Dr.Nyanのすこやかコラム
飼い主様に伝えたい犬猫の病気や日常ケアについての役立つコラムをお届け♪
【歯周病】犬の歯周病とは?症状や治療法を解説
歯周病は誰もが知っている病気のひとつです。
予防が大切とは知ってはいるけど、歯磨きはとてもハードルが高いですよね!口臭は気になるけど、どうしたら良いのか迷ってはいませんか?
その前に歯周病がどんな病気なのか、漠然として良くはわからない・・
そんな飼い主さんに朗報!Dr.Nyanがわかりやすく解説していきますネ!
うちの子、とっても口が臭いんです!
どうしたら良いのかしら?
それって歯周病かもですよ!
そうそう、3歳以上の犬の約80%が歯周病に罹ってるの知ってますか?
しかも「歯周病」って、「歯槽膿漏」のことなんだよ!
それは大変、このままだと歯が無くなっちゃうのね・・・
ちゃんと治さないとダメね!
先生、詳しく教えて!
歯周病ってどんな症状?
歯周病ってどんな病気なのかしら?
そして、どんな症状がでるのかしら?
まずはどんな症状になったら注意しなくちゃならないのか、さぁ一緒に確認していきましょう!
【初期症状】歯と歯肉の境目が赤い(歯肉炎)
歯周病の初期症状は、歯と歯肉の境目の部分が赤くなる歯肉炎です。
健康な歯は白く艶があり、健康な歯肉(歯茎)は綺麗なピンク色で弾力があります。
歯垢の中に住む歯周病菌が原因となり、歯肉に炎症を起こしたのが「歯肉炎」です。歯垢とは食物のカスなどを栄養として増えた、歯に付いた細菌の塊です。
歯肉炎を見つけたら
・適切な治療
・口の中の環境の改善
・栄養状態の改善
これらを頑張ると歯肉炎は治ってくるよ!でも歯周病になってしまったら、元の健康な状態に戻ることはありません!
【中期症状】歯肉が赤く貼れ、出血や痛みがでる
適切な治療とケアを怠った歯肉炎は・・
元の健康な状態には戻ることのできない『歯周病』へと進行してしまいます。
口の中の粘膜組織には、ウイルスなどの異物が体内に入り込むのを防ぐための「粘膜免疫システム」が備わっています。
しかし口の中が汚れていては、この免疫システムは十分に効果が発揮できません。そのため口の中ケアが、とっても重要になります。
口の中のケアとは、歯垢や歯石を取り除くことだけではありません。口の中に住み着いた歯周病菌の数を減らさすことを言います!
歯周病菌は、歯周病を引き起こすだけではありません。歯周病菌は傷ついた歯肉から血管から体の中に入り込み、血液にのって脳や腎臓、心臓、肺など全身に運ばれていきます。そして歯周病菌がたどり着いた臓器に、病気を発症させてしまうのです。
【こんなサインがあったら注意!】
歯周病になると、様々な症状が見られるようになります。
しかも歯周病は痛みを伴うことが多いので、よく確認してあげてくださいね!
【歯周病の症状】
・口が臭く腐敗臭がする
・口の周りが汚れている
・歯茎の色が赤くなっている
・顔まわりを触れられるのを嫌がる
・歯がグラグラしたり抜ける
・食べづらそうだったり、食べるのに時間がかかる
・固いものを食べなくなる
・歯ぐきがやせて歯が長く見える
・目の下の頬の部分が腫れる
【後期症状】全身の健康に影響がでる
歯周病が進んでしまうと、歯肉が赤く腫れ出血や痛みが出てきます。また化膿すると、歯肉から膿が出て悪臭を放つようにもなります。
歯と歯肉の間の溝(歯周ポケット)が深くなってしまうと、歯を支える骨が溶けてしまい歯がぐらつくようになってしまいます。そこまでになると歯が抜けてしまうと言う、最悪の状況にまでなってしまいます。
歯石がたくさん付いて、歯周病が悪化した状態です。
上顎の犬歯の根の部分が化膿すると、炎症が鼻の中の粘膜にまで進んでしまいます。その結果、まるで鼻炎のようにクシャミや鼻水を飛ばしたり膿が出たりもします。
また犬歯が抜けてしまうと、抜けて開いた穴が鼻の中まで通じてしまっていることもあります。しかも穴は閉じることなく開いたままになってしまう、そんなこともあります。
上顎の犬歯の抜けたところが歯肉で埋まらずに、大きな穴が開いてます。
歯周病による病変は、口の中だけにはとどまりません。歯の根の化膿が眼の下の頬の部分にまでも広がり、その部分が化膿し皮膚がブヨブヨに腫れたり穴が開いてしまうのです。
顔の炎症は薬を飲めは治りますが薬をやめると再発し、歯を治すまで繰り返し続きます。
歯の根が歯周病菌により化膿し膿が溜まってしまうと、眼の下の頬の部分に穴が開いてしまいます。
歯周病菌が血液中に入って全身へ、そして様々な病気の原因に!
⇒ 肺:肺炎、ぜんそく
⇒ 関節・骨:関節炎、骨髄炎
⇒ 腎臓:慢性腎臓病
⇒ 肝臓:肝炎
⇒ 心臓:心内膜炎、血栓症、
⇒ 脳:認知症
このように歯周病菌は口の中の炎症にとどまらず、全身の健康に大きな影響を与えてしまう・・
また口腔内の健康状態が全身の健康に関係していることを、再認識して下さいね!
歯周病は生命にもかかわる、重大な事態を引き起こしてしまう怖い病気なのです。
歯周病の原因
さぁ〜、次は考えられる原因について確認していくよ。
歯周病の原因は、歯周病菌の存在です!
歯にたまり続けた歯垢や歯石は、歯周病菌の温床となり歯肉などに悪さをします。
口の中にクニャクニャとヘビみたいな動きをする歯周病菌がいます。
口の中に、トリコモナスがいます。
老齢になり唾液の分泌が衰えてくると、口腔内の洗浄作用が落ちて不衛生な状態になります。また口の中のトラブルから水の飲む量が減ると、口腔内がさらに不衛生な状態となり歯周病が進んでしまいます。
このような不衛生な状態は、歯周病菌が悪化しやすい状態なのです。歯周病を改善するには、口の中の不衛生な状態を改善し環境の良い状態にしていく必要があります。
歯周病の治療法と費用
歯周病の疑いがあってもあせらず、じっくり治療をしていきましょう。
治療法については「歯周病ってどんな症状?」で述べた段階別(初期・中期・後期)に紹介していきますね!
【初期症状】毎日の歯磨きで歯垢を落とす
歯周病の初期症状は、歯肉が赤くなる歯肉炎の状態です。
初期症状であれば毎日の歯磨きで歯周病を防ぐことができます。
歯垢はいわば「ワラで作られた歯周病菌が住む家」のようなモノです。そのため上手に歯磨きをすれば、歯垢は壊し取り除くことができます。また歯周病菌も減らすことができます。
歯ブラシは、何でも良いと言うわけではありません。
歯の形は人と犬とでは大きく違うため、犬用の歯ブラシを使う必要があります!また各症状に合った歯ブラシがあります。歯周病の症状が中期へと進んでも、専用の歯ブラシを使うと歯磨きをしても痛がりませんよ!
症状に合った歯ブラシがあります。
【参考HP】ライオン
また歯周病になる前に歯肉炎であれば、歯磨き以外にも様々な治療法があります。
例えば『Pidi』
『Pidi』は窒素プラズマ技術を用いた動物治療器です。
Pidiは、歯肉炎の炎症を和らげたり組織の修復を行います。
そのため、このプラズマ治療は薬に頼らない治療の選択肢の一つになります。
【中期症状】歯科処置で歯石を落とす
歯石は「石で作られた歯周病菌の住むマンション」のようなモノです。
頑固で硬く作られた歯石は、歯磨きだけでは壊すことはできません。また歯石の表面はデコボコしており放置しておくと、さらにそこに歯垢が付いて歯石はドンドンと増えていきます。
歯周病が原因の口臭や痛みなどは、初期治療として消炎鎮痛剤や抗生物質を使います。痛いと触られるのも嫌になるし、トラウマにしてしまうことは避けなくてはなりません。
さらには全身麻酔を行うなどして歯石を壊し除去することも考える必要があります。
【後期症状】症状によって適切な処置をする
進行した歯周病により出来てしまった歯周ポケットは、とても深くなっています。
そのため歯や歯根に付着した歯石を除去するだけでなく、歯周ポケットの奥深くの歯石や感染した組織を取り除く必要があります。
しかし処置が痛かったり不安な思いをさせてしまうと、処置後に口を触られることを嫌がるようになってしまいます。その結果、歯磨きなどのホームケアを行うことも難しくなリます。
そのようなことにならなためにも、全身麻酔での処置が必要となります。安全に全身麻酔を行うためには、血液検査やレントゲン検査などを行い健康状態を確認します。
このような検査を行う理由は、歯周病に罹ると心臓病などの病気が併発していることもあるからです、特に歯周病と心臓病との間には密接な関係があるため、安全に全身麻酔を行うためには避けられない検査なのです。
歯科処置の手順
1 歯科処置前には、酸素吸入と鎮静鎮痛剤を使います。
(これはストレスを抑え緊張させないようにするためです。)
2 麻酔をかけ、処置中に誤嚥しないような処置を行います。
3 超音波を使い歯周ポケットの中の歯石や感染した組織を、きれいに取り除きます。
4 歯垢が歯に付きずらくなるよう、歯の表面を綺麗に磨きます。
5 歯周ポケットの中に、歯周病菌を殺す薬を注入します。
全身麻酔で歯石を除去するなど、歯周病の治療を行っています!
全身麻酔を避け、無麻酔で歯科処置を行う場合もあります。
その場合、痛みを伴いそうな場所には局所麻酔を使います。それでも歯周ポケットの奥深くまでの治療は、なかなか難しいものです。そのため無麻酔での処置は、家庭で行う歯磨きの延長にある処置と考えなくてはなりません!
どのような場合でも、歯科処置を行わず歯周病を放置することは絶対に避けなければなりません。
治療費はどのくらいかかるものなのか。
軽度の歯周病であれば、診察と外用薬で5000円前後です。しかし重度となり全身麻酔が必要となると、50000円〜120000円前後にはなります。料金は抜歯など処置の内容、また心臓病などの病気により違いがでてきてしまいます。
やはり『予防に勝る治療は無い』とは思いませんか?
歯周病の予防方法
歯周病の予防って、歯磨きしかないのかしら?
定期的なチェックや、日頃のケアで予防することができます。
歯周病予防には、歯周病の初期の症状である歯肉炎の早期発見と治療です。予防には、丁寧な歯磨きを行います。
歯磨きを毎日頑張ってます!定期的な歯周病菌の検査とケアも、行うことが大切です。
【究極の予防方法1】粒大きめなドライフードを食べさせる
1つ目の予防方法は小さい時から「粒の大きめなドライフード」を食べさせることです。
大粒のドライフードをあげると、食べるのに良く噛まなければいけませんよね?
するとどうなるかというと…
⇒ よく噛むと顎をよく使うことになる
⇒ 顎をよく使うと唾液腺が発達する
⇒ 唾液腺が発達すると唾液がたくさん出る
⇒ 唾液がたくさん出ると口腔内の細菌の流れる量が多くなる
⇒ 歯垢が作られずらくなる
⇒ 歯周病菌が住みずらくなる
つまり、よく噛むことで歯垢が作られにくくなり、結果として歯周病菌が住みずらくなるのです。
こんなに大きな粒のフードもあります。
よく噛むことで、歯の表面がドライフードで歯垢が擦れ落ちます。
これがドライフードによる歯磨き効果です。
小さい時からの「噛む習慣」は、老齢になっても忘れません!
【究極の予防方法2】水をよく飲ませる
2つ目の予防方法は小さい時から「水をよく飲ませる」ように心掛けることです。
水をよく飲ませると、口に中は水分で潤っている時間が長くなります。
するとどうなるかというと…
⇒ 口腔内の食べかすや細菌が流れる
⇒ 歯垢が作られない
⇒ 歯周病菌が住みずらい
水をいっぱい飲ませることは、ドライマウスを防ぐことにもなります。ドライマウスとは唾液の出る量が少なくなって、口の中が乾燥している状態です。
唾液や口の中の粘膜には、歯周病菌と戦う働きを持っています。そのため唾液が少なくなると、歯周病菌と戦う力が落ちてしまうのです。
【予防方法3】デンタルケア用品を使う
唾液の分泌を促すようなスプレーやジェルも、効果があります。
デンタルガムも、噛ませることで歯石は落ちます。その際には硬いガムではなく、軟らかなガムを使うことをお勧めします。
軟らかなガムを噛むと、歯がガムの中に食い込むため歯石が落ちやすくなります。またガムの端を手で持ち、一気に食べないような工夫も必要です。
歯周病になりやすい犬
以下の犬種は要注意!上記であげた予防方法をぜひ実践してあげてください。
- ミニチュアダックスフンド
- イタリアン・グレー・ハウンド
- トイ・プードルなどのトイ犬種
- 糖尿病に罹ってる
- 口に中が乾き気味
まとめ
歯周病に罹ってしまうと、どのような治療を施しても元の健康な状態には戻りません。しかも歯周病は症状がすすむと全身の健康を脅かすこともある、怖い病気です。
また歯石を取ることが「歯科処置」の目的ではありません。歯石を取っても、口に中の歯周菌が減らなければ全く意味をなしません。実際に歯石が無くても、口の中にはホームレス歯周病菌が住み続けてしまっています。そしてそれらの歯周病菌は増え、歯垢を歯石に作り替え自分たちの住み住む家を作り出しちゃいます。
歯周病菌を住まわせない、それが本来の『口の中の健康管理の目的』です。
上手に歯磨きをしてあげると嫌がりません!
お家で行えることはお家で行い、それでも無理な部分は我々がお手伝いします!
悪さをする歯周病菌を少しでも減らして、健康に暮らしましょう!