Dr.Nyanのすこやかコラム
飼い主様に伝えたい犬猫の病気や日常ケアについての役立つコラムをお届け♪
【猫エイズ】猫エイズとは?その症状や治療法を解説
外に出たら近くの猫に噛まれちゃって、それから熱っぽいし口内炎もできちゃうし体調わるくて・・。そんな症状がみられたら「猫エイズ」に感染しているかもしれません。
せんせい〜猫にもエイズってあるの?
ねぇ〜せんせい!エイズって本当は何なの?
そう猫もエイズってあるんだよ!
本当の病名は「猫後天性免疫不全症候群」って言うんだ!
そりゃ大変だ!
あの〜猫エイズとはどんな病気なの?
感染したらどうなるの?
感染を予防するにはどうするの?
教えて、せんせい!
猫を飼っている飼い主さんの多くは、「猫エイズ」を知っているかと思います。
「猫エイズ」はさまざまな病気を併発し、健康に大きな影響を及ぼしてしまう病気です。しかも「エイズ」と言うと「不治の病」というイメージもあり、暗い感じになってしまいます。
しかし感染経路が限られているだけでなく、感染しても発症しないこともある病気なんです。そのため正しい知識があれば、辛くなく暮らせるよにしてあげられる病気です。
「猫エイズ」という呼び方は通称名です。
正しくは「猫免疫不全ウイルス感染症」または「猫後天性免疫不全症候群」と呼びます。ちなみに当コラムでは、一般的な呼び方である「猫エイズ」という呼び方で統一して書いています。
そのような「猫エイズ」の原因や対処法などについてDr.Nyanが説明しますね。
猫エイズの症状
猫エイズウイルスに感染すると免疫機能が落ち、とてもゆっくりと症状が進んでいく病気です。
そのため、全身にさまざまな症状が起こるのが特徴です。しかし「猫エイズの症状はこれだ!」と、決まったような症状が出るわけではありません。
その進行度と病状により、以下のように分けられています。
- ステージ1 急性期
- ステージ2 無症状キャリア期
- ステージ3 持続性全身性リンパ節症期
- ステージ4 エイズ関連症候群期
- ステージ5 エイズ期
これらの各ステージについての症状を、確認していきましょうね!
ステージ1 急性期
感染直後のエイズウイルスが体内に急激に増えてくる時期を、「急性期」と言います。
症状としては食欲が落ちたり熱が出たり、また下痢などがみられることがあります。また風邪のような症状が出ることもあります。
これらの症状は一時的なもので、時間とともに普通の状態に戻ってしまいます。その後は発症しない限りは元気で、見た目は健康な猫と変わらない生活ができます。
また感染したからと言っても、すべての猫が発症するわけではありません。
ステージ2 無症状キャリア期
血液中のエイズウイルスの量が、猫の持つ免疫力によって減ってくる時期です。しかしエイズウイルスは完全には排除されることはありません。
無症状キャリア期は、エイズウイルスの増殖が抑えられてはいるが発症はしていない状態です。そのため見た目は感染していない猫と同じように、普通に暮らしています。
このようにウイルスに感染しても、ウイルスの増殖を抑え症状が出ない状態を「キャリア」と言います。
ステージ3 持続性全身性リンパ節症期
無症状な状態であるキャリア期を過ぎ、体がエイズウイルスに蝕まれ全身のリンパ節が腫れてしまう時期です。リンパ節の腫れに気が付きやすのは、下顎や足の付け根、膝の裏など手で触れ確認しやすい部位のものです。
触ってわかりやすいリンパ節の場所です。
腫れがわかりやすいリンパ節の場所(上図赤字箇所)は
- 顎の骨と首の境目、ヒトで言う喉仏あたりにある「下顎(かがく)リンパ節」
- 足の付にある「鼠径(そけい)リンパ節」
- 膝の後ろにある「膝窩(しっか)リンパ節」
ただリンパ節の腫れ以外は見た目には体調の異常がハッキリしないことが多く、見逃してしまいやすい時期です。しかし体の中では、ゆっくりとエイズウイルスによるダメージが進んでいきます。
ステージ4 エイズ関連症候群期
免疫の異常に伴う症状が現れてくる時期です。リンパ節の腫れ以外にも口内炎やカゼの症状、慢性的な下痢などの消化器症状や皮膚炎などが見られます。
これらの症状の中でも、特に口内炎はよく見られる症状の一つです。
口内炎を起こすと口の中に潰瘍ができたり歯肉が盛り上がったりして、痛みを出してきます。その痛みから、お腹が減っても食べられず徐々に栄養状態が落ちていきます。
また体調も崩しやすくもなり、体力も落ちていきます。
ステージ5 エイズ期
さらに病状が進行した、末期の状態です。免疫力の低下から「日和見感染(ひよりみかんせん)」が見られます。
日和見感染とは免疫力が低下することにより、健康であれば感染症を起こさないような病原体に負けてしまい病気になってしまうことです。
特定の症状が出るわけではなく、風邪をひきやすくなったりなど様々な病気を発症してしまいます。その中でもよく見られるのが、口内炎や貧血、下痢や吐き気などの症状です。
この状態が進むにつれ、全身の状態が増悪していき最終的には死に至ってしまいます。また猫白血病ウイルス(FeLV)にも感染している場合には、猫エイズの症状が増悪してしまうことが多々あります。
猫エイズの原因
猫エイズの原因は、猫エイズウイルスの感染からなんだよ!
「猫エイズ」の原因は猫エイズウイルス(Feline Immunodeficiency Virus:FIV)の感染です。
このウイルスはヒトのエイズの原因であるヒトエイズウイルス(Immunodeficiency Virus:HIV)に似た構造をしています。しかし猫だけしか感染しないウイルスです!
もちろん、ヒトへの感染はありません。
感染は猫エイズウイルスを持った猫の唾液が、傷口から体内に入ることで起こります。そのため猫エイズは、基本的には咬傷や外傷によって感染します。
多くの場合には、喧嘩による咬傷による感染が原因とされています。
喧嘩をすることにより感染します!
統計によると、外に出ている猫の約10%が猫エイズに感染していると言われています。
エイズウイルス感染した場合には、体の中からエイズウイルスを完全に排除できません。そのためキャリアとして、生涯感染が続いた状態で暮らしていかなければなりません。
キャリアになった猫は、発症しなくても他の猫に感染させてしまうことがあります。つまり喧嘩の相手が見た目は健康そうであっても「キャリア」であれば、その猫と喧嘩をすれば猫エイズを貰ってしまう可能性があります。
キャリアの母猫が子猫を生むことで、子猫に感染させてしまうこともあります。しかし妊娠や出産での子猫への感染は、喧嘩ほど確率は高くはありません。そのためキャリアの母猫から産まれた子猫でも、猫エイズに感染しないこともあります。
ちなみに飛沫感染や空気感染、接触感染はありません。また同じ食器を使っても、そこからの感染もありません!
猫免疫不全ウイルス感染症・猫エイズの主な治療と費用
猫エイズに感染しているかは、血液検査をしないとわからないんだよ!
治療前には、猫エイズウイルスに感染しているかの検査を行う必要があります。
検査には猫から少量の血液を採取して行います。
体内からウイルスを完全に排除することはできない病気なので、猫エイズ自体を治療することはできません。また発症していない場合には治療を行わなければならない、ということでもありません。
対症療法
発症した症状に対して、緩和を図ることを目的とします。
たとえば口内炎が出来たなら、痛みを和らげてあげるため抗炎症剤や鎮痛剤などを使います。また脱水しているならば点滴を行うなど、それぞれの症状に対して治療を行います。
細菌などの感染症になった場合には、抗生物質を使います。悪性腫瘍、特にリンパ腫になるな場合もあり抗がん剤での治療を行うこともあります。
ただ全身的に免疫力が落ちているため、治療には困難が伴います。
抗ウイルス薬
抗ウイルス薬による治療猫エイズウイルスに有効な薬に使用は、あまり積極的には行われてはいません。その理由としては、骨髄抑制という大きな副作用からです。
インターフェロンを使うことで、生存期間が延びたとの報告もあります。
治療用の猫のインターフェロンです。
検査での注意点
成猫の検査の場合
猫エイズウイルスに感染しても、抗体が作られるまでに約1カ月かかります。そのため猫に咬まれた直後に検査し陰性となっても、正確な判定とは言えません。
感染の可能性がある場合には、受傷後1カ月以上の期間をあけて検査を行うことが必要です。
幼猫の検査の場合
母猫が猫エイズに感染している場合、子猫も検査で陽性と判定されることがあります。これは母猫からの移行抗体によることもあります。
その場合には移行抗体の影響が無くなる時期、例えば6カ月齢以降に再度検査を行います。そこで陰性であれば感染はありませんが、陽性であれば猫エイズに感染していると判定されます。
治療費
気になる猫エイズの治療費は幾らくらいでしょう?
感染の度合いや使用する薬、治療期間の違いから治療費が変わります。混合感染や併発症など様々な病気が重なっている場合には、治療期間も長く治療費もかかってしまいます!
猫免疫不全ウイルス感染症・猫エイズの予防方法
猫エイズは感染した猫に咬まれなければ感染しないとまで言われています!
咬まれないようにする
基本的に猫エイズウイルスを持つ猫に咬まれなければ、感染しません。そのためには家の外に出さないことが大切です。
去勢手術を受ける
多頭飼育の場合には、オスは去勢手術をしておきます。
室内飼いであれば、猫エイズウイルスを持つ猫との接触はありませんので感染の危険はありません。しかし外に出てしまうと、猫エイズウイルスを持つ猫との接触が考えられます。
ただ野良猫は危ない、外に出ても飼い猫だから大丈夫とは言えません。外に出ていれば飼い猫でも猫エイズキャリアとなりますので、安心は出来ません。
室内飼いの猫が屋外に出てしまった場合、猫エイズへの感染が心配になります。そのような場合には血液検査を行うのですが、感染直後には陽性とはなりません。
そのため一度検査して陰性と判定されても、再度1ヵ月以上経ってから再度検査を行います。
ストレスのないようにする
一番は、ストレスの少ない環境で過ごさせてあげることです。また水分と栄養に気をつけ、体調が悪くならないようにしてあげます。
快適な生活をおくれる環境はストレスが少なく体調も良い状態を維持でき、免疫力を高く保つことができます。その結果、発症のリスクが上がりにくくなります。
屋内飼育の徹底
とにかく猫を外に出さないことです。
チョットした注意で予防できますよ!
猫免疫不全ウイルス感染症・猫エイズになりやすい猫
- 外に出ている猫
- 免疫力が弱まっている猫
- 持続的なストレスがある猫
猫種には関係なく感染するので要注意!
上記であげた予防方法をぜひ実践してあげてください。
まとめ
猫エイズは徐々に免疫力が低下し、さまざまな症状を出す病気です。また猫エイズウイルスに感染すると、一生体内から排除することができません。そのため感染しないように心がけなくてはなりません。
もし感染していたなら発症しないよう、健康状態が維持できるようにお手伝いいたします。また少しでも気になる兆候が見られたら早めにご相談くださいね!安心して暮らせるお手伝いをいたします。