Dr.Nyanのすこやかコラム
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犬の慢性肝炎|元気がない・白目が黄色い・食欲低下の原因と治療・受診の目安

犬の慢性肝炎は、症状がほとんど出ないまま、じわじわと肝臓がダメージを受け続ける病気です。「元気がない」「白目が黄色い」「水を飲む量が増えた」などのサインが出てきた頃には、すでにかなり進行しているケースも少なくありません。放っておくと、肝硬変(肝臓が固く小さくなること)や、脳に毒素がまわる肝性脳症という危険な状態になることもあります。
症状が出たときには、肝臓がすでにギリギリの状態で頑張っていることが多い病気です。「もっと早く気づいてあげれば」と自分を責めないでください。今気づいたことが最大のチャンスです。
獣医師歴50年以上の若山正之が、症状・原因・治療・予防・受診の目安をわかりやすく解説します。

飼い主
先生!ワンちゃんの白目が黄色くなっているんです。
食欲も落ちてきて、元気もなくなってきました…

眼の白い部分が黄色くなっているのが分かります。
Dr.Nyan
その症状は、慢性肝炎で見られる典型的なサインかもしれません。
血液検査で肝臓の状態を確認してみましょう!
リスク先生
血液検査の結果、肝臓の酵素値が正常の10倍以上に上昇しています!
これは慢性肝炎の典型的なパターンです。早急に治療を開始しましょう。

肝臓の検査で数値が高くなってしまっています。

飼い主
えっ!お酒も飲まないのに肝炎なんですか?
どうして肝臓の数値がこんなに上がってしまったんでしょう…
慢性肝炎は、長い時間をかけて、ゆっくりと肝臓が炎症を起こし続ける病気です。急に悪化するのではなく、何ヶ月・何年もかけて少しずつ進んでいきます。慢性肝炎の状態が長く続くと、「肝硬変(肝臓が線維化してかたくなること)」や「肝性脳症(肝臓が解毒できなくなったアンモニアが脳に影響し、ふらつきや痙攣を起こすこと)」といった、より深刻な病気に進んでしまうことがあります。
それでは様々な症状を引き起こす「犬の慢性肝炎」の原因や対処法などについてDr.Nyanが説明しますね。
慢性肝炎の症状

飼い主
先生、慢性肝炎になるとどんな症状が出てくるんですか?
うちの子に気をつけるべきサインを教えてください!
Dr.Nyan
肝臓の働きを知っておくと、肝炎の症状も分かりやすいよ!
まずは肝臓の位置と働きについて説明しますね。
肝臓の位置と働きについて
肝臓は体の真ん中付近に位置する大きな臓器です。

赤い矢印の先にあるのが『肝臓』です。

肝臓とその周囲の臓器との位置関係です
肝臓には、以下のような3つの大切な働きがあります。
1 胆汁(たんじゅう)を作る
脂肪を消化するために重要な働きをする『胆汁』を生成しています。
2 栄養素を貯えたり変化させたりする
多くの食べ物は、そのままでは体には吸収されません。
そのため栄養素として体が吸収できるように、それぞれの組織に適した形に肝臓が作り替えています。例えは、ぶどう糖をグリコーゲンに変えて肝臓に貯え、必要な時にエネルギーとして使うために体内へ送り出します。
3 毒を中和する
肝臓は体の中にある毒素を分解して、無毒化しています。例えばタンパク質が分解されるときに出る、有毒なアンモニアを無毒化しています。
Dr.Nyan
慢性肝炎になっても何の症状も見られないこともあるんだけど・・
でもどんな症状がでたら要注意なのか一緒に確認していきましょう!
【初期症状】目立った症状はない
肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれます。これは、肝臓全体の7〜8割がダメージを受けるまで、残った元気な細胞が代わりに働き続けるという、驚くべき「予備の力」を持っているからです。この「我慢強さ」のおかげで、慢性肝炎は初期にほとんど症状が出ません。逆に言えば、「なんとなく元気がない」「食欲がない」といったサインが出てきた頃には、肝臓はすでにかなりのダメージを受けているサインだと思ってください。だからこそ、「症状が出る前」の定期的な血液検査がとても大切なのです。
初期には、目立った症状がほとんどありません。症状がまったくないのに、肝臓の炎症がじわじわ進んでいるケースもあります。この段階では「定期的な血液検査(肝臓の数値チェック)」でしか異常を見つけられないことがほとんどです。「うちの子は元気だから大丈夫」という判断が、発見の遅れにつながってしまうことがあります。
場合によっては
- 元気がなくなる
- 食欲が落ち
- よく寝ていて動きたがらない
など、まるで「歳をとったのかな?」という感じに見えることもあります。そのため、シニア犬(高齢犬)が慢性肝炎を起こした場合、老化による変化と勘違いされて発見が遅れてしまうことがあります。
また、こうした軽いサインさえ出ない「完全に無症状」の段階でも、肝臓の炎症は静かに進んでいることがあります。「元気に見えるから問題ない」ではなく、年に1〜2回の血液検査が早期発見の唯一の手がかりになることを覚えておきましょう。

飼い主
歳のせいかな?って思ってしまいそうですね…
Dr.Nyan
そうなんだ。慢性肝炎は老化と見分けがつきにくいのが怖いところなんだよ。
だからシニア期では、症状がなくても定期的な血液検査がとても大切なんだ!
【中期症状】元気がなくなり、食欲がなくなる
進行するにつれ徐々に元気がなくなり食欲も落ちて、体重が減ってしまいます。肝臓の機能が悪いとアルブミンが作られなくなったりし、栄養状態が悪くなってしまいます。
以下のような症状が見られるようになります。
- 元気がない
- 食欲が落ちる
- 体重が減る
- 疲れやすい
- ウンチが軟らかくなる
- 水を飲む量やオシッコの量が増える(多飲多尿)
- 吐き気が出る

飼い主
肝臓の病気なのに、水をたくさん飲むこともあるんですか?
Dr.Nyan
あるよ!肝臓の機能が落ちると、体の代謝バランスが崩れて多飲多尿が起こることがあるんだ。
最近やたら水を飲むという変化も大切なサインなんだよ。
【後期症状】体のむくみや黄疸がみられる
続く炎症により肝臓の細胞が壊れ、肝臓が小さく硬くなる肝硬変を起こします。その結果、体のむくみや腹水、黄疸(おうだん)、出血しやすいなどの症状が見られます。
重症化した場合には以下のような症状が見られるようになります。
- お腹に水が溜まる
- 黄疸になり、歯ぐきや白目が黄色くなる
- 出血が止まりにくい
- 肝硬変を起こす
- 肝性脳症になる
Dr.Nyan
黄疸って肝臓で作られる黄色い色素が、血液の中に増えてしまい現れる症状だよ!最初は眼の白目が黄色くなり、だんだん皮膚も黄色くなっちゃうんだ!
自宅でチェックしやすい場所は①白目(強膜)、②耳の内側(皮膚が薄く色がわかりやすい)、③歯ぐき(口腔粘膜)、④お腹の皮膚の4か所だよ。特に毛の長い犬種は白目や耳の内側で確認するのが一番見やすいんだ。

白眼の部分が黄色くなっています。
リスク先生
黄疸が見える時点で、肝臓の機能低下がかなり進行していることがあります!
「少し黄色いだけ」と思わず、できるだけ早く受診してください。

黄疸になると血清が濃い黄色やオレンジ色になります。

黄疸になるとオシッコが濃い黄色になります。

飼い主
お家でも気づけるサインってあるんですね!
Dr.Nyan
そうなんだ。特に濃い茶色っぽい尿は飼い主さんが最初に気づきやすい変化なんだよ。
ペットシーツの色を毎日見る習慣は、とても大切なんだ。
肝臓で解毒できなくなったアンモニアが脳や体をまわると、痙攣などの神経症状を引き起こしてしまう『肝性脳症』という危険な状態になります。

飼い主
肝臓の病気で、けいれんまで起こるんですか…?
Dr.Nyan
肝臓で解毒できなくなったアンモニアが脳に影響すると、ふらつき・ぼんやり・けいれんなどの神経症状が出ることがあるんだ。
かなり危険な状態だから、すぐに治療が必要になるよ。
すぐに受診すべき症状
- 元気・食欲が明らかに低下
- 黄疸が出ている
- 嘔吐が続く
- お腹が張っている(腹水)
- 痙攣やふらつき(肝性脳症疑い)
リスク先生
黄疸・けいれん・腹水は、かなり進行したサインのことがあります!
『明日まで様子を見る』ではなく、早めの受診をおすすめします。
家庭でできる「観察チェックリスト」
慢性肝炎の早期発見には、日頃からの観察が欠かせません。以下のポイントを週1回程度チェックする習慣をつけましょう。気になる変化があれば、早めに動物病院へご相談ください。
- 【尿の色】濃い紅茶〜茶色のような色(ビリルビン尿)になっていないか確認する。これは黄疸の初期サインで、自宅でも気づける重要なチェック項目です。
- 【歯ぐき・白目の色】歯ぐきや白目が黄色みを帯びていないか(黄疸)、白っぽく青ざめていないか(貧血)を確認する。
- 【食欲・水分摂取量】食欲が落ちていないか、水を飲む量が急に増えていないかチェックする(多飲多尿は肝臓病のサインのひとつ)。
- 【体重】毎月1回、体重を記録しておく。気づかないうちの体重減少は病気の進行のサインになります。
- 【元気・活動量】散歩を嫌がる、いつもより長く寝ている、遊ばなくなったなど、活動量の変化に注意する。
- 【お腹の張り】触れたとき、お腹が丸く膨らんでいないか確認する(腹水のサイン)。
慢性肝炎の原因
Dr.Nyan
慢性肝炎の原因は様々で、銅の蓄積・薬剤・感染・食事などが関係していることがあるよ。
多くの場合は検査しても原因が特定できないことが多いんだ。
ほとんどの慢性肝炎は、いろいろな検査を行っても原因がわかりません。しかし中には原因が特定できるものがあります。
慢性肝炎になる原因として見られるものには、以下のようなものがあります。
肝臓に銅が溜まることによるもの
慢性肝炎の中でも原因を特定しやすいのが、肝臓に銅が溜まることで起こる「銅蓄積性肝炎」です。
この肝炎は、遺伝が関わりがあることがあります。そのため、同じ血縁関係にある犬に発症しやすい傾向があります。
近年、銅蓄積性肝炎への関心が高まっています。注意したいのは食事との関係です。一部のドッグフードには、従来の基準よりも多くの銅(Cu)が含まれている場合があり、銅代謝に問題を抱える犬種では蓄積リスクが高まります。フードの成分表示で銅の含有量を確認することも予防の観点から有用です。また、ごく一部の専門家は水道水の銅含有量(古い銅管からの溶出など)にも注意を促すことがあります。銅蓄積が疑われる場合は、食事内容について必ず担当獣医師と相談してください。
薬や毒によるもの
てんかんの発作を抑える「フェノバルビタール」や、炎症を抑える「ステロイド」などの薬を長期間飲み続けていると、肝臓に負担がかかり、ダメージを受けてしまうことがあります。薬を使い続けている場合は、定期的に血液検査で肝臓の状態を確認することが大切です。
また体に毒性のあるモノの誤食・誤飲により起きた肝臓へのダメージが治らず、慢性肝炎になってしまうことがあります。
感染によるもの
ウイルスや細菌、回虫などの寄生虫が肝臓に大きなダメージを与え、その炎症が治りきらずに長引いてしまうことで慢性肝炎になる場合があります。
食べるものによるもの
人間の食べ物や、脂肪分の多いおやつ・フードを日常的に与えていると、肝臓に少しずつ負担がかかり続け、慢性肝炎につながることがあります。「ちょっとだけ」「たまにだから大丈夫」という積み重ねが、じわじわと肝臓を傷めていくため、気づきにくいのが特徴です。
他の病気によるもの
別の病気が原因で肝炎を引き起こすこともあります。
などから肝臓がダメージを受け、慢性肝炎となることがあります。
慢性肝炎の主な治療法と費用
慢性肝炎では、ダメージを受けた肝臓の細胞が線維という別の組織(かたい「かさぶた」のようなもの)に置き換わってしまうため、治療しても完全に元通りにはなりません。そのため治療の目的は「完治させること」ではなく、「炎症をおさえて、これ以上悪化させないようにしながら、愛犬が穏やかに過ごせる時間をできるだけ長く保つこと」です。数値を見ながら薬や食事を調整し、愛犬と「長く付き合っていく」気持ちで取り組むことが大切です。
肝臓の治療では、「炎症をおさえること」と「肝臓の働きをできるだけ助けること」が中心になります。そのために、主に以下の3つのアプローチをとります。
- 原因と考えられるものを少しでも減らす
- 投薬や対処療法など内科的な治療を行う
- 病気の進行を遅らせる
正確な治療のためには、まず「肝臓がどんな状態か」をしっかり調べる必要があります。触診・血液検査・レントゲン・超音波(エコー)・血液の固まりやすさを調べる検査・組織検査などを組み合わせて診断します。
中でも「肝生検(かんせいけん)」は、慢性肝炎の原因を特定するうえでとても重要な検査です。肝生検とは、肝臓のごく一部を針などで採取して、顕微鏡で細かく調べる方法です。血液検査では「肝臓に炎症があること」はわかっても、「なぜ炎症が起きているのか(銅がたまっているのか、免疫が暴走しているのかなど)」まではわかりません。原因によって使う薬が全く変わるため、肝生検が治療方針を決める鍵になることがあります。
「血液検査の数値が高い=慢性肝炎」とは限りません。ALTやALPといった肝臓の酵素値が上がる原因は慢性肝炎だけではなく、副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群:ホルモンの病気)や甲状腺の病気、骨の病気など、まったく別の原因で数値が上がることもあります。「数値が高い」と言われたら、まず原因を絞り込むためにエコー検査やレントゲン検査も一緒に行うことが大切です。

飼い主
血液検査だけでは、原因までは分からないんですね…
Dr.Nyan
そうなんだ。同じ慢性肝炎でも、銅が原因なのか、免疫異常なのかで治療法が変わるんだよ。
そのために肝生検が必要になることがあるんだ。
原因に直接アプローチする治療
銅がたまっていることや感染症など、原因がはっきりしている場合は、その原因に直接アプローチする治療を行います。
銅が肝臓にたまっている場合
「銅キレート剤」という、肝臓にたまった銅を取り除く薬や、腸での銅の吸収をおさえる「亜鉛(あえん)の薬」を使います。食事も銅の少ないものに切り替えることが大切です。
免疫の異常が原因と考えられる場合
免疫が自分の肝細胞を誤って攻撃していると考えられる場合に、ステロイドや免疫抑制剤を使って、その「過剰反応」をおさえます。
感染症・薬が原因の場合
感染が原因の場合は、その感染症に合わせた治療(抗生物質など)を行います。薬が原因の場合は、その薬の使用をやめるか、量を減らすことを検討します。どうしても薬をやめられない場合は、定期的に肝臓の状態を確認しながら慎重に管理していきます。
薬での治療(内科的治療)
薬を使った治療では、「肝臓の炎症をおさえること」と「肝臓の働きを助けること」が中心になります。
炎症をおさえるためにステロイド(炎症止めの薬)を使うことがあります。ただし、ステロイド自体が長期使用で肝臓に負担をかける場合もあるため、用量や期間は獣医師が慎重に管理します。
吐き気や嘔吐など、お腹の不調が見られる場合は、その症状をやわらげる薬も一緒に使います。肝臓の働きをサポートするために、抗生物質や肝臓保護薬などさまざまな薬が組み合わせて使われることもあります。
肝臓の機能が落ちると、血液中のたんぱく質の一つ「アルブミン」が十分に作られなくなります。アルブミンは血液の中で栄養や水分のバランスを保つ役割を担っており、不足すると体がむくんだり、栄養状態が悪くなったりします。
この場合は「アミノ酸製剤(点滴や内服)」を使って体内のアミノ酸バランスを整えることで、栄養状態を改善し、肝臓の働きをサポートします。
ふらつきや痙攣など、脳への影響(肝性脳症)が現れた場合は、入院での集中的な治療が必要になります。これは肝臓が解毒できなくなったアンモニアという有毒物質が脳にまわることで起こる、緊急性の高い状態です。
食事と生活で進行を遅らせる
食事の管理は、慢性肝炎の進行を遅らせるうえでとても重要です。「療法食(処方食)を使えばOK」というだけでなく、何に気をつけるかを知っておくことが大切です。
銅の少ない食事(低銅食)
銅がたまりやすい体質の犬はもちろん、慢性肝炎全般で「銅の摂取量を抑えた食事」が勧められます。レバーなどの内臓肉や貝類は銅が多いので控えましょう。一部のドッグフードには銅が多く含まれている場合もあるため、フードの成分表示で「銅(Cu)」の含有量を確認することも参考になります。
たんぱく質は「制限しすぎ」に注意
たんぱく質は肝臓を修復するために必要な栄養素です。むやみに減らしてしまうと、回復の妨げになります。ただし、ふらつきや痙攣など「肝性脳症(肝臓がアンモニアを解毒できなくなった状態)」のサインが出た場合には、アンモニアの発生を抑える目的で、たんぱく質を控えめにした食事に切り替えることがあります。この「使い分け」は必ず獣医師と相談しながら行ってください。

飼い主
肝臓病だと、タンパク質は全部ダメなのかと思っていました…
Dr.Nyan
実は制限しすぎも危険なんだ。
肝臓の修復にはタンパク質が必要だから、状態に合わせて調整することが大切なんだよ!
無理のない範囲での運動を続け、ストレスの少ない穏やかな生活環境を整えることも、肝臓の回復を助けます。「激しい運動は避けつつ、体を動かす習慣」を心がけましょう。
治療費

飼い主
気になる慢性肝炎の治療費は幾らくらいでしょう?
症状の違いや使用する薬、治療期間の違いから治療費が変わります。また消化器障害を起こしていたり、症状が重度になっている場合には治療期間も長く治療費もかかってしまいます!
慢性肝炎の予防方法

飼い主
慢性肝炎は一生治療が必要なこともあるため、ならないようにしたいです!
ワクチン接種を行う
犬の肝炎の原因としてよく知られているのが「犬アデノウイルスⅠ型(伝染性犬肝炎)」と「レプトスピラ(細菌感染)」です。これらは混合ワクチンを毎年接種することで、感染を予防できます。年1回の定期接種を忘れずに受けましょう。

定期的に肝臓機能や健康診断を受ける
てんかんの発作を抑える薬「フェノバルビタール」は、長期間飲み続けると肝臓に影響を与えることがあります。このような「長期に飲む薬」を使っている場合は、定期的に血液検査で肝臓の数値を確認することが大切です。
この他にも続けて飲まなくてはならない薬を使用している場合には、肝臓機能に問題が起こっていないか定期的に血液検査をする必要があります。
銅がたまりやすい犬種では、若いうちから定期的な血液検査を受けることをお勧めします。早めに異常が見つかれば、症状が出る前に対処でき、重症化を防ぐことができます。
リスク先生
慢性肝炎は、症状が出てからでは進行しているケースが少なくありません!
特にシニア犬では、年2回の血液検査が早期発見につながります。
慢性肝炎になりやすい犬種
以下の犬種は遺伝的背景により慢性肝炎(特に銅蓄積性肝炎や免疫介在性肝炎)を発症しやすい傾向があります。これらの犬種の飼い主さんは、症状がなくても1〜2歳から定期的な血液検査を受けることが早期発見につながります。なお、犬種に関わらず、どの犬でも慢性肝炎は起こり得ます。
- 遺伝性の慢性肝炎が多い犬種
- ベドリントン・テリア
- ウェスト・ハイランド・ホワイト・テリア
- ダルメシアン
- ラブラドール・レトリバー
- ドーベルマン・ピンシャー
- アメリカンコッカースパニエル
- イングリッシュコッカースパニエル

飼い主
慢性肝炎って、一生付き合う病気になることもあるんですね…
Dr.Nyan
でも早く見つけて管理できれば、長く穏やかに生活できる子もたくさんいるよ!
飼い主さんが早めの変化に気づいてあげることが、とても大切なんだ。
よくある質問
犬の慢性肝炎は治りますか
ダメージを受けた肝臓の細胞は、かたい線維組織(「かさぶた」のようなもの)に置き換わってしまうため、完全に元の状態に戻すことはできません。ただし治療の目標は「完治」ではなく、「炎症をおさえて悪化を防ぎ、愛犬が穏やかに過ごせる時間をできるだけ長く維持すること」です。早期発見・適切な治療・食事管理によって、進行を大きく遅らせられるケースも多くあります。早く見つかるほど、選択肢が広がります。
犬の慢性肝炎はどのくらい生きられますか
進行の程度・原因・治療への反応によって大きく異なります。初期〜中期で見つかった場合、適切な管理を続けることで数年にわたり安定した毎日を送れる子もいます。一方、肝硬変や肝性脳症(脳への影響)まで進んでしまった場合は、予後が厳しくなります。だからこそ、「症状が出る前に」定期健診で見つけることが非常に重要です。
犬の慢性肝炎の初期症状は何ですか
初期はほとんど症状が出ません。「なんとなく元気がない」「食欲が少し落ちた」「よく寝ている」といった、老化とも区別しにくい小さな変化が見られることがあります。症状がない段階でも、定期的な血液検査(肝臓の数値チェック)で発見されることがあります。
犬の慢性肝炎で気をつける食事はありますか
脂肪分の多い食事や人間の食べ物は肝臓に負担をかけるので避けましょう。基本は「良質な動物性たんぱく質・低脂肪・銅の少ない食事」です。重症の場合は、獣医師が処方する「肝臓病用の療法食(処方食)」が必要になることもあります。食事内容の変更は、必ず担当の獣医師に相談してください。
犬の慢性肝炎は予防できますか
完全な予防は難しいですが、ワクチン接種・定期的な血液検査・適切な食事管理によってリスクを減らすことはできます。特に発症しやすい犬種では、若いうちからの定期健診が大切です。
犬の慢性肝炎は他の犬にうつりますか
慢性肝炎そのものは、基本的にほかの犬にうつる病気ではありません。ただし、感染症が原因の場合は、その感染症への対策が必要になることがあります。
どんなときにすぐ受診すべきですか
白目や歯ぐきが黄色い(黄疸)、まったく食欲がない、嘔吐が続く、お腹が丸く膨れている(腹水)、ふらつきや痙攣がある、これらのサインが一つでも見られたら、できるだけ早く受診してください。
まとめ
犬の慢性肝炎は、無症状のまま進行する「沈黙の病」です。血液検査でしか異常が見つからない時期を経て、気づいたときには病気が進行していることも少なくありません。
治療の目標は「完治」ではなく、炎症をコントロールして肝不全への進行をいかに遅らせるかという長期的な視点にあります。確定診断には肝生検が必要な場合もあり、原因(銅蓄積・免疫異常など)に応じた低銅食やタンパク質管理など、食事の内容も治療の大切な柱です。
早期発見・適切な管理によって、進行を大幅に遅らせ、愛犬が長く穏やかな日常を送れるケースも多くあります。今気づいたことが最大のチャンスです。
「最近なんとなく元気がない」「白目が少し黄色いかも」と感じたら、それはとても大切な気づきです。早めにご相談ください。50年以上の臨床経験をもとに、愛犬の状態に合った最善の治療方針をご提案します。
検査結果の数値に一喜一憂しすぎず、目の前の愛犬の表情や食欲を大切にしましょう。数値はあくまで目安。愛犬のいつもと違う「小さな変化」を最初に見つけられるのは、毎日そばにいる飼い主さんだけです。あなたの気づきが、愛犬の未来を守ります。
筆者・若山正之(Dr.Nyan)のプロフィール

本記事は、犬・猫の診療を行う獣医師・若山正之が監修・執筆しています。
1975年より小動物臨床に従事し、現在は若山動物病院院長として地域医療に携わっています。長年の臨床経験に基づき、一般診療から予防医療、シニア医療まで幅広く対応しています。
特に、病気の早期発見・早期対応を重視し、飼い主様にわかりやすい説明と納得いただける診療を心がけています。
また、幹細胞療法や免疫療法などの先進医療にも取り組み、動物の生活の質(QOL)を重視した治療を提供しています。
これまでに一般飼い主様向けのセミナーや講演活動を多数行い、正しい医療知識の普及にも尽力しています。著書に『老犬生活 完全ガイド』『犬と猫の老齢介護エキスパートブック』などがあります。
本記事は最新の獣医療知見と臨床経験をもとに作成していますが、症状や状態によって対応は異なるため、気になる症状がある場合はお早めに動物病院へご相談ください。