Dr.Nyanのすこやかコラム
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猫の慢性腎不全の看護のPOINT②栄養補給について
本記事では、猫の慢性腎不全の看護のポイントについて解説します。後半の今回は、栄養補給についてです。
前半記事はこちら:猫の慢性腎不全の看護のPOINT①水の飲ませ方について
フードについて考えてみよう
次はフードについて確認していくよ。
腎臓病用の療法食について
猫ちゃんの慢性腎炎では、腎臓病用のフードを食べた場合と食べていない場合では発症後の生存期間が2倍も違うという研究報告があります。
つまり慢性腎炎の進行を遅らせるには・・・
カロリーが十分に摂れ、しかもタンパク質、リン、ナトリウムを制限したフードが良いとされています。このことからも、慢性腎炎には慢性腎臓病用のフードが良いことがわかります。
しかしタンパク質とナトリウムが制限されているフードは、猫にとっては美味しく無いとされています。
腎臓病食にはドライ、パウチ、缶詰と色々なタイプがありますので、各社各タイプの療法食を試してみましょう!
ドライフードの場合には食べるからと言って、大きな袋で買うのよくはありません。フードの酸化や品質の劣化を考えると、なるべく小さな袋を購入して下さい!
なぜタンパク質を制限する必要があるのでしょうか?
タンパク質が消化さることにより作られた老廃物は、腎臓からオシッコと一緒に体の外に捨てられます。
しかし腎臓の機能が落ちてしまうと老廃物がうまく捨てられず、体の中に溜まってしまいます。このような状態を防ぐ意味でも、タンパク質の制限を行います。
タンパク質の制限を行なっている場合、必要量が食べられないと栄養不足になってしまいます。そうなると筋肉が痩せてしまうだけでなく、腎臓の機能をさらに悪くしてしまいます。
このような状態にならないためには良質のタンパク質と必要なカロリーを摂ることが重要です。
なぜ塩分を制限する必要があるのでしょうか?
体には多くの水分が含まれており、その量を調節しているのが塩分です。そして塩分を調節しているのが、腎臓です。
腎臓の機能が低下してしまうと、塩分を体の外に出すことが出来なくなってしまい体に塩分が溜まってしまいます。また塩分と同時に、電解質のひとつであるカリウムも溜まってしまいます。
その結果、高血圧やむくみ、心不全を起こしやすくなってしまいます。
このような事が起こらないようにするためには、食事療法が大切になります。腎臓が悪いと、腎臓病専用の療法食と思う方も多いとは思います。
当然ですが、療法食はタンパク質と塩分が制限されています。これって猫ちゃんには、美味しいとは言えないフードなんです。
病気の事を考えれば腎臓病用のフードが良いのですが、食べなければ痩せていってしまいます。そのため使い方を間違えてしまうと、逆に病状が悪くなってしまいますので注意が必要です。
療法食が嫌いな場合には!
その子の食性から、好きなフードしか食べない場合もあります。そのため療法食なんか、クソ喰らえ状態で全く食べないなんて子も普通に見られます。
もしどうしても療法食を食べない場合は、今までのフード+『α』で頑張りましょう!
『α』は・・・リンの吸収を抑えるリン吸着剤や尿毒症の毒素を吸着する活性炭などです。まずは痩せさせない努力が大切です!
食欲が落ちているときはどうしたら良いのか
食べないと心配になりますよね?
でも焦らずに心穏やかに頑張りましょうね!
慢性腎炎が進むにつれて食欲も落ち気味となり、徐々に痩せてしまいます。
そうならないためには、美味しく食べられるような工夫が必要になります。
温める
ウエットフードもドライフードも軽く温めると、香りと美味しさが増します。
手から与えてみる
手のひらにのせて与えてみると、なぜか食べる子がいます。
手の温もりが良いのか、手の位置が良いのか・・・
首が痛くて頭を下げられない猫もいますので、チェックが必要です。
トッピング
フードに好きな食べ物や美味しいモノを、トッピングしてみます。ヒルズa/d缶などの高栄養食や、栄養補給用のペースト状のモノなどを使うのもひとつの方法です。
風味付け
ドライフードと煮干しなどを密閉容器に入れ少し、時間を置いたのち温めてみる。
そうすると煮干し風味ドライフードの出来上がります。このように風味付けに使える素材は、色々ありますよね!
流動食
固形食は嫌だが水は飲める子は、流動食を使用してみます。
食欲増進剤
自分で食べさせたい時の最終手段が、食欲を増す薬です。効果の薄い子もいますが効果絶大の子もいますので、試してみるのも良いかもです。
とにかく食べましょう!
食欲の無い状態が続くと衰弱だけでなく、腎臓にさらなる負担をかけることとなります。
まずは何でも良いので「食べたい」と興味を持ったモノを与えてみます。また「食べたい」気持ちを持たせるようにすることも必要です。
どのようなモノでも良いですから、食べる気持ちを引き出すようにします。ある程度食べられるなら、徐々に腎臓に良いフードに変更していくことが必要です。
また寒い場所など、食べる環境も食欲に影響しますので注意しましょう。
強制給餌(きょうせいきゅうじ)を行う方法について
何をしても食べない食べたがらない!
でもどうしても食べさせたいことありますよね!
そのような場合には強制的に食べさせるしかありません!
まず最初は強制給仕から行いますが、強制給仕には以下のようなものがあります。
- 強制給餌:口に直接食べ物を入れていく
- 鼻チューブ:鼻の穴からチューブを胃まで入れる
- 経食道チューブ:首に穴を開け、チューブを食道から胃まで入れる
- 胃瘻チューブ:お腹に穴を開け、チューブを胃に入れる
強制給餌・指で与える方法
まだ普通に飲み込むことができる子に行います。
1 ペースト状にしたフードを人差し指の先にとる
お互いに慣れるまでは、少量から行う方が良いですよ!
2 口をあける
色々な方法がありますので、やりやすい方法を見つけて下さい。
3 口を開いたら上顎にペーストを塗る
口を開けられないなら、唇をめくり歯茎に擦りつけるようにしても食べる子もいます。
噛まれてしまうことがありますので、嫌がらせ無いように手早く、しかも優しく行います。
強制給餌・シリンジで与える方法
指で食べさせるのが困難な場合に行います。
お互いに慣れれば結構スムーズに、しかも短時間に食べさせられます。
1 強制給仕用のシリンジにペーストを入れる
2 シリンジの先端を、猫の口の脇に軽く差し入れる
シリンジを入れられのを嫌がる子もいますので、最初は無理の無いように行いましょう。
3 飲み込むタイミングを見計らいながら、ゆっくりと少量づつフードを入れていく
最初にフードを入れたシリンジを、必要な本数を用意します。
結構口からこぼれる落ちる事もあるため、猫に首にエプロンをしたりタオルを巻くと毛が汚れません!
強制給仕・チューブを使う方法
鼻からチューブを入れ、フードを胃に直接流し込む方法があります。
またチューブを首から直接食道に、またお腹から胃にチューブを入れる方法もあります。
首から食道にチューブが埋め込まれています。これらの方法は口から水分や栄養、薬などを入れないため、無理なく与えられます。
ストレスも少なく効率的な方法なのですが、チューブの装着は自分では出来ません。装着は先生と、相談になります。
皮下輸液・静脈輸液をするには
そもそも慢性腎不全って防げるの?
定期的なチェックで予防することができます。
治療において、点滴=輸液が必要な状況になることが多々あります。輸液の良いことは脱水になっている時間が減るため、楽に過ごせるということです。
入院の場合には、静脈輸液を行います。しかし入院が困難であったり、毎日のように輸液を行う必要があるのに通院が困難である場合もあります。そのような場合には、家でもできる皮下輸液を選ぶ場合もあります。
皮下輸液
背中の皮膚に針を刺し、皮下に輸液剤を投与する方法です。
一時的に注射した部位がコブのようい腫れますが、時間とともに元の状態に戻ります。脱水が激しい場合や循環の状態が悪い場合には、行えないこともあります。
その場合には静脈輸液を行い、状態を改善したなら皮下輸液に変更します。
処置にかかる時間が短いため、通院でできます。またやり方を学べば、自宅で行うこともできます。そのため皮下輸液は飼い主さんの負担と猫ちゃんもストレスを大きく減らす事ができる治療方法です。
ちなみ皮下輸液は、水分の補給であり栄養の補給ではありません。また脱水ということに対しての処置ですから、病気を治すわけでもありません。また家で行う治療ですから、飼い主さんが処置を行う必要があります。
家で行う皮下輸液は、入院、外来についで第3の医療として捉えられています。
在宅医療の良い点は「住み慣れた環境で、普通に生活ができる」ことです。在宅医療は治療の場所が住み慣れた環境であため、気持ち的にも楽!寝ることも食べることも問題なし!
いつもと同じように、いつもと同じ生活が出来ることです。食器もベッドもオモチャも同じ!
窓から見える景色も同じ!そのような場所で皆さんの優しい手で、手当てをしてあげるのも大切な治療の一つです!
静脈輸液
静脈に留置針という専用の針を使い、直接輸液剤を静脈に入れます。
そのため、皮下輸液よりも効果的な方法です。ただ皮下輸液のように短時間で行うことはできないため、時間がかかります。
そのため入院が必要となります。(場合によっては、日帰りが可能なこともあります)
投薬について
以下の犬種は要注意!上記であげた予防方法をぜひ実践してあげてください。
慢性腎炎と言えど、血圧が高い胃炎を起こしているなど状態はその子その子で違います。その子の状態にあった薬やサプリメントを使うのがベストです。
猫ちゃんに薬を飲ませるのは、結構大変なことです。嫌がって飲まないなんて、普通の事です。
処方される薬やサプリメントは、腎臓を治すための薬ではありません。しかし病状の進行を遅らせ辛い症状を抑えるため、大切な薬です。飲ませるのがストレスになるのは、嫌ですよね。そのため使いやすいモノを選ぶことも必要です。
病状等にあわせ、また先生と相談しながら薬やサプリメントを選んであげて下さい!
まとめ
慢性腎炎は治らない病気です。しかも慢性腎不全に陥ってしまった場合には、一生涯治療を続けなくてはなりません。そのためにも、飼い主さんにも猫にも負担が少ないような治療を選ぶ必要があります
慢性腎不全での治療で、わからないことや悩みがある場合にはご相談ください!スタッフ一同、全力でサポートさせて頂きます。
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猫の慢性腎不全の看護のPOINT①水を飲ませ方について