若山動物病院ブログ
犬が吐いた?原因と危険な症状と受診の目安【蒼太探偵シリーズ】

帰宅後のリビング。
中学2年の蒼太は、ソファの下でうずくまる愛犬シロに気づいた。
いつもなら玄関まで飛び出してくるのに、今日はちがう。

蒼太
シロ? どうした?
次の瞬間だった。
「ケッケッ……グゥェ〜」
シロは苦しそうに首を伸ばし、黄色い泡のまじった液体を床に吐き出した。

蒼太
シロ!!?
蒼太は全速力でノートを取り出し、震える手でこう書き込んだ。
『シロ嘔吐事件』――発生。
犬が突然吐いたとき、頭が真っ白になった経験はありませんか?
「大丈夫?」
「すぐ病院に行くべき?』
「何か食べた?」
その不安は、よくわかります。
でも、まず深呼吸してください。
犬の嘔吐には「様子を見ていいもの」と「今すぐ受診すべきもの」があります。
この記事では、獣医師のおいどん先生と一緒に、その見分け方をわかりやすく解説します。
犬が吐いたら、まずこの3つを確認する

おいどん先生
わんちゃんが吐いたとき、飼い主さんがパニックになるのは当然です。
でも、落ち着いてこの3つを確認できれば、動物病院でもとてもスムーズに診察できますよ!
吐いたあとに確認してほしいのは、次の3点です。
何を吐いたか(内容物)
黄色い液体・白い泡・未消化のごはん・血液など
何回吐いたか(回数)
1回だけか、何度も繰り返しているか
吐いたあとの様子(体調)
元気があるか、食欲はあるか、下痢はしていないか
この3点をメモしておくだけで、受診の判断がぐっと楽になります。
【事件1】黄色い液体を吐いた

探偵蒼太
先生、シロが吐いたのは黄色い液体でした。食べたものじゃなくて

おいどん先生
その黄色い液体、正体は胆汁(たんじゅう)という消化液なんです。
空腹が長く続くと、胃の中に何もないのに胆汁が逆流して、吐き気を引き起こすことがあります。
これを胆汁性嘔吐症候群といって、犬にはとてもよく見られるんですよ
胆汁嘔吐が起きやすい状況
- 夜から朝にかけて、空腹時間が長くなったとき
- 食事の時間が不規則なとき
- 胃酸が分泌されすぎているとき

おいどん先生
元気で食欲もあるなら、すぐに深刻に考える必要はありません。
ただ、何日も繰り返すようなら胃炎のサインのこともあるので、一度診てもらうと安心ですね。
【事件2】泡を吐いた

探偵蒼太
泡みたいなのも混ざってたんですが・・・

おいどん先生
白い泡は、胃液や唾液が空気と混ざったものです。
空腹・ストレス・軽い消化不良のときに出ることが多いですね。
見た目はびっくりしますが、1回だけでその後ケロッとしているなら、まずは落ち着いて様子を見ましょう。

探偵蒼太
じゃあシロは大丈夫ってこと?・

おいどん先生
そうとは言い切れないんです。
泡であっても、何度も繰り返す・元気がない・下痢もしているという場合は注意が必要です。
嘔吐は”症状のひとつ”であって、その裏に何があるかが大切ですからね。
【事件3】これは危険!すぐ病院に行くべき嘔吐のサイン

探偵蒼太
先生、どんな吐き方だったらヤバいんですか?

おいどん先生
正直に教えますね。
次のどれかに当てはまるときは、様子を見ずにすぐ受診してください。
緊急受診チェックリスト
| チェック | 症状 |
| □ | 何度も吐く(1日3回以上) |
| □ | 血が混ざっている(赤・黒・コーヒー色) |
| □ | 元気がなく、ぐったりしている |
| □ | 食欲がまったくない |
| □ | 下痢も一緒に起きている |
| □ | お腹を触ると嫌がる・痛そうにする |
| □ | 子犬・老犬・持病がある |
【事件4】犬が嘔吐する、よくある原因4つ

探偵蒼太
結局、シロはなんで吐いたんでしょう?

おいどん先生
嘔吐の原因はさまざまです。よくある順に整理しますね
空腹・食べすぎ・急な食事変更
最も多い原因です。 おやつの食べすぎ、人間の食べ物、フードを急に切り替えた……こういった胃への刺激が嘔吐につながります。

おいどん先生
フードを変えるときは、1~2週間かけて少しずつ混ぜていくのが理想です。犬の胃腸は人間より繊細なので、急な変化に弱いんですよ
胃腸炎
細菌・ウイルス・ストレスなどが原因で胃腸に炎症が起きた状態です。 嘔吐に加え、下痢・食欲低下・元気消失が重なることが多いです。

おいどん先生
胃腸炎は軽症なら1~2日で回復することもありますが、脱水が進むと一気に悪化します。特に小型犬や子犬は体の水分量が少ないので、嘔吐が続くときは早めに点滴などの処置が必要なこともあります。
異物誤食
おもちゃ・靴下・ビニール袋・骨のかけら…… 犬は飼い主が思う以上に、いろんなものを飲み込みます。
異物が胃の中にある間は嘔吐で出てくることもありますが、腸まで流れてしまうと閉塞(腸が詰まる)を起こす危険があります。

おいどん先生
何か食べたかも』と思ったら、絶対に様子を見ないでください。レントゲンやエコーで確認しましょう。
内臓の病気
膵炎・肝臓病・腎臓病・腫瘍など、消化管以外の病気でも嘔吐は起きます。
特に膵炎は犬に多い病気で、高脂肪の食事が引き金になることがあります。
脂っこいものを食べた後に激しく嘔吐する場合は要注意です。
高齢犬では腫瘍の可能性も頭に置いておく必要があります」
受診の目安――信号機で考えよう

探偵蒼太
わかりました。でも、見分けるのってむずかしくないですか?

おいどん先生
信号の色で考えるとわかりやすいですよ。
迷ったときは、この表を見てくださいね!
🟦青(様子を見てOK)
- 1回だけ吐いた
- 吐いたあと元気がある
- 食欲がある
- その後吐いていない
空腹や軽い胃の刺激の可能性が高いです。
半日ほど食事を控えて、水を少量ずつ与えながら様子を見ましょう。
🟨黄(相談)
- 1日に2~3回吐いた
- 食欲が少し落ちている
- 元気がやや少ない
胃腸炎の可能性があります。
悪化する前に一度相談しましょう。
🟥赤(受診)
- 何度も繰り返し吐く
- 血が混ざっている
- ぐったりしている
- 下痢も続いている
- 子犬・老犬・持病あり

おいどん先生
迷ったら赤だと思って動いてください。早く来てくれて損したということは、獣医師の立場から言って一度もありません。心配ならすぐ来てほしい——それが本音です
吐いたあと、飼い主にできること

探偵蒼太
でできることって何かありますか?

おいどん先生
軽い嘔吐のときは、こんな対応をしてみてください
やること
- 2~6時間ほど食事を控える(胃を休ませる)
- 水は一度にたくさんでなく、少量ずつ与える
- 症状の変化をこまめに観察する
✕やってはいけないこと
- 人間用の薬を絶対に与えない(犬に有害なものが多い)
- 無理に吐かせようとしない(食道や気道を傷つける危険がある)
- 「大丈夫だろう」と放置しすぎない

おいどん先生
く聞かれるんですが、人間用の正露丸や胃薬は犬には使えません。特にイブプロフェンなど一部の成分は犬にとって非常に危険です。必ず動物病院で処方されたものだけを使ってくださいね
よくある質問
Q. 1回だけ吐いて、その後ケロッとしています。病院に行くべき?
元気と食欲があれば、まず様子見でOKです。
ただし、半日経ってもぐったりしているなら迷わず来てください。
Q. 黄色い液体を毎朝吐くのですが……
毎朝続くなら、空腹時間が長すぎる可能性があります。
寝る前に少量のフードを与えることで改善するケースがよくあります。
それでも続くなら、慢性胃炎の可能性もあるので一度診させてください。
Q. 吐いた日は散歩してもいいですか?
その日は安静が基本です。
散歩のストレスや運動が、胃腸への負担をさらに増やすことがあります。
元気が戻ってから再開しましょう」
Q. 食欲はあるのに吐きます。これって大丈夫?
食欲があるのは良いサインですが、食べるたびに吐く場合は、胃腸炎や食物アレルギー、あるいは食べる速度が早すぎることが原因のこともあります。
吐いた内容と回数をメモして相談してくれると助かります」
まとめ

探偵蒼太
先生、今日はたくさん教えてもらいました! シロのこと、もっとちゃんと見てあげます

おいどん先生
蒼太くん、こんなにきちんとメモを取って、シロのことが大好きなんですね。犬は言葉で体調を教えてくれません。だからこそ、飼い主さんの観察眼がいちばんの医療です。これからも、シロをよろしくお願いしますね
犬の嘔吐は、空腹や食べすぎなど軽い原因で起きることもあれば、内臓の病気や異物誤食など深刻なサインであることもあります。
大切なのは、あわてずこの3つを確認すること。
- 何を吐いたか
- 何回吐いたか
- 吐いたあとの元気・食欲
「いつもとちがう」と感じたときは、迷わず動物病院へ。早めの一歩が、シロを守ります。
編集後記
あの日のシロは、どうやら朝からごはんを食べておらず、空腹時間が長くなったことによる胆汁嘔吐だったようだ。
おいどん先生から「夜寝る前に少し食べさせてみて」とアドバイスをもらい、翌朝からシロはぴたりと吐かなくなった。
事件は解決。 ノートの最後に、蒼太はこう書き加えた。
「シロが吐くのには、ちゃんと理由があった。次は、もっと早く気づいてあげる」
探偵蒼太シリーズ

犬や猫の「吐く・下痢・食べない・元気がない」など様々な症状から原因、受診の目安など、病気を探る蒼太探偵シリーズです。
中学2年生の「蒼太」と女性獣医師の「おいどん先生」、蒼太の同級生の「結衣」が、受診の目安や危険なサインをわかりやすく解説します。
【犬編】
・犬の下痢は大丈夫?原因・危険な症状(血便・水様便)と受診の目安
・犬が食べない?原因と危険な症状・受診の目安
・犬が吐いた?原因と危険な症状と受診の目安
・犬が元気がない?原因・危険な症状と受診の目安
【猫編】
・猫がごはんを食べたいのに食べない原因は?口内炎の症状と受診の目安
New・春になると、なんだか不調?猫の免疫が乱れる原因と守る生活習慣
次回UP・猫が食後すぐ吐く?それは吐出かも|原因・受診の目安・嘔吐との違い
【犬猫編】
New・犬と猫の鳴き方はなぜ違う?猫は長く犬は短い理由と声が変わる病気
【今後の予定】
・猫がジャンプしない?原因と注意すべき症状・受診の目安
・犬と猫はどうして座り方が違うの?
・犬と猫の鳴き方はなぜ違う?猫は長く犬は短い理由と声が変わる病気
・犬の歩き方がおかしい?前足の原因と危険な症状(びっこ・足をつかない)と受診の目安
・犬の歩き方がおかしい?後ろ足の原因と危険な症状(ふらつき・足をつかない)と受診の目安
・犬の歩き方がおかしい?前足・後ろ足の原因と危険な症状(びっこ・ふらつき)と受診の目安
・犬の治らない下痢、お腹の病気じゃなかった?原因は副腎腫瘍だった話