Dr.Nyanのすこやかコラム
飼い主様に伝えたい犬猫の病気や日常ケアについての役立つコラムをお届け♪
犬・猫の肉球ケア|乾燥・ひび割れ・ケガから守る方法

寒い季節になると、空気が乾燥して人の肌もカサカサしますよね。
実はこの「乾燥」、ワンちゃん・ネコちゃんの肉球にも起こっています。
肉球は、夏は熱いアスファルト、冬は冷たい地面を裸足で直接歩く場所。
そのため、想像以上にダメージを受けやすく、乾燥・ひび割れ・ケガ・出血などのトラブルが起こりやすい部位です。
この記事では、佐倉市の若山動物病院が、
犬・猫の肉球トラブルの原因/構造/正しいケア方法/受診の目安まで、わかりやすく解説します。

肉球によくあるトラブル
肉球は分厚く丈夫そうに見えますが、実はとてもデリケートな場所なんです。
そのため直接地面や床に触れたり擦ったりしますので、トラブルが生じることもあります。
ケガ・やけど
素足で歩いたり走ったりすれば小石、砂利、ガラス片などを踏んで傷ができたりします。
また真夏のアスファルトは60℃近くになることもあり、数分歩いただけでも肉球が火傷してしまうケースがあります。

飼い主
夏のアスファルトって、そんなに熱いんですね…
Dr.Nyan
ヒトが裸足で歩けない熱さなら、ワンちゃんの肉球にも危険なんです。
肉球の表面の角質は分厚いとは言え、傷を作ると治りにくいため注意が必要です。
しかも最初は大した傷でなくても、気になって舐め続けることで
▶️ 指の間の皮膚炎
▶️ ただれ・悪化
につながることも少なくありません。
「足先や足の裏をよく舐める=トラブルのサイン」と思ってください。
ただしトラブルの原因は肉球だけでなく、アレルギーやストレス、指間炎などが隠れていることもあります。

乾燥・ひび割れ・出血
肉球も皮膚と同じで乾燥します。
乾燥すると
- 硬くなる
- 弾力がなくなる
- 滑りやすくなる
- クッション性が落ちる
さらに進むとひび割れ・出血・痛みが出てきます。
そのため気にしたり、舐めたりすることが多くなります。
肉球の乾燥も保湿でケアしてあげましょうね。
特にフローリングでは踏ん張りが効かなくなり、シニア犬では関節や腰への負担が増えることがあり注意が必要です。
また、単なる乾燥だけでなく、免疫の病気や感染症が原因で肉球がガサガサになったり、腫れてめくれたりすることもあります。猫では「形質細胞性足底皮膚炎」という免疫系の疾患で、肉球が紫色に腫れ上がり、カサカサと剥がれたり潰瘍になることがあります。犬でも「天疱瘡」などの自己免疫疾患や感染症で肉球が過度に硬くなる(過角化)こともあります。
保湿しても改善しない、出血や強い赤みがある、腫れがひかないという場合は、病気のサインかもしれません。早めにご受診ください。
リスク先生
肉球の乾燥は「ただのカサカサ」ではありません!
滑って転倒し、関節や腰を痛める原因になることもあります!

肉球が乾燥する主な原因
肉球の表面はプニプニとして、皮膚とは違う感触を持ちます。
しかし肉球も皮膚と同じように、表皮、真皮、皮下組織からなります。
歩行による刺激
犬は毎日、素足で硬い地面(アスファルト・コンクリート)の上を歩きます。
刺激を受け続けることで角質が厚くなり、徐々に水分を失い乾燥して硬くなってしまいます。
皆さんも素足でワンちゃんと一緒に歩いてみてください!
夏は超熱く冬は氷のように冷たい地面を、素足で歩いたら足裏がどうなるか想像つきますよね?
しかも肉球で体重を支え踏ん張るため、受ける刺激は多くなります。
季節と空気の乾燥
冬は気温が下がり空気中に含まれる水分量が減るため、空気が乾燥します。
さらには季節的に乾燥を促すような暖房器具の使用も増えます。
空気が乾燥していると皮膚だけじゃなく、肉球もカサカサになります。
また寒さは血流も悪くなり、その結果栄養も届きにくくバリア機能も落ちてしまいます。
冬は湿度低下+暖房で皮膚の水分が奪われます。血流も低下し、バリア機能が落ちます。
拭きすぎ・洗いすぎ
散歩後に足の汚れを落とすためお湯などでゴシゴシ洗いをすると、肉球の脂分が落ちてしまいます。
ちなみに肉球には「エクリン汗腺」があり、表面を保護するための分泌物が出ています。
そのため洗いすぎやアルコール系ウェットシートの使用で、必要な脂分まで落としてしまうことがあります。
足先の拭き過ぎや洗い過ぎから乾燥してしまいますので、優しく汚れを落としてあげてください。
加齢によるもの
ヒトだけでなくワンちゃんも歳を重ねると、代謝機能が落ちてきます。
その結果、水分量や分泌物の量が減ってしまい肉球が乾燥してしまいます。
では肉球の構造や働きについて、みていきましょう!
肉球の構造と働き
犬の肉球
犬の「学名」は「Canis lupus familialis」で、その意味は「Canis=犬」「lupus=狼」「familiaris=家族」です。
このことから、ワンちゃんの祖先が狼であったことがわかります。
狼から連想されるのは鋭い眼光、そして優れた聴覚と嗅覚で獲物を探す姿です。
しかも狼は雪が積もり氷が張っている寒い環境に住み、そこで獲物を猛ダッシュで追いかけます。
そのため肉球は、寒い中を走るのに都合の良い構造である必要があります。
猫の肉球
猫ちゃんの肉球は、ワンちゃん以上に「静かに歩く」ことへ特化しています。
ネコ科動物は獲物に気づかれないよう、足音を立てずに近づく必要があります。
そのため猫の肉球は柔らかく弾力があり、衝撃吸収だけでなく「消音装置」のような役割も持っています。
また高い場所から飛び降りた時の衝撃を吸収する働きもしています。

Dr.Nyan
ちなみにヒトの祖先も温かい地方出身だったんですよ!
そのため、体は寒さに強い構造にはなっていません。
寒さに対応
ワンちゃんの肉球には血管が走っており、肉球が冷えないような耐寒構造にもなっています。
また動脈と静脈がくっついているので、血液が静脈を通って心臓に戻ってくるまでに冷えにくくなっています。
このようにワンちゃんの肉球も体も冷えにくい構造になっているので、寒くて冷たく凍った地面でも駆け回ることができるのです。
滑り止めとして
走るのに都合が良い構造とは、滑らないようになっていることです。
そのため肉球の表皮を覆っている角質層は分厚く、しかもザラザラした密集した多数の突起があります。
この突起がダッシュしたり急に止まったり、また方向転換をするときに、滑り止めとなったりブレーキのような働きをしています。
爪が出っぱなしであるのも、走る時のスパイクのような働きをしているからなんです。
クッションとして
犬は裸足で歩くため全体重が足先にかかり、その際に衝撃を足先に受けてしまいます。
肉球の角質層の下にはコラーゲンなどの弾性繊維や脂肪が詰まった衝撃吸収構造、つまりクッションとして働くようになっています。
これにより歩いたり走ったりするときに足先にかかる衝撃を吸収し、関節や腰にかかる負担を和らげています。
つまり肉球は体を支えるだけでなく、足にかかる衝撃から保護もしています。
肉球のケア方法
自然の中で暮らす動物は草や土で生活していますが、ヒトと暮らすワンちゃんは公園やドッグラン以外ではアスファルトなど人工物の上を歩くことがほとんどです。
しかも素足なため、肉球は思った以上のダメージを受けてしまいます。
また肉球は乾燥しやすく、ヒビ割れを起こしてしまうこともあります。
肉球のトラブルを防ぐためにもケアを行い、肉球を守ってあげることが大切です。
肉球の間の毛をカットする
特に長毛種の犬や猫は、肉球の隙間から毛が伸びて肉球を覆ってしまうことがあります。こうなると、せっかくの滑り止め機能が働かず、お家の中で常にスケートリンクを走っているような状態になってしまいます。
フローリングでの踏ん張りが効かなくなることで、パテラ(膝蓋骨脱臼)やヘルニアなど、足腰のトラブルを引き起こす原因にもなります。
肉球の「ぷにぷに」がしっかり床に接地できるよう、定期的にバリカンや先端が丸いハサミで優しくカットしてあげましょう。
自宅でのカットが難しい場合は、トリミングサロンや動物病院にご相談ください。
汚れはやさしく落とす
素足で歩くため、どうしても足の裏は汚れてしまいます。
ま~猫ちゃんは自分で舐めて綺麗にしちゃいますので、汚れは少ないんですけどね…
ただし舐めすぎて赤くなっている場合は、皮膚炎や痛みが隠れていることもあります。
足先の汚れは肉球だけでなく肉球や指の間、毛についたものも取り除きます。
濡れタオルで拭いても、ぬるま湯で軽く洗っても良いと思います。
清潔にすることは大切ですが、肉球は思った以上にデリケートです。
ヒトの足の裏のように汚れたからとゴシゴシと洗ってはいけません。
洗い過ぎると皮脂膜まで取ってしまい、乾燥してしまう原因にもなってしまいます。
⚠️ お散歩帰りのNGなお手入れ
お散歩帰りに人間用の除菌アルコールウェットティッシュでゴシゴシ拭くのはNGです。
アルコールが水分を急激に蒸発させ、肉球の乾燥を悪化させてしまいます。
また、水拭きした後に濡れたまま放置すると、指の間の皮膚炎(指間炎)の原因になります。
拭いた後はしっかり乾かすことが大切です。
❄️ 冬のお散歩にも危険が潜んでいます
冷え切ったアスファルトは水分を奪うため、冬は特に肉球がひび割れやすくなります。また雪道に撒かれている融雪剤(塩化カルシウムなど)は、肉球に付着するとただれや化学ヤケドを起こす原因になります。
冬のお散歩後も、ぬるま湯でしっかり足を洗い流し、その後よく乾かしてからクリームでケアしてあげてください。
肉球クリームで保湿
足先の濡れを軽く拭き、肉球にクリームを薄く塗って優しくマッサージします。
肉球の乾燥が目立つと、クリームをいっぱい塗ってしまう傾向があります。
塗りすぎるとベタベタから滑ってしまったり、床にクリームが付いてしまいます。
塗った直後にフローリングを歩くと滑ることがあるため、塗りすぎには注意してください。
また肉球にクリームが塗られたことが気になって、舐めてしまう子もいます。
そのような場合にはクリームを塗った後に体を軽くマッサージしてあげ、足先の記憶を薄めてあげます。
クリームを塗るのは最低でも1日1回ですが、できれば朝夕と散歩後に行います。

飼い主
いっぱい塗った方が効くと思っていました…
Dr.Nyan
塗りすぎると滑ったり舐めたりするので、「薄く」がポイントですよ。

クリームを選ぶときのポイント
肉球クリームは様々なものがあります。
選ぶときのポイントは「天然の成分、無香料・無着色」です。
基本的にクリームの原料にアルコールを使うことは少ないでしょうけど、購入の際は注意して下さいね!
ワセリンは品質が大切
またワセリンを使用しても大丈夫です。
ワセリンは純度の違いによって「黄色ワセリン」「白色ワセリン」「プロペト」「サンホワイト」の4種類に分類されています。
これらは純度(不純物の含有量)が違うだけで、保湿力に大きな差はないとされています。
ただ使用に際しては「黄色ワセリン」は避け「白色ワセリン」以上のものを使用してください!
また香料やビタミンなどの混ぜ物が無いものを選んで下さいね!
ちなみにユニリーバ・ジャパンの「ヴァセリン」は、黄色ワセリンです。
ただし品質管理された製品ではありますので、少量使用で大きな問題になるケースは多くありません。
またヒト用のハンドクリームを使う場合にも、成分には十分に注意して下さい。
舐め取ってしまうことで、お腹を壊す原因になることもあります。
人間用クリームには要注意!
人間用のハンドクリーム・リップクリーム・ニベア・オロナインなどは、犬猫が舐めると有害な成分が含まれている場合があります。
特にキシリトールや特定の精油(ティーツリーオイルなど)は、犬猫が多量摂取すると中毒を起こすことがあります。また香料・アルコール・防腐剤が皮膚の刺激や皮膚炎の原因になることも。
クリームは必ず「ペット専用」かつ「舐めても安全」と明記されたものを選んでください。
肉球講座!
子猫子犬の肉球って、プニュプニュですよね。
実は「肉球」は通称で実際には「蹠球/しょきゅう」という正式名称があります。
この「蹠球」の「蹠」は、「足の裏とか、踏む、踏みつける」と言う意味です。
またヒトの手のひらにあたる部分も「掌球/しょうきゅう」
前足の指の部分を「指球/しきゅう」、後ろ足の指の部分を「趾球/しきゅう」と言います。


飼い主
「しょきゅう」「しょうきゅう」「しきゅう」って言われてもねぇ・・・
それってどこの事だったっけ?ってなっちゃうよ!
Dr.Nyan
「しょきゅう」て言われちゃってもさ、
頭がゴチャゴチャ何がなんだかってってなってなりますよね!
こんなことから「肉球」という呼び方が使われるようになった、とかなんだそうです。
受診した方がよいサイン
以下のような症状がある場合は、早めの受診をおすすめします。
- 出血している
- 歩き方がおかしい
- 足を触ると痛がる
- 何度も舐め続ける
- 赤く腫れている
- 肉球が剥がれている
- 熱を持っている
- 膿が出ている
よくある質問(肉球ケアQ&A)
犬の肉球がカサカサしています。病院に行くべきですか?
軽い乾燥なら保湿で改善することもあります。ただし赤み・出血・舐め続ける・歩き方の変化がある場合は、早めの受診をおすすめします。
犬の肉球に人間用ハンドクリームを塗っても大丈夫ですか?
基本的にはおすすめしません。香料・アルコール・防腐剤が刺激になり、舐め壊しや皮膚炎の原因になることがあります。
老犬になると肉球は乾燥しやすくなりますか?
はい。加齢とともに皮脂分泌や代謝が低下するため、シニア犬・シニア猫では肉球の乾燥・ひび割れが起こりやすくなります。
肉球がひび割れて出血しています。様子を見ていいですか?
出血している場合は感染や痛みが出ている可能性があります。自己判断せず、動物病院でのチェックをおすすめします。
筆者・若山正之(Dr.Nyan)のプロフィール

本記事は、犬・猫の診療を行う獣医師・若山正之が監修・執筆しています。
1975年より小動物臨床に従事し、現在は若山動物病院院長として地域医療に携わっています。長年の臨床経験に基づき、一般診療から予防医療、シニア医療まで幅広く対応しています。
特に、病気の早期発見・早期対応を重視し、飼い主様にわかりやすい説明と納得いただける診療を心がけています。
また、幹細胞療法や免疫療法などの先進医療にも取り組み、動物の生活の質(QOL)を重視した治療を提供しています。
これまでに一般飼い主様向けのセミナーや講演活動を多数行い、正しい医療知識の普及にも尽力しています。著書に『老犬生活 完全ガイド』『犬と猫の老齢介護エキスパートブック』などがあります。
本記事は最新の獣医療知見と臨床経験をもとに作成していますが、症状や状態によって対応は異なるため、気になる症状がある場合はお早めに動物病院へご相談ください。