若山動物病院ブログ
【蒼太探偵シリーズ】トイ・プードル編|第四話 「食べてるから大丈夫」に潜む罠!口臭と歯のSOS

「年齢のせいかしら。最近、口が少しにおうんです」
診察室でよく聞く相談です。
トイ・プードルの口臭は、年齢だけで片づけない方がいいことがあります。
口のにおいは少しずつ強くなるため、毎日一緒にいる飼い主さんほど気づきにくいものです。
その奥で、歯肉炎、歯周病、乳歯遺残、歯の根っこの炎症が進んでいることもあります。
鼻水や涙やけに見えて、原因が歯だったケースもあります。
今回は、トイ・プードルの口臭を診るときに、動物病院でどこを確認しているのかをお話しします。
第四事件:口臭だけに見えたトイ・プードルの歯のサイン
6歳のトイ・プードルが、予防注射で来院しました。
体重は安定していて、食欲もあります。
診察台の上でも元気でした。
飼い主さんも最初は「特に困っていることはありません」と話していました。
ところが口の中を見ると、奥歯に歯石がつき、歯ぐきも赤くなっています。
そこで飼い主さんが、ふと思い出したように言いました。
「そういえば、最近少し口がくさい気がします」
この「少し気になる」が、診察では大事な手がかりになります。

飼い主
先生、ごはんは普通に食べています。
だから歯は痛くはないと思うんです。
でも、口のにおいだけが前より気になってるんです。

蒼太
食べているなら、歯はそんなに悪くないんじゃないの?

結衣
年をとったら、犬の口って少しはにおうものだと思ってた。

おいどん先生
そこが難しいところなんだよ。
犬は痛みを隠すのが上手いし、歯が痛くても食べる子はいる。
痛くない方の歯で噛んだり、あまり噛まずに飲み込んだりして、飼い主さんに「普通に食べている」に見えることも多いんだ。
唇をめくって奥歯を見ると、歯ぐきは赤く腫れていました。
歯石もついています。
ただ、ここで「歯石があるから歯石取り」とは決めません。
口臭の相談では、歯石の量だけで判断はしません。
見るのは、歯ぐきの赤み、出血のしやすさ、歯の揺れ、噛み方です。
片方だけの鼻水や、涙がないかも確認します。
見えている歯の表面より、歯ぐきの下で何が起きているのか。
そこが大切なんです。
口臭を「歳のせい」で終わらせない
口臭の多くは、口の中で細菌が増えているサインの一つです。
最初は、歯ぐきが赤くなるだけの歯肉炎かもしれません。
その段階なら、処置と毎日のケアでかなり良い状態を目指せます。
でも炎症が歯を支える骨まで進むと、ちょっと話が変わります。
これは、いわゆる歯周病と言われるものです。
溶けてしまった骨は、歯石を取ったからといって簡単には戻りません。
佐倉市の当院でも、トイ・プードルの口臭で来院した子を診ると、「思ったより奥まで進んでいるな」と感じることもあります。
まだ若い子でも油断はできません。
受診の目安は、においだけではありません。
- 口臭が前より強くなった
- 歯ぐきが赤い、腫れている
- 歯みがきや口元を触ると嫌がる
- 硬いフードやおやつを残す
- 片側だけで噛んでいる
- 片側だけ涙や鼻水が出る
どれかひとつあっても、口の中をよく見ておく必要があります。

蒼太
鼻水や涙も、歯から来ることがあるの?
リスク先生
あります。
上あごの奥歯の根っこは、鼻の穴や涙の通り道の近くにあります。
歯の根っこに膿がたまると、骨を溶かして鼻のほうへ抜けることがあり、鼻炎や涙やけのように見えることがあるんです。

おいどん先生
だから、口だけを見て終わりにしない。
歯ぐき、歯の揺れ、噛み方、鼻水、涙、体調。
ばらばらに見える症状をつなげて考えるのが、診察なんだよ。
トイ・プードルで歯の相談が多い理由
トイ・プードルは小柄な犬です。
当然、あごも小さい。
でも成犬の歯は、大型犬と同じ42本あります。
小さなあごに同じ42本の歯が並ぶので、歯と歯の間が狭くなりやすいんです。
そこに汚れがたまる。
歯みがきもしにくい。
奥歯は特に見えにくい。
この条件が重なると、口臭や歯周病につながりやすくなります。
もうひとつ。
トイ・プードルでよく見るのが、乳歯遺残です。
これは大人の歯が生えてきたのに、子犬の歯が残っている状態なんです。
「二枚歯でかわいい」という方も、いらっしゃいます。
しかし重なった歯の隙間には、歯垢がたまりやすく歯石が付きやすくなります。
そのため、若いうちから歯ぐきが悪くなってしまう子もいます。
このようなことにならないためにも、避妊・去勢手術の麻酔のタイミングで乳歯を確認し、必要なら一緒に抜いてあげます。
これは見た目の問題ではなく、将来の歯周病や口臭を減らすための予防です。

結衣
小さい口に同じ数の歯があるなら、汚れもたまりやすいよね。
奥歯なんて、家では見えにくいもんね。

おいどん先生
そうなんだよ。
だからトイ・プードルは、若いうちから口を触る練習をしておきたい。
歯みがきのためだけじゃなく、口の中の変化に早く気づくためでもあるんだ。
私が診察で見ている順番
診察では、まず年齢、歯並び、乳歯遺残、歯垢や歯石を見ます。
次に、歯ぐきの赤みや腫れ、出血の有無を確認します。
歯が揺れている場合は、歯を支える骨が減っている可能性があります。
食べ方や噛み方も大切です。
硬いものを嫌がる、食べるのが遅くなった、片側だけで噛む。こうした変化は、飼い主さんの話からわかることがあります。
口臭の診察は、においを確認して終わりではありません。
なぜそのにおいが出ているのかを順番に見ていきます。
表面の歯石だけ取っても、足りないことがある
見えている歯石が取れると、たしかに見た目はきれいになります。
においも、一時的に軽くなることもあります。
しかし歯周病で本当に問題なのは歯ぐきの下、いわゆる歯周ポケットです。
歯周ポケットの中に細菌が繁殖していれば、痛みや炎症は起きます。
歯周病が起きている状態で、1本ずつ歯周ポケットの深さを正確に測ることは難しいです。
場合によっては、麻酔下で検査と処置を行う必要があります。

蒼太
表面だけきれいにしても、歯ぐきの奥に原因が残ることがあるんだね。

おいどん先生
そう。
歯科治療で大事なのは「歯石が無いこと」より、痛みと炎症を減らすことなんだ。
見た目がきれいでも、歯周病菌が悪さをしていたら治療としては足りないんだよ。
リスク先生
無麻酔の歯石取りでは、歯周ポケットの中はきれいにできないし、嫌がって動いた時に口の中を傷つけることもあります。
また怖い思いをしたら、次から口を触らせなくなる子もいます。
安全に進めるには、その子に合った麻酔計画が必要です。
食べていたのに、やっぱり痛かった子
今でも印象に残っているトイ・プードルちゃんがいます。
相談は、口臭と片側だけのくしゃみでした。
食欲はありました。
おやつも喜んで食べます。
飼い主さんは「痛かったら食べないですよね」と話されました。
自然な感覚だと思います。
私も飼い主さんの立場なら、そう考えるかもしれません。
でも口の中を見ると、奥歯の歯ぐきが下がっていました。
歯も少し揺れています。
相談のうえ、麻酔下で原因になっていた歯を処置しました。
抜歯が必要な歯もありました。
数日後、飼い主さんが教えてくれました。
「先生、前よりよく食べるし、走るようにもなったんです。よく眠るし表情も柔らかくなりました。食べてるからって安心してはダメですね!」
こういう言葉を聞くたびに、口の中の健康は大切だなと思います。
犬は「痛い」と言えません。
だからこちらが、食欲以外のサインを見つけ出す必要があります。

蒼太
食べているかどうかだけでは、痛みがあるかを判断できないんだね。

おいどん先生
そう。
口臭は、犬からの小さなメッセージの一つだと思っているよ。
においだけを見るんじゃなくて、その奥で何が起きているかを見に行くんだ。
家でできることは「嫌いにさせない」こと
家庭で一番大事なのは、歯石になる前の歯垢を落とすことです。
一度固まった歯石は、歯ブラシでは落ちません。
とは言っても、今まで行ってなかった歯磨きを「今日からしましょう」とは言いません。
嫌がることを頑張ってしても、口を触られることまでが嫌いになってしまっては困りますよね?
それでは口の中の健康は、守れませんよね。
最初は、口の周りを触るだけで十分です。
次に少〜し唇をめくる。
前歯を少し触ってみる。
奥歯の歯ぐきの色を見る。
できたら小さな犬用歯ブラシを、ほんの数秒だけ当てる。
できたら終わり。
褒めて終わり。
ご褒美のオヤツも良いかもですね!
続けられる形にする。
そのほうが、長い目で見るとずっと良いですよね!
家で気をつけたいこともあります。
- 硬すぎる骨やツノは避ける
- 歯みがきガムだけで安心しすぎない
- 片側だけで噛んでいないか見る
- 奥歯と歯ぐきの色をときどき確認する
デンタル用品は、口腔内の健康を守るための助けになります。
歯に良さそうと硬いモノを与えるのは、歯を折ったりなどのトラブルが起こることがあります。
小型犬でも、このようなことは珍しくありません。

結衣
硬いほうが歯に良さそうって思ってた。
でも違うんだね。
リスク先生
硬ければ良い、ではありません。
歯を守るつもりで与えたものが、歯を折ってしまうんです!
年齢、噛み方、歯の状態に合わせて選びましょう。
口臭の原因が、歯ではないこともある
ここも大事です。
口がにおうからといって、すべて歯周病とは限りません。
腎臓病、糖尿病、胃腸の不調、口の中のできもの(腫瘍)。
そういう病気でも、においが変わることもあります。
たとえば、急に水をよく飲む。
尿の量が増えた。
吐くことが増えた。
体重が落ちてきた。
元気がない。
口の中に腫れや出血がある。
このような変化があるときには、歯だけを見て終わりにはしていけません。
血液検査などを行い、体全体を確認します。
また鼻水や涙やけでも、歯の根っこが原因だったということもあります。
診療では、ひとつの症状をひとつの病気に決めつけないことが大切です。

蒼太
口臭って、思っていたより様々なことを見ないといけないんだね。

おいどん先生
そう。
まず一番ありそうな原因を考える。
でも、例外も落とさない。
口の中だけでなく体全体も考えるのが、診療の現場なんだ。
院長(Dr.Nyan)からの一言
「年だから仕方ない」
「食べているから大丈夫」
そう思いたくなる気持ちはよくわかります。
でも、口臭は体からの小さなサインです。
歯ぐきの奥で炎症が進んでいても、犬は痛みを我慢して食べることがあります。
トイ・プードルの口臭を診るとき、私は歯石の量だけでは判断しません。食べ方、歯ぐき、歯の揺れ、鼻水や涙、全身状態まで見ます。
佐倉市でトイ・プードルの口臭、歯石、乳歯遺残、歯周病が気になったら、「まだ大丈夫」と決めつけずに一度ご相談ください。

おいどん先生
次回は、トイ・プードルに相談が多い「涙やけと目のトラブル」について。涙が多いだけに見える症状の奥に、どんな原因が隠れているのかを探っていこう。
よくある質問
トイ・プードルの口臭は年齢のせいですか?
年齢だけで説明できないことが多いです。
歯肉炎、歯周病、乳歯遺残、歯の根っこの炎症などが隠れていることがあります。
においが強くなった、歯ぐきが赤い、片側だけで噛む。
そうした変化があれば、早めに口の中を見ておきましょう。
食べているなら歯は痛くないですか?
食べていても、痛い子はいます。
犬は痛みを隠しやすく、片側だけで噛んだり、丸飲みしたりします。
食欲だけで判断せず、口臭、噛み方、顔をこする仕草なども一緒に見ます。
乳歯が残っている場合は抜いたほうがいいですか?
場所と状態によります。
乳歯遺残があると汚れがたまりやすく、若いトイ・プードルでも歯周病が進むことがあります。
避妊・去勢手術のタイミングで、乳歯の確認や抜歯を相談することもあります。
無麻酔の歯石取りではだめですか?
見えている歯石が取れて、見た目がきれいになることはあります。
ただ、歯ぐきの下、歯周ポケット、歯の根っこ、骨の状態までは確認できません。
治療として原因を探るには、麻酔下での検査や処置が必要になる場面があります。
歯みがきは毎日できないと意味がありませんか?
毎日できれば理想です。
でも、最初から完璧でなくて大丈夫です。
口元を触る、唇をめくる、歯ブラシを少し当てる。短い成功を積み重ねるほうが続きます。
嫌がる子を無理に押さえ込むと、歯みがき自体が苦手になります。
硬いガムや骨は歯に良いですか?
硬すぎるものは、歯の破折につながることがあります。
特に小型犬では注意が必要です。
デンタル用品は、サイズ、硬さ、噛み方、歯の状態を見て選びましょう。
佐倉市でトイ・プードルの口臭を相談する目安はありますか?
口臭が続く、歯ぐきが赤い、歯石が増えた、片側だけで噛む、涙や鼻水が片側だけ出る。
こうした変化があれば相談の目安です。
若山動物病院では、口の中と全身状態を合わせて見ながら、歯科処置が必要か、家庭ケアで様子を見られるかを一緒に考えます。
探偵蒼太シリーズ

犬や猫の「吐く・下痢・食べない・元気がない」など様々な症状から原因、受診の目安など、病気を探る探偵蒼太シリーズです。
中学2年生の「蒼太」と獣医師の「おいどん先生」、蒼太の妹の「結衣」そして「リスク先生」が、受診の目安や危険なサインをわかりやすく解説します。
【犬編】
・犬の下痢は大丈夫?原因・危険な症状(血便・水様便)と受診の目安
・犬が食べない?原因と危険な症状・受診の目安
・犬が吐いた?原因と危険な症状と受診の目安
・犬が元気がない?原因・危険な症状と受診の目安
・犬の治らない下痢、お腹の病気じゃなかった?原因は副腎腫瘍だった
・犬の歩き方がおかしい?前足のびっこは危険?原因と受診の目安
・犬の歩き方がおかしい?後ろ足のびっこは危険?原因と受診の目安
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