Dr.Nyanのすこやかコラム
飼い主様に伝えたい犬猫の病気や日常ケアについての役立つコラムをお届け♪
猫のマイコプラズマ感染症|くしゃみ・鼻水が続く原因と治療・受診の目安
本記事は、Dr.Nyan症例集「猫の感染症・ウイルス疾患編」の一部です。実際の診療症例をもとに、くしゃみや鼻水が続く原因と対応についてわかりやすく解説しています。
「くしゃみと鼻水が何日も続いている…」「目やにがひどくて、目が開きにくそう」「ご飯を食べる量が減ってきた」
こうした症状、「ただの猫風邪かな」と様子を見ていませんか?
それ、マイコプラズマ感染症のサインかもしれません。
猫の上部呼吸器感染症は見た目が似ているため区別が難しく、初期は軽く見えても数日で悪化することがあります。特に「食欲低下」が加わった場合は体力低下や脱水につながるため、見た目以上に病状が進行しているサインであることがあります。
【症例】こんな猫が来院しました
飼い主
くしゃみと鼻水が1週間続いています。目やにもひどくて、ご飯もあまり食べなくなってきました。
Dr.Nyan
くしゃみ・鼻水・目やに・食欲低下がそろったとき、猫風邪と同時にマイコプラズマ感染症も疑います。PCR検査で確認しましょう。
PCR検査の結果、マイコプラズマ感染が確認されました。抗生剤(マクロライド系)による治療を開始し、1〜2週間で症状が改善しました。
再発予防のため生活環境の見直しも指導しました。
このように、適切な抗生剤治療に加えて「再発させない環境づくり」まで行うことが重要です。治療だけで終わると再発を繰り返すケースも少なくありません。
マイコプラズマ感染症とは?
マイコプラズマは、猫風邪の原因のひとつです。ヘルペスウイルス・カリシウイルス・クラミジアと同様に、上気道(鼻・のど・目)に感染し、くしゃみ・鼻水・目やにを引き起こします。
このため症状は「鼻」「目」「食欲」に同時に現れやすく、1つの症状だけで判断するのではなく、全体として見ることが重要です。
特徴的なのは、マイコプラズマは常在菌として健康な猫にも存在しているという点です。
なお、猫のマイコプラズマには、今回解説している「呼吸器に感染するタイプ」だけでなく、血液に感染する「ヘモプラズマ(猫ヘモプラズマ感染症)」も存在します。
ヘモプラズマは赤血球に感染し、貧血や発熱、元気消失を引き起こす別の病気です。
同じ「マイコプラズマ」という名前でも感染する場所や症状は異なるため、混同しないことが大切です。
「血液のマイコプラズマ(ヘモプラズマ)との違い」
猫のマイコプラズマには、今回解説している「呼吸器に感染するタイプ」だけでなく、血液に感染するタイプである「ヘモプラズマ(猫ヘモプラズマ感染症)」も存在します。
ヘモプラズマは赤血球に感染し、貧血や発熱、元気消失を引き起こす別の病気です。
同じ「マイコプラズマ」という名前でも感染する場所や症状は異なるため、混同しないことが大切です。
飼い主
マイコプラズマって、鼻だけじゃないんですね…
Dr.Nyan
はい。血液に感染して貧血を起こすタイプもあります。同じ名前でも症状がまったく違うため、検査で原因を見分けることが重要です。
普段は問題を起こさなくても、免疫力が落ちたタイミングで急に増殖し、症状を引き起こします。
つまり「感染=すぐ発症」ではなく、体の状態によって発症するかどうかが決まる病気です。
免疫力が正常なうちは発症しませんが、ストレス・栄養不足・寒暖差などで免疫力が低下すると発症します。また他の猫風邪ウイルスとの混合感染で重症化しやすいのも注意点です。
複数の病原体が同時に関与すると、治療が効きにくくなり回復まで時間がかかる傾向があります。
実際の臨床では、単独感染よりも複数の病原体が重なっているケースが多く、これが治りにくさの原因になります。
Dr.Nyan
「ただの風邪かな」と様子を見ているうちに、混合感染で一気に悪化するケースがあります。くしゃみ・鼻水が3日以上続いたら早めに受診してください。
マイコプラズマ感染症の症状
飼い主
最初は軽いくしゃみだけだったんですが…
Dr.Nyan
初期は軽症に見えることが多いですが、ここで対応するかどうかが重要です。
くしゃみ・鼻水(初期から現れやすい)
人の風邪に非常によく似た症状です。頻繁なくしゃみを繰り返し、鼻水が遠くまで飛び散ります。この飛沫が他の猫への感染源になります。
鼻が詰まるとにおいを感じにくくなり、食欲低下につながります。これは猫はにおいで食欲が左右されるため、鼻が詰まるとご飯を食べなくなることがあります。
鼻水は透明なものから始まり、悪化すると粘り気のある鼻水や膿のような鼻水に変化することもあります。
目やに・涙(目の症状)
涙が増加して目の周囲が濡れ、目やにが増えます。目の不快感から前足で目を擦るため、目の周囲が汚れることもあります。
目やにが固まるとまぶたが開きにくくなり、放置すると角膜に傷がつくリスクもあります。
発熱・脱水(進行すると)
Dr.Nyan
猫の平熱は平均38度台。元気なときに平熱を把握しておくと、発熱に早く気づけます。体温は太ももの付け根で測ります。
発熱すると元気・食欲が低下し、水を飲む量も減って脱水状態になることがあります。脱水が進むと回復力が低下し、さらに食欲不振が悪化すると回復が遅れるだけでなく、入院治療が必要になることもあります。
リスク先生
肺炎を併発すると命に関わることがあります。特に子猫は急速に悪化するため注意が必要です。症状が出たらすぐに受診してください。
感染経路と原因
飼い主
他の猫にうつりますか?
Dr.Nyan
くしゃみ・鼻水の飛沫や接触で感染します。多頭飼育では感染猫を隔離することが大切です。
感染した猫の涙・鼻水・くしゃみの飛沫の中にマイコプラズマが含まれています。感染猫と共用したタオルや食器からも感染します。
特に新しく猫を迎えた直後や、保護猫との接触後は発症リスクが高くなるため注意が必要です。特に新しく迎えた猫は、最初の1〜2週間は他の猫と接触させないことが重要です。
マイコプラズマは常在菌であるため、治癒後も免疫力が低下すると再発することがあります。また治癒後もくしゃみや鼻水が残り、慢性的な鼻炎になることもあります。慢性化すると完全に症状が消えず、「くしゃみが続く猫」になってしまうこともあります。
なお、猫のマイコプラズマはヒトには感染しません。
診断方法
治療前にPCR検査を行い、マイコプラズマ感染を確定します。
実際に症状だけでは原因を特定できないため、検査による裏付けが適切な治療選択につながります。しかも原因を特定せずに治療すると、効果が不十分になり長引く原因になります。
検体は結膜と喉の奥の2か所から採取し、外部検査機関(IDEXX社など)に送付して確認します。

Dr.Nyan
猫風邪と症状がよく似ているため、PCR検査で原因を特定することが適切な治療への近道です。
治療法
抗生剤
マイコプラズマは特定の薬を選ぶ必要があるという「治療の特殊性」があり、治療に有効な系抗生剤を投与します。早期に投与を始めるほど重症化を防ぐことができます。
途中で投薬をやめると再発しやすいため、症状が改善しても指示通りの期間は投薬を続けることです。
しっかり治療すれば改善するケースが多いため、投薬を途中でやめないことが大切です。
生活環境の管理
自宅でのケアが回復スピードに大きく影響します。
特に保温と水分管理は重要です。
- 保温し体を冷やさないようにする
- 目・鼻周りの汚れをこまめに拭いてあげる
- 吸入器で薬を霧状にして吸わせる(ネブライザー療法)
- においが立つようフードを温めて食欲を促す
- 脱水防止のため水分補給を工夫する
Dr.Nyan
3日以上症状が続く、または悪化している場合は早めの受診が必要です。軽症に見えても油断は禁物です。
ちなみマイコプラズマは環境中では非常に弱く、一般的な除菌剤や石鹸ですぐに死滅します。そのため、過度に恐れる必要はなく「手洗いや器具の洗浄」が有効です。
予防方法
飼い主
発症しないようにしたいです!
Dr.Nyan
免疫力を落とさないことと、混合ワクチン接種で猫風邪との合併症を防ぎましょう。
完全に防ぐことは難しいですが、「発症させない・悪化させない」ことは十分可能です。
混合ワクチンの接種
マイコプラズマ単独のワクチンはありませんが、混合ワクチンでヘルペスウイルス・カリシウイルスなど他の猫風邪との合併感染を予防し、重症化を防ぐことができます。
生活環境・栄養状態を整える
気温が低い時期や寒暖差の激しい季節の変わり目に多く見られます。ストレスの少ない環境・十分な栄養・適切な温度管理で免疫力を維持することが大切です。また歯周病などの基礎疾患も免疫力を低下させます。口の中の健康状態も定期的にチェックしましょう。
発症しやすい猫の特徴
猫種には関係なく、以下の状態の猫に発症リスクが高くなります。
- 生後2〜3か月の子猫(免疫力が弱い)
- ワクチン未接種の猫
- 免疫力が低下している猫(高齢・基礎疾患あり)
- 慢性的なストレスを受けている猫
- 多頭飼育で感染猫と接触がある猫
これらに当てはまる猫は、軽い症状でも早めの対応が重要になります。
こんな症状があれば早めに受診を
| 症状 | 受診の目安 |
|---|---|
| くしゃみ・鼻水が3日以上続く | ⚠️ 早めに受診 |
| 目やに・涙が増えて目が開きにくい | ⚠️ 早めに受診 |
| 食欲が落ちてきた | ⚠️ 早めに受診 |
| 発熱・ぐったりしている | ⚠️ すぐに受診 |
| 子猫で症状が出ている | ⚠️ すぐに受診 |
| 多頭飼育で他の猫にも症状が出ている | ⚠️ 早めに受診・隔離 |
迷った場合は様子を見るよりも早めの受診が安全です。
特に子猫は進行が早いため注意してください。
Dr.Nyan
元気に見えても、くしゃみや鼻水が続く場合は放置しないでください。
よくある質問
飼い主様から特に多くいただくご質問をまとめました。
くしゃみや鼻水は受診すべきですか?
3日以上続く場合や、食欲低下・目やに・発熱を伴う場合は早めに受診してください。軽症に見えても、混合感染で急速に悪化することがあります。
自然に治りますか?
軽症であれば自然回復することもありますが、混合感染している場合は治療が必要です。症状が長引く・悪化する場合は必ず受診してください。
他の猫にうつりますか?
はい。くしゃみ・鼻水の飛沫や接触で感染します。多頭飼育では感染猫を隔離し、食器・タオルを分けてください。
どのくらいで治りますか?
軽症であれば数日〜1週間程度で改善することもありますが、混合感染している場合は数週間かかることもあります。
放置するとどうなりますか?
肺炎を併発し重症化する可能性があります。特に子猫や免疫力が低い猫では、急速に悪化して命に関わることがあります。
リスク先生
慢性鼻炎として症状が残るケースもあります。一度悪化すると長引くため、早期治療が重要です。
ヒトにうつりますか?
猫のマイコプラズマはヒトには感染しません。安心してケアしてあげてください。
まとめ
最後に、見逃してはいけないポイントを整理します。
「くしゃみ・鼻水が3日以上続く」
「目やにがひどい」
「食欲が落ちた」
この3つが重なったとき、マイコプラズマ感染症を疑ってください。
また1つでも当てはまる場合は、早期対応が予後を大きく左右しますので早めの受診をおすすめします。
猫風邪との混合感染で一気に重症化することがあります。軽症に見えても早めの受診が愛猫を守ることにつながります。
Dr.Nyan
「なんか変かも」と感じたら、お気軽にご来院ください。
筆者・若山正之(Dr.Nyan)のプロフィール

本記事は、犬・猫の診療を行う獣医師・若山正之が監修・執筆しています。
1975年より小動物臨床に従事し、現在は若山動物病院院長として地域医療に携わっています。長年の臨床経験に基づき、一般診療から予防医療、シニア医療まで幅広く対応しています。
特に、病気の早期発見・早期対応を重視し、飼い主様にわかりやすい説明と納得いただける診療を心がけています。また、幹細胞療法や免疫療法などの先進医療にも取り組み、動物の生活の質(QOL)を重視した治療を提供しています。
これまでに一般飼い主様向けのセミナーや講演活動を多数行い、正しい医療知識の普及にも尽力しています。著書に『老犬生活 完全ガイド』『犬と猫の老齢介護エキスパートブック』などがあります。
本記事は最新の獣医療知見と臨床経験をもとに作成していますが、症状や状態によって対応は異なるため、気になる症状がある場合はお早めに動物病院へご相談ください。