若山動物病院ブログ
【蒼太探偵シリーズ】猫が水をよく飲む・おしっこが多い原因は?消える水皿のナゾ

「最近、うちの猫がやたらと水をたくさん飲むな……」 「トイレの砂の塊が、前よりずいぶん大きくなった気がする」
そんな愛猫の変化に気づいたことはありませんか? 「年をとって喉が渇きやすくなったのかな?」と見過ごしてしまいがちですが、実はその「たくさん飲む(多飲)」と「たくさん出る(多尿)」、体からの重大なSOSサインかもしれません。
今回は、中学2年生の蒼太探偵と相棒の猫・おたまが、おいどん先生と一緒に「消える水皿のナゾ」に挑みます!猫の体の中で一体何が起きているのか、その驚きのメカニズムと隠れた病気のサインを、探偵仕立てでわかりやすく解説します。
「たくさん飲む」と「たくさん出る」の怪
放課後の台所で、蒼太は三毛猫のおたまの水皿を前に頭を悩ませていた。
いつもなら夕方までたっぷり残っているはずの水が、最近は毎日のようにすっからかんになっているのだ。最初は「お部屋が乾燥しているのかな?」と思っていたが、どうも様子がおかしい。
さらに、トイレの砂を片付けると、水分を吸ってガチガチに固まった砂の塊が、いつもの倍くらいの大きさと重さになっていることにも気づいた。

砂漠にいるみたいに水を飲むのも、おしっこが大量に出るのも、体の中で絶対に何かが起きているにゃ……
おたまはどこか気だるそうに、喉を鳴らす元気もない様子で座り込んでいる。
「ただの喉の渇きじゃない、これは事件の香りがするぞ……!」
相棒の異変を察知した蒼太は、おたまをそっとキャリーバッグに入れ、原因を突き止めるべく急いでおいどん先生の動物病院へと向かった。
診察室での推理:水が体を通り抜けていく?
おたまの診察を終えたおいどん先生は、ホワイトボードにペンを走らせながら、この奇妙な現象の真相を語り始めた。

蒼太
先生、おたまは水をたくさん飲むから、その分おしっこがいっぱい出ちゃうんですよね?

おいどん先生
実はね、蒼太くん。それは正反対なんだよ。

結衣
えっ?
水を飲むから、おしっこが増えるんじゃないの?

おいどん先生
多くの飼い主さんがそう勘違いしがちだよね。でも、病気による多飲多尿は順番が逆。『おしっこが止まらなくなって、体から水分が漏れ出してしまうから、喉が渇いて必死に水を飲んでいる』んだ。

蒼太
なるほど!おたまの体は、水を節約できなくて困っているんだね。

おいどん先生
その通り。だから多飲多尿を見つけたら、『水をよく飲んでいる』ことよりも、『なぜ体から水が逃げていっているのか(原因)』を突き止めることが大切なんだよ。
多くの飼い主さんが勘違いしがちだが、けっして「水をたくさん飲むから、オシッコがたくさん出る」わけではありません。
体の水分がどんどん漏れ出てしまうということなんです。
腎臓の秘密:体の中の「水のリサイクル工場」

おいどん先生
健康な腎臓は、体の中の優秀な『水のリサイクル工場』なんだよ!
おいどん先生はそう言って、ソラマメのような形をした腎臓のイラストをホワイトボードに描き出した。
血液をきれいにろ過して体内のゴミ(老廃物)を集める際、そのまま水分ごとドバドバとおしっこにして出してしまうと、体はすぐにカラカラに脱水してしまう。
そのため、健康な腎臓は以下のような高度な節約技術を持っているのだという。
①まず大量の水分でろ過する
腎臓は1日に体の中の血液を何度も何度も循環させ、実際に体から出るおしっこの量の100倍近くにもなる大量の水分を、一度「原尿(げんにょう)」として作り出します。
②ほとんどの水分を再吸収して体に戻す
作られた原尿のうち、99%以上の水分を尿細管(にょうさいかん)という細い管が吸い取り、体に返す
③残った1%だけをおしっこにする
老廃物を濃縮した、ほんの少量の濃いおしっこだけを体の外に出す

蒼太
だから健康な猫ちゃんのおしっこは、黄色くてツーンと濃い匂いがするんだね!限界まで水分をリサイクルして節約している証拠なんだ。
猫にとても多い「慢性腎臓病」になると、この優秀なリサイクル工場の機械が、年齢とともに少しずつ壊れていってしまう。 水分を体に戻す力(尿を濃縮する力)が失われた結果、どうなるか……
それは、体に必要な水分までもが、ゴミと一緒に「薄いおしっこ」としてドバドバと外に流れ出てしまうということだった。

結衣
じゃあ、水をたくさん飲む猫ちゃんは、みんな腎臓病なの?

おいどん先生
そうとは限らないよ。
糖尿病や甲状腺の病気でも、同じ症状が出ることがあるんだ。
だから原因を調べる検査が大切なんだよ。

結衣
同じ多飲多尿でも、原因はいろいろあるんだね。

おいどん先生
そうなんだ。
見た目だけでは区別できないから、尿検査や血液検査が必要になるんだよ。
ナゾの真相:多尿と多飲の悪循環

蒼太
頭の中が少し整理できてきたぞ。
つまり、おたまの体の中ではこういう順番で事件が起きているんだね?
おいどん先生の話から、蒼太はおたまの体の中で起きている「悪循環のメカニズム」を以下のように整理した。
- ①腎臓の水を回収する装置がうまく働かなくなる(工場が正常に働かなくなる)
- ②薄いおしっこが大量に出る【多尿】(体に必要な水まで漏れ出る)
- ③体の水分が奪われ、脱水状態になる(体の中がカラカラ)バケツに水を入れても、底に穴が空いている状態に近い。
- ④脳が「水が足りない!」と危険信号を出す(激しい喉の渇き)
- ⑤必死に水を飲む【多飲】(失われた水分を補うため、夢中で飲む)

結衣
つまり『水をたくさん飲んでいるから安心』じゃなくて、『たくさん飲まないと脱水になってしまう状態』なんだね!

おいどん先生
その通り。だから水をよく飲むこと自体を喜ぶのではなく、『なぜそんなに飲まなければならないのか』を考えることが大切なんだよ。
最近おたまの背中がゴツゴツと痩せてきたのも、慢性腎臓病をはじめとする病気が進行しているサインの1つ。
腎臓の機能が低下すると体内に老廃物(尿毒素)が蓄積し、食欲が落ちて十分な栄養が摂れなくなる。
さらに、食欲低下や栄養不足によって筋肉が少しずつ減っていくことも多い。

蒼太
そういえば、おたまは最近ちょっと痩せてきた気がする……

おいどん先生
実はそこも重要な手がかりなんだ。
多飲多尿と体重減少が一緒に起きていたら、さらに注意が必要だよ。
猫では
- 糖尿病
- 甲状腺機能亢進症
- 子宮蓄膿症(未避妊雌)
などでも、多飲多尿が起こります。
探偵の決意:これからの作戦
慢性腎臓病によって一度壊れてしまった腎臓の機能を、元通りに直すことはできない。しかし、おいどん先生は「これ以上工場が壊れるのを遅らせるための作戦(治療)はたくさんある」と、力強く蒼太に教えてくれた。
猫の健やかな生活を守るため、これから蒼太が実践していく作戦は次の3つだ。
- 徹底した水分管理
どのお部屋でも新鮮な水が飲めるように水皿を増やし、ウェットフードを上手に使って食事からも水分を補給させる。 - 適切な食事療法
腎臓に負担をかけないよう調整された、療法食などの特別なフードへ少しずつ切り替える。 - 定期的な病院での検査
血液検査だけでなく、おしっこが薄くなっていないかを早期に突き止める「尿検査」を継続する。

蒼太
年をとって喉が渇くようになったのかな』なんて、ただの勘違いで片付けなくて本当によかった。これからは僕がおたまの専属探偵として、おしっこの量も、水の減り方も、毎日しっかりチェックするからね。
帰り道、キャリーバッグの中のおたまにそう語りかける蒼太の横で、相棒のおたまも「にゃ」と小さく喉を鳴らし、静かに決意を共にするのだった。
蒼太の事件簿メモ:こんな変化は要チェック!
リスク先生
10歳を過ぎた猫で
・水をよく飲む
・尿が増える
・体重が減る
この3つがそろったら要注意です。
慢性腎臓病や糖尿病が隠れていることがあります。
「年のせい」ではなく腎臓からの重大なサインには以下のようなものがあります。
- 水皿がすぐ空になる、お風呂場や結露など変な場所で水を飲むようになった
- トイレの砂の塊が目に見えて大きくなった、回数が増えた
- おしっこの色が薄くなった気がする、以前より尿の匂いが弱くなった気がする
- 背骨がゴツゴツして、全体的に肉が落ちて痩せてきた
強い喉の渇きから、普段は飲まない場所の水まで探し始める猫もいます。

結衣
今日の事件をまとめると、
水をたくさん飲むのは原因じゃなくて結果だったんだね。

蒼太
うん!
水皿がすぐ空になるのは、おたまが体を守ろうとしていたサインだったんだ。
「あれ?いつもと違うな」と感じたら、見た目は元気そうに見えても、まずは動物病院へ相談してみましょう。
元気なうちからの定期的な尿検査・血液検査が、愛猫の快適な毎日を守る一番の鍵になります。
だからこそ、
- 水の減り方
- トイレの重さ
- 尿の量
といった毎日の小さな変化が、病気の早期発見につながります。
探偵蒼太シリーズ

犬や猫の「吐く・下痢・食べない・元気がない」など様々な症状から原因、受診の目安など、病気を探る探偵蒼太シリーズです。
中学2年生の「蒼太」と獣医師の「おいどん先生」、蒼太の妹の「結衣」そして「リスク先生」が、受診の目安や危険なサインをわかりやすく解説します。
【犬編】
・犬の下痢は大丈夫?原因・危険な症状(血便・水様便)と受診の目安
・犬が食べない?原因と危険な症状・受診の目安
・犬が吐いた?原因と危険な症状と受診の目安
・犬が元気がない?原因・危険な症状と受診の目安
・犬の治らない下痢、お腹の病気じゃなかった?原因は副腎腫瘍だった
・犬の歩き方がおかしい?前足のびっこは危険?原因と受診の目安
・犬の歩き方がおかしい?後ろ足のびっこは危険?原因と受診の目安
【猫編】
・猫がごはんを食べたいのに食べない原因は?口内炎の症状と受診の目安
・春は要注意?猫の体調不良と免疫が乱れる原因と守る生活習慣
・猫が食後すぐ吐く?それは吐出かも|原因・受診の目安・嘔吐との違い
・猫がジャンプしない?原因と注意すべき症状・受診の目安
【犬猫編】
・犬と猫の鳴き方はなぜ違う?猫は長く犬は短い理由と声が変わる病気
・幹細胞療法とは?犬・猫の病気に使われる理由と効果・受診の目安
・犬と猫はどうして座り方が違うの?理由と見分け方
【今後の予定】
・犬の歩き方がおかしい?前足と後ろ足のびっこは危険?原因と受診の目安