猫回虫症|白い虫・下痢・お腹が膨らむ原因と治療法

  1. ホーム
  2. Dr.Nyanのすこやかコラム
  3. 猫回虫|痩せて下痢や吐き気の原因と治療・受診の目安

Dr.Nyanのすこやかコラム

コラム記事検索

猫回虫|痩せて下痢や吐き気の原因と治療・受診の目安

猫のウンチに白い虫が見られる回虫症の注意喚起を示したアイキャッチ画像

体は痩せている、それなのに妙にお腹が大きくカエルみたく張っている。しかもうんちに「白いひも状の虫」がいるのを見つけてしまったとき、頭が真っ白になり、激しいショックと不安に襲われる飼い主さんは少なくありません。
「うちの子、大丈夫なの?」「もしかして、私にもうつる…?」とパニックになってしまうのも無理はありません。

その白い虫の正体は、猫に寄生する代表的な寄生虫「猫回虫」かもしれません。「完全室内飼いだから大丈夫」と思っていても、実は意外なルートから感染することがあるのです。

飼い主

外に出ていないのに感染するなんて、本当にあるんですね…

Dr.Nyan

実際にあるんです。だから完全室内飼いだから絶対安全とは言い切れないんですよ

今回は、猫回虫症の症状や原因、動物病院を受診する目安、そして人への感染リスクまで、飼い主さんが今すぐ知りたい情報を解説します。まずは落ち着いて、一緒にチェックしていきましょう。

飼い主

せんせい
新しく来た子のウンチの中に細いものが出て動いてるんです。
こしかもお腹が痛そうで、診て下さい!どうにかしてやって〜ッ!

Dr.Nyan

それ、ひょっとして回虫かもしれないよ
見せてごらん?

猫回虫が寄生した便中に見られる白い回虫の実物
猫のウンチの中に排出された猫回虫。白いひも状に見えるのが特徴です。

飼い主

ええッ?お腹の中に虫がいるってことなの?
それって大変なことじゃないのかしら?

動物のお腹の中に住む、代表的な寄生虫として知られているのが『回虫』です。
その中でも猫に寄生するのが猫回虫(Toxocara cati)です。
ただ猫にも、犬回虫が寄生することもあります!

外に出る猫は、屋内に住む猫よりも回虫に感染する機会が多くなります。
しかも回虫は猫だけでなく、ヒトにも感染することがあります。

そのような「猫回虫」の原因や対処法などについてDr.Nyanが説明しますね。

目次

猫回虫症の症状

猫回虫に感染する多くは、回虫の卵が口から入ることによります。
猫回虫は成虫になると小腸に寄生し体長は3~14cmくらいにまでなり、犬回虫より少し小さめです。

猫回虫が感染した猫の便中に見られる回虫の実物写真
便の中に混ざって見つかることもあり、仔猫で発見されるケースも少なくありません。

見た目が細い虫のため、寄生虫の中の線虫というグループに属します。

Dr.Nyan

猫回虫は、感染しても何ら症状が見られないこともあるんだよ!
でもどんな症状がでたら要注意なのか、確認していきましょうね!

~Dr.Nyan ポイント~

回虫の卵は数年間生き続ける?!

回虫の卵はウンチと一緒に体の外へ出たときは、まだ未熟な状態で感染力がありません。
しかし卵は成熟し、卵の中に幼虫がいる状態になると感染力を持つようになります。

回虫の卵は、シェルターの様な丈夫な殻で中身が守られています。
そのため体の外に出ても生きていくことができ、条件さえ良ければ体外で感染力を持ったまま数年間は生き続けることもできます。

吐いたり下痢などの消化器症状

飼い主

お腹がふくらんでいるのに痩せているって、すごく不思議ですね…

回虫の成虫は小腸に寄生します。

その多くは無症状ですが、場合によってはウンチが軟らかくなったり吐き気などの症状がみられることがあります。
吐いたものやウンチの中から、回虫が出てくることもあります。

仔猫の場合、体は痩せているのにお腹がカエルのように張って大きいこともあります。
また腸の中で詰まって、腸閉塞がみられることもあります。

飼い主

回虫だけじゃなく、他の病気も一緒に感染することがあるんですか?

Dr.Nyan

特に保護猫さんや仔猫では、コクシジウムや猫風邪などを同時に持っているケースも多いんです。

混合感染で重症化

他の寄生虫などと混合感染してしまうと、回虫を駆除しても症状がなかなか改善しないことがあります。

例えば猫回虫と一緒に、コクシジウムなどの原虫や他の寄生虫が感染している場合などです。
また消化器症状を起こす細菌やウイルスの感染も、同様に注意が必要です。

混合感染を起こすと、場合によっては入院での治療が必要となります。
特に仔猫では全身状態が簡単に悪くなりやすく、死に至ってしまうこともあります!

猫回虫症の原因

Dr.Nyan

猫回虫症の原因は、猫回虫の寄生なんだよ!

回虫の卵は丸い形をしており、とても小さく肉眼で見ることはできません。
そのため顕微鏡での検査を行い、回虫の卵を見つけることで診断します。

繰り返したり治らない下痢などでは、早めに検査を行うことが大切です。
猫回虫に感染する経路は、主に3つと言われます。

口からの感染

ウンチと一緒に出た猫回虫の卵は、その落ちた場所で成熟し感染力を持つようになります。
もし猫が、成熟状態となった卵を口にしてしまうと、回虫に感染してしまいます。
これを経口感染と言います。

妊娠中の母猫から胎仔への感染(胎盤感染)

犬回虫では胎盤を通じた感染が知られていますが、猫回虫では胎盤感染は原則として起こらないとされています。そのため、猫では主に母乳(経乳感染)を介した母子感染が重要です。

なお過去の文献には一部記載がある場合もありますが、現在の獣医学的知見では猫回虫の胎盤感染は非常にまれかほとんどないと考えられています。

母猫の母乳からの感染

回虫に感染した猫が妊娠し出産すると、母乳を飲んでる仔猫に母乳を介して回虫が感染します。
この母から仔へ、乳汁を介して感染することを経乳感染と言います。

飼い主

人にうつるって聞くと、ちょっと怖いです…

リスク先生

特に小さなお子さんは要注意!砂場や土遊びのあとに手を口へ入れることで感染するケースがあります!

~Dr.Nyan ポイント~

とても怖い臓器幼虫移行症(トキソカラ症)

猫回虫はヒトにも感染するため、人獣共通感染症の一つになっています。

猫回虫は、本来の宿主が猫であるためヒトに寄生しても成虫にはなれません。
そのためヒトに感染した場合には、腸の中ではなく肺や肝臓などに寄生してしまうことがあります。
このように幼虫が様々な臓器内に入り、しかも重大な症状を起こしてしまうのが『臓器幼虫移行症(トキソカラ症)』です。

ヒトの臓器幼虫移行症には、二つの種類があります。

内臓移行型
熱や咳など風邪のような症状や、肝臓障害などを起こすタイプ

眼移行型
眼や脳に寄生し、失明や視力障害、痙攣などを起こすタイプ(眼トキソカラ症)

人への感染を防ぐためには、以下の対策が重要です。猫を触った後やトイレ掃除の後は石鹸でしっかり手を洗いましょう。また庭いじりや砂場遊びの後も必ず手洗いを行い、特に小さなお子さんのいるご家庭では砂場・泥のある場所で遊んだ後の手洗いを徹底することが大切です。

猫回虫症の主な治療法と費用

Dr.Nyan

治療の前にウンチの検査をするんだよ!

猫回虫と他の寄生虫や感染症を併発してしまうと、ちょっと厄介です。
しかし一般的には、猫回虫を殺してしまえば結構治りは良いと言われています。

駆虫薬

線虫駆除薬を使うことで、駆虫することができます。
錠剤では、パモ酸ピランテルを含む薬剤(ドロンタール錠、バイエル)を使用します。

また飲ませるのが難しい場合には、スポットオン剤を背中に垂らします。
以前はセラメクチン(レボリューション)が主に使われていましたが、現在はより確実な駆虫のために、回虫・鉤虫・条虫などを同時に駆除できるオールインワンタイプが多く選択されています。代表的なものとして、エモデプシド・プラジクアンテル(プロフェンダー)、セラメクチン・サロラネル(レボリューションプラス)、アフォキソラネル・エプリノメクチン・プラジクアンテル(ネクスガードキャットコンボ)などがあります。

猫の回虫やノミを予防するスポットタイプの駆虫薬 レボリューションプラス
回虫だけでなく、ノミやダニ予防も同時に行える外用タイプの予防薬です。
猫回虫予防に使用されるレボリューションの外用薬
定期的な予防投薬は、猫回虫感染の予防に役立ちます。

飼い主

一回薬を飲んだのに、また虫が出ることもあるんですか?

Dr.Nyan

あります。卵や幼虫には薬が効きにくいことがあるので、繰り返し駆虫することがとても大切なんです。

駆虫サイクルに関する大切なポイント

駆虫薬は現在お腹の中にいる成虫には効果がありますが、体内組織を移行中の幼虫や卵には効きにくい場合があります。そのため「一度薬を飲ませて虫が出たから終わり」ではなく、薬の効果が切れた後に生き残った幼虫が成虫になるタイミング(約2〜3週間後)に合わせて、もう一度駆虫を行うことが大切です。

治療を自己判断で中断せず、必ず獣医師の指示に従って再検査・再投薬を行いましょう。
駆虫薬を定期的に投与することで、感染の予防が効果的にできます。
上記のレボリューションは回虫だけでなく、ノミや鉤虫なども予防します。

猫の首筋へレボリューションを滴下している様子 回虫予防の外用薬投与
スポットタイプの駆虫薬は、首筋へ滴下して使用します。

抗生剤や輸液剤の投与

嘔吐や下痢、発熱や元気・食欲の低下などの症状がみられる場合には積極的な治療が必要です。
また症状によっては、抗生剤や輸液剤などを使用した治療を行います。

治療費

飼い主

気になる猫回虫の治療費は幾らくらいでしょう?

感染の度合いや使用する薬、治療期間の違いから治療費が変わります。

体重にもよりますが、ウンチの検査と駆虫剤の内服タイプの投薬で治療費は5,000円くらいです。
しかし混合感染や併発症などで重度の消化器障害にまでなっている場合には、治療期間も長く治療費もかかってしまいます!

猫回虫症の予防方法

飼い主

猫回虫はヒトにも感染する怖い寄生虫なので、感染しないようにしたいです!

屋内飼育の徹底

猫回虫症はウンチとの接触による感染が多いので、猫を外に出さないことが予防につながります。
また新しい子を迎え入れた場合には、その子に感染が無いことが確認できるまでは隔離期間を設けます。

Dr.Nyan

チョットした注意で予防できたり重症化を防げますよ!

清掃の徹底

回虫の卵は、排泄直後には感染力を持っていません。しかし環境中で数日〜数週間かけて幼虫を含む卵(感染力のある状態)へと成長し、床や畳などを汚染してしまいます。
そのため、ウンチを放置せずすぐに片付けることで環境汚染を防ぐことが重要です。すでに環境中に散らばった古い卵には注意が必要なため、トイレ周辺の定期的な清掃・消毒も合わせて行いましょう。

Dr.Nyan ポイント~
外に出たことが無くても感染した例

完全屋内飼育、しかも同居の犬も猫も居ないのに寄生虫に感染してしまった猫がいます。

感染の原因としては、外から帰ってきた飼い主さんの靴に虫卵の含まれたウンチが付いていた。
つまり飼い主さんがウンチを踏んでしまった、ということです!
そして靴に付いてウンチが玄関に落ち、そこから感染したと考えます。

完全室内飼いの猫が感染する経路としては、主に以下のようなケースが考えられます。

飼い主が公園や庭の土(目に見えない卵が含まれている)を靴の裏に付けて室内に持ち込み、猫がその床を踏んで毛づくろいした

同居する別の猫や、新しく迎えた猫が回虫を持ち込んだ

室内に侵入したネズミやゴキブリ、トカゲなどの待機宿主を猫が捕食した

定期的に検便を行う

新たに猫を迎えた際には、必ずウンチ検査を行います。特に仔猫は母子感染の可能性があるため、やはりウンチ検査を行います。

予防的投薬を行う

回虫の感染を疑う場合には、検便で回虫の卵が見つからなくても予防的な措置として駆虫を行います。母子感染を起こしている場合には、生後3週目ころから虫卵がウンチと一緒に排泄されるようになります。そのため仔猫では、生後3週齢ころまでには駆虫薬を飲ませる必要があります。

飼い主

仔猫って、こんなに何回も駆虫が必要なんですね!

Dr.Nyan

仔猫は再感染や母乳感染の影響を受けやすいので、定期的なスケジュール管理がとても大切なんです。

定期的な投薬スケジュール

  • 生後3週齢〜3ヵ月は2週間毎に投薬
  • 3~6ヵ月齢は1ヶ月に1回は投薬
  • 6ヵ月齢以降は3ヶ月に1回の投薬

予防的な投薬は、回虫の感染リスクを減らすためにも有効と言われています。

猫回虫症になりやすい猫種

  • 外に出る猫

よくある質問

猫のウンチに白い虫が見えるのはなぜですか?

猫回虫などの寄生虫が腸内に寄生し、成虫がウンチと一緒に排出されるためです。特に子猫ではよく見られます。

人にうつることはありますか?

はい、猫回虫は人にも感染する可能性があります。特に子どもでは注意が必要で、手洗いなどの衛生管理が重要です。

症状がなくても感染していることはありますか?

あります。回虫は無症状のことも多く、気づかないうちに感染しているケースも少なくありません。

どんな症状が出たら受診すべきですか?

下痢や嘔吐、元気・食欲の低下、お腹の膨らみなどが見られた場合は受診をおすすめします。

回虫はどうやって感染しますか?

回虫の卵を口から取り込むことで感染します。また猫では、母猫の母乳を介して仔猫へ感染する「経乳感染」が重要です。

治療はどのように行いますか?

駆虫薬を使用して回虫を排除します。多くの場合は内服薬やスポットオン薬で治療が可能です。

予防する方法はありますか?

定期的な駆虫薬の投与、屋内飼育、トイレの清掃などが有効です。

子猫はなぜ感染しやすいのですか?

母猫の母乳を介した「経乳感染」があるため、生まれて間もない仔猫でも感染することがあります。

ウンチに虫がいなくても安心ですか?

いいえ、虫が見えなくても卵の状態で感染していることがあります。検便が重要です。

まとめ

猫の回虫症は仔猫で多くみられる、しかもヒトにも感染することが知られています。そんな回虫はお腹の中に住んでいますが、予防もできる寄生虫です。もし、少しでも気になる兆候が見られたら早めにご相談くださいね!安心して暮らせるお手伝いをいたします!

複数の子猫が寄り添う様子 子猫で多い猫回虫感染症
猫回虫症は、免疫力の弱い子猫で特に多くみられる寄生虫感染症です。

【参考記事】千葉県獣医師会 人獣共通感染症 関連資料 

筆者・若山正之(Dr.Nyan)のプロフィール

若山動物病院院長 獣医師 若山正之(Dr.Nyan)

本記事は、犬・猫の診療を行う獣医師・若山正之が監修・執筆しています。
1975年より小動物臨床に従事し、現在は若山動物病院院長として地域医療に携わっています。長年の臨床経験に基づき、一般診療から予防医療、シニア医療まで幅広く対応しています。

特に、病気の早期発見・早期対応を重視し、飼い主様にわかりやすい説明と納得いただける診療を心がけています。
また、幹細胞療法や免疫療法などの先進医療にも取り組み、動物の生活の質(QOL)を重視した治療を提供しています。

これまでに一般飼い主様向けのセミナーや講演活動を多数行い、正しい医療知識の普及にも尽力しています。著書に『老犬生活 完全ガイド』『犬と猫の老齢介護エキスパートブック』などがあります。

本記事は最新の獣医療知見と臨床経験をもとに作成していますが、症状や状態によって対応は異なるため、気になる症状がある場合はお早めに動物病院へご相談ください。