Dr.Nyanのすこやかコラム
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猫の変形性関節症|登らない・ジャンプしない・触ると怒る原因と治療
本記事は、Dr.Nyan症例集「猫の整形・筋骨格疾患編」の一部です。実際の診療症例をもとに、猫の変形性関節症(関節炎)の原因と対応についてわかりやすく解説しています。
「最近高いところに登らなくなった」「ジャンプをためらうようになった」「以前より動きが鈍くなった」「触ると怒るようになった」そんな変化はありませんか?
こうした変化を「年のせい」と見過ごしていませんか?実は猫の変形性関節症(関節炎)のサインかもしれません。猫は痛みを隠す習性があるため発見が遅れやすい病気です。
【症例】こんな猫が来院しました
飼い主
最近高いところに登らなくなって、ジャンプもあまりしなくなりました。触ると怒ることも増えています。
Dr.Nyan
レントゲンで関節の変形が確認できました。変形性関節症による痛みが原因と考えられます

鎮痛薬・関節サプリメント・生活環境の改善を組み合わせて管理開始。2〜3週間後には動きが改善し、以前よりも活発に過ごせるようになりました。
猫の変形性関節症とは?
飼い主
年を取っただけじゃないんですか?
Dr.Nyan
加齢も関係しますが、多くは関節の痛みが原因です。適切に治療すれば改善できることが多いです。
変形性関節症(OA:Osteoarthritis)は、関節軟骨が徐々に摩耗・変性し、関節に炎症・痛み・変形が生じる病気です。猫の関節炎は非常に多く、7歳以上の猫の約60〜90%に変形性関節症の変化があるとされています。
猫は痛みを隠す習性があるため、「行動の変化」として現れることが多く、飼い主様が「年を取ったせい」と見過ごしてしまうケースが非常に多いです。
Dr.Nyan
猫は犬と違って「痛くて歩けない」という形で表現しないことが多いです。行動の変化で気づいてあげることが大切です。
症状(行動の変化に注目)

飼い主
ジャンプしないだけでも受診したほうがいいですか?
Dr.Nyan
はい。行動の変化は重要なサインです。早めに確認することで悪化を防げます。
活動性・行動の変化
- 高いところに登らなくなった(キャットタワー・ソファ・棚)
- ジャンプをためらう・できなくなった
- 動くのが遅くなった・以前より休む時間が増えた
- 起き上がる・座る動作がゆっくりになった
- 段差を避けるようになった
- 段差を降りる前にためらう
- 一段ずつゆっくり降りる
- 飛び降りる時にドスンと大きな音がする
Dr.Nyan
猫は「登れない」より、「降りるのが痛い」ことで異変が見つかるケースも多いです。
「飛び降りる時の音が大きくなった」という変化も重要なサインです。
グルーミング・排泄の変化
- 毛並みが悪くなった(痛くて体をひねれない)
- トイレに入るのを嫌がる(またぐのが辛い)
- トイレ以外で排泄してしまう
- 爪研ぎをしなくなった
- 爪が太くなる・層状に重なる(自分で整えられない)
- 爪切りを嫌がるようになった

飼い主
最近、爪が伸びっぱなしで太くなってきました…
Dr.Nyan
関節が痛い猫は、爪研ぎの姿勢や足を曲げる動作が辛くなることがあります。実は「爪の変化」も重要なサインです。

性格・反応の変化
- 触ると怒る・噛む・逃げる(特に関節を触ると)
- 遊ばなくなった
- 元気・食欲が落ちた

実際には、レントゲンで関節に変化が見つかっても、飼い主様が「病気」と気づいていないケースも少なくありません。
好発部位
猫で特に変形性関節症が起きやすい関節は以下の通りです。
- 肘関節(最多)
- 股関節・膝関節
- 足首(足根関節)
- 脊椎(脊椎型関節症)
特に肘関節と脊椎は見逃されやすく、「なんとなく動かない」という形で現れることがあります。
原因
加齢(最多)
最も多い原因です。加齢とともに関節軟骨が摩耗し、関節内の炎症・骨棘(こつきょく:骨のとげ)が形成されます。7歳以上の猫で急激にリスクが高まります。
肥満
体重が増えると関節への負荷が増し、軟骨の摩耗が加速します。肥満の猫はそうでない猫よりも早期に関節炎を発症する傾向があります。
また、「痛いから動かない → 太る → さらに関節へ負担がかかる」という悪循環に陥ることも少なくありません。
痛みを適切にコントロールすることで活動量が増え、遊ぶ時間や移動量が改善し、結果として体重管理につながるケースもあります。
飼い主
太っているから動かないのか、痛いから動かないのか分からなくて…
Dr.Nyan
実際には両方が関係していることが多いです。まず痛みを減らすことで、「動ける体」を取り戻していきます。
外傷・骨折の既往
過去の骨折・脱臼・靭帯損傷が原因で関節の構造が変化し、二次性の変形性関節症を発症することがあります。
先天性・遺伝的要因
スコティッシュフォールドは軟骨の遺伝的異常により、若い頃から重篤な関節炎(骨軟骨異形成症)を発症します。
リスク先生
スコティッシュフォールドは折れ耳の遺伝子が全身の軟骨異常を引き起こします。若い猫でも重篤な痛みを抱えていることがあります。
診断方法
飼い主
検査しないと分からないんですか?
Dr.Nyan
触診とレントゲンで多くは診断できます。自宅での様子も重要な情報になります。
問診(行動の変化の確認)・触診(関節の痛み・腫れ・可動域の確認)・レントゲン検査を組み合わせて診断します。

Dr.Nyan
猫は病院で緊張して痛みを隠すことがあります。自宅での行動変化を動画に撮ってきていただけると診断の助けになります。
治療法
薬物療法(鎮痛・抗炎症)
猫に使用できる鎮痛薬は犬より少なく、慎重な選択が必要です。以下の薬が使用されます。

- メロキシカム(NSAIDs):猫専用製剤で比較的安全に長期使用可能
- ブプレノルフィン:オピオイド系鎮痛薬(重症例)
- ガバペンチン:神経性疼痛に有効
- 抗NGF抗体(フルネベチマブ):月1回の注射・最新の疼痛管理
リスク先生
人用の痛み止めは猫にとって危険です。絶対に使用しないでください!
関節サプリメント
- グルコサミン・コンドロイチン(軟骨保護)
- オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)(抗炎症)
- アバカン(Adequan):関節内のプロテオグリカンを保護する注射薬
生活環境の改善(最重要)
飼い主
環境を変えるだけでも良くなるんですか?
Dr.Nyan
はい。段差を減らすだけでも痛みの負担が軽くなり、動きが改善することがあります。

- トイレの縁を低くする(またぎやすいトイレへ変更)
- 寝床を低い場所に移動・クッション性を高める
- ソファやベッドへのスロープ・ステップを設置
- 食器を高すぎない位置に設置
- フローリングには滑り止めマットを敷く
- 段差を減らす・ペットゲートで高い場所へのアクセスを管理
Dr.Nyan
環境改善は薬と同じくらい重要です。生活しやすい環境を整えるだけで、猫の活動量・QOLが大きく改善することがあります。
幹細胞治療・リハビリ

薬で痛みをコントロールしながら、幹細胞治療(再生医療)や物理療法(マッサージ・温熱療法)を組み合わせるアプローチも行われています。
予防方法
飼い主
予防はできますか?
Dr.Nyan
進行を遅らせることはできます。早期発見と体重管理がとても重要です
- 適正体重の維持(肥満は関節への最大の負担)
- 7歳以上は年1〜2回の関節チェック(触診・レントゲン)
- 早期発見・早期治療(進行してからでは軟骨は戻らない)
- スコティッシュフォールドは定期的な関節検査が必要
Dr.Nyan
関節炎は「治す」より「進行を遅らせる」ことが目標です。早期発見ほど選択肢が多く、猫の生活の質を守ることができます。
こんな症状があれば早めに受診を
リスク先生
ジャンプしない・触ると怒るなどの変化は「痛みのサイン」です。放置しないでください。
| 症状・行動の変化 | 受診の目安 |
|---|---|
| 高いところに登らなくなった | ⚠️ 早めに受診 |
| ジャンプをためらう・しなくなった | ⚠️ 早めに受診 |
| 触ると怒る・特定の部位を嫌がる | ⚠️ 早めに受診 |
| 毛並みが悪くなった | ⚠️ 早めに受診 |
| トイレ以外で排泄する | ⚠️ 急いで受診 |
| 明らかに跛行(足を引きずる) | ⚠️ 急いで受診 |
よくある質問
高いところに登らなくなったのは年のせいですか?
加齢によることもありますが、多くの場合は関節炎による痛みが原因です。7歳以上の猫でこうした変化があれば、一度受診して確認することをお勧めします。
関節炎は治りますか?
変形した軟骨を元に戻すことはできませんが、痛みを管理し進行を遅らせることで快適な生活を長く続けることができます。
人用の鎮痛薬を与えていいですか?
絶対にやめてください。アセトアミノフェン(バファリンなど)・イブプロフェンは猫に致死的な中毒を起こします。必ず獣医師に相談してください。
スコティッシュフォールドは特に注意が必要ですか?
はい。折れ耳の遺伝子(Fd)は全身の軟骨異常を引き起こします。若くから重篤な痛みを抱えていることがあり、定期的な関節検査が必要です。
どんな環境改善が効果的ですか?
トイレの縁を低くする・寝床を低い位置に移す・フローリングに滑り止めマットを敷く・ソファへのステップ設置などが効果的です。こうした環境改善だけで大きく改善するケースもあります。
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まとめ
「高いところに登らなくなった」「触ると怒る」「ジャンプしなくなった」——これらは猫の変形性関節症による痛みのサインです。
猫は痛みを隠します。行動の変化を「年のせい」と片付けず、7歳を過ぎたら年1〜2回の関節チェックを習慣にしてください。早期発見が愛猫のQOLを守ります。
様子見ではなく早めの受診が大切です。
Dr.Nyan
「年のせいかな?」と思った小さな変化の中に、痛みのサインが隠れていることがあります。
筆者・若山正之(Dr.Nyan)のプロフィール

本記事は、犬・猫の診療を行う獣医師・若山正之が監修・執筆しています。
1975年より小動物臨床に従事し、現在は若山動物病院院長として地域医療に携わっています。長年の臨床経験に基づき、一般診療から予防医療、シニア医療まで幅広く対応しています。
特に、病気の早期発見・早期対応を重視し、飼い主様にわかりやすい説明と納得いただける診療を心がけています。また、幹細胞療法や免疫療法などの先進医療にも取り組み、動物の生活の質(QOL)を重視した治療を提供しています。
これまでに一般飼い主様向けのセミナーや講演活動を多数行い、正しい医療知識の普及にも尽力しています。著書に『老犬生活 完全ガイド』『犬と猫の老齢介護エキスパートブック』などがあります。
本記事は最新の獣医療知見と臨床経験をもとに作成していますが、症状や状態によって対応は異なるため、気になる症状がある場合はお早めに動物病院へご相談ください。