Dr.Nyanのすこやかコラム
飼い主様に伝えたい犬猫の病気や日常ケアについての役立つコラムをお届け♪
老犬の介護④:老犬介護に疲れた人へ。介護を「快互」にするための心構えとアドバイス

介護は覚悟や準備もないままに、突然始まってしまいます。
そのため、「何をどうして良いかもわからない」と戸惑うのは当然のことです。
家にいる時間の長いご家族に負担が集中し、仕事や生活スタイルが変わってしまったり、終わりが見えない不安から孤立感や閉塞感を抱いてしまうことも少なくありません。
心身のバランスを崩し、深刻な「介護疲れ」に陥る前に、少しでも楽になる方法を一緒に考えていきましょう。
介護を快互にするための心構え
Dr.Nyan
介護って大変と思われるけど、やり方次第でチョット楽にもなりますよ!
では少しでも楽になる方法を考えてみましょうね!
老犬の介護、自分自身を追い詰めないで
老犬の介護をしている飼い主さんの中には、「こうなってしまったのは自分のせいなのでは」と自責の念に駆られ、自分を追い詰めてしまう方が多くいます。
近所迷惑を気にするあまり、愛犬が吠えるのを止めようと常に張り詰めていたり、日中もカーテンを閉め切って社会から閉じこもってしまうケースさえあります。

飼い主
夜鳴きや徘徊が始まってから、近所に迷惑をかけていないか不安で、一瞬も目が離せません。私がもっと早く気付いてあげられていれば……
Dr.Nyan
ご自身を責める必要はまったくありませんよ。愛犬の老化は誰のせいでもなく、一生懸命お世話をしている証拠です。でも、飼い主さんの暗い表情や悲壮感は、実はワンちゃんにも伝わって元気をなくしてしまう原因になるんです」
そんな状態で犬を見つめてしまうと、飼い主の苦痛や悲壮感が犬にも伝わり、余計に元気を失ってしまいます。介護状態になった場合、その子の存在により飼い主が辛くなるのでは介護生活に大きな影響をもたらします。
大変な老犬の介護はちょっとした工夫で楽になる
多くの飼い主さんが直面する代表的なお悩みには、以下のようなものがあります。
- 食べない
- 夜鳴き・徘徊で眠れない
- 床擦れが治らない
- お漏らしをするなど排泄トラブル

飼い主
食べないと心配で・・
床擦れできちゃったのって、介護の仕方がまずかったのね・・・
Dr.Nyan
食べてる姿を見ると安心ですもんね
でも何かあっても自分を責めちゃダメですよ!
ネットで調べても「その子に合った正解」が見つからず、途方に暮れてしまうこともあるでしょう。
介護のやり方は、100頭いれば100通り。他の方の意見は参考に留め、その子のQOL(生活の質)に合わせた「オリジナル・ケア」を見つけることが大切です。
ルールに縛られる必要はありません。体調や状態に合わせたパターンの組み合わせ次第で、辛い介護は劇的に楽になります。
大切な事は、歳だからの一言で諦めないで欲しいと言う事です。
歩けなくなったシニア犬が、飼い主さんの愛情と努力で歩き出したのを見てきています。
もし介護が必要でも、その子のQOLを考えて下さい。
介護は大変な事ですが、ちょっとした工夫でとても楽になるものです。面倒がらずに工夫してあげて下さい。
また介護はこうあるべきだと、ルールを作らないで下さい。その子その子の状態や体調により、様々な介護パターンがあります。
このパターンの組み合わせしだいでは、辛い介護も楽になります。
床擦れも治らないなんて、諦めてはダメです!

腰の部分が床擦れから大きな穴が開いてしまいました。

飼い主
ネットの情報通りに寝返りを打たせても床擦れが酷くなってしまう……と諦めるのは危険です!
皮膚が壊死して大きな穴が開いてしまう前に、必ず専門的な医療処置と、その子の体型に合ったクッション選びを行いましょう。
Dr.Nyan
私たちの経験上、適切な手当てを行えば治らなかった床擦れはありません。
歳だからと諦めず、いつでも相談してくださいね
犬だけでなく自分自身のケアもしていこう
高齢になると、生きていくために必要な「快食・快便・快眠・運動」のサイクルが狂い始めます。それを人が介助するわけですが、介護の主役である飼い主さんが倒れてしまっては元も子もありません。
日中の日光浴
歩けない子でも、日中に広い公園へ連れて行き日光浴をさせたり刺激を与えると、夜にぐっすり眠ってくれる(夜鳴きが減る)ことがあります。
ご近所の理解を得る
あらかじめ「シニア犬がいて、夜鳴きをすることがある」と周囲に伝えておくことで、心理的な閉塞感を和らげることができます。

飼い主
少し周りに頼ったり、便利グッズを使って『楽』をしてもいいんでしょうか?
Dr.Nyan
もちろんです!介護の本質は、飼い主さんが『楽』をしながら、愛犬が少しでも快適に暮らせる環境を見出すことです。
薬に頼りすぎるのはボケを早めるリスクもありますが、患部を温める手当てや、適切な環境づくりで痛みや不安を和らげることは今すぐできますよ。
またシニア犬がいることを近所にあらかじめ話しておく。そうすれば、近所の方の多少の理解は得られこともあります。
自分の不都合はどこにあるかを考えて下さい。飼い主さん自身が楽になれる方法を考えれば負担も軽くなり、自然と気持ちも明るくなるはずです。
そうやって、考え方を少し変えれば良いと思うのです。
看護・介護の主役は飼い主さんです。飼い主さんが『楽』をしながら、愛犬が少しでも快適に暮らせる方法を考えましょう!そしてそれぞれの家、それぞれの飼い主さんの考え方と状況に合わせて、見出していくことが必要です。
老犬介護を支える「4つの柱」
快適な老犬生活(快互)を過ごすために必要な優先順位です。
- 1.飼い主さんの愛情(触れ合いと手当て)
- 2.手間と環境(日常のちょっとした工夫)
- 3.獣医師や動物看護師のサポート
- 4.適切なモノや薬の使用
病気は獣医師だけで治すものではありません。
私たちは原因を見つけ、犬自身の治癒力を助ける提案をします。
それを家族である皆様が無理のない範囲で実践できるよう、当院が持つ介護・看護のノウハウを余すことなくお伝えしていきます。
一番大切なものは飼い主さんの愛情です
犬の夜鳴きの場合、鎮静剤や睡眠薬などを欲しがる飼い主がいます。また飼い主の要望に対し、薬を処方する先生もいます。
投薬はボケそのものを改善するのではなく、「夜鳴き」などの症状を抑制するものです。しかも薬物の使用が引き金となり、ボケの進行を早め結果的には悪化することがあります。
また関節痛などの痛みに対しても、薬を優先させてしまいがちです。しかし疼痛部位が冷えないようにしたり患部を温めたりと工夫と手当をしてあげれば、さらに痛みが楽になるはずです。
当然、薬が必要な場合も多くあるでしょう。しかし大切なのは愛情と手間だと思うのです。

愛情を伝えるためには触れ合いが大切です!
飼い主さんに愛情がいっぱいあっても、あとチョットの工夫でもっと楽に暮らせる事もあると思うのです。今の獣医療では、このシニア犬に対して飼い主さんが家で行える一手間を重要と捉えていない所に遅れがあるようにも思えます。
犬自身の治癒力を助ける介護を目指そう
医療と介護の境目をはっきりさせることが大切です。そして治療で治せるものは治し、介護の必要なケースは適切な介護支援をしてあげる事が必要です。
それを左右するのが、シニア犬に対する獣医師の考え方です。
病気は、獣医師が治すものではありません。獣医師は原因を見つけ、今の状態から改善する方法を考え提案します。そして犬自身の治癒力を助ける、それが仕事です。
その中で、獣医師の提案を実践するのが家族である皆様です!
よくある質問
夜鳴きがひどく寝不足です。すぐに睡眠薬をもらうべきですか?
睡眠薬や鎮静剤は症状を一時的に抑えますが、使い方によっては認知症(ボケ)の進行を早めてしまうリスクがあります。
- 日中に日光浴をさせる
- 夕方に少し長めの刺激(マッサージや声かけ)を与える
- 痛みを和らげる温熱ケアを行うなど
- 生活リズムを整える工夫
このようなことから始めることをおすすめします。
床擦れを予防・治療するために家でできることは?
体圧を分散させる高反発のシニア犬用マットを使用し、2〜3時間おきに寝返りを打たせることが基本です。すでに赤くなっていたり、傷になっている場合は自己判断でネットの薬を塗らず、すぐに当院へご相談ください。その子の骨格に合わせたあて木の工夫などをご提案します。
まとめ
老化といかに付き合っていくかが、看護や介護の鍵になります。ゆっくりとしたスピードで老化しても、老化は止まること無く進みます。
病気であっても老化であっても、毎日の生活に不都合の無いように環境を整えてあげることが、とても大切です。
快適な老犬生活を過ごすには、飼い主さんの熱い愛情と、手当と環境が不可欠だと言う事を知って下さい。我々獣医師も、シニア犬を家族としている飼い主さん達の熱い愛情に応える事が出来るよう頑張ります。
そして持っている介護・看護管理のノウハウを、余すことなくお伝えして行こうと思っています!
【老犬の介護・参考記事】
老犬の介護①:【前編】老化のサインに気づいてあげよう
老犬の介護②:【後編】老化のサインに気づいてあげよう
老犬の介護③:老犬の長生きの秘訣を知っておこう
老犬の介護④:老犬介護に疲れた人へ。介護を「快互」にするための心構えとアドバイス
老犬の介護⑤:老犬の夜鳴きを防ぐには
筆者・若山正之(Dr.Nyan)のプロフィール

本記事は、犬・猫の診療を行う獣医師・若山正之が監修・執筆しています。
1975年より小動物臨床に従事し、現在は若山動物病院院長として地域医療に携わっています。長年の臨床経験に基づき、一般診療から予防医療、シニア医療まで幅広く対応しています。
特に、病気の早期発見・早期対応を重視し、飼い主様にわかりやすい説明と納得いただける診療を心がけています。
また、幹細胞療法や免疫療法などの先進医療にも取り組み、動物の生活の質(QOL)を重視した治療を提供しています。
これまでに一般飼い主様向けのセミナーや講演活動を多数行い、正しい医療知識の普及にも尽力しています。著書に『老犬生活 完全ガイド』『犬と猫の老齢介護エキスパートブック』などがあります。
本記事は最新の獣医療知見と臨床経験をもとに作成していますが、症状や状態によって対応は異なるため、気になる症状がある場合はお早めに動物病院へご相談ください。