Dr.Nyanのすこやかコラム
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犬の外耳炎|耳を掻く・頭を振る・耳のにおいの原因と治療
本記事は、Dr.Nyan症例集「犬の皮膚・耳鼻科疾患編」の一部です。実際の診療症例をもとに、犬の外耳炎の原因と対応についてわかりやすく解説しています。
「しきりに耳を掻いている」「頭を振る・傾ける」「耳から嫌なにおいがする」「耳の中が黒や茶色に汚れている」
そんな症状はありませんか?
こうした症状が見られたとき、犬の外耳炎を疑う必要があります。犬の皮膚・耳の病気の中で最も多い疾患のひとつで、放置すると中耳炎・内耳炎へと進行することがあります。
【症例】こんな犬が来院しました
飼い主
2週間前から右耳を頻繁に掻いていて、最近は頭も振るようになりました。耳のにおいも気になります。
Dr.Nyan
耳垢の検査でマラセチアが増殖しています。外耳炎と診断し、耳洗浄と点耳薬で治療していきましょう。
院内での耳洗浄と点耳薬の投与を開始し、2週間後に症状が改善。以後は月1回の定期ケアと、自宅での週1回の耳洗浄を指導しました。
外耳炎とは?
飼い主
耳が汚れているだけでも病気なんですか?
Dr.Nyan
はい。炎症や感染が起きているサインのことが多く、放置すると悪化します。
外耳炎は、耳の入り口から鼓膜までの「外耳道」に炎症が起きた状態です。
犬は耳道がL字型に曲がっており(人は直線的)、また垂れ耳の犬は耳道内が蒸れやすいため、外耳炎を繰り返しやすい構造をしています。
正常な耳と外耳炎の耳の違い


症状
- 耳を頻繁に掻く(後ろ足で引っ掻く・地面や家具に擦り付ける)
- 頭を振る・傾ける
- 耳から嫌なにおい(甘酸っぱい・腐敗臭)
- 耳の中が黒・茶色・黄色に汚れている
- 耳の入り口が赤い・腫れている・熱を持っている
- 触ると痛がる・怒る
- 耳介(耳たぶ)に皮疹・脱毛
飼い主
においだけでも受診した方がいいですか?
Dr.Nyan
はい。においは感染のサインです。早めに対処すると悪化を防げます。

リスク先生
掻き壊しによって二次感染が起きると治りにくくなります。早めの受診が重要です。
耳垢の種類と原因菌


飼い主
耳垢の色で原因が分かるんですか?
Dr.Nyan
はい。ある程度の目安になりますが、正確な診断は検査が必要です。
| 耳垢の色・性状 | 主な原因 |
|---|---|
| 茶褐色・べたつく・甘酸っぱいにおい | マラセチア(酵母菌)の過剰増殖 |
| 黒〜濃い茶色・ぽろぽろした乾いた耳垢 | 耳ダニ感染(ミミヒゼンダニ) |
| 黄色〜緑色・膿状・悪臭 | 細菌感染(黄色ブドウ球菌・緑膿菌など) |
| 少量の薄い茶色・においが少ない | アレルギー・異物など |
耳ダニ(ミミヒゼンダニ)について

耳ダニはミミヒゼンダニ(Otodectes cynotis)による外耳炎で、子犬・多頭飼育で多く見られます。黒〜濃い茶色の乾いた耳垢が特徴で、強いかゆみを引き起こします。他の動物(猫・うさぎ)にも感染するため、同居ペット全頭の治療が必要です。
外耳炎の原因
一次原因(外耳炎を直接引き起こす)
- アレルギー(食物アレルギー・アトピー性皮膚炎):最も多い原因のひとつ。繰り返す外耳炎の背景にあることが多い
- 耳ダニ(ミミヒゼンダニ):特に子犬・野外生活歴のある犬
- 異物(砂・草の種など)
- 内分泌疾患(甲状腺機能低下症・副腎皮質機能亢進症)
素因(外耳炎を起こしやすくする)
- 垂れ耳(コッカースパニエル・ゴールデンレトリバー・ラブラドールなど):耳道が蒸れやすい
- 耳道内の被毛が多い犬(プードル・シュナウザーなど)
- 水泳・シャンプー後の水分残留
- 耳道の狭さ・構造異常
飼い主
何度も繰り返すのはなぜですか?
Dr.Nyan
アレルギーなどの根本原因があることが多く、再発する場合は、アレルギー検査も検討します。
外耳炎を何度も繰り返す場合、耳だけの問題ではなく、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーなど、体質的な問題が背景に隠れていることがあります。
その場合、耳の治療だけでは一時的に良くなっても、再発を繰り返してしまいます。食事管理やアレルギー検査など、体全体を見直すことが、根本的な改善につながることがあります。
診断方法
- 耳鏡検査:耳道内の炎症・耳垢・鼓膜の状態を確認
- 耳垢の顕微鏡検査:マラセチア・細菌・耳ダニの確認
- 細菌培養・薬剤感受性試験:慢性・難治例で抗生剤の選択に使用
- 血液検査・アレルギー検査:繰り返す場合の原因検索
治療法
院内での耳洗浄(外耳道洗浄)

蓄積した耳垢・膿を除去するため、専用の耳洗浄液で外耳道を洗浄します。洗浄しないと点耳薬の効果が十分に発揮されません。
点耳薬の投与
原因に応じて以下の点耳薬を使用します。
- 抗真菌薬(マラセチア対応)
- 抗生剤(細菌感染対応)
- ステロイド(炎症・かゆみの抑制)
- 殺ダニ薬(耳ダニ対応)
- 複合点耳薬(上記を組み合わせたもの)
自宅での耳ケア指導


家庭での耳掃除の限界点
健康な耳には、耳垢を自然に外へ出す自浄作用があります。
家庭での耳ケアは、見える範囲を清潔なコットンでやさしく拭き取る程度に留めるのが基本です。綿棒を奥まで入れたり、洗浄液を頻繁に使いすぎたりすると、耳道の皮膚を傷つけ、かえって炎症を悪化させることがあります。耳の奥の洗浄や処置は、動物病院で行うのが安全です。
Dr.Nyan
綿棒を耳道の奥まで入れないでください。かえって耳垢を押し込んでしまいます。正しい方法でケアしてください。
外科治療(重症慢性例)
慢性化・難治化して耳道が変形・石灰化した場合は、外側耳道切除術・全耳道切除術などの外科手術が必要になることがあります。
予防方法
- 定期的な耳のチェック(週1回・においや汚れを確認)
- シャンプー・水泳後は耳をよく乾燥させる
- 垂れ耳の犬は耳道内の通気を確保(トリミング時に耳道内の毛を処理)
- アレルギーがある犬はアレルゲンを避ける食事管理
- 耳垢が多い場合は月1回の耳洗浄(獣医師に相談)

飼い主
どれくらいの頻度でチェックすればいいですか?
Dr.Nyan
週1回のチェックが目安です。においや汚れに気づいたら早めにご相談ください。慢性化する前に対処することが大切です。
耳の毛の処理について
プードルやシュナウザーなど、耳道内に毛が多い犬種は、通気性が悪くなり蒸れやすいため、外耳炎を起こしやすい傾向があります。
定期的な耳毛の処理は予防に役立ちますが、無理に抜きすぎると耳道の皮膚への刺激となり、かえって炎症を招くことがあります。適切な量とタイミングでの処置は、トリマーや獣医師に相談すると安心です。
外耳炎になりやすい犬種
- 垂れ耳の犬:コッカースパニエル・ゴールデンレトリバー・ラブラドール・バセットハウンド
- 耳道内の毛が多い犬:プードル・シュナウザー・マルチーズ
- アトピー体質の犬:シーズー・柴犬・フレンチブルドッグ
こんな症状があれば早めに受診を
| 症状 | 受診の目安 |
|---|---|
| 耳を頻繁に掻く・頭を振る | ⚠️ 早めに受診 |
| 耳から嫌なにおいがする | ⚠️ 早めに受診 |
| 耳の中が黒・茶色に汚れている | ⚠️ 早めに受診 |
| 耳の入り口が赤い・腫れている | ⚠️ 急いで受診 |
| 触ると強く痛がる・出血がある | ⚠️ 急いで受診 |
| 首を傾けたまま戻らない(斜頸) | ⚠️ 直ちに受診 |
よくある質問
市販の耳掃除用品で対処できますか?
軽度の耳垢であれば市販の耳洗浄液で清潔を保つことは可能ですが、炎症・感染がある場合は動物病院での診断・治療が必要です。自己判断でケアを続けると悪化することがあります。
繰り返す外耳炎はどうすればいいですか?
アレルギー(食物アレルギー・アトピー)が根本原因のことが多いです。アレルギー検査・食事管理と並行して外耳炎の治療を行うことで再発を減らすことができます。
外耳炎が中耳炎・内耳炎に進行するとどうなりますか?
首を傾ける(斜頸)・ぐるぐる回る・眼球が揺れる(眼振)などの神経症状が現れます。この状態になると治療が難しくなるため、早期対処が重要です。
耳ダニは人にうつりますか?
人への感染はほとんど起きませんが、他の犬・猫・うさぎには感染します。多頭飼育の場合は全頭の治療と環境消毒が必要です。
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まとめ
「耳を掻く」「頭を振る」「耳から嫌なにおい」——これらは外耳炎のサインです。放置すると慢性化・重症化し、中耳炎・内耳炎へと進行することがあります。
週1回の耳チェックで早期発見を心がけ、気になることがあれば早めにご来院ください。
Dr.Nyan
「なんか変かも」と感じたらお気軽にご来院ください。佐倉ICから車で約6分、駐車場30台完備です。
筆者・若山正之(Dr.Nyan)のプロフィール

本記事は、犬・猫の診療を行う獣医師・若山正之が監修・執筆しています。
1975年より小動物臨床に従事し、現在は若山動物病院院長として地域医療に携わっています。長年の臨床経験に基づき、一般診療から予防医療、シニア医療まで幅広く対応しています。
特に、病気の早期発見・早期対応を重視し、飼い主様にわかりやすい説明と納得いただける診療を心がけています。
また、幹細胞療法や免疫療法などの先進医療にも取り組み、動物の生活の質(QOL)を重視した治療を提供しています。
これまでに一般飼い主様向けのセミナーや講演活動を多数行い、正しい医療知識の普及にも尽力しています。著書に『老犬生活 完全ガイド』『犬と猫の老齢介護エキスパートブック』などがあります。
本記事は最新の獣医療知見と臨床経験をもとに作成していますが、症状や状態によって対応は異なるため、気になる症状がある場合はお早めに動物病院へご相談ください。