Dr.Nyanのすこやかコラム
飼い主様に伝えたい犬猫の病気や日常ケアについての役立つコラムをお届け♪
【破折】犬の破折とは?症状や治療法を解説
オヤツやフードを食べるとき顔を傾けるなど、食べる姿がいつもと違う!
そんな症状がみられたら「口の中にトラブル」を引き起こしているかもしれません。
せんせい〜ガム噛んでたら歯が変になったの!
どうにかして〜ッ!
あらッ、ひょっとして『破折』かもしれないね!
診てあげるから口を大きく開けてごらん?
先生〜この歯割れてませんか??破折ですよね??
歯が割れちゃっています!
歯が欠けたり折れたりしているのを『破折』と言います。
破折は飼い主さんが病変に気づきにくい病気のひとつですが、気をつければ防げる病気でもあります。
ここでは『犬の破折』の原因と対処法などについて、Dr.Nyanがわかりやすく説明いたします。
破折の症状
先生ー破折はどの歯で起こることが多いの?
破折を起こしやすいのは犬歯と第四前臼歯です。
犬歯と第四前臼歯の場所です。
破折は歯肉より上の見えている歯冠部で起こる場合もあるし、歯茎に隠れ目では見えない歯根部(顎の骨の中の部分)で起こる場合もあります。
破折により歯の内部が傷ついたり、歯の周囲の組織が細菌感染を起こしてしまうことがあります。
破折は歯が欠けたり折れたりするだけではありません。
破折を気が付かず放置しておくと、痛みなど様々な症状が出てきます。
それでは一緒に症状を確認していきましょう!
症状が伴わない
破折しても歯髄(歯の内部の血管や神経の通っている軟らかい組織)には傷が付いていない場合には、特に症状が見られません。または歯髄に傷がついても、初期の段階では症状が見られない場合もあります。
食べ方が変・痛がる
オヤツやフードを食べるときに、違和感などを感じることがあります。ヒトで言えば噛むと痛い、歯がズキズキする、歯にしみるなどの症状です。
そのため、違和感を感じる方の歯で噛むことが少なくなってしまいます。また食べたものが破折した方に行かないよう、頭を傾けて食べていることもあります。
歯肉が赤く腫れる
破折により歯肉に傷がついてしまったり、傷ついた場所が炎症を起こしてしまうと赤く腫れてしまいます。また歯周病へとなってしまうこともあります。
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クシャミや鼻水
歯根部の炎症が鼻へと進み、クシャミや鼻水、鼻血が出るようにもなります。
顔が腫れる
歯髄や周囲の組織が感染してしまうと根尖膿瘍(こんせんのうよう)となってしまいます。
根尖膿瘍は歯根部に膿が溜まった状態で、悪化すると口の中の粘膜や歯肉に炎症や穴が開いてしまいます。また目の下の皮膚が腫れたり、その部分に穴が開き膿が出てくるようにもなります。
目の下の頬の部分に穴が開いてます。
細菌が血液中に入って全身へ回ってしまうと、様々な病気を引き起こしてしまいます!
例えば
⇒ 肺:肺炎、ぜんそく
⇒ 関節・骨:関節炎、骨髄炎
⇒ 腎臓:慢性腎臓病
⇒ 心臓:心内膜炎、血栓症、
など大きな病気につながっていくので注意が必要です。
破折の原因
犬の歯の構造や形状
犬に破折が多い理由は、歯の構造と形状に原因があります。
犬はエナメル質の厚さが薄く、硬いものを食べると歯が傷が付きやすいです。
エナメル質とは歯の表面を覆っている歯の一部で骨よりも硬く、水晶と同じくらいの硬さがあると言われています。
エナメル質の厚さを人間と比較すると、犬は 0.3~0.5mmに対して、人間は1~3mm です。
このエナメル質の厚さの違いは「犬は肉を噛みちぎり飲み込む、ヒトは噛み砕きながら咀嚼する」と言う食べ方の違いにも表れています。
こういった犬の歯の構造が破折が起こりやすい原因の1つです。
また犬の歯は、先が尖っている形をしているため折れやすいとも言われています。
欲求
犬には噛みたいという、生まれ持った欲求があります。
この欲求が満たされないと、椅子の足などの家具やケージなど何でも噛んで傷ついてしまうことがあります。
硬いものを噛む
噛みたい要求を満たしてあげるため、硬いものをあげすぎると破折になる場合があります。
例えば、蹄やアキレス腱などで出来たオモチャを与えた場合や、歯石予防や歯石除去に良いからと歯磨きガムを与えた場合などが考えられます。
ガムを噛んで歯を折ってしまいました。
衝撃
衝撃による破折も考えられます。
例えば
- ボールやフリスビーなどをキャッチした衝撃
- 喧嘩や戯れあい中のぶつかった衝撃
- 誤って高いところから落ちてしまった衝撃
- 交通事故などの大きな力がかかった衝撃
犬と遊んでいる時や散歩中は、十分に注意してください。
破折の主な治療法と費用
破折の治療には、抜歯と歯を修復して温存する二つの治療方法があります。
抜歯
破折し歯髄が損傷している場合には、抜歯を行うことがあります。
乳歯の破折は、修復せず抜歯をします!
第四臼歯が破折してしまいました。
破折した歯を抜歯しました。
破折を修復
破折しても発見が早く歯髄や周囲の組織の損傷も少ない場合には、修復する治療を行うこともあります。
破折を修復治療を望まれる場合には
歯科治療を専門に行っている動物病院を紹介致しております。
破折の治療費
抜歯を行うにも修復を行うにも、全身麻酔を必要とします。
そのため単純な抜歯でも、5〜6万円はかかると思ってください。
しかも重度の破折になると、それだけ治療費もかかってしまいます!
ちなみに歯石除去の際に破折が発見されることもあります。
これは破折した場所に歯石が溜まり、破折が見えなかったことによります。
やはり症状的にも経費的にも、破折を含め歯科処置は早期に行うことが望まれます。
破折の予防方法
犬は何でもガリガリと噛むため『犬の歯は強い!』そのようなイメージを持っています。
事実、本当に骨などの固いものを与えると喜んで噛みます。
しかし実際には、思っている以上に犬の歯はデリケートなんです!
もし万が一、歯は欠けて折れてしまった場合には元には戻りません。そのため、日々の生活の中での注意がとても重要になります。
硬いものを噛ませない
普段から、日々の生活のなかで『固いものを噛ませない』ようにすることが大切です。
そのためオモチャや歯磨きガムは、固さに注意して購入することが破折の予防になります。
固くても、チョットの時間なら噛ませても大丈夫だろうとは思わないようにして下さいね!
衝撃を防ぐ
衝突や落下などの事故を、未然に防ぐことにも注意します。
抱っこしてるときに落としてしまって破折してしまうこと、このようなことが意外と多いんですよ!
またリードをしっかり持って散歩したり、ソファーやベッドなどには上がらないように躾けることも大切です。
日々のケア
早期発見、早期治療により、抜歯しないで良い場合もあります。
そのためにも口の中のチェックを心がけましょうね。
破折を起こしやすい犬種
- 一般的に体が大きく若い犬
- 性格的に活発な犬
- ボーダーコリー
- ミニチュアダックスフント
- ラブラドール・レトリバー
- シェルティー
- ウエルシュコーギー
まとめ
歯を失う病気 No.2が『破折』(No.1は歯周病です!)です。
そして破折の原因No.1が硬いガムを噛ませてしまうことです。
『破折』の多くはチョット気をつけるだけで予防できますので、ガムやオヤツの与えすぎには気をつけてくださいね。
また何か気になる兆候が見られたら、早めにご相談ください!歯の健康を守るお手伝いをします!