若山動物病院ブログ
【蒼太探偵シリーズ】犬の夜鳴き|認知症だけじゃない!原因・対策・受診の目安

夜中にふと聞こえる愛犬の鳴き声。
「もしかしてうちの子、認知症になっちゃったのかな」
そんな不安を抱えて当院に来られる飼い主さんが、ここ数年で本当に増えたと感じています。
診察室でお話を伺っていると、「認知症だから仕方ない」と一人で抱え込み、頑張りすぎてしまっている方によく出会います。
でもじっくり診てみると、痴呆だけが原因とは言い切れないケースがとても多いんです。
関節の痛み、便秘、寒さ、不安、内臓の不調……夜鳴きの裏には、いろいろな理由が隠れていることがあります。
中でも私が「あ、これだったか」と気づかされることが多いのが、便秘です。
実際、当院にも「認知症でしょう」と言われて来院されたワンちゃんを何頭も診てきましたが、
蓋を開けてみると腰痛や便秘が原因だった、ということが少なくありませんでした。
夜11時過ぎ。
蒼太家がある静かな住宅街に、シロの鳴き声が何度も響いていました。
「ワン……ワン……」
ご近所の明かりも次々と消えていく中、シロだけは眠れないようです。

結衣
シロ、また鳴いてる。どうしたのかな?
可哀想に……

蒼太
最近毎晩だよね。もしかして認知症なの?
ネットにも『夜鳴き=認知症』って書いてあるし…

おいどん先生
蒼太くん、結衣ちゃん、ちょっと待った。
夜鳴きをする犬すべてが認知症とは限らないんだよ。
犬の夜鳴きの原因|犯人は一人じゃない
犬は「腰が痛い」「お腹が苦しい」と教えてくれません。
だから鳴くことでしか伝えられない、そんなこともあります。

おいどん先生
今までの診療の中で、夜鳴きの原因には次のようなものが隠れていたんだよ。
- 関節炎や腰痛による痛み(高齢に普通にみられる症状)
- お腹の張りや便秘(ガスや便秘による腹痛は思った以上に多い)
- 体の冷え(シニア期は体温が下がりやすいため)
- 不安や寂しさ
- 昼夜逆転
- 認知機能障害(犬の認知症)
- 視力や聴力の低下
- 高血圧や内臓疾患など病気による不快感
私は高齢犬が不調になって来院した場合、歯周病などの口の中のトラブルと便秘を一番に考えます。

おいどん先生
ちなみに、寂しさが原因の場合は『もう一頭飼う』のが解決しちゃうこともあるんだよ!
リスク先生
『夜鳴き=認知症』って思い込んじゃうのが一番危ないんだよね。他にも隠れた原因がないか、まずはじっくり観察してあげてほしいな。

蒼太
えっ、じゃあどのように見分ければいいの?

おいどん先生
夜鳴きの原因と特徴、受診の目安を一目でわかるように表にしたから役立てて。
| 原因 | 特徴 | 受診の目安 |
|---|---|---|
| 関節炎 | 寝返りで痛い | 早め |
| 便秘 | 夜だけ苦しい | 数日改善しない |
| 寒さ | 冬に悪化 | 環境改善で改善しなければ |
| 認知症 | 昼夜逆転 | 診察推奨 |
| 不安 | 家族を探す | 長引くなら相談 |
症例
当院でも15歳の柴犬で、数か月前から夜になると毎晩鳴くようになり、「認知症でしょう」と言われ紹介されてきました。
飼い主さんは
「夜中2時になると必ず鳴くんです」
「もう認知症だと思っていました」
と話していました。
詳しく診察すると、腰痛と便秘がありました。
鎮痛治療と寝床の改善、食事や水の飲み方、冷えの対策などを行ったところ、その後、夜鳴きは大きく減りました。
夜鳴きの原因は認知症ではなく、「腰とお腹の痛み」だったのです。

蒼太
便秘ってこと?
そういうことだったのか…
でも先生、さっきの症例もそうだけど、認知症って柴犬みたいな日本犬に多いってネットで見たよ?

おいどん先生
おっ、蒼太くん、いいところに気づいたね。
日本犬(柴犬、秋田犬など)では認知機能障害が比較的多いという報告があるんだ。
ただ、その理由はまだはっきり分かっていないんだよ。
日本犬で認知機能障害が比較的多い理由には…
食生活や遺伝的背景、EPA・DHAの摂取量などが関係しているのではと、考えられています。
犬の夜鳴き対策|家庭でできること
原因が分かったら、その子に合った対策を考えてあげます。

おいどん先生
どんな対策をしたら良いかを、まとめてみた!
- 昼間に日光浴や散歩をして生活リズム(体内時計)を整える
- 寝床を低反発マットなど柔らかいものに替える
- 体を冷やさないよう保温する(当院では腹巻きを勧めています)
- マッサージで血流を良くしたり、便秘に効くツボを刺激する
- 家族の近く(玄関からリビングなど)で休める環境を作る
- 便秘やお腹の張りがあれば改善する
- EPA・DHAやSAMeなどのサプリメントを活用する

おいどん先生
全部やろうとしなくても大丈夫。
「この子は寒がりだから保温だけ」
「この子は便秘だからお腹を整える」
そんなふうに、その子に合った対策を選べば良いんだ。

結衣
寝床を柔らかいマットに変えただけで、夜鳴きが減る子もいるの?

おいどん先生
そうだよ。
高齢になると筋肉や脂肪が減って、骨が床に当たりやすくなるんだ。
人間だって、硬い床の上じゃ痛くて眠れないでしょ?

蒼太
お腹をマッサージしたら楽そうだった子もいたよね。

おいどん先生
便秘やガスでお腹が痛くて鳴いている子も多いからね。
優しく手のひらでマッサージしたり、背中に温かいタオルを当ててあげるだけでも、安心して眠れる犬も少なくないんだよ。
薬だけに頼らない介護
「先生、もう眠れる薬をください」
夜鳴きに疲れ果てた飼い主さんから、そうお願いされることが少なくありません。
無理もないと思います。
毎晚起こされていたら、誰だって心が折れてしまいますよね。
もちろん、飼い主さんが倒れてしまわないよう、一時的に鎮静薬や睡眠薬をお出しすることもあります。
ただ、私がいつもお伝えしているのは、薬はあくまで症状を一時的に和らげるものだということ。
原因を探さないままでは、根本的な解決にはなりません。
痛みや病気が隠れているなら、そこを治さない限り夜鳴きは続きます。
遠回りに見えても、原因を一つひとつ探っていくことが、結局いちばんの近道なんです。

おいどん先生
体の中の不都合を一つひとつ見つけ出すには、どうするかだよ。
ちょっと参考にして!
- どこか痛くないか(関節など)
- 体は冷えていないか
- 便秘でお腹が張っていないか
- 不安や寂しさはないか
リスク先生
薬だけでは、根本的な解決にならないことがあります。
生活環境を整え、一手間をかけてあげることも、治療の大切な一歩です。
「夜鳴きがつらくて、薬に頼るのは悪いことだ」と自分を責めないでくださいね。
ご家族が寝不足で倒れてしまっては、元も子もありません。
薬を適切に使いながら、同時に『本当の原因』を一緒に探していくのがベストな道です。

蒼太
先生、それってどこから認知症って判断するの?

おいどん先生
いい質問だね。
いくつか特徴的な症状があるんだ。
犬の認知症のチェックポイント
高齢になると脳も少しずつ老化し、「認知症」になることがあります。
リスク先生
夜鳴きだけで認知症とは診断できません。
・甲状腺疾患
・脳腫瘍
・高血圧
・痛み
・視力障害
・聴力障害
などでも認知症に似た症状になります。

おいどん先生
次のような変化がみられたら、一度動物病院で相談してくださいね。
- 夜鳴きや昼夜逆転
- トボトボと同じ場所を歩き続ける(徘徊)
- 何もない場所を見つめている
- 家の中で迷う、出口がわからず立ち往生する
- 壁や家具の角で立ち止まる、前進ばかりで後退できない
- 狭い場所に頭を突っ込む
- 食べたことを忘れて何度も要求する(いくら食べても痩せるなど)
- トイレを失敗する
- 呼びかけへの反応が鈍くなる
- 家族のことが分からなくなる
これらの症状は認知症だけでなく、視力や聴力の低下、内分泌疾患、脳疾患などでもみられます。
そのため、「年齢のせい」と決めつけず、診察を受けて原因を確認することが大切になります。
犬の認知症ケアと介護のポイント
残念ながら認知症そのものを完全に防ぐ方法は、今のところありません。
しかし、進行をゆるやかにし、生活の質(QOL)を保つためにできることはたくさんあります。

おいどん先生
生活の質を改善・維持するには、こんなことがあるよ!
- 同じ時間に日光を浴びる習慣(昼夜逆転の予防に)
- 無理のない範囲での散歩や新しい刺激
- 「おすわり」「お手」など、子犬の頃の訓練を続けて頭を使う遊び
- 抗酸化成分を含むシニア向けフードなどでの脳機能サポート
- 円形サークルなど安全な生活環境づくり
認知症の犬が壁にぶつかって立ち往生し、鳴き続ける、そんな相談もよくあります。
そのようなことがある場合には、お風呂マットなどをつなぎ合わせて「円形サークル」を作ってあげてみてください。

四角いサークルでは角で立ち止まりやすい犬でも、円形なら歩き続けやすくなります。
そのため認知症の犬が壁にぶつかって立ち往生するのを防ぎ、安心して歩き回ることができます。
歩き疲れたらそのままコテッと眠れるようになり、鳴き騒ぎを大きく減らすことができます

蒼太
夜鳴きを力ずくで止めることばかり考えていたけど、本当に大切なのは『何に困っているか』の原因を見つけることなんだね。

結衣
それに、飼い主さんだけで抱え込んじゃダメだよね。事前にご近所に事情を話して理解を得たり、お互いが楽になる工夫を見つけるのが大事なんだね。

おいどん先生
その通り!介護はこうあるべきだというルールを作らず、飼い主さんが『楽』をしながら、愛犬が快適に暮らせる方法を動物病院と一緒に見出していく。
お互いが笑顔になれる『快互(かいご)』を目指すことが、何より大切なんだ。
犬の夜鳴きで受診をおすすめする症状

おいどん先生
次のような症状を伴う夜鳴きは、病気が隠れている可能性があるため、早めの受診をおすすめします。
- 急に夜鳴きが始まった
- 痛そうに歩く
- 食欲が落ちた
- 発熱している
- 呼吸が苦しそう
- 夜鳴きが毎日続く
- 触られるのを嫌がる
- 排便・排尿の異常がある
犬の夜鳴きに関するよくある質問
夜鳴きは何歳頃から始まりますか?
明確な年齢はありませんが、一般的には10~12歳頃から増え始めます。
その頃になると、夜鳴きの主原因である関節痛や便秘が出始めるのですが、大型犬などでは早まることもあります。
認知症は高齢犬ほど発症しやすくなるとは言いますが、年齢だけで判断せず、原因を調べることが大切です。
夜鳴くのは認知症ですか?
いいえ、夜だけ鳴くから即認知症、というわけではありません。
昼間は紛れていた関節の痛みや寒さ、不安、便秘などが、静かな夜になると強く感じられてしまう子は多いんです。
ただ、急に夜鳴きが始まった場合は病気のサインのこともあるので、一度診せにきていただけると安心です。
夜鳴きが始まったら何を確認すればいいですか?
鳴き始める時間帯、鳴く前後の様子(歩き回る・体をこすりつける等)、排便の頻度をメモしておくと、診察がスムーズになります。
また体に不快感がないかをチェックしてあげてください。
これを整えるだけで、「これだけで?」と思うくらい、夜鳴きがピタッと止まることもあります。
柴犬以外の犬種でも認知症による夜鳴きは起こりますか?
はい、起こります。
柴犬などの日本犬に比較的多いという報告はありますが、プードルやチワワといった洋犬でも、年齢を重ねれば夜鳴きや徘徊が見られることは珍しくありません。
犬種にかかわらず、「うちの子は大丈夫」と油断せず見てあげてくださいね。
夜鳴きで近所迷惑が心配です。
飼い主さんが寝不足で限界を感じるのは当然のことで、決して飼い主さんのせいではありません。
当院にも同じように疲れ果てて来院される方が多くいます。
まずは、一時的にでも薬に頼っていただいて構いません。
原因の特定だけでなく、ご家族が少しでも「楽」をできる環境づくりを一緒に考えましょう。
犬の夜鳴きは無視してもいいですか?
無視はしないであげてください。
夜鳴きは「わがまま」ではなく、痛みや不安、病気を訴える精一杯のサインであることが多いからです。
私はいつも飼い主さんに、「まず一度は様子を見に行ってあげてくださいね」とお伝えしています。
特に急に始まった夜鳴きは、体のどこかに不調が隠れているサインかもしれません。
気になったら、遠慮なく一度診せにきてください。
まとめ:Dr.Nyanからのメッセージ
夜鳴きは「歳だから」「認知症だから」と諦める必要はありません。
原因を一つひとつ探し、痛みや寒さ、不安、便秘などを改善してあげることで、驚くほど落ち着く犬も少なくありません。
病気は、獣医師だけが治すものではありません。
獣医師とご家族が力を合わせて初めて、本当の治療になります。
私たちが原因を見つけ、ご家族が家庭環境を整える手助けをすることで、犬自身の治癒力を引き出すものです。
介護とは、ただ義務でお世話をすることではありません。
その子が何に困っているのかを理解し、お互いが楽に、快適に毎日を過ごせるよう支え合うことです。
夜鳴きで困ると、飼い主さんまで眠れなくなります。
イライラしてしまう日があっても当然です。
だから一人で抱え込まないでください。
私は「介護」という言葉より、「快互(かいご)」という言葉が好きです。
お互いが我慢する介護ではなく、お互いが楽になれる介護。
それが、愛犬にも飼い主さんにも「太く、長く、明るく、楽しい毎日」を届けることにつながると、私は信じています。
何か不安があれば、いつでも相談してくださいね。
「夜鳴きは歳だから」と諦めず、その子が何に困っているのかを一緒に探していきましょう。
探偵蒼太シリーズ

犬や猫の「吐く・下痢・食べない・元気がない」など様々な症状から原因、受診の目安など、病気を探る探偵蒼太シリーズです。
中学2年生の「蒼太」と獣医師の「おいどん先生」、蒼太の妹の「結衣」そして「リスク先生」が、受診の目安や危険なサインをわかりやすく解説します。
【犬編】
・犬の下痢は大丈夫?原因・危険な症状(血便・水様便)と受診の目安
・犬が食べない?原因と危険な症状・受診の目安
・犬が吐いた?原因と危険な症状と受診の目安
・犬が元気がない?原因・危険な症状と受診の目安
・犬の治らない下痢、お腹の病気じゃなかった?原因は副腎腫瘍だった
・犬の歩き方がおかしい?前足のびっこは危険?原因と受診の目安
・犬の歩き方がおかしい?後ろ足のびっこは危険?原因と受診の目安
・犬の夜鳴き|認知症だけじゃない!原因・対策・受診の目安
・犬にヨーグルトをあげても大丈夫?人間用との違いと下痢の原因
【猫編】
・猫がごはんを食べたいのに食べない原因は?口内炎の症状と受診の目安
・春は要注意?猫の体調不良と免疫が乱れる原因と守る生活習慣
・猫が食後すぐ吐く?それは吐出かも|原因・受診の目安・嘔吐との違い
・猫がジャンプしない?原因と注意すべき症状・受診の目安
・猫が水をよく飲む・おしっこが多い原因は?消える水皿のナゾ
・オシッコが出ない犯人は石じゃなかった?|猫の尿道閉塞とストレスのナゾ
・猫がキャットタワーに登らない理由|シニア猫の関節痛と変形性関節症のナゾ
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【犬猫編】
・犬と猫の鳴き方はなぜ違う?猫は長く犬は短い理由と声が変わる病気
・幹細胞療法とは?犬・猫の病気に使われる理由と効果・受診の目安
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