若山動物病院ブログ
【蒼太探偵シリーズ】パッケージの罠を見抜け!「犬の腸活サプリ」失敗しない5つの選び方

ペットショップへ向かう車の中、蒼太の「探偵ノート」には疑問がびっしりと書き込まれていました。
「乳酸菌のグループ分けまでは解明できた。
だが問題はここからだ。棚にズラリと並ぶ数十種類のサプリから、本物(ベストな1着)をどうやって見破ればいいんだ?」
謎を解く鍵を求め、蒼太と結衣は再びおいどん先生の診察室のドアを叩きました。

結衣
先生、結局うちはどうやってサプリを選べばいいんですか?
棚の前で固まっちゃいそうです。

おいどん先生
わかるよ、その気持ち。正直、僕も最初のうちは同じように迷ったから。
今日は、実際に診察室で「これは選ぶ価値があるな」と判断するときの基準を、5つ話すね。
① 難しい菌名に騙されるな!犬に効いたデータはあるか?

おいどん先生
1つ目は、菌株(きんかぶ)レベルで根拠があるかどうかなんだ。

蒼太
菌株レベル?
乳酸菌とかビフィズス菌とか、そういう大きなグループの話じゃないんですか?

おいどん先生
それだと粗すぎるんだ。同じ乳酸菌でも、犬で試験されている菌株と、そうでない菌株はまったくの別物と考えたほうがいい。
パッケージに「Lactobacillus〇〇株」のように具体的な菌株名が書かれているか。
そのうえで、その菌株について犬を対象にした研究データがあるかどうか。
ここでかなり選択肢が絞られます。
属名や科名だけが大きく書かれていて、菌株名がどこにも見当たらない商品を見ると、正直「判断材料が少ないな」と感じてしまいます。
私が製品を選ぶときも、まずここを確認しています。
以前、菌株名の記載がない海外製サプリを持参された飼い主さんに、成分表を一緒に確認しながら「申し訳ないのですが、これだけでは良いとも悪いとも言えないんです」とお伝えしたことがありました。
誤解のないように言っておくと、菌株名の記載がないからといって、その製品がすべて無意味というわけではありません。
単に、獣医師として自信を持っておすすめできる材料が少ない、というだけの話です。
② 「配合数」より「到達数」!胃酸に負けない工夫
リスク先生
どんなに良い菌でも、胃酸で死んでしまったら意味ないよね。
芽胞を作るタイプの菌が胃酸に強いという話は前回しましたが、それ以外にもコーティング技術で胃酸から菌を守っている製品があります。
「耐酸性」「腸溶性」という表記や、生存率のデータを公開しているかどうか。
地味な部分ですが、見ておいて損はありません。

結衣
数が多くても、届く前に死んじゃったら意味ないってことですね。

おいどん先生
そういうこと。「配合数」より「到達数」。ここを勘違いしている飼い主さんは、結構多いんだ。
以前、便の相談で来院された6歳のトイプードルの子がいました。
「乳酸菌1000億個」と書かれた海外製サプリを毎日与えていたそうですが、便の状態はほとんど変わらなかったとのことでした。
生存率のデータが公開されていない商品だったので、正直なところ、その菌がどれだけ腸まで届いていたのかは分かりません。
③ 提示された数字の裏側!
「〇〇億個配合」という表示だけでは、正直なところ何も判断できません。
製造時の温度・湿度管理はどうか。賞味期限の最後の日まで、表示された菌数が保証されているか。
こうした情報を公開しているメーカーかどうかを、私は必ず確認します。

蒼太
公開していないメーカーもあるんですか?

おいどん先生
残念ながらね。表示上の菌数と、実際に賞味期限まで生きている菌数が一致しない製品も、市場にはあるんだ。
なぜそこまで厳しく見るのか、その理由は単純です。
飼い主さんが「良いものを選んだつもり」で、実は期待していたほどの効果を得られていなかった場面を、これまで何度も見てきたからです。
情報を隠さず出してくれるメーカーかどうか。
この一点だけでも、選ぶときの安心材料は大きく変わります。
④ その子の今の状態に合っているか
正直に言うと、ここが一番大切です。
慢性的な軟便や体重減少があるなら、サプリを選ぶ前に、まず便検査や血液検査で原因を確かめる必要があります。
リスク先生
どんなに評判の良いサプリでも、その子の不調の原因と合っていなければ、効果は実感しにくいよ。
食物アレルギーが原因なら、まず療法食への切り替えが優先です。
寄生虫感染が隠れているなら、駆虫が先。
「今この子にプロバイオティクスを足す意味があるか」を診断したうえで選ぶこと。
これに尽きます。
もちろん、例外もあります。
検査で明らかな異常が見つからず、単純に少し便がゆるい、環境の変化で一時的にお腹の調子を崩している、という程度であれば、検査を急がずサプリから試していただくこともあります。
すべてのケースで、検査を優先しているわけではありません。
⑤ 無理なく続けられるか

結衣
どんなに良いサプリでも、うちの子が食べてくれなかったら意味ないですもんね。

おいどん先生
そのとおり。嗜好性、値段、1日に与える回数や粒の大きさ。どれも「続けられるか」に直結するよね。
そして、与え始めてから「合う・合わない」を相談できる相手がいるかどうか。
これも結構大事なポイントです。
体質によっては、便が一時的にゆるくなる子もいます。
そうなったときに量や頻度を相談できる先があるかどうかで、続けやすさはかなり変わってきます。

蒼太
先生の話を聞いてたら、菌の名前より「どこが作ってるか」の方が気になってきちゃった。

おいどん先生
それでいいんだよ。
数字に惑わされず、中身が見える製品かどうかを見る。
それが結局、一番の近道になる。
よくある質問
価格が高いサプリなら安心ですか?
価格と品質は、必ずしも比例しません。
高価格帯の製品でも、菌株名や生存率のデータが公開されていないケースはあります。
逆に、手に取りやすい価格帯でも、情報開示がしっかりしている製品はあります。
見るべきは値段ではなく、開示されている情報の中身です。
動物病院で扱うサプリでないといけませんか?
そういうわけではありません。
市販品の中にも、犬での研究データがしっかりしている製品はあります。
ただ、体調に不安がある場合や、何を選べばいいか迷う場合は、一度その子の状態を診てから提案できるという点で、動物病院を経由する意味はあると考えています。
サプリ選びの前に、まず診断を
サプリは、あくまで「整った土台の上で効果を発揮するもの」です。
原因不明の下痢や体重減少があるときに、サプリ選びだけに時間をかけてしまうと、本来必要な検査や治療が遅れてしまうことがあります。
Dr.Nyanが最後に伝えたいこと
長年診療をしていると、「サプリさえ選べば大丈夫」と思い込んでいる飼い主さんに、何度も出会ってきました。
もちろん、良いサプリに助けられた犬もたくさん見てきました。それは事実です。
ただ、それ以上に大切なのは、「なぜこの子のお腹が今、不調なのか」を見極めることだと、私は考えています。
当院での診療方針は、いたってシンプルです。まず隠れた病気を見逃さないこと。
次に、食事や生活のベースを整えること。
そのうえで、必要であれば、プロバイオティクスの力を借りること。
もし今、あなたの子が長引く軟便や原因不明の体調不良を抱えているなら、サプリを選ぶ前に、一度お腹の中を確認させてください。
遠回りに見えるかもしれませんが、それが結局、一番の近道になるはずです。
探偵蒼太シリーズ

犬や猫の「吐く・下痢・食べない・元気がない」など様々な症状から原因、受診の目安など、病気を探る探偵蒼太シリーズです。
中学2年生の「蒼太」と獣医師の「おいどん先生」、蒼太の妹の「結衣」そして「リスク先生」が、受診の目安や危険なサインをわかりやすく解説します。
【犬編】
・犬の下痢は大丈夫?原因・危険な症状(血便・水様便)と受診の目安
・犬が食べない?原因と危険な症状・受診の目安
・犬が吐いた?原因と危険な症状と受診の目安
・犬が元気がない?原因・危険な症状と受診の目安
・犬の治らない下痢、お腹の病気じゃなかった?原因は副腎腫瘍だった
・犬の歩き方がおかしい?前足のびっこは危険?原因と受診の目安
・犬の歩き方がおかしい?後ろ足のびっこは危険?原因と受診の目安
・犬の夜鳴き|認知症だけじゃない!原因・対策・受診の目安
・犬にヨーグルトをあげても大丈夫?人間用との違いと下痢の原因
・腸内細菌は本当に健康に関係するの?|犬の腸活・免疫・病気との意外な関係
・犯人は乳酸菌だけじゃなかった!犬のプロバイオティクスとは?
【猫編】
・猫がごはんを食べたいのに食べない原因は?口内炎の症状と受診の目安
・春は要注意?猫の体調不良と免疫が乱れる原因と守る生活習慣
・猫が食後すぐ吐く?それは吐出かも|原因・受診の目安・嘔吐との違い
・猫がジャンプしない?原因と注意すべき症状・受診の目安
・猫が水をよく飲む・おしっこが多い原因は?消える水皿のナゾ
・オシッコが出ない犯人は石じゃなかった?|猫の尿道閉塞とストレスのナゾ
・猫がキャットタワーに登らない理由|シニア猫の関節痛と変形性関節症のナゾ
・猫のひげの役割とは?|切ると危険?平衡感覚・距離感を支える高性能センサー
【犬猫編】
・犬と猫の鳴き方はなぜ違う?猫は長く犬は短い理由と声が変わる病気
・幹細胞療法とは?犬・猫の病気に使われる理由と効果・受診の目安
・犬と猫はどうして座り方が違うの?理由と見分け方