えた際には、ウンチ検査を行います。特に仔犬は母子感染の可能性があるため、必ずウンチ検査を行う必要があります。
予防的投薬を行う
もし検便で回虫の卵が見つからなくても、感染を疑う場合には予防的な駆虫を行うことが必要です。
母子感染した場合は、生後3週目から糞便中に虫卵が排泄されます。そのため仔犬では生後3週齢までに1回目の駆虫薬を飲ませます。
■定期的な投薬スケジュール
- 生後3週齢〜3ヵ月までは2週間おき
- 3~6ヵ月齢では毎月
- 6ヵ月齢以降は3ヶ月ごと年に4回
このような予防的な投薬は、回虫の感染リスクが減ると言われています。
日頃からウンチをチェック
回虫が寄生してないかなどウンチの状態には、日々気をつけおきます。新しい子を迎え入れる場合には、ウンチの健康状態を確認しておくことも大切です!
犬回虫症になりやすい犬種
- 散歩時に草むらに入るのが好きな犬
まとめ
犬の回虫症は仔犬で多くみられるし、ヒトにも感染することが知られています。そんな回虫は、気をつければ予防もできるし再発も防げる寄生虫です。
ウンチは見えても、お腹の中や虫やウンチの中の卵を確認することは難しいものです。気になる兆候が見られたら、早めにご相談くださいね!安心して暮らせるお手伝いをいたします!
健康は勝ち取るものですよ!
【参考記事】千葉県獣医師会 人獣共通感染症 関連資料