Dr.Nyanのすこやかコラム
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猫白血病ウイルス感染症|元気がない・発熱・リンパ節の腫れの原因と治療
本記事は、Dr.Nyan症例集「猫の感染症・ウイルス疾患編」の一部です。実際の診療症例をもとに、猫白血病ウイルス(FeLV)感染症の原因と対応についてわかりやすく解説しています。
「最近元気がない・発熱が続く」「リンパ節が腫れている」「貧血・体重減少がある」「口内炎が治らない」
猫の元気がない・発熱・リンパ節の腫れは、猫白血病ウイルス(FeLV)感染症でよく見られる代表的な症状です。
猫白血病ウイルス(FeLV)感染症は免疫を著しく低下させ、リンパ腫や貧血を引き起こす危険なウイルス感染症です。ワクチンで予防できる数少ない感染症のひとつです。
【症例】こんな猫が来院しました
飼い主
3歳の未去勢オス猫です。外出することもあります。1か月前から元気がなく、発熱と体重減少が続いています。リンパ節も腫れているようです。
Dr.Nyan
血液検査で重度の貧血と白血球異常が確認されました。このような場合、FeLV感染を強く疑うため抗原検査を行います。

FeLV抗原検査陽性の場合、PCR検査を行うこともあります。血液検査でリンパ腫への進行が疑われます。化学療法と支持療法を開始し、QOLの維持を優先した治療を行っています。

猫白血病ウイルス(FeLV)感染症とは?
猫白血病ウイルス(FeLV:Feline Leukemia Virus)は、猫の免疫系を直接攻撃するレトロウイルスです。感染すると免疫力が著しく低下し、さまざまな疾患を引き起こします。
感染後の経過は猫によって異なり、免疫によってウイルスを排除する猫もいれば、持続感染に進行する猫もいます。
Dr.Nyan
FeLVは「猫のエイズ」に例えられることがありますが、猫エイズ(FIV)とは別のウイルスです。FeLVはグルーミングや食器共有などの濃厚接触で感染することがあります。
感染後の転帰(経過)
| 転帰の種類 | 内容 |
|---|---|
| 排除(抵抗性) | 免疫がウイルスを抑え込み、検査で検出されない |
| 持続感染(進行性) | 血液中でウイルスが持続・疾患を発症する |
| 退縮感染(潜伏) | 骨髄などに潜伏・ストレスで再活性化の可能性 |
| 局所感染 | 特定の臓器・組織に限局 |
Dr.Nyan
感染してもすぐに発症するわけではありません。持続感染猫では感染から数年後に疾患が現れることも多いです。定期的な検査が重要です。
FeLV感染が引き起こす主な疾患
- リンパ腫・白血病(最多・リンパ節・胸腺・消化管に発生)
- 再生不良性貧血・溶血性貧血(骨髄への直接侵襲)
- 免疫不全による日和見感染(口内炎・上気道炎・皮膚炎など繰り返す)
- 腎臓病・神経症状
- 繁殖障害(流産・不妊)
リスク先生
歯茎が白い場合は重度の貧血の可能性があります。緊急対応が必要です。
症状
飼い主
ただの体調不良と見分けるのは難しいですね…
Dr.Nyan
そうなんです。症状だけでは判断が難しいため、検査で確認することが重要です。
初期〜中期
- 元気消失・食欲不振
- 発熱(38.5℃以上が続く)
- 体重減少
- リンパ節の腫大
- 口内炎・歯肉炎の悪化・難治性口内炎
- 繰り返す上気道炎・皮膚炎
進行期
- 重度の貧血(歯茎・舌が白い)
- 呼吸困難(胸腺型リンパ腫による胸水)
- 腹部の膨満(腹腔内腫瘍・腹水)
- ぐったりして動かない
Dr.Nyan
「治療しても口内炎が良くならない」「感染症を繰り返す」という場合は、FeLV検査を強くお勧めします。免疫不全の背景にFeLVが潜んでいることがあります。
リスク先生
歯茎が白い・呼吸が苦しそう・ぐったりして動かないなどの症状は重篤な状態です。すぐに受診してください。
感染経路
FeLVは唾液・鼻汁・尿・糞便などに含まれ、以下の経路で感染します。
- 相互グルーミング・鼻鼻接触(最多)
- 共用する食器・トイレ・寝床
- 喧嘩による咬傷
- 母猫から子猫への垂直感染(子宮内・授乳)
- 外出による感染猫との接触
Dr.Nyan
FeLVは環境中での生存時間が短く(乾燥・消毒で不活化)、空気感染はしません。しかし多頭飼育では濃厚接触によって感染リスクが高くなります。
FeLVは乾燥や一般的な消毒で不活化しやすく、環境中で長期間生存するウイルスではありません。
診断方法
| 検査 | 特徴 |
|---|---|
| SNAP検査(抗原検査) | 院内で約10分。スクリーニングに有効 |
| PCR検査 | 最も高精度。外部機関に送付。確定診断に |
| 血液検査 | 貧血・白血球異常・臓器機能の評価 |
| 超音波・レントゲン | リンパ腫・胸水・腹水の確認 |
Dr.Nyan
SNAP検査陽性時には、PCR検査や再検査で感染状態を詳しく確認することがあります。感染初期や一過性感染との区別のためです。特に症状のない猫では2〜3か月後に再検査することもあります。
猫白血病の検査キットは非常に優秀ですが、100%ではありません。特に健康そうに見える猫で陽性が出た場合、念のために外注検査(PCR法やIFA法)で再確認し診断確定することが重要です。
一度陽性でも、再検査で陰性になることがあります。
これは「陰転」と呼ばれ、感染初期に免疫がウイルスを抑え込み、持続感染に進まなかった状態です。
治療法
FeLV感染症を根本的に治す治療法はありません。治療の目標はQOL(生活の質)の維持・合併症の管理・症状の緩和です。
支持療法
- 栄養管理・食欲増進
- 貧血への輸血・造血刺激因子投与
- 二次感染(口内炎・上気道炎など)への抗生剤・抗炎症薬
- インターフェロン(免疫賦活・抗ウイルス効果)

リンパ腫・白血病への化学療法
リンパ腫が発生した場合は化学療法を行います。FeLV関連リンパ腫は治療反応が難しいケースもありますが、化学療法によって症状緩和や延命が期待できます。
Dr.Nyan
FeLV陽性であっても絶望する必要はありません。適切な管理と治療で長期間QOLを維持できる猫も多くいます。一緒に最善の方法を考えましょう。
予防方法
FeLVワクチン接種(最重要)

FeLVワクチンは、一般的に普及している「3種混合ワクチン」には含まれていません。
日本ではFeLVワクチンを含む5種混合ワクチンが使用されることがあり、外出する猫・多頭飼育の猫に特に推奨されます。
- 初回:8〜9週齢・12週齢の2回接種
- その後:1年ごとの追加接種
- 接種前にFeLV検査陰性を確認することが推奨される
Dr.Nyan
ワクチンは感染を完全に防ぐものではありませんが、発症リスクを大幅に下げます。外出する猫や感染リスクのある猫では接種が推奨されます。
完全室内飼育
外出を制限することで感染リスクを大幅に低下させます。新しい猫を迎える前には必ずFeLV検査を実施してください。
感染猫の隔離管理
FeLV陽性猫は陰性猫と同居させないことが原則です。唾液を介した濃厚接触で感染しやすいため、食器・トイレ・寝床を分けることが重要です。
リスク先生
FeLV陽性猫でも適切に管理すれば長く快適に生活できます。まず感染の有無を知ることが大切です。新しい猫を迎える前に必ず検査を。
FeLV陽性猫との生活で気をつけること
- 3〜6か月ごとの定期健診(血液検査・体重・リンパ節チェック)
- ストレスを最小限に(免疫をできるだけ維持するため)
- 感染症予防(ワクチン・駆虫・口腔ケアの継続)
- 食欲・体重の変化を毎日チェック
- 早期の異常発見が予後を大きく左右する
FeLV陽性猫では、ストレスを減らすことが発症や悪化を遅らせる助けになります。多頭飼育では静かに過ごせるスペースを確保し、食器やトイレを分ける「ゾーニング」も有効です。
毎日の食欲・体重チェックと、栄養バランスの良い食事も大切です。
こんな症状があれば早めに受診を
| 症状 | 受診の目安 |
|---|---|
| 元気がない・発熱が続く | ⚠️ 早めに受診 |
| リンパ節の腫れ・体重減少 | ⚠️ 早めに受診 |
| 口内炎・感染症を繰り返す | ⚠️ 早めに受診(FeLV検査を) |
| 歯茎・舌が白い(貧血) | ⚠️ 急いで受診 |
| 呼吸が苦しそう・お腹が張っている | ⚠️ 直ちに受診 |
| ぐったりして動かない | ⚠️ 直ちに受診 |
よくある質問
FeLVは人にうつりますか?
うつりません。FeLVは猫特有のウイルスで、人への感染は報告されていません。
陽性でも長生きできますか?
はい。持続感染猫でも適切な管理・定期健診・早期治療で数年以上QOLを維持できるケースがあります。
FeLVとFIV(猫エイズ)は違いますか?
別のウイルスです。FeLVは感染力が強く幼猫に多い傾向、FIVは咬傷感染が主で成猫(特にオス)に多い傾向があります。同時に感染することもあります。
検査は何歳から受けるべきですか?
新しく猫を迎えた時点・ワクチン接種前・外出している猫は定期的に(年1回程度)検査することを推奨します。
陽性猫と陰性猫が同居している場合は?
食器・トイレ・寝床の完全分離が原則です。陰性猫のワクチン接種も必ず行ってください。定期的な検査で陰性猫の感染有無を確認します。
FeLV陽性でもワクチンは必要ですか?
体調や免疫状態によって判断が必要ですが、他の感染症予防のため混合ワクチンが重要になることがあります。
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まとめ
「元気がない・発熱・リンパ節の腫れ・難治性口内炎」——FeLV感染症のサインかもしれません。感染してもすぐに発症するわけではなく、早期発見・適切な管理でQOLを長く保てます。
最大の予防はワクチン接種と完全室内飼育です。新しい猫を迎える前には必ず検査を行ってください。
Dr.Nyan
「いつもと違う」と感じた時点で受診のタイミングです。早期発見がその後の経過を大きく左右します。
筆者・若山正之(Dr.Nyan)のプロフィール

本記事は、犬・猫の診療を行う獣医師・若山正之が監修・執筆しています。
1975年より小動物臨床に従事し、現在は若山動物病院院長として地域医療に携わっています。長年の臨床経験に基づき、一般診療から予防医療、シニア医療まで幅広く対応しています。特に、病気の早期発見・早期対応を重視し、飼い主様にわかりやすい説明と納得いただける診療を心がけています。また、幹細胞療法や免疫療法などの先進医療にも取り組み、動物の生活の質(QOL)を重視した治療を提供しています。
これまでに一般飼い主様向けのセミナーや講演活動を多数行い、正しい医療知識の普及にも尽力しています。著書に『老犬生活 完全ガイド』『犬と猫の老齢介護エキスパートブック』などがあります。
本記事は最新の獣医療知見と臨床経験をもとに作成していますが、症状や状態によって対応は異なるため、気になる症状がある場合はお早めに動物病院へご相談ください。