Dr.Nyanのすこやかコラム
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猫の尿石症|頻尿・血尿・おしっこが出ない原因と治療
本記事は、Dr.Nyan症例集「猫の泌尿器疾患編」の一部です。実際の診療症例をもとに、猫の尿石症・尿道閉塞の原因と対応についてわかりやすく解説しています。
- 何度もトイレに行くのに少ししか出ない
- 血尿が出た
- トイレでいきんでいるのにおしっこが出ない
そんな症状はありませんか?
こうした症状が見られたとき、猫の尿石症(結石症)を疑う必要があります。特におしっこが全く出ない状態(尿道閉塞)は24〜48時間で命に関わる緊急事態です。
【症例】こんな猫が来院しました
飼い主
何度もトイレに行くのに、オシッコがほとんど出ていなくて…血も混じっています。
Dr.Nyan
膀胱がパンパンに張っています。尿道閉塞です。すぐに処置が必要な状態です。

緊急のカテーテル処置で閉塞を解除し、入院管理・点滴・食事療法を開始。結石溶解食に切り替え、1か月後の検査では結石が消失しました。その後は予防食の継続と定期的な尿検査を行っています。
猫の尿石症とは?
飼い主
膀胱炎とは違うんですか?
Dr.Nyan
症状は似ていますが、結石が詰まると命に関わる点が大きく違います。
尿石症とは、尿中のミネラル成分が結晶化・固まって結石となり、膀胱や尿道に蓄積する病気です。猫で最も多い泌尿器疾患のひとつで、特に去勢済みの中高齢のオス猫に多く発生します。
オス猫は尿道が細く長いため、結石が詰まりやすく尿道閉塞を起こしやすいです。これが「猫のおしっこトラブルは命に関わる」といわれる理由です。
リスク先生
「おしっこが出ない」は半日でも危険です。迷わずすぐ受診してください。
結石の種類
飼い主
食事で治る結石と治らないものがあるんですね?
Dr.Nyan
はい。ここを間違えると治療が長引くため、種類の判定が重要です。
| 結石の種類 | 割合 | 特徴・治療 |
|---|---|---|
| ストルバイト結石(リン酸マグネシウムアンモニウム) | 約50〜60% | アルカリ尿で形成。処方食で溶解可能 |
| シュウ酸カルシウム結石 | 約40〜45% | 酸性尿で形成。食事では溶解不可・外科手術が必要 |
| その他(尿酸塩・シスチンなど) | 約5% | 比較的まれ |

Dr.Nyan
結石の種類によって治療が全く違うため、結石の種類の判定が重要です。
症状
飼い主
頻尿だけでも受診した方がいいですか?
Dr.Nyan
はい。初期サインの段階で対処するのが最も重要です。
初期・軽症の症状
- 頻尿(何度もトイレに行く・少量ずつしか出ない)
- 血尿(尿がピンク〜赤色に見える)
- 排尿時に鳴く・痛がる
- トイレ以外の場所で排尿する
- 陰部を過剰になめる
尿道閉塞(緊急)
- 全くおしっこが出ない
- トイレでいきんでいるが何も出ない
- お腹が張っている・触ると痛がる
- 元気がない・ぐったりしている
- 嘔吐・食欲不振
- 低体温・意識障害(重症)

リスク先生
「おしっこが出ない状態が12時間以上続いている」場合、体内に毒素が蓄積し急性腎不全・心臓停止に至ることがあります。
原因
水分不足
猫はもともと水をあまり飲まない動物です。水分摂取が少ないと尿が濃縮され、ミネラルが結晶化しやすくなります。ドライフードのみを与えている場合は特にリスクが高いです。
食事内容
マグネシウム・リン・カルシウムなどのミネラルが多い食事はストルバイト・シュウ酸カルシウム結石のリスクを高めます。
尿のpH
尿がアルカリ性に傾くとストルバイトが形成されやすく、酸性に傾くとシュウ酸カルシウムが形成されやすくなります。
肥満・運動不足
去勢済みの室内飼育のオス猫は運動量が少なく肥満になりやすいため、尿石症のリスクが特に高いです。
細菌性膀胱炎(ストルバイトの場合)
猫では特発性膀胱炎(FIC)が多いですが、高齢猫では細菌感染が関与していることもあります。
診断方法

飼い主
レントゲンに映らない結石もあるんですか?
Dr.Nyan
小さいストルバイト結晶はレントゲンで確認しづらいことがあるため、尿検査が重要になります。



| 検査 | 確認できること |
|---|---|
| 尿検査(試験紙・顕微鏡) | pH・血尿・結晶・細菌の確認 |
| 超音波検査 | 膀胱内の結石・膀胱の状態・閉塞の確認 |
| レントゲン検査 | シュウ酸カルシウム結石の確認(ストルバイトは映りにくい) |
| 結石分析 | 摘出した結石の種類を確定(治療法決定に重要) |
治療法
緊急処置(尿道閉塞)

尿道閉塞がある場合は麻酔下でカテーテルを挿入して閉塞を解除し、入院管理・点滴を行います。腎臓への負担が大きいため迅速な処置が必要です。
食事療法(ストルバイト結石)
ストルバイト結石は処方食(結石溶解食)で溶解できます。尿を酸性に保ち、マグネシウム・リンを制限した処方食を2〜4週間与えることで多くの場合に結石が消失します。
外科手術(シュウ酸カルシウム結石・大きな結石)

シュウ酸カルシウム結石や大きな結石は外科手術による摘出が必要です。膀胱切開術で結石を除去します。
尿道切開術・尿道造瘻術(再閉塞を繰り返す場合)
何度も尿道閉塞を繰り返す場合は、尿道造瘻術(PU手術:尿道口を広げる手術)が選択されることがあります。
リスク先生
一度治っても再発しやすい病気です。食事を戻さないことが重要です。
予防方法
水分摂取を増やす(最重要)


- ウェットフードへの切り替え(水分含有量70〜80%)
- ウォーターファウンテン(循環式給水器)の設置
- 水飲み場を複数設置(食事場所から離れた場所に)
- 水を毎日新鮮なものに交換する

飼い主
水を飲ませるのがそんなに大事なんですね。
Dr.Nyan
はい。尿を薄めることが最大の予防になります。
石ができる前に防ぐ:「尿を薄める」体質管理
猫はもともと砂漠出身の動物で、少ない水分でも生きられる体質を持っています。その代わり、おしっこが非常に濃縮されやすく、ミネラルが結晶化して石になりやすい環境が膀胱の中に常に生まれています。
尿石の予防で最も重要なのは、おしっこを薄め続けること(尿比重を低く保つこと)です。

飼い主
うちの子、あまり水を飲まないんですが、大丈夫でしょうか?
Dr.Nyan
猫は喉の渇きを感じにくい動物なので、自分から積極的に飲もうとしない子が多いんです。だからこそ意識的に工夫することがとても大切です。
目標は「尿比重1.030以下」
尿比重とは、おしっこの濃さを数値で表したものです。数値が高いほど濃く、ミネラルが結晶化しやすくなります。
| 尿比重の目安 | 状態 | 尿石リスク |
|---|---|---|
| ✅ 1.020以下 | 十分に薄い。理想的な状態 | 低い |
| 🟡 1.021〜1.030 | 許容範囲。もう少し飲水量を増やしたい | やや高い |
| ⚠️ 1.031〜1.040 | 濃すぎる。結晶が形成されやすい | 高い |
| 🔴 1.041以上 | 非常に濃縮されている | 非常に高い |
動物病院の尿検査で尿比重が測れます。定期的にチェックして管理していきましょう。
尿比重を下げるための具体的な工夫
| 工夫 | 目安・ポイント |
|---|---|
| ウェットフードの割合を増やす | ウェットフードの水分含有量は約70〜80%。ドライのみの子は飲水量が圧倒的に少ない傾向がある。理想は食事の50%以上をウェットに |
| 1日の飲水量の目安を知る | 体重1kgあたり約54mlが目安。ウェットフードの水分も含む |
| 噴水式給水器を使う | 流れる水を好む猫が多い。循環フィルター付きで常に新鮮な状態を保つ |
| 水皿を動線上に複数置く | 寝床・トイレ周辺・よく過ごす部屋など3か所以上に分散。「ついでに飲む」習慣をつくる |
| 冬はぬるま湯(35〜38℃)にする | 冬場は飲水量が減り尿石リスクが上がる。人肌程度のぬるさにすると飲みやすくなる猫が多い |
| ドライフードに少量の水をかける | 食事から水分を補う手軽な方法。ふやかしすぎると食感が変わり拒否する子もいるため少量から試す |
尿濃縮が強く続く場合は、腎機能評価も含めた定期検査が推奨されます。尿石の管理と並行して、腎機能の確認もご相談ください。
適切な食事管理
- 尿石症予防用フードの使用
- 総合栄養食を基本とする(手作り食はミネラルバランスが崩れやすい)
- おやつの与えすぎに注意
「療法食以外の食べ物」への警告
療法食を食べていても、ご家族が「かつお節」や「市販のおやつ(ミネラル分が高いもの)」を少し与えるだけで、尿のpHが変動し、石が再発してしまうことがあります。
そのような場合には療法食の効果を安定させるために、療法食以外の食べ物をできるだけ控えることが重要です。
食事管理を徹底することで、再発リスクを大きく下げることができます。
療法食+αのケア:尿石症に使えるサプリメント
療法食は尿石管理の基本ですが、体質・環境・ストレスなど複数の要因が絡む尿石症には、サプリメントや環境ケアを組み合わせることでより効果的な予防が期待できます。

飼い主
食事を変えた以外に、できることはありますか?
Dr.Nyan
石の種類や体質によって向き不向きがありますが、いくつかサポートになる選択肢があります。
尿の健康をサポートする成分
| 成分・製品 | 期待される効果 | 注意点 |
|---|---|---|
| クランベリーエキス | 細菌が膀胱壁に付着するのを抑制。感染が尿石の引き金になるケースの予防に役立つ。GAG層の保護効果も期待される | シュウ酸カルシウム結石の猫には尿をやや酸性化させるため、石の種類を確認してから使用する |
| N-アセチルグルコサミン(NAG),コンドロイチン | 膀胱粘膜(GAG層)を保護し、ミネラルや細菌が直接壁に触れるのを防ぐ | 甲殻類由来製品が多い。アレルギーが疑われる場合は原料を確認 |
| DL-メチオニン | 尿をやや酸性に傾けることでストルバイト結石の溶解・再発防止を補助 | シュウ酸カルシウム結石には禁忌。必ず石の種類を確認してから使用。過剰投与は腎障害のリスクあり |
ストレス性の尿石を防ぐ:フェロモン製剤
猫の尿石症には、ストレスが引き金となる特発性膀胱炎(FIC)が深く関わっています。膀胱炎による炎症がミネラルの結晶化を促すことがあるため、ストレスそのものを減らすアプローチも尿石予防につながります。
| 製品 | 特徴 | 使い方 |
|---|---|---|
| フェリウェイ | 猫が顔をこすりつけるときに分泌するフェロモンを模倣。安心感を高め、不安・緊張による膀胱炎発症を抑制 | 拡散器(コンセント式)をよく過ごす部屋に設置。引っ越し・来客・多頭飼育などに有効 |
| ジルケイン | α-カゾゼピン配合。慢性的な緊張・不安を和らげ、ストレス性膀胱炎のサイクルを断つ | 経口投与(カプセル)。毎日の継続投与でストレスを下げる |
「フェリウェイとジルケインの組み合わせは、多頭飼育や環境変化が多い猫に特におすすめしています。尿石の再発が多い子は、ストレス管理も同時に見直してみてください。」
サプリメントは結石の「種類」によって使えるものと避けるべきものがあります。特にクランベリーやメチオニンはシュウ酸カルシウム結石の猫には不向きな場合があります。必ず結石の種類を確認してから使用してください。
再発防止における「膀胱粘膜」の重要性
尿石症の再発防止として「療法食」「水をたくさん飲む」「ストレスを減らす」の3つがよく挙げられます。それぞれ別々の対策に見えますが、実はすべて膀胱粘膜(GAG層)の保護という一点でつながっています。
飼い主
食事もストレスも関係するって、なんでそんなにいろんなことをしないといけないんでしょう?
Dr.Nyan
それぞれGAG層という”膀胱のバリアに影響しているからです。食事・飲水・ストレスのどれかが崩れると、このバリアが薄くなって再発しやすくなるんです。
結石による刺激で傷ついた膀胱の壁を保護することが、痛みの緩和と再発防止(石が付着しにくい環境作り)に役立ちます。
3つのアプローチがGAG層に与える影響
| アプローチ | GAG層への影響 | 崩れると何が起きるか |
|---|---|---|
| 療法食・低ミネラル食 | 尿中のミネラル濃度を下げ、GAG層への物理的な刺激を減らす | ミネラルが高濃度のままGAG層に当たり続け、バリアが消耗・損傷する |
| 飲水量を増やす(尿を薄める) | 尿中の刺激物質を希釈し、GAG層に触れる濃度そのものを下げる | 濃縮尿がGAG層を継続的に刺激し、炎症→バリア破壊のサイクルが起きやすくなる |
| ストレスを減らす | ストレスホルモン(コルチゾール)によるGAG層の菲薄化を防ぐ | GAG層が薄くなり、わずかな刺激でも粘膜が直接傷つき炎症が起きやすくなる |
| NAG・コンドロイチン補充 | 食事・飲水・ストレスケアで防ぎきれなかった部分のGAG層を材料から直接補修する | バリアの修復が追いつかず、慢性的な刺激→炎症→再結晶化のサイクルが続く |
再発を防ぐ「4層の壁」のイメージ
尿石の再発防止は、1つの対策だけでは不完全です。以下の4層を重ねることで、バリアとしての信頼性が高まります。
| 層 | 役割 | 具体的な手段 |
|---|---|---|
| 第1層 | 結晶の原料を減らす | 療法食・低ミネラル食 |
| 第2層 | 残った結晶を薄める・流す | 飲水量を増やす・尿比重1.030以下を目標に |
| 第3層 | GAG層が薄くなるのを防ぐ | ストレスケア(フェリウェイ・Zylkene) |
| 第4層 | 薄くなったGAG層を補修する | NAG・コンドロイチンサプリメント |
療法食だけ、水だけ、では防ぎきれない再発が起きることがあります。4つの層を意識したケアが、最も物理的・科学的な再発防止につながります。
NAGやコンドロイチンは「結石の種類を問わず使いやすい」成分ですが、すでに腎機能が低下している猫では慎重な投与が必要な場合があります。サプリメントを新たに始める前は、必ずご相談ください。
トイレ管理・排尿チェック

- 毎日の排尿を確認(量・回数・色)
- トイレは清潔に保つ(猫数+1個が目安)
- おしっこが少ない・色がおかしい場合は早めに受診
Dr.Nyan
毎日のトイレチェックが命を守ります。「おしっこが出ているかどうか」を毎日確認する習慣をつけてください。
発症しやすい猫の特徴
- 去勢済みのオス猫(尿道が細く閉塞しやすい)
- ドライフードのみを食べている猫
- 肥満・運動不足の猫
- 水をあまり飲まない猫
- 4〜7歳の中年齢の猫
こんな症状があれば早めに受診を
| 症状 | 受診の目安 |
|---|---|
| 何度もトイレに行く・少量しか出ない | ⚠️ 早めに受診 |
| 血尿(ピンク〜赤色の尿) | ⚠️ 早めに受診 |
| 排尿時に鳴く・痛がる | ⚠️ 急いで受診 |
| トイレでいきんでいるが出ない | ⚠️ 直ちに受診 |
| 全くおしっこが出ていない(12時間以上) | ⚠️ 直ちに受診(緊急) |
| ぐったりしている・嘔吐している | ⚠️ 直ちに受診(緊急) |
リスク先生
オシッコが出ているかどうかを毎日確認することが命を守ります
よくある質問
血尿が1回だけでも受診が必要ですか?
はい。1回でも血尿が見られた場合は尿石症・膀胱炎の可能性があります。再発・悪化する前に早めに受診してください。
おしっこが出ないのか便秘なのかわかりません
判断が難しい場合はすぐに受診してください。尿道閉塞の場合は数時間単位で命に関わります。
食事療法でどのくらいで結石が溶けますか?
ストルバイト結石の場合、処方食を厳守すると2〜4週間で溶解することが多いです。治療中は必ず定期的な尿検査で確認します。
再発しますか?
再発リスクがあります。予防食の継続・水分摂取の増加・定期的な尿検査を続けることで再発リスクを大幅に下げることができます。
猫砂の色で血尿がわかりますか?
はい。トイレシート・白い猫砂を使うと色の変化に気づきやすくなります。ピンク〜赤い色が見られたら血尿の可能性があります。
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まとめ
「何度もトイレに行くのにおしっこが出ない」「血尿が出た」——これらは尿石症・尿道閉塞のサインです。特におしっこが全く出ない状態は緊急事態です。迷わずすぐに受診してください。
予防は毎日の水分摂取・適切な食事管理・トイレチェックの積み重ねです。去勢済みのオス猫は特に意識的なケアが必要です。