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【幹細胞療法】幹細胞の働きと治療法などを解説

【幹細胞療法】幹細胞の働きと治療法などを解説

先生!この頃、幹細胞療法を受けてる子の話をよく聞くんだけど、それってどんな治療なのかしら?
チョット教えて欲しいな!

それじゃ幹細胞療法の前に、幹細胞について説明するね!

目次

幹細胞とは?

幹細胞には自分と同じ細胞を作ることができる能力と、別の種類の細胞に変化する能力!の二つがあるんだよ!
じゃ〜これらについて説明するね!

自己複製能

皮膚や血液、肝臓などの体の各組織を作っている細胞には、それそれ寿命があります。
生命を維持させるには、寿命を迎えた細胞を絶えず新しい細胞へと入れ替える必要があります。
つまり皮膚の細胞は皮膚を血液の細胞は血液と、元の細胞と同じ細胞を作り入れ替えなくてはなりません。

またケガをしたり病気になったときには、ケガしたした場所や病気になった組織や臓器の細胞を入れ替えたり修復しなくてはなりません。

このように同じ機能を持つ細胞を作り入れ替える能力を持った細胞が『幹細胞』です。

分化能

また幹細胞は、下の図のように自分とは異なる細胞に変化して様々な組織を作ります。
つまり様々な細胞や臓器に対応した細胞に変化し、成長することができるのが『幹細胞』です。

このような能力を持っている『幹細胞』は、もともと体の中に備わっています。

幹細胞とは・・・
体を作る組織や臓器の細胞に変化することができるし
老化した細胞や傷ついた細胞と入れ替わり同じ働きをする
そんな事ができる細胞なんだよ!

幹細胞の持つ3つの働き

幹細胞の持つ大きな働きは、三つあるんだよ!
それらについて説明するね!

幹細胞は炎症や損傷を起こしており、治癒が必要とされる場所に集まるという性質を持っています!
この働きを上手に使うことにより、体の修復を行うことができます。

抗炎症作用

抗炎症作用とは、体に起きている炎症を抑えてくれる作用の事です。
幹細胞は炎症を鎮める作用を持つ細胞で、痒みや痛みを軽くします。
例えば、膝などの関節が変形することによる痛みを和らげることができます。

組織保護・修復作用

幹細胞の持つ他の細胞へと変化する能力により、傷んだ組織に必要な細胞を作り出します。
また弱ってしまっている細胞を保護し、血管を新しく作り血液の供給量を増やし組織の細胞を回復させます。
傷ついた組織を治す際には、組織が硬くなったり柔軟性が失わないようにもします。

免疫調整作用

炎症を起こしている時に現れる免疫系の細胞をコントロールし、免疫バランスを調えます。
その際に幹細胞は免疫力を上げ、自己防御力や自己治癒力も高めます。
その結果、感染症を予防したり病気に罹っても発症しにくい未病の状態を維持したり発症しても重症化しにくくなります。

当院では幹細胞治療に高濃度ビタミンC治療を組み合わせ、さらに免疫力を上げる治療も行っております。

幹細胞療法ってどんな治療なの?

幹細胞は自分と同じ細胞を作る能力自己複製能)と、別の種類の細胞に変化する能力分化能)を持つ細胞です。
そのためケガや病気の時に、体内に幹細胞が大量にあれば治りやすくなります。

しかし、体の中にある幹細胞の数には限りがあります。
そこで幹細胞を体外で培養し増やし、体内に入れてあげれば体内の幹細胞の数は増えケガや病気の治療の効果が高くなります。
このような目的から行うのが、幹細胞療法です。

当院では幹細胞の中でも、様々な治療に使用できる皮下脂肪の幹細胞脂肪由来間葉系幹細胞)を治療に用いています。

間葉系幹細胞は各組織の細胞になる手前の段階、いわゆる分化前の状態で移植すると体内で痛んだ細胞に分化します。
たとえば骨の細胞になる前の段階で体の中に入れてやると、体内で骨細胞に分化して骨を治します。

このように幹細胞を移植により、痛んだ細胞が新たな細胞に置き換わります。
ちなみ幹細胞の移植による副作用は、ほとんど見られません。

どんな病気に使われているの?


幹細胞療法は、すべての病気に効果があるわけではありません。
また効果の薄い場合もあります。

例えば癌や脱臼、大きすぎる組織の崩壊などには効果はありません。

幹細胞治療が使われている病気には、以下のようなものがあるだよ!”

効果の期待できる病気

幹細胞治療の中でも、治療が多い病気を紹介するね

骨・関節疾患

骨折で治りの悪い場合など、骨や軟骨などに関わる病気の際に効果があります。
また椎間板ヘルニア関節炎、怪我などによる脊髄の損傷など神経疾患にも効果があります。
椎間板ヘルニアの場合は後肢が麻痺して状態が悪いよりも、まだ症状が悪化する前の方が方が効果が期待できます。

また変形性関節症や免疫介在性多発性関節炎でも使用されています。

抗炎症作用、組織保護作用、修復作用など組織を修復する力により、歩行を回復させます。

慢性腎臓疾患や慢性肝臓疾患

幹細胞の持つ組織を修復する作用などで、腎臓や肝臓の炎症を抑えます。
慢性腎炎慢性肝炎の症状の緩和と生活の質(QOL)の改善を目的として、使用します。

このところ、猫ちゃんの慢性腎不全での治療が増えてきています。

猫難治性口内炎

猫ちゃんに多い慢性的な口内炎の基本的な治療は投薬と抜歯などの外科処置になりますが、症状の改善が見られない場合があります。
また年齢などにより外科的な処置が難しい場合や、投薬しても再発を繰り返してしまう場合もあります。
そのような場合には、治る可能性のある治療として幹細胞療法を行います。

これは幹細胞の持つ抗炎症作用と免疫バランス調整作用により、口内炎の炎症を抑え症状を改善させます。
る可能性があります。

月1回4週間間隔で投与し、治療の効果を確認します。

眼科疾患

難治性の乾性角結膜炎(ドライアイ)や角膜損傷などの、眼の病気に幹細胞を使用します。
抗炎症作用、組織保護作用・修復作用、免疫調整作用などの力により、組織の修復を行います。

自己免疫性疾患

幹細胞の持つ抗炎症作用や免疫調整作用により、炎症を和らげます。
その結果、ステロイドや免疫抑制剤の使用量を減らすことができるようになります。

免疫介在性多発性関節炎や炎症性腸疾患(IBD)、自己免疫性血小板減少症などで使用します。

アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎、潰瘍、創傷など皮膚のトラブルでは、抗炎症作用、組織保護作用、修復作用など組織を修復する力により炎症を和らげます。

幹細胞療法を行う場合

ケガや病気の多くは、既存の通常の治療で治っていきます。
そのため幹細胞療法を行う前には、まず通常の治療をしっかり行います。

幹細胞療法を行うには

通常の治療を行なっても、治りが悪かったり治らない場合もあります。
例えば以下のような場合です。

  • 投薬や手術では効果がなかった
  • 投薬などの治療を行うと副作用が出てしまう
  • 投薬や手術など既存の治療法が行えない

例を挙げて説明しましょう!
慢性腎不全の場合、投薬や輸液療法などの内科的な治療を行います。
しかし思うような効果が得られないような場合があります。

また椎間板ヘルニアでの麻痺の場合、投薬などの内科的な治療を行っても効果が得られないし、手術をしても麻痺に対する効果が得られない場合があります。

このように既存の治療を行なっても治療成績が良く無い場合には、治療の選択肢のひとつとして幹細胞療法を考えます。

また飼い主さんの要望で、幹細胞療法を行う場合もあります。
どちらにしろ、病状や病態をしっかり把握する必要があります。

幹細胞療法は新たな治療方法で未知の部分もありますが、使い方によってはといても良い治療方法です。

幹細胞療法には、二つが方法があります。
今度は、それらについて説明するね!

自家移植法

治療を受ける子から採取した脂肪から幹細胞を取り出し培養し、採取した子に移植する治療方法です。

治療が必要になってから作り始めるため、治療までに2週間程度の時間がかかります。
また培養に必要な幹細胞は、全身麻酔をして手術で採取する必要があります。
年齢や体調、また病状などで幹細胞の育ちが悪い場合や、持つ能力が低い場合があります。

他家移植法

ドナー(提供動物)から採取した脂肪から幹細胞を取り出し、培養し移植する方法です。・

移植を受ける子には全身麻酔などの処置が必要ではないため、身体的な負担が全くありません。
病気に侵されていない健康で鍛えた体を持つ若いドナーの幹細胞が使えます。
他家幹細胞のストックがあれば、いつでも移植ができます。

治療の流れ

血液検査などの検査を行い、症状や状態の確認を行い治療計画をたてます。

治療相談

今までの治療経過や病状についてお伺いします。
当院の幹細胞療法について詳しくご説明いたします。
不安や疑問などにについて遠慮なくお尋ね下さい。

診察・検査

幹細胞療法を行うために、診察と必要な検査を行います。

【検査内容】

  • 一般身体検査
  • 血球計算
  • 血液生化学検査
  • 凝固系検査
  • 腹部超音波検査
  • 胸腹部 X 線検査
  • 尿検査

【治療が行えない場合】

  • 悪性腫瘍性疾患の既往歴がある
  • 妊娠中(可能性を含む)および授乳中である
  • 幹細胞による治療が不適当と判断された

手術による脂肪組織の採取

間葉系幹細胞は体の様々な組織に存在しますが特に脂肪組織の中には多いため、皮下脂肪から採取します。
採取する脂肪組織は0.5~2gほどで、パチンコ玉よりもチョット大きい程度です。

培養

採取した脂肪の中に含まれる幹細胞を分離し、培養し増やします。
採取した脂肪の量や質により、培養での増え方に違いがでます。
培養の期間は2週間から3週間になります。

移植 

幹細胞の移植は一般的には静脈からの点滴により行いますが、他の方法を行うこともあります。
静脈からの点滴には1時間程度で終わりますが、移植後には体調のチェックを行うため基本的には半日入院となります。

移植方法

移植方法には以下の3つがあります。

■静脈点滴投与

培養した幹細胞を、静脈から点滴として移植します。
幹細胞は血液にのって、全身に周ります。
その際に幹細胞は炎症・損傷を起こし、治癒が必要とされる部位に集まる能力を持っているため効率よく治療すると言われています。

■局所投与

培養した幹細胞を、皮膚や骨折した場所などに注入したり注射し移植します。
手術の際に、その部位に注射することもあります。

■筋肉内投与

培養した幹細胞を、筋肉注射により移植する方法です。
幹細胞から分泌された物質が筋肉の血液の中に入るため、離れた場所の病変部にも効果があるとされています。

静脈注射よりは効果は落ちますが、免疫細胞と接触するチャンスが少ないのが特徴です。
そのため幹細胞による治療の効果が、長持ちすると言われています。

まとめ

これまで一般的に「治りづらい」とか「治らない」と言われていた病気が多数あります。
しかしこれらの病気が「治る可能性もある」として期待されているのが、幹細胞療法です。
「幹細胞療法」について、ご興味のある飼い主さんは、ご相談ください。