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【蒼太探偵シリーズ】トイ・プードル編|第二話 スキップ歩きの犯人はパテラ?

探偵姿の蒼太が、後ろ足を上げるトイ・プードルと膝蓋骨脱臼の模式図を見ているアイキャッチ

「先生、うちの子、急に後ろ足をケンケンするんです」

トイ・プードルの診察で、よく聞く言葉です。歩いている途中で後ろ足をひょいっと上げる。数歩だけスキップのように歩いて、また何事もなかったように走り出す。

その姿を見て、「痛いのかな?」「クセなのかな?」と迷う飼い主さんは少なくありません。

今回は、トイ・プードルに多いパテラ(膝蓋骨脱臼)について解説します。

目次

第二事件:スキップ歩きの謎

ある日の診察室。1歳半のトイ・プードルちゃんが、診察台の上で少し緊張した顔をしていました。

飼い主さんのスマートフォンには、散歩中の動画が映っています。元気に歩いていたかと思うと、左の後ろ足を急に浮かせ、ぴょん、ぴょん、と数歩だけケンケン。そのあと、何もなかったように歩き出しました。

飼い主

先生、これなんです。
たまに後ろ足を上げるんですけど、すぐ普通に戻るんです。

蒼太

本当だ。
痛そうにも見えるけど、すぐ歩けてるね。

結衣

クセみたいにも見えるよ。
病気なのかな?

おいどん先生

この歩き方を見たら、まず疑うもののひとつがパテラだよ。
膝のお皿、つまり膝蓋骨が、本来の溝から外れてしまう状態なんだ。

パテラとは、膝のお皿がずれる病気

犬の膝には、膝蓋骨という小さな骨があります。人でいう「膝のお皿」です。

この膝蓋骨は、太ももの骨にある浅い溝の上を、まっすぐ滑るように動くのが正常です。ところが、トイ・プードルでは膝蓋骨が内側へずれてしまうことがあります。これが内方膝蓋骨脱臼、いわゆるパテラです。

蒼太

膝のお皿が外れるって、すごく痛そうだけど……。

おいどん先生

そこが少しややこしいんだ。
外れた瞬間に違和感が出る子もいれば、軽いグレードではほとんど痛がらない子もいる。
だから「歩けているから大丈夫」とは言い切れないんだよ。

リスク先生

パテラは、症状が軽く見えても、繰り返すことで膝の軟骨や靭帯に負担がかかることがあります。
特にスキップ歩きが増える、びっこが長引く、痛がる場合は注意が必要です。

なぜトイ・プードルにパテラが多いのか

パテラは、トイ・プードル、チワワ、ポメラニアン、ヨークシャー・テリアなど、小型犬でよく見られます。

診察していて感じるのは、「膝だけの問題」として見ると見落としやすいということです。膝のお皿が外れる背景には、太ももの骨の形、すねの骨の向き、筋肉の引っ張る方向、膝の溝の浅さなどが関わっていることがあります。

つまり、犯人は膝のお皿だけではありません。後ろ足全体のバランスが、少しずつ膝蓋骨を外れやすい方向へ引っぱっていることがあるのです。

結衣

膝だけ見ればいいわけじゃないんだね。

おいどん先生

そう。
診察では、膝のお皿が外れるかだけでなく、立ち方、歩き方、筋肉のつき方、痛みの出方を一緒に見る。
その子の生活の中で、どのくらい困っているかも大事なんだ。

診察室で診る「パテラかもしれないサイン」

飼い主さんが気づきやすいサインは、次のようなものです。

  • 後ろ足を一瞬上げる:歩いている途中に片足をひょいっと浮かせる
  • スキップ歩き:数歩だけケンケンして、また普通に戻る
  • 足を伸ばす仕草:後ろ足を後方へ伸ばしてから歩き出す
  • ジャンプをためらう:ソファや階段を避ける、抱っこを求める
  • 散歩後のびっこ:運動したあとに歩き方が乱れる
  • 膝を触ると嫌がる:触診で力が入る、顔を向ける、逃げようとする

ただし、すべての子が同じ出方をするわけではありません。普段は元気で、診察室ではまったく症状を見せない子もいます。そんなとき、飼い主さんが撮ってくださった動画がとても役に立ちます。

蒼太

病院では普通に歩いちゃう子もいるんだ。

おいどん先生

いるよ。
診察台の上では緊張して動かない子もいるし、逆に張り切って症状を隠す子もいる。
だから、家での動画はかなり大事なんだ。

パテラにはグレードがあります

パテラは、一般的にグレード1から4に分けて評価します。

  • グレード1:普段は膝蓋骨が正しい位置にあり、診察で押すと外れることがあります。症状がほとんどない子もいます
  • グレード2:膝蓋骨が自然に外れることがあり、足を伸ばしたり少し動いたりすると戻ることがあります。スキップ歩きが見られやすい段階です
  • グレード3:膝蓋骨が外れている時間が長く、手で戻せてもまた外れやすい状態です。びっこや筋肉の変化が出ることがあります
  • グレード4:膝蓋骨が常に外れていて、手で戻すことが難しい状態です。歩き方の異常や骨の変形を伴うこともあります

結衣

グレードが高いほど、悪い状態ってこと?

おいどん先生

基本的にはそう考えていいよ。
でも、グレードだけで治療を決めるわけではない。
痛みがあるか、びっこがどれくらい出るか、年齢、体重、生活環境、反対側の足の状態も合わせて判断するんだ。

「手術するかどうか」は、グレードだけでは決めません

パテラと診断されると、飼い主さんが一番不安になるのはここです。

「手術が必要ですか?」

診察室でも、よく聞かれます。

軽いパテラで、痛みやびっこがほとんどなく、日常生活に支障が少ない場合は、体重管理、運動の見直し、筋肉を落とさない生活、床の滑り対策などで経過を見ることがあります。

一方で、後ろ足を上げる頻度が増えている、痛みがある、びっこが長引く、グレードが進んでいる、膝の中に別の問題がありそうな場合には、手術を検討します。

蒼太

グレード2なら絶対手術、みたいに決まっているわけじゃないんだね。

おいどん先生

そう。
数字は大事だけど、数字だけではその子の困り具合までは見えない。
「その子が今どれだけ痛いか」「将来どこまで悪くなりそうか」を考えるのが、診療で大切なところなんだ。

リスク先生

びっこが続く、痛みが強い、症状が進行している場合は、早めの相談が必要です。
時間が経つほど軟骨や靭帯への負担が増え、治療の選択肢が変わることがあります。

家でできるパテラ対策

パテラのある子にとって、家庭環境はとても大切です。診察室では、薬や手術の話だけでなく、生活の見直しをかなり細かくお話しします。

  • 床:フローリングは滑りやすく、膝にねじれがかかります。よく走る場所、曲がる場所、ソファの前には滑り止めマットを敷いてください
  • 段差:ソファやベッドの上り下りは膝に負担がかかります。ステップやスロープを使い、飛び乗り・飛び降りを減らしましょう
  • 体重:少しの体重増加でも、小さな膝には負担になります。理想体重を保つことが大切です
  • 運動:まったく動かさないのもよくありません。無理なジャンプや急旋回は避けながら、歩く運動を続けることが基本です
  • 爪と足裏:爪や足裏の毛が伸びると滑りやすくなります。トリミングのときだけでなく、家でも時々チェックしてあげてください

結衣

パテラって、家でできることも多いんだね。

おいどん先生

多いよ。
手術をする子でも、しない子でも、滑らない床、太らせないこと、筋肉を落とさないことは大事。
ここを整えるだけで、日々の膝の負担は変わってくるんだ。

例外:スキップ歩きの犯人がパテラとは限りません

ここは大切です。トイ・プードルが後ろ足を上げたからといって、必ずパテラとは限りません。

爪のケガ、肉球の痛み、股関節の問題、腰や神経の病気、靭帯の損傷、骨折、関節炎でも、似たような歩き方をすることがあります。

特に、急に強く痛がる、足をまったく着けない、触ると鳴く、元気や食欲が落ちる場合は、パテラだけでなく他の原因も考えます。

蒼太

スキップ歩きイコール、パテラって決めつけちゃだめなんだ。

おいどん先生

その通り。
「トイ・プードルだからパテラだろう」で終わらせると、別の痛みを見落とすことがある。
診察では、よくある病気を疑いながら、例外を落とさないように見るんだよ。

院長(Dr.Nyan)からの一言

トイ・プードルのパテラは、診察室で本当によく出会います。

ただ、よくあるから軽い、という意味ではありません。元気に走れる子もいます。一生大きな問題なく過ごす子もいます。でも、何度も膝のお皿が外れることで、少しずつ膝に負担が積み重なる子もいます。

私が診療で大切にしているのは、「今すぐ手術かどうか」だけを急いで決めることではありません。

その子の歩き方、痛み、年齢、生活環境、飼い主さんが感じている違和感。それらを重ねて、今できる一番現実的な方針を一緒に考えることです。

スキップ歩きを見たら、まず動画を撮ってください。そして、「すぐ戻るから大丈夫」と決めつけず、一度相談してみてください。

トイ・プードルの小さな膝を守ることは、これから先の散歩、遊び、家族との時間を守ることにつながります。その目線を、私は大事にしたいと思っています。

おいどん先生

次回は、トイ・プードルに多い耳と皮膚のトラブル。
「かゆいだけ」に見えるサインの奥を、蒼太たちと一緒に探っていこう。

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よくある質問

トイ・プードルのパテラは自然に治りますか?

膝蓋骨が外れやすい骨格や膝の溝の浅さそのものが、自然に完全に治ることは多くありません。
ただし、症状が軽い子では、体重管理、滑り止め、運動の調整などで日常生活を楽に保てることがあります。

パテラでも散歩していいですか?

多くの場合、無理のない散歩は筋肉維持に役立ちます。
ただし、痛みがある日、びっこが強い日、診断直後や手術後は制限が必要です。
ジャンプ、急な方向転換、長時間の走り込みは避け、その子の状態に合わせて調整します。

パテラは手術しないと悪化しますか?

すべての子が悪化するわけではありません。
ただ、脱臼の頻度が増えたり、痛みやびっこが続いたりする場合は、膝の軟骨や靭帯に負担がかかることがあります。
経過観察中でも、症状が変わったら再診が大切です。

サプリメントでパテラは治りますか?

サプリメントだけで膝蓋骨の位置を正常に戻すことはできません。
関節の健康を支える目的で使うことはありますが、基本は体重管理、環境整備、運動管理、必要に応じた痛みのコントロールです。

どんな動画を撮れば診察に役立ちますか?

歩き出し、走っているところ、後ろ足を上げる瞬間が映っている動画が役立ちます。
横からだけでなく、後ろからの歩き方もあると、左右差や膝の向きが見やすくなります。

探偵蒼太シリーズ

このコラムの登場人物のイラスト(おいどん先生、蒼太、結衣、リスク先生)

犬や猫の「吐く・下痢・食べない・元気がない」など様々な症状から原因、受診の目安など、病気を探る探偵蒼太シリーズです。
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