Dr.Nyanのすこやかコラム
飼い主様に伝えたい犬猫の病気や日常ケアについての役立つコラムをお届け♪
【腸トリコモナス症】犬の腸トリコモナス症とは?症状や治療法を解説
せんせい、うちの仔が超下痢でピーピーで血も出ちゃってるの!
しかも食欲も元気も無くて
どうにかして〜ッ!
そんな症状がみられたら「お腹の中に虫」が住んでいるかもしれません。
ひょっとして、お腹の中に虫がいるかもしれないね。
ウンチの検査してみようね。
先生!
動いてるのが見えますよ。
これってトリコモナスですよね!
ウンチの検査で、なにか動くモノを多数発見です!しかも活発に動き回っています。
お腹の中に住む虫の中でも、検査しても発見しづらいのが「腸トリコモナス」という原虫です。原虫とは単細胞(1つの細胞)からできている、しかも感染症の原因となる微生物です。原虫の仲間には、ミドリムシやゾウリムシなどがいます。
仔犬に感染すると怖い「腸トリコモナス症」の原因や対処法について、Dr.Nyanが説明しますね。
腸トリコモナス症の症状
腸トリコモナス(Trichomonas hominis) という原虫が感染して起こる病気が、腸トリコモナス症です。
腸トリコモナスは、ウンチを口にすることにより感染します。ただ免疫力に異常が無く健康な状態であれば、腸トリコモナスに感染しても発症することが少ないと言われています。
しかし幼齢や老齢である場合、特に幼若齢や何らかの原因で免疫力が低下した場合には腸トリコモナス症を発症することがあります。
腸トリコモナスに感染しても、何の症状も見られないこともあるんだよ!ではどんな症状が出たら注意が必要なのか、一緒に確認していきましょうね!
下痢などの消化器症状
腸トリコモナスは、結腸や盲腸などの大腸に寄生します。成犬の場合には、感染しても無症状のことが多々あります。
しかし幼齢や老齢で、免疫力は落ちている場合には発症してしまう場合があります。感染し発症すると、その多くは下痢などの症状がみられるようになります。
大腸に寄生するため、大腸炎を起こし以下のような症状が見られるようになります。
- 水のような下痢
- 血混じりの便
- 粘液便
- 脱水
下痢に伴い、食欲や元気が無くなったりもします。また下痢から肛門や肛門周囲が赤くなったり、肛門に腫れを起こしたりもします。
肛門から腸が飛び出しています。
下痢が激しくなると、肛門から腸が飛び出してしまう「脱肛(直腸脱)」となってしまうこともあります。
混合感染を起こしてしまう
他の原虫や寄生虫、また細菌やウイルスなどと混合感染している場合もあります。
腸トリコモナスは、他の寄生虫などと一緒に感染していることもあります。例えばジアルジアやイソスポラ、回虫などです。
ウンチの中にいたチョット小さめの回虫です。
これらの寄生虫との混合感染している場合には、腸トリコモナスを治療しても症状が治らないこともあります。またパルボイルスやコロナウイルスなど、感染すると消化器症状を起こすウイルスの感染にも注意します。
特に仔犬では重症化しやすいため、入院での治療が必要となる場合もあります。また場合によっては治療の甲斐無く、亡くなってしまうこともあります。
腸トリコモナス症の原因
トリコモナス症は腸トリコモナス(Pentatrichomonas hominis)という原虫が原因で起こる病気です。腸トリコモナスは運動するための長い毛 (鞭毛)をもつため、腸の中を動き回ります。
腸トリコモナスの大きさは細菌よりは大きいとは言われますが、それでも顕微鏡でないと見ることができません。また腸トリコモナスは犬だけでなく、多くの脊椎動物に寄生します。
口からの感染
腸トリコモナスに汚染されたウンチを口にしてしまうことにより、感染します。
腸トリコモナスは条件によっては、体外でも数日間生きています。そのためこの間に足や被毛などに付着し、そこを舐めてしまうことからでも感染します。
これを「経口感染」と言います。
症状が無いからと言って、感染していないわけではありませんよ!
感染していても、無症状の犬が感染源となっていることもあります。
腸トリコモナス症の主な治療と費用
検便を行い、感染しているかどうかを調べます。腸トリコモナスは糞便検査での検出率が、決して高いとは言えません。
検出率を上げるためには、新鮮な便での検査を必要とします。持参された便を調べるのではなく、肛門から直接採取した便で検査を行います。それでも見つからないことも多いため、幾度か繰り返し検査を行います。
トリコモナス症を発症した場合、他の寄生虫や細菌と混合感染をしていることがあります。そのため、それらの治療も併せて行う必要があります。
抗菌剤の投与
一般的には、メトロニダゾールやチニダゾールという薬を投与します。
ただこれらの薬は、とても苦く飲ませづらいという欠点を持っています。そのため投薬の際には、注意することが必要となります。
投薬は、見た目の症状が治っても途中でやめてはいけません。必ず投与期間を守り、確実に投与することが大切です。
対処療法を行う
全身状態に合わせた対症療法を行います。
腸トリコモナス症は、重度の下痢により脱水症状が悪化してしまうことがあります。そのため、点滴による治療が必要となる場合あります。
整腸剤や抗生剤、また食べない場合には強制給餌を行う必要もあります。
腸トリコモナス症の治療費
検査と治療でかかる費用は、重症でない場合には1週間間の投薬で平均5000円~8000円程度と思ってください。ただ体重や病状や使用する薬によっては費用が異なりますので、あくまでも概算になります。
また重症になると点滴を行うなど、治療方法も変わります。また場合によっては入院も必要となり、治療費もかかってしまいます!
腸トリコモナス症の予防
虫体を含む糞便を口にすることで感染します。
感染している犬の便の取り扱いには、十分に注意しなくてはなりません。散歩のときなどに他の犬などの便に近づかないようにします。
隔離を行う
腸トリコモナスに感染した犬と同じ環境で生活している場合には、他の犬へ感染させてしまいます。そのため感染している犬は隔離し、他の犬との接触を避けます。
掃除を徹底する
ウンチは素早く片付け、掃除を徹底することが大切です。
また使用していたトイレや敷物などはよく洗い、清潔に保ちます。多頭飼いの場合には、トイレの数を増やすことも必要になります。
自宅での消毒方法
腸トリコモナスの消毒には、以下のような薬剤が有効とされています。
- 次亜塩素酸ナトリウム
- ポビドンヨード
- 塩化ベンザルコニウム
健康診断を行う
定期的に検便を行い、早期の発見と治療を心がけます。
腸トリコモナス症を起こしやすい犬種
犬種には関係なく感染します。
そのため上記の予防方法を実践して下さいね!
- 幼齢期の子犬
- 老齢の犬
- 免疫力が弱まっている犬
まとめ
腸トリコモナスは仔犬に発症しやすい原虫ですが、早期に見つけ出せば重症化しません。予防に勝る治療は無いと言われますので、定期的な検便を行うようにしましょうょうね!
もし何か気になる兆候が見られたら、早めにご相談ください!