【蒼太探偵シリーズ】犯人は乳酸菌だけじゃなかった!犬のプロバイオティクスとは?

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【蒼太探偵シリーズ】犯人は乳酸菌だけじゃなかった!犬のプロバイオティクスとは?

犬のプロバイオティクスに含まれる乳酸菌・ビフィズス菌・酪酸菌・腸球菌・納豆菌の違いを解説する蒼太探偵シリーズのアイキャッチ

シロのお腹は、あれからずっ〜と落ち着いています。
もう散歩でも元気いっぱい、うんちの調子もバッチリ。
結衣は毎日、ホッとした顔で笑っています。

そんな、ある休日のことです。
蒼太たちはホームセンターのペットコーナーへと足を運びました。

棚一面に並ぶのは、乳酸菌、ビフィズス菌、酪酸菌、納豆菌など、たくさんのサプリです。
蒼太は思わず立ち止まりました。

蒼太

えっ、乳酸菌だけじゃなかったの?こんなに種類があるなんて。

結衣

しかも全部「お腹にいい」って書いてある。
どれも同じじゃないの?

おいどん先生

それが今日の事件だよ。
犯人は「乳酸菌」だけじゃないんだ。

目次

プロバイオティクスとは何なの?

犬のプロバイオティクスには、乳酸菌、ビフィズス菌、酪酸菌、腸球菌などさまざまな種類があります。
それぞれ働く場所や役割が異なるため、「どれが一番良い」というより、その子の状態に合わせて選ぶことが重要です。ここからは、それぞれの違いを見ていきましょう。

最近よく見かける「プロバイオティクス」という言葉。
診察室でも「先生、これって結局何なんですか?」と、本当によく聞かれます。

「プロバイオティクス」とは、一言で言えば「お腹の中で直接はたらく、生きた良い菌」のことです
ただの菌では、「プロバイオティクス」とは名乗れません。
十分な研究データが揃っていて、必要な量をちゃんと摂れて初めて呼べる名前なんです。

蒼太

じゃあ、乳酸菌ならぜんぶプロバイオティクスなんだよね?

おいどん先生

それが、そうとも言い切れないんだよ。
乳酸菌というグループの中にも、効果が科学的に証明されているものと、まだよく分かっていないものがあるんだ。

犬のプロバイオティクスに使われる菌の違い

「腸にいい菌」と、ひとくくりにされがちですが、菌によっては働き方がまるで違います。
それを知ってもらうために、よく菌の働く「持ち場」の話をしています。

乳酸菌(主に小腸〜大腸)

「乳酸菌は、炭水化物(糖質)を分解して乳酸を作ります。」
腸内を弱酸性に傾けることで、悪玉菌が増えにくい環境を整えてくれるのが特徴です。
下痢気味の子に、まず試されるケースをよく見かけます。

  • 糖を分解して乳酸を作る
  • 小腸でも比較的働きやすく、他の菌より早い段階から効果を発揮しやすい
  • 製品によっては、増殖スピードの速い腸球菌(Enterococcus faecium)が配合されているものもある

結衣

ヨーグルトの乳酸菌と、犬用サプリの乳酸菌って同じもの?

おいどん先生

似ている仲間ではあるけど、犬で研究されている菌株とは別物のことが多いよ。
だから「人間用をそのまま与えればいい」という単純な話じゃないんだ。

ネットや市販品では『乳酸菌〇〇億個!』と書かれているものをよく見かけます。
しかし当院の診療経験上、増殖スピードが速い『腸球菌(Enterococcus faecium)』などがしっかり届く環境にあるかどうかのほうが、単純な数の多さよりも結果に直結することが多いと感じています。

ビフィズス菌(主に大腸)

ビフィズス菌は乳酸だけでなく「酢酸」なども作り出し、大腸の環境を整えてくれます。
人の腸ではメジャーな菌ですが、犬の腸内にはもともとそこまで多くないことが分かっています。
同じ哺乳類でも、お腹の中身は意外と違うものですね。

  • 乳酸だけでなく酢酸も作り出す
  • 大腸優位で働く、乳酸菌よりも下流を担当するイメージ
  • 犬はもともと人ほど菌数が多くない

酪酸菌(大腸のエネルギー源)

ここ数年、特に注目されているのが酪酸菌です。
この菌は大腸の細胞にとって主要なエネルギー源となる「酪酸」を作ります。

酪酸は腸の粘膜を健康に保つ働きをし、慢性的な下痢や炎症を抱える子のサポートとして研究が進んでいる成分です。

  • 短鎖脂肪酸の一種である「酪酸」を作る
  • 大腸の上皮細胞にとって主要なエネルギー源になる
  • 中には芽胞を作るタイプもあり、熱や胃酸に強い

腸球菌(Enterococcus faecium)

犬用サプリに使用される腸球菌(Enterococcus faecium)は、比較的研究されている菌種の一つです。
どの犬にも同じような効果が期待できるわけではありませんが、腸内細菌全体のバランスを整えることが期待されています。

乳酸菌だけで劇的な変化をもたらすというより、他の善玉菌が働きやすい環境をつくり、腸内フローラ全体のバランスを底上げする「縁の下の力持ち」のような菌だと考えています。

納豆菌(Bacillus属)

納豆菌は芽胞(がほう)という殻のような構造を作るため、熱や胃酸に強く、生きたまま腸まで届きやすいのが特徴です。

実際、胃酸に弱いタイプのサプリでは変化を感じられなかった子が、納豆菌配合製品へ変更したタイミングで便が安定した症例を経験しています。
ただし、同時に食事内容や生活環境も見直していたため、納豆菌だけの効果とは断定できません。
結局は、その子の腸内環境と菌の相性次第です。

蒼太

じゃあ、一番強いのは酪酸菌ってこと?

おいどん先生

その考え方こそが落とし穴なんだよ。
野球で言えば、ピッチャーとキャッチャー、どっちが強いかを比べているようなものかな。それぞれ役割が違うから、ちゃんとは比べられないんだ。

実際の診察では、こう考えて選んでいます

診療の中で「慢性の軟便だから酪酸菌」を使おうというふうには考えません。
菌の特徴を知っていることと、実際にその子に何を選ぶかは、まったく別の話だからです。

診察では、まずその子の年齢や普段の食事内容、便の状態(回数・硬さ・色・においの変化)を確認します。
必要があれば血液検査や便検査も行い、隠れた病気がないか、そもそも腸内の環境を整える必要がある状態なのかを見極めます。

そのうえで、「今はこの子の腸内の環境を整える意味がありそうだ」と判断したときに、プロバイオティクスを使うかを考えます。
原因がはっきりしないまま菌だけを足しても、根本的な解決にはならないことが多いからです。

菌の「数」だけで選んではいけない理由

ペットショップの棚を見ると、「100億個配合!」「〇種類ブレンド!」といった派手な文字が目に飛び込んできます。
「数字が大きいほど効きそう!」と感じてしまいますよね。

でも、私が診察室で重視しているのは「菌の数」ではありません。
たとえ「500億個」と書かれていても、その子の体調や隠れた病気の有無によって判断はまったく変わるからです。

そのため実際の診療では、菌数の多さだけでサプリをお勧めすることはありません。
「まずその子に今、本当に必要なのか」を見極めることから始めています。

蒼太

えー、菌は多いほうが効果がありそうなのに。

おいどん先生

野球だって、人数だけ集めてもチームのバランスがバラバラなら勝てないでしょう?

診察で重視するのは、パッケージに書いてある菌の数よりも「どんな菌株なのか」「犬での研究データや安全性の裏付けがあるか」という点です。
数字の大きさに惑わされず、信頼できる品質かどうかを見極めることが大切です。

それは同じ軟便でも、原因によって考え方がまったく変わるからです。

半年続いた軟便…サプリで治らない「盲点」

口コミで評判の乳酸菌サプリを何種類も試したけれど、一向に良くならない。
そう言って来院する飼い主さんを、何度も診てきました。

以前診察した、8歳の柴犬の子もそうでした。
半年以上も軟便が続き、市販のサプリを変えたり、フードを工夫したりしても状態は変わらなかったそうです。
今もネットで評判の乳酸菌を、3種類飲ませているそうです。

サプリを何種類も試して迷子になっている飼い主さんを見ると、どうしても『検査しよう!』と言いたくなってしまいます。

実際に私は、便検査と血液検査を提案します。
なぜなら、長引く下痢や軟便では、まず原因をひとつずつ整理して特定することが、一見遠回りに見えて一番の近道になるからです。

結衣

えっ、じゃあそれまで飲んでいたサプリは意味がなかったの?

おいどん先生

いや、サプリが悪かったんじゃないんだ。「
お腹の中を調べてから、サプリを使うと良かったんだよ。その「順番」が違っただけ。

この子の場合は、まずフードや薬での治療でお腹の調子を整え、状態が落ち着いてきたタイミングでプロバイオティクスを追加しました。
すると、あんなに長引いていた便が少しずつ安定していったのです。

お腹の中の環境が悪いままで良い菌だけを足しても、なかなか根づいてくれませんし治りもよくありません。
だからこそ、見極めが何より大切になります。

診察室でまず確認していること

サプリの相談を受けたとき「これはサプリで良くなる不調なのか?」という問いが頭に浮かびます。

そこでまず確認するのは、以下の3点です。

  • 便の回数や硬さがいつから変わったか
  • 体重は落ちていないか
  • 嘔吐や食欲不振を伴っていないか

これらに当てはまる場合は、サプリを試す前に便検査や血液検査を行います。
逆に、こうしたサインがなく単純に便がゆるめという程度であれば、フードの見直しやプロバイオティクスの使用から始めても良い場合もあります。

なぜ、効かない犬がいるのか?

「うちの子にはプロバイオティクスが効かなかった」という声も、よく耳にします。
でも、その理由はひとつではありません。
サプリだけでは解決しない背景に、こんな原因が隠れていることがあります。

  • ジアルジアなどの寄生虫感染
  • 食物反応性腸症
  • 膵炎や異物の誤食
  • お腹の腫瘍

逆に、「抗生剤を飲んだあとにお腹を壊した」「引っ越しなどのストレスで一時的に腸内バランスが乱れた」という場合では、プロバイオティクスが驚くほど良い仕事をしてくれることもあります
ただ効き方には、その子によってばらつきがあります。

そこが動物の医療の難しさであり、一頭一頭の個性を診る面白さでもあります。

当院では、最初はサプリが効かなかったのに、元々の病気を治療してからプロバイオティクスを再開したら、すんなり便が安定したワンちゃんを何頭も診てきました。
これはサプリそのものではなく、使うタイミングが重要だと感じる場面です。

リスク先生

SNSのレビューや「人気ランキング」だけで選ぶのは、正直ちょっと危険だよ。
もし慢性的な下痢や、じわじわ体重が減っているようなら、サプリを試す前にまず隠れた病気がないかを確かめること。これが鉄則だね。

プレバイオティクス、シンバイオティクスとは?

蒼太

また新しい言葉が出てきたよ。
プロとプレって何が違うの?

おいどん先生

簡単に言うとね、プロバイオティクスは「菌そのもの」。プレバイオティクスは「菌のごはん」だよ。

オリゴ糖や水溶性食物繊維(イヌリンなど)がプレバイオティクスにあたります。
これらを組み合わせたものを「シンバイオティクス」と呼び、最近のトレンドになっています。

シンバイオティクスを説明する際には、「畑での作物の栽培」の話をしています。

菌は野菜の苗で、プレバイオティクスは肥料とたとえます。
良い苗を植えても土が痩せていたら育たないし、肥料だけまいても芽は出ません。
両方が揃って初めて、豊かな畑(健康な腸)になり作物も育ちます。

サプリは、いつ始めるべき?

サプリの使用は「きちんとお腹の診断がついてから」行うことです。

蒼太

えー、腸活って早ければ早いほどいいんじゃないの?

おいどん先生

焦らなくて大丈夫。まず原因を探す。それから、必要なら使う。遠回りに見えるけど、これが一番の近道になるんだよ。

以前来院された7歳のミニチュア・シュナウザーの子も、軟便を繰り返して乳酸菌、酪酸菌、オリゴ糖、ヨーグルトと「思いつく限りの腸活」を試されていました。それでも良くならず当院へ。

検査の結果、食物アレルギーが疑われたため、まずは体に合った療法食へ切り替えました。
すると数週間で便が見違えるほど良くなり、仕上げにプロバイオティクスを足すことで、今ではすっかり安定した毎日を送っています。

もしあのままサプリだけに頼り続けていたら、その子はもっと長くお腹の痛みに苦しんでいたかもしれません。
サプリが悪いと言いたいのではなく、「原因を先に知るという順番が大切」、それが私の思いです。

よくある質問

菌数が多いほど効果は高いんですか?

菌数だけでは判断できません。
やはり大切なのは、その菌株がどう製造され、どう品質管理されているかという部分です。

菌数は表示されていても、製造時の温度や湿度の管理、賞味期限まで菌がちゃんと生きているかまで公開している商品は多くはありません。
そうした品質保証の有無も、選ぶときの目安のひとつです。

プロバイオティクスは毎日あげ続けても大丈夫ですか?

ほとんどの場合は問題ありません。ただ、体質によっては便がゆるくなる子もいます。以前、毎日与えていたサプリを一時的にお休みしてもらっただけで調子が戻った、という子もいました。「合う・合わない」は個体差が大きいので、変化を感じたら量や頻度を見直してみてください。

市販のサプリと動物病院で扱うサプリは何が違いますか?

大きな違いは、犬での研究データや品質管理の情報がどこまで公開されているかです。
私が扱うものを選ぶときは、菌株レベルでの研究実績や成分の安定性を確認したうえで決めています。
市販品が悪いという話ではありませんが、選ぶときの判断材料として知っておいてもらえたらと思います。

抗生剤と一緒でも飲める?

基本的には時間を2時間以上ずらして投与するのが当院でのおすすめです。抗生剤は悪い菌だけでなく、せっかく摂ったサプリのプロバイオティクス(良い菌)まで攻撃してしまうからです。ただし、抗生剤に強い芽胞を持つ「酪酸菌」や「耐性乳酸菌」なら同時に使えるケースもあります。自己判断せず、処方されたお薬との相性を一度ご相談ください。

猫にも同じ?

体の構造は似ていても、犬と猫では腸内細菌叢(腸内フローラ)のバランスが大きく異なります
また、猫ちゃんは味や匂い、食感にとても敏感です。
犬用サプリを嫌がって無理に与えるとストレスでお腹を壊すこともあるため、当院では猫ちゃんの好みに合わせた猫専用をお奨めしています。

下痢がなくても飲ませていい?

はい、大丈夫です。
予防やシニア期の健康維持として活用される飼い主さんも多くいらっしゃいます。
ただし、健康な状態であっても急に大量に与えると逆に便がゆるくなることがあるため、少量から始めるのが鉄則です。

手作りヨーグルトは?

無糖のものであれば少量なら問題ないケースが多いですが、人間用のヨーグルトに含まれる菌は「人間の腸」向けに選ばれたものです。
また、ワンちゃんによっては乳糖で下痢を起こす子もいます
。「ヨーグルトをあげているのに下痢が治らない」と来院される方も多いので、お腹の調子を整える目的であれば、犬用に研究されたサプリメントの方が確実です。

Dr.Nyanが最後に伝えたいこと

世の中は空前の「腸活ブーム」です。腸内環境がワンちゃんの健康を支えているのは間違いありません。

長年診療を続けてきて強く感じるのは、サプリを探すことより先に、不調の原因を見つけることのほうが、結果的に近道になるケースが多いということです。

以前、「サプリなら安心だから」と受診を数か月見合わせていた犬がいました。
検査をすると慢性腸症が進行していました。
サプリは決して悪いものではありませんが、診断の代わりにはなりません。
この経験以来、私は「まず診断、その後にサプリ」という順番を大切にしています。

当院での診療方針はとてもシンプルです。

  1. まず、隠れた病気を見逃さないこと(正確な診断)
  2. 次に、食事や生活環境のベースを整えること
  3. そのうえで、必要に応じてプロバイオティクスの力を借りること

実際に、プロバイオティクスに助けられた犬を数多く診てきました。
その一方で、サプリだけに頼ったことで病気の発見が遅れてしまった犬にも出会ってきました。

私は、サプリを否定することはありません。
しかし、それ以上に大切なのは、「なぜこの子のお腹が不調なのか」を診断することです。

蒼太

先生、じゃあ実際に腸活サプリを選ぶとき、獣医さんはどこを見てるの?

おいどん先生

いい質問だね。次回は、私が診察室で実際に使っているサプリの「選択基準」を解説するね!

次回:犬の腸活サプリの選び方|獣医師が重視する5つのポイント

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