柴犬の治らない下痢、お腹の病気じゃなかった?原因は副腎腫瘍だった話

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犬の治らない下痢、腸の病気じゃなかった?原因は副腎腫瘍だった話【蒼太探偵シリーズ】

犬の治らない下痢の原因は?

探偵蒼太シリーズは、犬や猫の気になる症状を、蒼太といっしょに“なぜだろう?”と読み解くシリーズです。下痢、食欲低下、歩き方の変化など、一見よくある症状の裏に、思わぬ病気が隠れていることもあります。
専門的な内容も、飼い主さんにわかりやすく、やさしくお伝えしていきます。

犬の下痢がなかなか治らない場合、原因は腸だけでなく「副腎腫瘍などの全身の病気」が隠れていることがあります。

目次

犬の下痢がなかなか治らない…その原因、お腹だけとは限りません

犬の下痢がなかなか治らない。
そんなとき、多くの方は「お腹の病気かな」と考えると思います。
もちろん、食事、腸炎、寄生虫、フードが合わないことなど、下痢の原因として消化器のトラブルはとても重要です。

長引く下痢は「消化器以外の病気」を疑うサインです。

今回の探偵蒼太シリーズは、治らない下痢の背景に副腎腫瘍があった柴犬の症例です。
しかも、治療後には下痢だけでなく、毛艶や元気まで改善しました。

下痢という一見よくある症状の裏に、どんな病気が隠れていることがあるのか。
蒼太といっしょに見ていきましょう。

蒼太の観察① 下痢だけではありませんでした

ある日、蒼太は先生にたずねました。

蒼太

下痢がずっと治らないなら、やっぱりお腹の病気なんでしょ?

おいどん先生

そう考えるのは自然だよね。
でも、下痢は腸そのものの病気だけで起こるとは限らないんだよ。

今回の柴犬さんは、下痢が続いていただけではありませんでした。
毛艶が悪くなり、元気も食欲も落ちていたのです。

ここがとても大切なポイントです。

便だけを見ると「胃腸の病気かな」と思いやすいのですが、

  • 下痢が長引く
  • 元気がない
  • 食欲が落ちている
  • 毛並みや毛艶が落ちる
  • 全体的にしんどそう

こうした変化がそろっているときは、お腹だけでなく全身の病気も考える必要があります。

犬は言葉で「なんとなくつらい」とは言えません。
だからこそ、便だけではなく、被毛や表情、活気まで含めて見ることが大切です。

下痢の原因が副腎腫瘍?どうしてそんなことが起こるの?

蒼太

えっ、下痢なのに、お腹じゃない病気が原因のことがあるの?

おいどん先生

あるんだ。
今回見つかったのは副腎腫瘍だったんだよ!

副腎は小さな臓器ですが、体のバランスを整えるホルモンに深く関わっています。
そのため、副腎に腫瘍ができると、その場所だけの問題では終わらず、全身状態に影響が出ることがあります。

たとえば、

  • ホルモンバランスの乱れ
  • 代謝の崩れ
  • 消化吸収への影響
  • 慢性的な不調

といった変化が起こり、その結果として下痢が長引くことがあります。

さらに、全身状態が崩れると、

  • 毛艶が悪くなる
  • 活気がなくなる
  • 栄養状態が落ちる

といった変化も出やすくなります。

つまりこの症例では、下痢だけを別に考えるのではなく、副腎腫瘍を背景にした全身病のサインとして下痢が出ていた可能性が高いのです。

このように副腎ホルモンの異常は、腸の運動や吸収にも影響するため、結果として慢性的な下痢として現れることがあります。

検査を進めて見えてきた本当の原因

蒼太

下痢が治らないと、つい“まだ腸に原因があるはずって思ってしまいそう」

おいどん先生

そこが落とし穴なんだ。長引く症状ほど、思い込みを外して見ていくことが大切なんだよ

この症例では検査を進めた結果、副腎腫瘍が見つかりました。

ここで初めて、

  • 治らない下痢
  • 毛艶の低下
  • 元気の低下
  • 食欲の低下

という、一見ばらばらに見える症状がひとつにつながりました。

つまりこの犬さんでは、下痢だけが単独で起きていたのではなく、副腎腫瘍による全身状態の乱れが、便や被毛、元気にまとめて現れていたと考えられます。

パラディアを始めたら、下痢だけでなく毛艶も元気もよくなった

その後、この犬さんはパラディア(一般名:トセラニブ)による治療を開始しました。

すると、

・下痢が改善した
・毛艶が改善した
・元気が出てきた
・食欲も出てきた

という変化が見られました。

これはとても大切なポイントです。
なぜなら、便だけが一時的によくなったのではなく、全身状態そのものが上向いたと考えられるからです。

蒼太

ということは、やっぱり下痢の原因は副腎腫瘍とつながっていたんだね

おいどん先生

その可能性は高いね。パラディアで腫瘍の活動性が抑えられたことで、体全体への悪い影響が軽くなり、下痢だけでなく毛艶や元気まで改善したと考えられるんだ

この症例は、
「下痢が治った症例というより、下痢が全身病のサインだった症例」として見るほうが本質に近いでしょう。

パラディアは有力な治療薬ですが、慎重な管理が欠かせません

蒼太

そんなに効くなら、とてもいい薬なんだね

おいどん先生

そう、とても優れた分子標的薬なんだ。
でもそのぶん、全身のさまざまな臓器に影響を与える可能性がある“劇薬”でもある。だから、効いているかどうかだけでなく、安全に続けられているかを確認することが大切なんだよ

パラディアは非常に優れた治療薬ですが、長期投与では副作用の早期発見が継続の鍵になります。
見た目に元気になっていても、内臓や血液、尿、血圧に変化が出ていないかを、定期的に確認しながら使う必要があります。

適切に管理すれば非常に有効な薬ですが、定期的な検査とセットで使うことが前提となります。

パラディア治療中に定期的に見ておきたい検査項目

パラディアを安全に続けるためには、最低限、次のような項目を定期的に見ていくことが重要です。
これは早期に副作用を見つけることで、安全に治療を続けるためです。

血液化学検査(犬 パラディア 副作用チェック)

パラディアは肝臓や腎臓に負担をかけることがあります。
そのため、腎数値(CRE、BUN、SDMA)、肝数値(ALT、ALP)を確認します。
また、アルブミン(ALB)も重要です。
これは、尿へのタンパク漏出とも関係し、体の中のタンパクが失われていないかを見る大切な指標です。

副作用は初期には症状が出にくいため、定期的なチェックが重要になります。
パラディアは適切に管理すれば、生活の質を大きく改善できる治療です。

血球計算(CBC)

パラディアでは、血液を作る働きが落ちる骨髄抑制が起こることがあります。

そのため、
白血球数
赤血球数
ヘモグロビン
血小板数

を確認し、免疫低下、貧血、出血傾向が出ていないかを見ていきます。

尿検査(UPCを含む)

特に注意したいのが蛋白尿です。
パラディアは腎臓の糸球体に影響し、尿にタンパクが漏れやすくなることがあります。
試験紙だけでは拾いきれないこともあるため、必要に応じてUPC(尿蛋白クレアチニン比)を測定し、微量な変化も見逃さないことが大切です。

血圧測定

パラディアの副作用として、高血圧が認められることがあります。
高血圧は腎臓、心臓、目に負担をかけるため、診察時の血圧測定は基本的な管理項目です。

超音波検査

症状だけでなく、副腎腫瘍そのものがどう変化しているかを見る必要があります。
腫瘍の大きさや血管への浸潤の有無、周囲との関係を確認しながら治療方針を考えていきます。

検査はどのくらいの頻度で必要?

パラディア治療中は、体調が安定していても定期チェックが大切です。

目安としては、

  • 身体検査や問診は毎月
  • 血圧測定は毎月~隔月
  • 血液検査や尿検査は1~2か月ごと
  • 超音波検査は3か月ごと

をひとつの基準にしながら、その子の状態に合わせて調整していきます。

大切なのは、
「元気だから検査しなくていい」ではなく、「元気に続けるために検査する」という考え方です。

蒼太のまとめ|治らない下痢は“腸だけ”を見ていては見つからないことがあります

蒼太

下痢って聞くと、お腹の病気だと思いがちだけど、体の別の場所の病気が隠れていることもあるんだね。しかも、毛艶とか元気とか、そういう全体の変化も大事なヒントなんだ

おいどん先生

その通り。長引く下痢では、便だけを見て終わりにせず、体全体を見て考えることがとても大切なんだよ

今回の症例は、治らない下痢の背景に副腎腫瘍があり、パラディア治療によって下痢だけでなく毛艶や元気まで改善したという、とても示唆に富むケースでした。

そして同時に、パラディアは有効な薬である一方、安全に続けるには丁寧なモニタリングが欠かせない薬でもあります。

長引く下痢があるときは、「お腹の病気かな」で止まらず、体全体のサインかもしれないという視点を持つことが、本当の原因に近づく大切な一歩になります。

「様子を見ていい下痢」と「原因を探すべき下痢」は違います。迷った時は早めにご相談ください。

飼い主さんへ

愛犬の下痢がなかなか治らないと、とても心配になります。

けれど、長引く下痢は単なる腸のトラブルではなく、別の病気のサインであることもあります。

下痢が続く
毛艶が落ちた
なんとなく元気がない
以前より活気がない

こうした変化が重なっているときは、早めの相談が大切です。
症状だけでなく、体全体を見ていくことで見えてくる病気があります。

院長メモ

パラディア使用時は、症状改善だけでなく安全性の確認がとても重要です。
特に副腎腫瘍症例では、身体検査、血液検査、尿検査、血圧測定、超音波検査を組み合わせながら、効果と副作用の両方を丁寧に追うことが継続治療の鍵になります。

FAQ

犬の下痢が治らない原因には何がありますか?

食事や腸炎、寄生虫などの消化器疾患だけでなく、内分泌疾患や腫瘍など、全身の病気が背景にあることもあります。特に、毛艶の低下や元気消失が一緒にある場合は、お腹以外の原因も考えることが大切です。

副腎腫瘍で犬が下痢をすることはありますか?

あります。副腎はホルモンに関わる臓器のため、腫瘍によってホルモンバランスや全身状態が崩れると、消化器症状として下痢が出ることがあります。

パラディアを飲み始めて下痢や元気が改善することはありますか?

原因となっている腫瘍の活動性が抑えられれば、下痢だけでなく毛艶や活動性まで改善することがあります。ただし、効果だけでなく副作用の確認も重要です。

パラディア治療中に必要な検査は何ですか?

血液検査、尿検査、UPC、血圧測定、超音波検査などが重要です。特に腎機能、肝機能、蛋白尿、高血圧の有無は定期的に確認したい項目です。

パラディア治療中の検査頻度はどれくらいですか?

目安として、身体検査や問診は毎月、血液検査や尿検査は1~2か月ごと、血圧測定は毎月~隔月、超音波検査は3か月ごとが一般的です。実際には体調や検査結果によって調整します。

犬の下痢が続いたらどのタイミングで病院に行くべきですか?

3日以上続く場合や、元気・食欲の低下、体重減少、血便などがある場合は早めの受診が必要です

探偵蒼太シリーズ

このコラムの登場人物のイラスト(おいどん先生、蒼太、結衣、リスク先生)

犬や猫の「吐く・下痢・食べない・元気がない」など様々な症状から原因、受診の目安など、病気を探る探偵蒼太シリーズです。
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