Dr.Nyanのすこやかコラム
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猫の疥癬症(ヒゼンダニ)|顔を痒がる・皮膚がゴワゴワする原因と治療・受診の目安
顔の皮膚がゴワゴワ・シワシワになって急に老けたように見え、四六時中ガリガリと激しく顔や耳を痒がっている……。そんな痛々しい症状が愛猫に見られたら、それは「猫小穿孔ヒゼンダニ」という非常に小さなダニが皮膚に寄生して起こる「疥癬症(かいせんしょう)」かもしれません。
疥癬症は、放っておくとあっという間に全身へ広がり、同居している他の猫ちゃんだけでなく、人間にもうつる恐れのある恐ろしい人獣共通感染症です。
リスク先生
疥癬は「ただの皮膚病」ではありません!
強い痒みで睡眠や食欲まで低下し、人や同居猫にも感染が広がる危険な寄生虫感染症です!
今回は、強い感染力と耐え難い痒みを引き起こす「猫の疥癬症」について、原因や特徴的な症状、当院(千葉県佐倉市の若山動物病院)での治療法や費用、そして確実な予防策まで、私Dr.Nyanが症例を交えて詳しく解説します。
飼い主さん
せんせい〜耳が、顔が痒いよ〜!!
しかも皆に『お前の顔老けたね』って言われちゃう!
もう痒くてイライラだよ!どうにかして〜ッ!
Dr.Nyan
ひょっとして、それって疥癬っていうダニに感染してるかもしれないよ?
どれどれ見せてごらん?

疥癬が見つかりました。
飼い主さん
こんな虫が顔に、いっぱい住んでるってことなのね
信じたくない!
猫の疥癬症は、ヒゼンダニの仲間である『猫小穿孔ヒゼンダニ』の寄生により起こります。ここでのヒゼンダニは、耳疥癬症を引き起こす「耳ヒゼンダニ」とは違います。

これが耳疥癬です!
耳疥癬は足が長く体が細っそりとしていますが、猫小穿孔ヒゼンダニは足が短く体がまん丸です!
Dr.Nyan
ヒトにも感染するんだよ!
ヒトに感染すると、皮膚の柔らかい部分に痒い赤いポチポチ発疹が出て痒いよ!そのため人獣共通感染症の一つと言われています!
感染力がとても強く、しかも耐え難い痒みを引き起こす「疥癬症」の原因や特徴的な症状、治療法や予防策についてDr.Nyanが詳しく解説します。
疥癬症の症状とは?激しい痒みと「老け顔」に要注意
Dr.Nyan
疥癬症の第一の特徴は、とにかく痒いことだよ!
まずはどんな症状がでたら要注意なのか一緒に確認していきましょう!
疥癬はとても小さな虫で、その大きさは1mmの半分以下の0.3~0.5mm程度といわれています。「猫小穿孔ヒゼンダニ」という名前で、耳疥癬症を引き起こす「耳ヒゼンダニ」とは異なる種類です。
ヒゼンダニは皮膚の角質層に「疥癬トンネル」と呼ばれる穴を掘り、その中で生活しながら卵を産み、フンや分泌物を出します。これらに対して猫の体が激しいアレルギー反応を起こすことが、耐え難い痒みの原因です。

疥癬に感染してしまった猫です。
疥癬に感染してしまった猫は、四六時中血が出るまで爪で激しく掻きむしってしまいます。これによりQOL(生活の質)が著しく低下し、常にイライラした状態になります。
1. 気が狂うほどの激しい痒み
疥癬症の第一の特徴は、とにかく非常に痒がることです。四六時中、血が出るまで爪で激しく掻きむしってしまいます。
QOL(生活の質)が著しく低下し、常にイライラした状態になります。
2. 病変は「耳・顔・頭」から始まる
多くの場合、感染初期は耳の縁、顔面、目の周り、頭部から症状が現れます。そのため、痒がると同時に不快感からしきりに頭を振る仕草を見せるようになります。

疥癬症で顔がシワシワになってしまいました。そのためムッツリした、老け顔に見えます。
時間と共に背中やお腹、四肢にと全身に皮膚炎の症状が広がっていきます。特に免疫力の低い仔猫やシニア猫、元野良猫などは、あっという間に全身に感染が広がってしまいます。
3. 皮膚がゴワゴワに分厚くなり、大量のフケ・カサブタが出る
炎症が慢性化すると、皮膚が硬くボロボロのゴワゴワに変形し、まるでゾウの皮膚のように分厚くなります。毛の根元が灰白色の分厚いカサブタで固まり、触るとカサブタや抜け毛がボロボロと手につくのが特徴です。
さらに、重症化するとカサブタの下が膿んでしまうこともあります。特に免疫力の低い仔猫やシニア猫では重症化しやすいため、早めの受診が大切です。
二次感染(皮膚炎・化膿)のリスク
感染した皮膚を掻きむしることで皮膚が傷付き、皮膚炎を引き起こします。掻き壊した皮膚が化膿してしまうこともあります。
感染が重度になってしまった場合には、衰弱や二次感染により命に関わることもあります。
猫が疥癬症になる原因と感染経路
Dr.Nyan
疥癬症の原因は、ヒゼンダニ(疥癬)の寄生だよ!
猫の疥癬症は「猫小穿孔ヒゼンダニ」の寄生により起こります。また稀に、犬の疥癬症の原因である「犬小穿孔ヒゼンダニ」の感染で起こることもあります。
① 直接の接触による感染(最たる原因)
すでにヒゼンダニに感染している猫(野良猫など)と直接接触することでうつります。外で他の猫と喧嘩をしたり、体を寄せ合ったりすることで一発で感染します。また、母猫が感染していれば、授乳などを通じて仔猫にも確実にうつってしまいます。
② 間接的な接触による感染(室内飼いも油断禁物)
「うちは完全室内飼いだから安心」とは言い切れません。飼い主さんが外出先で感染猫を触ったり、抱っこしたりした場合、衣服や手にヒゼンダニが付着し、そのまま自宅の愛猫にうつしてしまう「間接感染」のリスクがあります。
ダニ自体は猫の体から離れると数日で死亡しますが、多頭飼育環境においてブラシ、タオル、キャットタワー、寝床などを共有していると、環境経由で次々と同居猫に感染が拡大します。
日ごろから飼育環境を清潔に保つことが感染拡大防止に有効です。

飼い主さん
生活環境はできるだけきれいにしておきましょう。
若山動物病院での検査・治療法と気になる費用
Dr.Nyan
耳の中の検査をするんだよ!
疥癬から感染症を併発してしまうと、ちょっと厄介です。しかし一般的には、早々に疥癬の感染を見つけ出して適切に治療すれば、しっかりと完治できる病気です。
まずは本当にヒゼンダニがいるのか、他の寄生虫(ニキビダニや耳ダニ、皮膚糸状菌症など)や細菌感染ではないかを診断するため、以下の検査を行います。
- 皮膚掻爬(そうは)検査:皮膚の表面(特にカサブタの周り)を専用の器具で軽く擦り、皮膚片を顕微鏡で観察します。
- セロテープ法:病変部にセロテープを貼り付けて剥がし、付着したフケやダニの成虫・卵を顕微鏡で探します。
- 皮膚の全般的な検査:他の寄生虫(ニキビダニや耳ダニ)や細菌感染など、他の疾患との鑑別を行います。

検査の結果、多数のヒゼンダニが確認されました。早期発見・早期治療が大切です。
1. 的確な駆虫薬(スポット剤・注射・内服)の投与
現代の獣医療では、首の後ろに垂らすタイプの安全で効果の高いスポット剤(セラメクチンやフルララネルなど)が主流です。また、症状や猫ちゃんの状態に合わせて、イベルメクチン等の注射や内服薬を選択することもあります。
※注意点:駆虫薬は「ダニの成虫」には効きますが、「卵」には効きません。そのため、卵が孵化するサイクルに合わせて、数週間おきに複数回の投薬を繰り返す必要があります。自己判断で途中でやめず、獣医師の指示通り最後まで通院してください。
多頭飼いの場合には、症状が出ていない子も含めて全員同時に治療を行う必要があります。
2. 二次感染の治療と痒み止め
掻き壊して細菌二次感染を起こしている場合は「抗生剤」、激しい痒みで自傷行為が止まらない場合は、生活の質(QOL)を一時的に確保するために適切な「痒み止め」を併用します。
治療費

飼い主さん
気になる疥癬の治療費は幾らくらいでしょう?
感染の度合いや使用する薬、治療期間の違いから治療費が変わります。また体重によっても、治療費は変わります。
一般的な仔猫や初期症状の場合、1回あたりの検査・駆虫薬の処方で約5,000円~8,000円(税別)前後が目安となります。これを数回繰り返します。ただし、全身に広がり重度の皮膚炎や化膿を伴っている場合は、抗生剤や長期のスキンケアが必要となり、総額の費用や期間がさらにかかることがあります。早めのご相談が、猫ちゃんの負担も費用も抑える最大のポイントです。
疥癬症を徹底的に防ぐ!再発防止と予防策

飼い主さん
疥癬は痒いし外耳炎にもなっちゃうので、ならないようにしたいです!
① 完全室内飼育の徹底
最大の予防は、感染源となる外の猫と接触させないことです。網戸越しであっても、外猫と鼻先を突き合わせるような距離での接触があれば感染リスクが生じます。脱走対策を万全にしましょう。
もし同居猫が感染しているなら、症状が出ていない子にも予防的投与を行います。
Dr.Nyan
チョットした注意で予防できたり、感染が広がるのを防げますよ!
② 新しい同居猫を迎える際の隔離
保護猫や新しく子猫を迎える際は、必ず事前に動物病院で健康診断と駆虫(お腹の虫やノミ・ダニ、疥癬チェック)を行い、安全が確認されるまでは先住猫と部屋を完全に隔離して生活させてください。
③ 多頭飼育における一斉治療・環境の徹底消毒
同居猫に1頭でも疥癬が出た場合、症状が出ていなくても「全員同時に予防的駆虫」を行うのが鉄則です。また、猫ちゃんが使っていたベッドや毛布は高熱(50℃以上で10分以上)で洗濯・乾燥するか、思い切って破棄してください。ダニは熱に弱いため、熱湯消毒やスチームアイロンが非常に効果的です。
疥癬症になりやすい(重症化しやすい)猫の特徴
疥癬は猫種(アメリカンショートヘアやペルシャなど)による差はありませんが、以下の状態にある猫ちゃんは特に感染しやすく、重症化しやすい傾向があります。
- 外に出る習慣がある猫、野良猫(保護されたばかりの猫)
- 免疫力が未発達な仔猫、または低下しているシニア猫
- 猫エイズ(FIV)や猫白血病(FeLV)などの感染症を患っている猫
- 栄養不良や他の慢性疾患で体力が著しく衰弱している猫
猫の疥癬症に関するよくある質問(FAQ)
猫の疥癬症は本当に人間にうつりますか?
はい、うつります。
人間への寄生ではダニは繁殖できませんが、一過性(数週間程度)の強い痒みと赤い湿疹がお腹、腕、太ももなどの柔らかい皮膚に出ます。愛猫の駆虫が完了すれば人間の症状も自然に治まりますが、痒みが強い場合は人間の皮膚科を受診してください。
疥癬症は自然に治ることはありますか?
自然に治ることは絶対にありません。
ヒゼンダニは皮膚の中で卵を産み続け、爆発的に増殖します。放置すると全身の皮膚が破壊され、衰弱や二次感染により命に関わることもあるため、必ず動物病院での駆虫薬投与が必要です。
リスク先生
そのうち治るかも…」は危険です!
疥癬はダニが皮膚の中で増殖し続ける病気なので、放置すると全身性皮膚炎や化膿へ進行します!
Q3. 治療を開始してからどのくらいで治りますか?
A3. 軽症であれば約3~4週間、重症の場合は数ヶ月かかることがあります。
薬を投与すると数日でダニの活動が弱まり痒みは軽減しますが、卵から孵化する次世代のダニを全滅させる必要があるため、最低でも約1ヶ月(投薬2~3回サイクル)はかかります。
Q4. 同居している犬や他の動物にもうつりますか?
A4. 猫小穿孔ヒゼンダニは基本的に猫から猫へうつりますが、稀に犬に一時的な皮膚炎を起こすこともあります。
また、犬の疥癬(犬小穿孔ヒゼンダニ)が猫にうつるケースもあります。多頭飼いの場合は、動物種を問わず獣医師にご相談ください。
Q5. どのような症状が出たらすぐに病院へ行くべきですか?
A5. 「激しく顔や耳の縁を掻く」「頭を頻繁に振る」「顔まわりの毛が抜けて皮膚がゴワゴワ・シワシワしている」
これらの症状が1つでも見られたら、すぐに連れてきてください。当院(佐倉市の若山動物病院)では、皮膚に負担の少ない検査と迅速なスポット剤治療を行っています。
まとめ
激しい痒みは、言葉の喋れない猫ちゃんにとって想像を絶する大きなストレスです。四六時中ガリガリと掻きむしり、大好きな愛猫の顔がシワシワになっていくのを見るのは、飼い主さんにとっても本当につらいことだと思います。
しかし、疥癬症は原因がはっきりしており、現代の優れたお薬を使えば、しっかりと完治させ、元通りのきれいで愛らしい愛猫の顔に戻してあげられる病気です。
「もしかしてダニかも?」「皮膚がゴワゴワして痒そう」と少しでも異変を感じたら、いつでも千葉県佐倉市の若山動物病院(Dr.Nyan)までお気軽にご相談ください。イライラのない、快適で健やかなお膝の上の暮らしを一緒に取り戻しましょう!

【参考記事】千葉県獣医師会 人獣共通感染症 関連資料
筆者・若山正之(Dr.Nyan)のプロフィール

本記事は、犬・猫の診療を行う獣医師・若山正之が監修・執筆しています。
1975年より小動物臨床に従事し、現在は若山動物病院院長として地域医療に携わっています。長年の臨床経験に基づき、一般診療から予防医療、シニア医療まで幅広く対応しています。
特に、病気の早期発見・早期対応を重視し、飼い主様にわかりやすい説明と納得いただける診療を心がけています。
また、幹細胞療法や免疫療法などの先進医療にも取り組み、動物の生活の質(QOL)を重視した治療を提供しています。
これまでに一般飼い主様向けのセミナーや講演活動を多数行い、正しい医療知識の普及にも尽力しています。著書に『老犬生活 完全ガイド』『犬と猫の老齢介護エキスパートブック』などがあります。
本記事は最新の獣医療知見と臨床経験をもとに作成していますが、症状や状態によって対応は異なるため、気になる症状がある場合はお早めに動物病院へご相談ください。