猫の口内炎|食べない・よだれ・口臭の原因と治療

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猫の口内炎|食べない・口臭・よだれの原因と治療・受診の目安

口内炎が出来てしまった経験、ありませんか?
ポツンって、一つでも出来たら痛いですよね!
それは猫も同じことだと思いませんか?

実際の診療では、「食べたいのに痛くて食べられない」「急に口臭が強くなった」という相談で来院されるケースが非常に多く見られます。

本記事は実際の症例をもとに、典型的な経過をまとめています。

飼い主

せんせい〜
ご飯を食べるときに痛くて、食べたいのに食べられない。
水もゴックンするとき痛くて、どうにかしてッ!
お腹減ったよ〜

Dr.Nyan

口内炎の可能性があります
口の中を確認してみましょう

猫 舌の口内炎 潰瘍 痛みのある病変
猫の舌にできた口内炎(潰瘍性病変)の症例写真

舌に口内炎が出来ちゃってます!

飼い主

食べたいのに食べられないんです…

Dr.Nyan

口の痛みが原因のことが多いです

猫の口内炎はヒトの口内炎とは違い、口の中に広く出来たり大きく腫れ上がっているなどしています。また痛みもひどく、食欲や元気がなくなることもある病気です

猫 口内炎 口の中を開けて確認している様子
診察で猫の口の中を確認している様子

「口内炎がどんな病気なのか、原因はなんだか漠然としてよくはわからない・・・」

そのような疑問を持つ飼い主様に向けて、わかりやすく解説します。

目次

口内炎ってどんな症状?

飼い主

口内炎って一体どんな症状がでるの?

口内炎とは口腔内の粘膜にできる炎症のことで、歯肉や舌、頬の内側、喉の周囲などに炎症を起こす病気です。

口内炎は口の中の一部に出来るものから口の中に広く出来るもの、また軽症から重度のものまで様々です。とにかく口の中であれば、口の中のさまざまな場所に発症します!

猫 歯肉炎 赤く腫れた歯ぐき
猫の口内炎に伴う歯肉炎(赤く腫れた歯ぐき)

赤く腫れた、口内炎が見られます。

猫の口内炎の特徴的な症状は、ヨダレ口臭、そして口の痛みです。口内炎には、ただ赤くなっているものから潰瘍状になっているものなど様々です。

飼い主

口臭が急に強くなったのも関係ありますか?

Dr.Nyan

強い口臭は、口内炎や歯周病の重要なサインです。

急に強い口臭が出てきた場合、口内炎や歯周病が隠れていることがあります。

【口の中の変化】腫れや口臭など

口内炎になると、以下のような症状が口の中に見られます。

  • 口の中の粘膜が腫れる
  • 口の中に潰瘍ができる
  • 口からの出血
  • 口臭

【食べるときの変化】食欲が落ちるなど

食べる時にフードなどが口内炎に当たり、以下のような症状が見られます。

  • 柔らかいものを好む
  • 食べづらそうにする
  • 食欲が落ちる
  • 水を飲むことも大変そう

「食べたい気持ちはあるのに痛くて食べられない」というのは、猫の口内炎で非常によく見られる特徴です。

口内炎から水が飲めないでいると、脱水や衰弱を起こしてしまいます。その結果、腎臓に負担がかかるようになり腎不全を起こしてしまうこともあります。

リスク先生

水が飲めない状態が続くと、脱水や腎機能の低下につながる可能性があります。
早めの対応が重要です。

腎不全が進行・重症化すると全身状態がさらに悪化し、麻酔をかけて積極的な歯科治療が行えなくなってしまう場合もあります。そうなると長期間痛みが続いてしまいます。

【行動の変化】奇声をあげるなど

痛みから身繕いができない、またイライラが見られる症状です。

  • 顔を擦る
  • 毛づくろいしなくなる
  • 食べてる時に痛みから奇声をあげる
  • 攻撃的になる

口内炎になると、お腹が減っても口の痛みから食べられない状態が続いてしまいます。
食事中に突然鳴く・フードを落とすといった行動も、口の痛みのサインです。

Dr.Nyan

「空腹でも食べられない」って、可哀想ですよね!

数日でも食べられない状態が続くと、猫では脂肪肝を起こす危険があります。

口内炎の原因

Dr.Nyan

次は考えられる原因について確認していくよ。

ちなみに口内炎が出来る原因は、まだハッキリと解明できていない部分があります!

ウイルス感染

猫の口内炎の多くに、ウイルスが関連していると言われています。特に猫カリシウイルスや猫ウイルス性鼻気管炎ウイルスなどが、原因の一つとされています。

過剰な免疫反応

口内炎は口の中に住む様々な細菌や微生物に対する過剰な免疫反応が、複雑に絡んだ病気と考えられています。特に免疫を抑えてしまう「猫白血病ウイルス」や「猫免疫不全ウイルス」に感染すると、口内炎が発症しやすくなります。

また糖尿病や慢性腎炎、まれですが副腎皮質機能亢進症などは免疫状態が落ちてしまうため、ウイルスが感染しやすい状態ともなります。それらの病気によって免疫状態が低下すると、口内炎が見られることがあります。

外部刺激や誤飲

口の中の異物や傷、歯石、また刺激性のある薬品類の誤飲が原因となることがあります。治療のための投薬を止めると繰り返し再発するような、難治性の口内炎を起こすことがあります。

歯周病

歯周病では、歯垢や歯石の中の細菌によって、歯のまわりの歯茎が炎症を起こします。重度の歯周病、歯肉炎になることで、口内炎をも引き起こしてしまう可能性があります 。

口の中の不衛生な状態は、歯周菌が広がりやすい状態です。そのため口内炎を改善するには、口の中の環境を良い状態に保つように努力していく必要があります。

重度では歯が自然に抜けてしまうこともあります。

飼い主

治る病気なんですか?

Dr.Nyan

軽度であれば改善しますが、慢性化するケースもあります

口内炎の治療法と費用

痛くて食べるのも嫌になってしまう口内炎を、早く治してあげたいですよね。治療の基本は、口の中の細菌や微生物の除去と過剰な炎症反応をコントロールすることです。

Dr.Nyan

口内炎の疑いがあってもあせらず治療をしていきましょう。

では主な治療方法をご紹介します。

投薬を行う

症状や原因によって投薬をおこないます。

  • 抗生剤
  • ステロイド剤・消炎鎮痛剤(炎症や痛みに対して)
  • インターフェロン(ウイルスを抑える物質)

痛いと口を触られるのも嫌になるし、治療を続けるのも大変です。しかもトラウマにしてしまうことは絶対に避けなくてはなりません。

治療し症状の改善がみられても一時的なもので、治ることが困難な場合もあります。そのため、治療後にも痛みなどに対しての療法が行われることも多いです。

~Dr.Nyanポイント~
インターフェロンとはどんな薬?

猫の口内炎治療に使用されるインターフェロン製剤
猫の口内炎治療に使用するインターフェロン製剤

インターフェロンは、ウイルスの増殖を抑え、体の免疫反応を助ける働きを持っています。ウイルスが増えるのを防ぎ、健康な細胞がウイルスに感染しないようにする薬です。

そのような働きをするインターフェロンですが、実際には体の中でも作られています。

しかしウイルスの量がとても多いと、体内のインターフェロンだけでは足りなくなってしまうのです。そこでインターフェロンを投与し、その働きを助けてあげるのです。

レーザーを使用する

レーザーは痛みなどの症状を軽くし、自然治癒力を高める作用があります。そのため、レーザーを照射する治療を行います。

治療をするにあたっては、麻酔を必要としません。またレーザー治療は患部にレーザー光線を当てるだけですので、痛みも感じません。ただ治療には、幾度か通院する必要があります。

歯科処置を行う

口内炎の原因が「歯周病」であれば歯石を取り除き、歯周病菌を退治します。しかし、歯周病菌は復活する可能性が高く、再発する恐れがあります。

そのために行われるのが全臼歯抜歯(全ての奥歯を抜く)や、全抜歯(全ての歯を抜く)の治療です。

歯が無ければ歯周ポケットも無くなるため、歯周病菌の住む場所も無くなり発症しないという治療方法です。しかし早期に全抜歯を行っても改善が乏しいケースがあります。

全臼歯抜歯全抜歯を行う場合には、全身麻酔による処置が必要です。全身麻酔を行うためには、血液検査やレントゲン検査などを行います。

これは口内炎と歯周病が密接な関係があるため、歯周病だと腎臓病や心臓病を患っていることが多いからです。安全に全身麻酔を行うためには、避けられない検査となります。

全身麻酔下で猫の歯科処置を行っている様子
全身麻酔下での猫の歯科処置(歯石除去・抜歯)

全身麻酔で歯石除去と口内炎の治療を行っています!

猫の体調は体の状態によっては、全身麻酔をかけられない場合もあります。そうなると、抜歯などの処置を行うのが難しくなってしまいます。

リスク先生

重症化すると、痛みが続いても十分な歯科治療ができなくなる場合があります。

食事や水分の補給

口の中の痛みから、水を飲むこともフードを食べることも大変になってしまいます。

その結果、脱水となったり栄養状態も落ちてしまいます。また免疫力も落ちてしまうため、全身の状態までもが悪くなってしまいます。そのため水分を補給し、栄養価の高いフードを食べさせることが重要です。

再生医療

「慢性の口内炎」の治療法のひとつに「再生医療」があります。

ここでの「再生医療」とは「幹細胞」を用い、本来体が持っている「修復機能」や「自己治癒力」を利用した治療方法す。

幹細胞には、従来の治療薬とは異なる作用で炎症を抑え免疫バランスを調整する働きを持っています。
そのため、既存の治療では反応の乏しかった場合、口腔内の炎症を抑え、症状が改善される可能性があります。

再生医療は以下のような場合に行われます。

  • 全臼歯抜歯や全抜歯を行っても改善が見られない
  • 外科的な処置が難しい状態である
  • 投薬により症状は改善されても薬の副作用が出る
  • 症状の再発を繰り返してしまう

慢性口内炎に対する再生医療はまだ研究段階で、現在多くの動物病院で臨床試験が行われております!

再生医療の参考記事:J-ARM(https://j-arm.biz/owner/family

Dr.Nyan

『予防に勝る治療は無い』と思いませんか?

口内炎の予防方法

Dr.Nyan

口内炎は辛いモノです。
そのような口内炎を予防できるならしてあげたいですよね。

ワクチン接種

口内炎の原因となる猫カリシウイルスや猫白血病ウイルスなどの感染症にはワクチンがあります。

猫に混合ワクチンを接種している様子
猫カリシウイルス感染症などを予防するための混合ワクチン接種

混合ワクチンを接種しています。

しかしワクチンを接種していても、感染を完全には防ぐことができません。ワクチンは、感染しても重症化しにくくさせるものです。

サプリを使用する

免疫力が落ちると口内炎ができやすくなります。そのため免疫力を上げたり栄養補助にもなる、サプリメントを使用するという方法もあります。

粒の大きめなドライフードを食べさせる

小さい時から「粒の大きめなドライフード」を食べさせることです。

大粒のドライフードをあげると、食べるのによく噛まなければいけません。その結果、よく噛むことで歯垢が付きにくくなり、歯周病予防につながります。

つまり、よく噛むことで歯垢が作られにくくなり、結果として歯周菌が住みづらくなります。

飼い主

小さい時からの「噛む習慣」は、老齢になっても忘れません!

水をよく飲ませる

小さい時から「水」をよく飲ませるように心掛けることです。水をよく飲ませると、口の中は水分で潤っている時間が長くなります。

その結果、口腔内の食べかすや細菌が流れ、口腔内環境を清潔に保ちやすくなります。また、水をいっぱい飲ませることは、口の中の汚れが流れ落ちる働きを持っています。

マウスケア用品を使用する

口の中の環境をきれいに保つことが、口内炎の予防にもなります。小さい頃から少しずつ口を触るようにして、触られることに慣れてもらいます。またデンタルケア用品も、口の中の健康には効果があります。

口内炎になりやすい猫種

Dr.Nyan

猫種に関係なく発症する可能性があります!
特に以下の病気の猫は要注意!上記であげた予防方法をぜひ実践してあげてください。

  • 猫カリシウイルス感染症
  • 猫ウイルス性鼻気管炎ウイルス感染症
  • 猫白血病ウイルス感染症
  • 猫免疫不全ウイルス感染症
  • 糖尿病
  • 副腎皮質機能亢進症
  • 慢性腎炎
  • 歯周病

Dr.Nyan

また、栄養状態の悪い猫も注意が必要です!

猫の口内炎でよくある質問

猫が食べないのは口内炎ですか?

よだれが多い・口臭がある・食べたそうなのに食べられないという場合、口内炎の可能性があります。早めに動物病院での診察をおすすめします。

猫の口内炎は自然に治りますか?

軽度であれば改善することもありますが、猫の口内炎は慢性化しやすく多くは治療が必要です。放置すると脱水・腎機能低下につながることもあるため、早めの受診が重要です。

猫の口内炎はいつ受診すべきですか?

食べない・水を飲まない・よだれが多い・口臭がひどいといった症状が見られたら早めの受診をおすすめします。特に口を開けて痛みを訴えたり、体重が落ちている場合は急いで受診してください。

猫の口臭は口内炎のサインですか?

強い口臭は口内炎や歯周病でよく見られる症状です。急に臭いが強くなった場合は早めに受診しましょう。

全抜歯するとご飯は食べられますか?

猫は歯が少なくなっても食事できることが多く、痛みが改善して食欲が戻るケースもあります。ただし術後はしばらく柔らかいフードを与えるなどの配慮が必要です。

まとめ

猫の口内炎はさまざまな症状やサインがあります。特に「食べたいのに食べられない」は口内炎の重要なサインです。
猫の口内炎は、想像以上に辛く痛いものです。そのような口内炎は早期発見・早期治療が重要です。

それには日々の口の中の健康管理と、定期的な健康診断です。悪さをする歯周菌を少しでも減らして、健康に暮らしましょう!
「歳だから仕方ない」と思っていた口臭や食べづらさの中に、強い痛みを伴う口内炎が隠れていることがあります。

筆者・若山正之(Dr.Nyan)のプロフィール

若山動物病院院長 獣医師 若山正之(Dr.Nyan)のプロフィール写真

本記事は、犬・猫の診療を行う獣医師・若山正之が監修・執筆しています。
1975年より小動物臨床に従事し、現在は若山動物病院院長として地域医療に携わっています。長年の臨床経験に基づき、一般診療から予防医療、シニア医療まで幅広く対応しています。

特に、病気の早期発見・早期対応を重視し、飼い主様にわかりやすい説明と納得いただける診療を心がけています。また、幹細胞療法や免疫療法などの先進医療にも取り組み、動物の生活の質(QOL)を重視した治療を提供しています。
これまでに一般飼い主様向けのセミナーや講演活動を多数行い、正しい医療知識の普及にも尽力しています。著書に『老犬生活 完全ガイド』『犬と猫の老齢介護エキスパートブック』などがあります。
本記事は最新の獣医療知見と臨床経験をもとに作成していますが、症状や状態によって対応は異なるため、気になる症状がある場合はお早めに動物病院へご相談ください。