猫の甲状腺機能亢進症|食べるのに痩せる?元気すぎる症状と治療法

  1. ホーム
  2. Dr.Nyanのすこやかコラム
  3. 猫が食べるのに痩せるのは危険?甲状腺機能亢進症の症状と治療法

Dr.Nyanのすこやかコラム

コラム記事検索

猫が食べるのに痩せるのは危険?甲状腺機能亢進症の症状と治療法

猫が歳を取っても食欲があり、動きも活発でやたら元気!

一見病気のサインとは考えにくいような症状が現れる病気が甲状腺機能亢進症です。

先生!うちの子、夜中になると走りまわって運動会みたいになるんです。
しかも、大きな声で鳴き叫ぶようなことも多いんです。
どうしてなんでしょうッ!

あらッ、ひょっとして『甲状腺機能亢進症』かもしれないよ!
血液検査でわかるから、検査してみようね。

先生、検査の結果です。
甲状腺の数値が高くなってます。
『甲状腺機能亢進症』は猫のホルモンの病気の中で最も多い病気ですよね!

猫の甲状腺ホルモン(T4)検査結果の例

検査の結果では甲状腺ホルモンがいっぱい分泌されていました。

「甲状腺機能亢進症」は高齢の猫に多い病気で、7歳以上の猫の約10%が罹患していると言われています。そのためシニア期の健康診断には、「甲状腺機能亢進症」の診断ができる血液検査を行うことが勧められます。

ここでは『猫の甲状腺機能亢進症』の原因と対処法などについて、Dr.Nyanがわかりやすく説明いたします。

目次

甲状腺機能亢進症はどんな症状?

甲状腺はヒトで言う「のどぼとけ」のすぐ下にある小さな組織で、左右に1対あり「全身の細胞の代謝を活発にするホルモン」を分泌しています。

甲状腺機能亢進症になると「甲状腺」の機能が「亢進」、つまり活発化し甲状腺ホルモンが過剰に分泌され体の組織の代謝がさらに高まります。その結果、さまざまな症状が引き起こされてしまいます。

それでは一緒に症状を確認していきましょう!

怒りっぽくなるなど性格に変化が見られる

目がパッチリ開いて、声も大きく元気!

診察しようとすると「寄るな!」と大きな声で鳴く、「触るな」と大きな声で鳴き、暴れる!そのような症状が見られることが多いのが、甲状腺機能亢進症です。

甲状腺機能亢進症の猫の特徴(活動的で痩せている様子)

甲状腺機能亢進症を患っている猫。病気なのに元気いっぱいに見えます。

見た目や性格の変化には、以下のようなものがあります。

  • 活動的になり落ち着きがなくなる
  • 怒りっぽくなる
  • 興奮しやすく時には凶暴になる
  • 大きな声で叫んだり変な声で鳴く
  • やたらと甘えてくることがある
  • 夜鳴きがみられる
  • 水をいっぱい飲みオシッコをいっぱいする
  • すごく食べるのに痩せてくる
  • 毛がボソボソになり艶が悪くなる
  • 毛が抜けやすくなる

心臓など内臓の機能に変化が見られる

甲状腺ホルモンは心臓や胃腸などの内臓の働きや、自律神経を刺激し体温を調節しています。そのため甲状腺ホルモンの分泌が過剰になると、それらの調節も異常になってしまいます。

体内の変化には以下のようなものがあります。

  • 心臓の動きが活発になり心拍数が増える
  • 心臓に雑音が聞こえるようになる
  • 心筋障害を起こす
  • 血圧が高くなる
  • 体温が高くなる

甲状腺機能亢進症が進むとどうなるの?

見かけは元気なので病気だと気づけないまま、徐々に進行していきます。進行するにつれ体力や食欲が落ち、また痩せたり嘔吐や下痢を繰り返すようになります。

甲状腺機能亢進症は代謝が活発になっているため、老化が早くなってしまう病気なのです!そして末期を迎えると燃え尽きたようになり、静かに衰弱してしまうことがあります。

甲状腺機能亢進症の原因は?

甲状腺ホルモンがいっぱい分泌されてしまうのが甲状腺機能亢進症です。
それでは一緒に原因を確認していきましょう。

甲状腺機能亢進症は、甲状腺組織の腫瘍化などで甲状腺の細胞が異常に増えてしまうことで起こります。甲状腺腫瘍の場合では、その多くは良性で悪性のものは2%未満といわれています。

大きくなった甲状腺は、皮膚の上からでも触ってわかるようになることもあります。ちなみにホルモン関連の病気には、甲状腺機能亢進症の他に糖尿病もあります。

甲状腺機能亢進症の治療法と費用

甲状腺機能亢進症は、一見健康に見える裏に隠れている病気とも言えます。そのため甲状腺機能亢進症を見つけ出すため、血液検査を行い甲状腺ホルモンの量を調べます。

甲状腺ホルモン値が高い場合には、甲状腺機能亢進症と診断されます。

甲状腺機能亢進症の治療について説明しますね。
一般的には飲み薬やフードによる内科的治療甲状腺を摘出する手術を行う外科的治療の二つがあります。

甲状腺機能亢進症の治療は甲状腺ホルモンの分泌を抑え、また併発症を合わせて治療します。

飲み薬やフードによる内科的治療

猫の甲状腺機能亢進症では、甲状腺ホルモンを抑える薬を飲ませる内科的な治療がメインになります。
一般的には自然に治る病気では無いため、基本的には継続的な投薬が必要になります。

薬は必要量を確認するためにも、投薬の前後で血液検査を行い甲状腺ホルモンの量を測る必要があります。また、薬を飲ませた後、まれに食欲が落ちたり嘔吐や下痢などが見られることがあるため、最初は少なめの量から始め徐々に飲ませる薬の量を増やしていきます。

万が一、薬の量が多すぎると甲状腺機能低下症を引き起こしてしまうため、定期的に血液検査を行います。

甲状腺ホルモンの材料となるヨウ素を抑えた
甲状腺機能亢進症の猫のためのフードがありますよ!

甲状腺機能亢進症用のフードを食べることで、甲状腺ホルモンの分泌量が減るため症状を軽くすることができるとされています。しかしフードのみでは、病状の大きな改善は難しいとされています。

そのため、飲み薬による治療の補助として使われることが多い傾向にあります。

甲状腺を摘出する手術を行う外科的治療

外科的治療は甲状腺が悪性腫瘍である場合や薬を飲ませるのが難しい、内科的治療で治りが悪い場合や内科的治療に反応しない場合で腎不全がみられなかった猫に行います。

両側の甲状腺を摘出した場合には、甲状腺ホルモンが分泌されませんので、甲状腺ホルモンの薬を一生涯飲むことになります。外科的治療を行う場合には、麻酔のことや手術後のケアなどについて、先生と良く相談しましょう。

甲状腺の外科的治療が必要となる場合には、専門病院を紹介しています。

~Dr.Nyan ポイント~
甲状腺機能亢進症は腎不全を併発することが多い?

甲状腺機能亢進症を検査する時には必ず他の病気も隠れていないか確認をします。その理由は、甲状腺機能亢進症を発症している猫は心臓病や腎臓病を併発していることが多いと言われているからです。

これらの病気は高齢の猫に多く見られる、しかも一般的な病気です。内科的な治療を行なっていると、腎不全の症状が出てくることがあります。

これは甲状腺機能亢進症になると、甲状腺ホルモンの作用により体の中を流れる血液の量が増え、その結果、腎臓の血流量も増えて腎不全の症状を隠してしまっているからです。

甲状腺の治療を行う前に、治療による腎臓への影響が現れるかを知ることはとても難しいとされています。腎不全がある場合には、甲状腺機能亢進症とバランスよく治療することが大切です。

甲状腺機能亢進症の治療費は?

甲状腺機能亢進症は隠れた病気のため、重症化する前に早期発見することが大切です。
甲状腺ホルモンの検査は採血料を含め6000〜8000円、飲み薬は体重や症状により違いますが、一月分で3000〜5000円くらいでしょうか。

甲状腺機能亢進症は生涯治療が必要となりますが、治療が安定し合併症も無い場合には健康な猫と変わらない生活ができます!

甲状腺機能亢進症の予防方法

甲状腺機能亢進症の予防方法はありません

甲状腺機能亢進症の初期は症状に気づきにくく、また少し病状が進んでも分かりやすい症状が現れるとも限りません。そのため重症化を防ぐためには、定期的な健康診断以外には手が無いのが現状です。

血液検査でわかる病気なので、猫の健康診断に組み込みたい項目の一つです。

甲状腺機能亢進症を起こしやすい猫種

  • 老齢の猫

よくある質問

猫がよく食べるのに痩せるのはなぜですか?

食べているのに体重が減る場合、甲状腺機能亢進症の可能性があります。甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで代謝が異常に高まり、摂取したエネルギー以上に消費してしまうためです。

猫の甲状腺機能亢進症の初期症状は何ですか?

初期には元気すぎる、落ち着きがない、よく鳴く(夜鳴き)、食欲が増えるといった変化が見られます。一見健康に見えるため、気づきにくいのが特徴です。

甲状腺機能亢進症になると性格は変わりますか?

はい、変わることがあります。興奮しやすくなったり、怒りっぽくなったり、落ち着きがなくなるなどの行動の変化が見られることがあります。

甲状腺機能亢進症はどのくらいの年齢で多いですか?

主に7歳以上の高齢猫に多く見られます。10歳以上では発症率がさらに高くなるため、シニア期の健康診断が重要です。

猫の甲状腺機能亢進症はどうやって診断しますか?

血液検査で甲状腺ホルモン(T4など)の値を測定することで診断します。比較的簡単に調べることができるため、健康診断での検査が推奨されます。

甲状腺機能亢進症の治療方法は何がありますか?

.主に以下の3つがあります。
・飲み薬による内科的治療
・療法食(ヨウ素制限食)
・甲状腺摘出手術(外科的治療)
多くの場合は内科治療が中心となります。

治療しないとどうなりますか?

進行すると体重減少、心臓病、高血圧、腎臓病などの合併症を引き起こします。最終的には体力が低下し、命に関わる状態になることがあります。

甲状腺機能亢進症と腎臓病は関係がありますか?

はい、関係があります。甲状腺機能亢進症によって腎臓の血流が増えることで、腎不全が隠れてしまうことがあります。治療開始後に腎機能の問題が明らかになるケースもあります。

予防する方法はありますか?

明確な予防方法はありませんが、定期的な健康診断による早期発見が最も重要です。特に7歳以上の猫では定期検査をおすすめします。

どのタイミングで動物病院を受診すべきですか?

食欲があるのに痩せてきた、夜鳴きが増えた、落ち着きがない、性格が変わったなどの変化が見られた場合は、早めの受診をおすすめします。

まとめ

老齢になって、ますます元気になったと勘違いしてしまうのが甲状腺機能亢進症です。そんな病気でも、治療により症状が安定してしまえば健康な時と変わらない生活ができます。

一見元気そうでも行動の変化などに気になる症状がある場合や、投薬開始後に体調等で気になることがある場合は、早めにご相談くださいね。

健康に過ごせる暮らしを、お手伝いいたします。

筆者・若山正之(Dr.Nyan)のプロフィール

佐倉市 若山動物病院 院長 若山正之 獣医師プロフィール写真

本記事は、佐倉市で犬・猫の診療を行う獣医師・若山正之が監修・執筆しています。
1975年より小動物臨床に従事し、現在は若山動物病院院長として地域医療に携わっています。長年の臨床経験に基づき、一般診療から予防医療、シニア医療まで幅広く対応しています。特に、病気の早期発見・早期対応を重視し、飼い主様にわかりやすい説明と納得いただける診療を心がけています。また、幹細胞療法や免疫療法などの先進医療にも取り組み、動物の生活の質(QOL)を重視した治療を提供しています。
これまでに一般飼い主様向けのセミナーや講演活動を多数行い、正しい医療知識の普及にも尽力しています。著書に『老犬生活 完全ガイド』『犬と猫の老齢介護エキスパートブック』などがあります。
本記事は最新の獣医療知見と臨床経験をもとに作成していますが、症状や状態によって対応は異なるため、気になる症状がある場合はお早めに動物病院へご相談ください。