Dr.Nyanのすこやかコラム
飼い主様に伝えたい犬猫の病気や日常ケアについての役立つコラムをお届け♪
猫の体臭|なぜ猫は臭くない?無臭に近い理由と病気のサイン

猫が「ほとんど無臭」と言われる4つの理由(身体の仕組み)
愛猫を抱っこしたとき、「体臭がしない……?」と思ったことはありませんか?
犬を飼っている方なら特に、猫の体臭との違いに驚かれることでしょう。
猫を診察していると、「猫って本当に臭わないですね」と飼い主さんからよく聞かれます。
実はそれには、体の構造と野生時代から受け継いだ習性の両方が関係しています。
まずは、体の構造から見ていきましょう。

飼い主
うちの猫、においを嗅いでもほとんど臭くないんですよね。なんでなんでしょう?
Dr.Nyan
それは猫の体の構造と習性が組み合わさっているからなんですよ。順番に説明しますね!
汗をかくのは「肉球」だけ!だから汗臭くならない
人間は全身から汗をかきますが、猫が汗をかく場所は、足の裏(肉球)だけなんです。
全身から汗をかかないため、人のような汗臭さはほとんど生じません。
この違いだけでも、猫に汗臭さがほとんどない理由は理解しやすいでしょう。
フローリングに猫の足跡がついていたら、それは肉球から出た汗のあと…かもしれません。

飼い主
そういえば夏場にフローリングに足跡がついてることあります!あれが汗だったんですね。
Dr.Nyan
そうなんです。全身から汗をかく人間と違って、猫は肉球だけ。だから汗臭くならないんですよ。
皮脂の分泌が穏やかで、ベタつきにくい
皮膚を守るために分泌されるのが「皮脂」です。
犬では猫より皮脂分泌が活発です。
猫の皮脂腺は全身にありますが、尾の付け根や顎の下では特に発達していますが、その分泌量は犬より少ないとされています。
皮脂は時間が経つと酸化し、独特の脂っぽい臭いの原因になります。
当院でも皮膚病ではない健康な猫で、皮脂のベタつきを感じることはほとんどありません。

飼い主
猫って、犬みたいな動物っぽいニオイが少ないですよね。
Dr.Nyan
そうなんです。猫は皮脂の量が少なく、しかも毎日グルーミングするので、脂が酸化してニオイになりにくいんですよ。
全身にアポクリン腺があるのに、なぜ臭わないの?
「アポクリン腺」という腺が、猫の全身の皮膚に分布しています。
人ではワキガの原因として知られている汗腺ですが、猫の場合は少し役割が違います。
猫のアポクリン腺から出る分泌物は、猫同士がお互いの情報を伝えるため「フェロモン様物質」を含む分泌物として利用されています。
私たちが「臭い」と感じるものではなく、猫同士が情報を伝えるためのサインとして利用されています。
さらに日頃の毛づくろいによって、分泌物が体表に残りにくくなっています。

飼い主
アポクリン腺って、人だとワキガの原因になるやつですよね?猫にもあるんですか?
Dr.Nyan
あります。ただ猫では臭いを出すより、猫同士の情報交換に使われているんです。役割が少し違うんですよ。
雑菌が増えにくい、清潔な皮膚環境
体臭の多くは、汗や皮脂を皮膚の常在菌が分解することで生まれます。
人のワキガも、この仕組みで生じます。
猫の皮膚にも常在菌はいますが、猫は毛づくろいによって体表が比較的清潔に保たれるため、雑菌が過剰に増殖し、悪臭を生じる環境になりにくいと考えられています。

飼い主
じゃあ体臭って、汗そのもののニオイじゃないんですね?
Dr.Nyan
実は汗や皮脂を細菌が分解したニオイなんです。猫はその材料が少ないので、臭いも出にくいんですよ。
猫が自分で匂いを消す理由(習性と本能)
体の構造だけではなく、猫の「行動」そのものも体臭の少なさを支えています。
これは単なるきれい好きではなく、野生で生き延びるために身につけた習性です。
起きている時間の3〜4割を毛づくろいに使っている
猫は非常に頻繁に毛づくろいを行う動物です。
診察室でも、緊張が解けると毛づくろいを始める猫は少なくありません。
猫は起きている時間の3〜4割をグルーミングに使うとも言われています。
全身を丁寧に舐めることで、汚れや余分な皮脂、外からついたにおいをしっかり落としています。
猫にとって毛づくろいは「おしゃれ」ではありません。
毛づくろいは、猫が自分で体を清潔に保つための大切な習慣です。その結果として、体臭も少なく保たれています。

飼い主
最近、毛づくろいする時間が減った気がします…。
Dr.Nyan
それは大事な変化かもしれません。関節炎や体調不良で毛づくろいできなくなる猫も多いんですよ。
ザラザラの舌が、天然のブラシとして働く
猫の舌を触ってみると、ザラザラしていますよね。
あの突起(糸状乳頭)が、まるで細かい櫛のように機能して、抜け毛やフケ、汚れを絡め取ってくれるんです。
唾液の抗菌作用で清潔に保たれていると思われがちですが、実は猫の口の中にはたくさんの常在菌がいます。
だから舌の物理的なブラッシング効果の方が、清潔さを保つ本当の理由なんですよ。

飼い主
猫になめられると、ちょっと痛いくらいザラザラですよね。
Dr.Nyan
その突起が天然ブラシなんです。抜け毛や汚れをしっかり絡め取ってくれているんですよ。
「待ち伏せ型ハンター」だから、においを消す本能がある
イエネコの祖先とされるリビアヤマネコは、待ち伏せ型のハンターでした。
自分の体臭が風に乗って獲物に伝わってしまえば、狩りは失敗してしまいます。
また、猫自身も大きな肉食獣に狙われる立場でもありました。
においを残さない猫ほど狩りに成功し、生き残りやすかったと考えられています。
食後に口まわりや体を舐める行動も、体表のにおいを残しにくくする習性の一つと考えられています。

飼い主
そこまで徹底してニオイを消す必要があったんですね…
Dr.Nyan
はい。猫は「狩る側」でもあり、「狙われる側」でもありました。においを消すことは、生き残るために必要だったんです。
トイレの後に砂をかけるのも、においを隠すため
猫がトイレの後に砂をかけてウンチやオシッコを隠すのも、自分の縄張り内で天敵や他の動物に自分の存在を知られにくくするためと考えられています。
自分のにおいを周囲に残さない習性も、室内で猫の生活臭が少ない理由の一つです。

飼い主
猫がトイレを隠すのも、野生本能が残ってるんですね。飼い主としてはありがたいです。
Dr.Nyan
そうなんです。室内猫でも本能はちゃんと残っています。においを残さないって、猫にとってはとても大切な習慣なんですよ。
犬や人間と比べると、こんなに違う
犬や人と比べると、猫の体臭がいかに少ないかがよく分かります。
犬との違い
犬は猫より皮脂の分泌が多く、全身のアポクリン腺も発達しています。
猫のように全身を自分でグルーミングする習慣がないため、皮脂が酸化して「犬のにおい」が蓄積しやすいんです。
そのため、猫よりも定期的なシャンプーや皮膚のケアが必要になることが少なくありません。

飼い主
犬を飼ってる友達の家と比べると、猫って本当にニオイが少ないですよね。
Dr.Nyan
犬は皮脂量も多く、全身グルーミングもしませんからね。体臭の出やすさがかなり違うんです。
人間との違い
人間は全身のエクリン腺から大量の水分(汗)を放出して体温調節を行います。これが皮膚の常在菌と混ざり合うことで汗臭さが生まれます。
また、局所的なアポクリン腺(ワキなど)からの分泌物が加齢臭やワキガの原因になります。
体の構造と毛づくろいの習性、この両方が猫の体臭を少なくしています。
体臭が強くなってきたら、病気のサインかも
基本的にほぼ無臭な猫から「なんかいつもと違うにおいがする…」と感じたら、それは体の異変を知らせるサインかもしれません。
健康な猫が急に臭うようになった場合は、病気を疑うきっかけになります。
口臭が強い場合に疑う病気
健康な猫では、口臭が気になることはほとんどありません。
もし口からツンとするニオイや生臭さを感じたら、お口や全身のトラブルを疑う必要があります。
歯周病・口内炎・歯肉炎
口内の雑菌繁殖による腐敗臭や生臭いニオイ。
慢性腎不全
腎機能が低下し、体内に毒素が回ることで口から「アンモニア臭(尿のようなニオイ)」がする。
糖尿病
体内の代謝異常(ケトン体の蓄積)により、甘酸っぱい、またはフルーティーなニオイがする。
「どんな臭いか」は診断のヒントになるため、診察でも必ず確認するポイントです。

飼い主
猫も歳を取ると、多少口が臭くなるものかと思ってました。
Dr.Nyan
年齢のせいと思われがちですが、強い口臭は病気のサインであることが多いんですよ。
耳や皮膚、お尻まわりが臭う場合
外耳炎・耳ダニ症
耳からツンと酸っぱいニオイがしたり、黒い耳垢が出たりします。
皮膚感染症(マラセチア皮膚炎など)
皮膚がベタつき、特有の脂臭いニオイがします。
肛門嚢(こうもんのう)の詰まり
お尻の周りから強烈な生臭い異臭がする場合、分泌液が溜まっている可能性があります。

飼い主
臭う場所によって、病気も違うんですね。
Dr.Nyan
そうなんです。口・耳・皮膚・お尻、それぞれ原因がかなり違うので、どこが臭うかはとても大切なんですよ。
当院でも、「最近なんとなく臭うようになった」という相談が、歯周病や外耳炎の発見につながることは珍しくありません。
シニア猫で増える「毛づくろい不足」による体臭
7歳以上のシニア期に入ると、関節炎による痛みや筋力低下から、上手に体を曲げてグルーミングできなくなる猫が増えます。
当院でも、「最近、お尻まわりがベタつくようになった」「毛並みが脂っぽくなった」という相談を受けることがあります。
毛づくろいが減ったこと自体が、関節の痛みや全身状態の悪化を示している場合もあります。

飼い主
最近、お尻まわりが少しベタついてきました。
Dr.Nyan
シニア猫ではよくあります。無理に洗うより、まず毛づくろいできなくなっていないかを見てあげることが大切ですよ。
まとめ
猫の体臭が少ないのは、偶然ではありません。
・肉球だけにある汗腺と、少ない皮脂分泌という「体の構造」
・毎日の毛づくろいや砂をかける習慣という「行動」
・野生で生き延びるために身についた「進化」
体の構造、毛づくろい、そして野生時代に身につけた習性。この3つが組み合わさって、猫は体臭が非常に少ない動物になりました。
私が診察でまず確認するのは、「どこが臭うのか」「どんな臭いなのか」です。
臭いは飼い主さんだからこそ気付ける、大切な健康情報です。
普段の「いつものにおい」を知っておくことは、小さな異変に早く気付くことにもつながります。
筆者・若山正之(Dr.Nyan)のプロフィール

本記事は、千葉県佐倉市で犬・猫の診療を行う獣医師・若山正之が監修・執筆しています。
1975年より小動物臨床に従事し、現在は若山動物病院院長として、犬猫の診療と予防医療に取り組んでいます。
長年の臨床経験に基づき、一般診療から予防医療、シニア医療まで幅広く対応しています。
特に、病気の早期発見・早期対応を重視し、飼い主様にわかりやすい説明と納得いただける診療を心がけています。
また、幹細胞療法や免疫療法などの先進医療にも取り組み、動物の生活の質(QOL)を重視した治療を提供しています。
これまでに一般飼い主様向けのセミナーや講演活動を多数行い、正しい医療知識の普及にも尽力しています。
著書に『老犬生活 完全ガイド』『犬と猫の老齢介護エキスパートブック』などがあります。
本記事は最新の獣医療知見と臨床経験をもとに作成していますが、症状や状態によって対応は異なります。
気になる症状がある場合はお早めに、佐倉市のDr.Nyan(若山動物病院)にご相談ください。