若山動物病院ブログ
血尿と多数のストルバイト結晶
寒さからなんでしょうか?
猫ちゃんのオシッコのトラブルの来院が目立ちます。
その多くはオシッコが近い程度ですが、先ほど来院した猫ちゃんのオシッコは血液そのものって感じです。

さっきトイレに行ったばかりなのに、もうオシッコが漏れちゃいそう
あああああッ!
漏れちゃったオシッコが赤いぃぃぃぃ〜
せんせい、どうかして!

オシッコに血が混じるのを「血尿」と言います。
これは尿路、つまりオシッコの通り道に何らかの異常が起きているサインです。
オシッコを調べて、治していきましょう!
今回のオシッコには、ストルバイト結晶が多数認めらました。
ストルバイト結晶が出てしまう場合には、オシッコのpHが上昇しオシッコの中のミネラルが結合して結晶が作られやすくなっていることが背景にあります。
これらの結晶がオシッコの通り道に炎症を引き起こし、尿道や膀胱に傷がつくことで血尿を伴ってしまうのです。
原因とメカニズム
猫ちゃんの血尿の原因は、色々あります。

その中でもストルバイト結晶が多数見られる場合には、以下のようなことが考えられます。
尿路感染症・炎症
細菌感染や尿路の炎症が、オシッコのpHをアルカリ性に傾けストルバイト結晶ができやすくなっています。
栄養バランスの乱れ
栄養バランスの乱れは、猫ちゃんの血尿の発生に大きな影響を及ぼす要因のひとつです。
特にフードの中のミネラルバランスが崩れると、オシッコのpHが変動しやすくなりストルバイト結晶の形成を促進する可能性があります。
1. ミネラルの過剰または不足
猫ちゃんの健康維持に必要なミネラル、特にマグネシウムやカルシウム、リンのバランスが崩れると、オシッコの中にこれらのミネラルが過剰に排出されることがあります。
特にマグネシウムが多すぎるとオシッコがアルカリ性に傾きやすく、ストルバイト結晶が形成されやすくなります。
逆にカルシウムやリンの不足も体内での正常な代謝バランスを乱し、尿路環境に影響を及ぼすことがあります。
2. タンパク質の摂取量
過剰なタンパク質摂取は、オシッコの中の窒素代謝産物を増加させオシッコの酸性度に変化をもたらすことがあります。
オシッコのpHが変動すると、特定のミネラルが析出しやすくなり結晶の形成リスクが高まります。
一方で低タンパク質の食事はカラダの栄養状態や免疫力の低下が下がり、適切なタンパク質摂取量の維持が重要です。
3. 食事の種類と原材料の質
市販のキャットフードでも、品質や成分が製品によって大きく異なることがあります。
添加物や安価な原材料が多用されると、必要な栄養素が十分に補えず、ミネラルやビタミン、必須脂肪酸のバランスが崩れる恐れがあります。
結果としてオシッコの環境が変化し、結晶が形成されやすくなるリスクが増大します。
栄養バランスの乱れは猫ちゃんの尿路環境を大きく左右する重要な要素です。
適切なミネラル、タンパク質、そして十分な水分補給を意識した食事管理が、尿路結石や血尿の予防に繋がるため、日頃の食事内容に十分注意を払うことが大切です。
水分摂取不足
十分な水分を摂らないと尿が濃縮され、結晶が析出しやすくなるため、定期的な水分補給は非常に重要です。
栄養バランスが乱れると、食事の内容が水分摂取量にも影響を与えることがあります。乾燥したドライフード中心の食事では水分補給が不足し、尿が濃縮されるため、ミネラルが結晶化しやすくなります。逆に、ウェットフードや新鮮な水を十分に与えることで、尿の希釈が促され、結晶形成のリスクが低減されます。
症状と診断
典型的な症状としては
- 頻尿
- 排尿時の痛み
- 尿の濁り
- 血尿
このような症状が見られたら、早急な治療が必要となります。
血尿が見られたなら、尿検査や血液検査、超音波検査などを行い、尿のpH、結晶の有無、尿路の炎症や閉塞の程度を検査します!
治療と予防
治療は、原因に応じた対策が取られます。
食事療法
尿を酸性に保つための専用フードへの切り替えや、ミネラルバランスの調整が行われます。
水分補給の促進:新鮮な水を常に用意し、猫が積極的に水分を摂れる環境作りが大切です。
薬物療法
感染症が疑われる場合は抗生物質の投与、炎症を抑えるための薬剤が処方されることがあります。
環境管理
清潔なトイレ環境の維持とストレスの軽減も、再発防止に大きく寄与します。
まとめ
猫ちゃんの血尿と多数のストルバイト結晶は、単なる一過性の現象ではなく、尿路の健康状態に重大な影響を与えるサインです。
飼い主さんの皆様は、日頃から猫の排尿状態を観察し、異常を感じた場合は早めに受診することが大切です。
適切な診断と治療、さらには食事や水分補給、環境管理を徹底することで猫ちゃんのオシッコの健康を守り快適な生活をサポートしましょう。
【参考記事】
尿石症に関する記事内容となっておりますので、ご参照ください。。