若山動物病院ブログ
【探偵蒼太シリーズ】老犬の足腰が弱ったら歯周病もチェック?口の痛みと筋力の関係

足の相談なのに、どうして口を診るの?

結衣
先生、シロがね、最近立ち上がるのに時間がかかるの。
結衣の話を聞いたおいどん先生は、シロの歩き方を確かめ始めました。
それから、ご飯の食べ方を尋ね、口元や口の中をチェックです。

蒼太
えっ、足の相談なのに口も診るの?

おいどん先生
そう。足の具合と一緒に、食べる量が減っていないかも確かめたいんだ。
「食べたい」と「食べられる」は違う

結衣
ご飯の時間になると食器のそばには来るんだけど、最近は少し食べたら離れちゃったり、フードをポロポロこぼしたりするの。

蒼太
お腹はすいていても、うまく食べられないのかな。

おいどん先生
口が痛かったり、歯がぐらついたりすると、食べにくいことがあるよ。
硬いものを避ける子もいるんだ。
食器に向かっていても、十分に食べられているとは限りません。
出した量と、残った量を見ておく必要があります。
一方、歯周病があっても普段どおり食べる犬はいます。
食事量だけで判断せず、次のような変化にも気をつけましょう。
- 口臭が強くなった
- 歯ぐきが赤い
口のサインは、「食べてるから大丈夫」に潜む罠!口臭と歯のSOSでも紹介しています。
食べる量が減ると、足腰にも響く?

蒼太
ご飯が減ると、立ち上がりにくくなるの?

おいどん先生
十分に食べられない状態が続くと、筋肉が減ることがあるよね。
そうすると体を支える力も弱くなり、立ち上がるのが大変になることもあるんだ。
「じゃあ、シロの足も歯周病のせい?」
蒼太が口にすると、リスク先生が声をかけました。
リスク先生
まだ決められないよ。
歯周病が直接、寝たきりを引き起こすと証明されているわけではないんだ。
立ちにくくなる原因には、関節の痛みや神経の病気などもあります。
そのため口に病気が見つかっても、足腰の診察は必要となります。
歯石を取るだけでは足りないの?
シロの歯を見た蒼太は、歯石が気になりました。

蒼太
この歯石を取ったら、またモリモリ食べられるようになるかな?

おいどん先生
歯ぐきの奥も調べないと分からないね。
歯周病では、歯を支える骨まで傷むことがあるんだ。
歯垢と歯石は、同じものではありません。
- 歯垢(しこう):細菌のかたまり。歯の表面や歯ぐきとの境目にたまり、歯ぐきや歯を支える部分に炎症を起こす。
- 歯石(しせき):歯垢に唾液の中のミネラルが付いて硬くなったもの。表面がざらざらしていて、さらに歯垢がたまりやすい。
見える歯石を取っても、歯ぐきの奥に問題が残ることがあります。
奥まで調べて治療するには、全身麻酔が必要になります。
14歳の犬に、歯の治療が必要だった理由
高齢犬の治療を考える参考に、当院の例を紹介します。
当院で歯科処置を受けた14歳の犬は、頬の腫れを繰り返していました。
薬で腫れが引いても、原因となる歯の問題が残っていれば、また腫れてしまうこともあります。
この子にも、歯の治療が必要でした。
この記録は、歯の治療と歩行の回復との関係を調べたものではありません。
詳しい経過は、14歳の犬の歯科処置の記録「原因は…」で紹介しています。
高齢のシロに、どこまで治療するか

結衣
シロも治療が必要なのかな。でも、年を取っているから麻酔が心配だよ。

おいどん先生
心配だよね。まず口の状態や持病、今の体調を調べよう。治療の必要性と麻酔のリスクを考えて、ご家族と相談するよ。
歯の治療を行なったからと、関節や神経の病気まで治るわけではありません。
それでも、口の痛みがあって食べにくいなら、少しでも楽に食べられるようにしてあげたいですよね。
麻酔の負担が大きい場合は、薬で痛みや感染を抑える方法や、食べやすい食事を相談しています。
ただし、薬だけで傷んだ歯や、歯を支える骨を元に戻すことはできません。

蒼太
じゃあ、今から家で歯磨きをした方がいいの?

おいどん先生
痛みがありそうなら、無理に磨かないでね。今の口に合った手入れの仕方を相談してほしいな。
リスク先生
口に水を流し込むのもやめよう。飲み込む力が弱い子では、水が気管に入る危険があるよ。
帰ったら、ご飯の時間を見てみよう

蒼太
家では、何を見ておけばいい?
おいどん先生は、二人に家で見てほしいことを伝えました。
- 食べた量
- 食べている途中の様子
- 立ち上がるときの動き
気になる様子を動画に撮っておくと、診察室で先生に説明しやすいですよね。
様子がいつごろから変わったかも、分かる範囲で伝えてください。
リスク先生
ただ、気をつけてほしいのは急な変化だね。
もし急に立てなくなったり、ぐったりしたり、息が苦しそうだったりしたら、迷わずすぐに病院に連絡してくれよ。

結衣
ご飯のそばに来るから安心しちゃってた!
家に帰ったら、ちゃんと最後まで見てみるね。
まとめ|足腰と一緒に、口と食事も確かめよう
歯周病が直接「寝たきり」を引き起こすという因果関係は、この記事で紹介した資料からは確認できません。口の痛みで十分に食べられない状態が続くと、栄養不足が筋肉の減少や体力低下の一因になることがあります。立ち上がりにくさには関節や神経の病気なども関わるため、口と足腰の両方を確かめることが大切です。
「年だから」と片づける前に、食べた量、食べ方、立ち上がる動きを見てみてください。
気になる変化があれば、口と足腰の両方を診てもらいましょう。
高齢犬の歯周病と体力低下について、もう少し詳しく知りたい方は、「歯周病と寝たきりの関係・口の病気が高齢犬の体に及ぼす影響」もご覧ください。
口の痛みや食事量の変化を、全身の健康と合わせて解説しています。
よくある質問
歯周病を治療すれば、また歩けるようになりますか?
歯の治療だけで元の通り歩けるようになるとは限りません。立ち上がりにくさの陰には、関節や神経の病気が隠れていることもあるからです。
口の治療は、痛みや食べにくさを減らすことを目指し、足腰の診察や必要な治療も並行して考えます。
ご飯を食べていれば、歯周病は心配ありませんか?
食べていても、歯周病がないとは限りません。食べる量に加えて、こぼす、硬いものを避ける、口臭が強くなるといった変化にも気をつけてください。気になる場合は、無理に口を開けず、診察で相談しましょう。
高齢なので、歯の治療はあきらめるしかありませんか?
年齢だけで決めるのではなく、口の状態、持病、今の体調を調べて判断します。治療で期待できることと麻酔のリスクを確認し、ご家族と相談します。麻酔の負担が大きい場合も、痛みへの対応や食事の工夫を相談できます。
寝たきりの犬にも、歯磨きをした方がよいですか?
痛みや歯ぐきの炎症がある口を、無理に磨くのは避けてください。口の状態と飲み込む力に合った手入れを、動物病院で相談しましょう。口に水を流し込むと気管に入る危険があるため、やめてください。
参考資料
AAHA:歯科診療指針(口の痛み)
AAHA:高齢犬・高齢猫の歯科診療
WSAVA:栄養評価の指針
口の痛み、栄養、筋肉の状態について確認した資料です。
犬の歯周病が寝たきりを直接引き起こすと証明した資料ではありません。
探偵蒼太シリーズ

犬や猫の「吐く・下痢・食べない・元気がない」など様々な症状から原因、受診の目安など、病気を探る探偵蒼太シリーズです。
中学2年生の「蒼太」と獣医師の「おいどん先生」、蒼太の妹の「結衣」そして「リスク先生」が、受診の目安や危険なサインをわかりやすく解説します。
【犬編】
・犬の下痢は大丈夫?原因・危険な症状(血便・水様便)と受診の目安
・犬が食べない?原因と危険な症状・受診の目安
・犬が吐いた?原因と危険な症状と受診の目安
・犬が元気がない?原因・危険な症状と受診の目安
・犬の治らない下痢、お腹の病気じゃなかった?原因は副腎腫瘍だった
・犬の歩き方がおかしい?前足のびっこは危険?原因と受診の目安
・犬の歩き方がおかしい?後ろ足のびっこは危険?原因と受診の目安
・犬の夜鳴き|認知症だけじゃない!原因・対策・受診の目安
・犬にヨーグルトをあげても大丈夫?人間用との違いと下痢の原因
・腸内細菌は本当に健康に関係するの?|犬の腸活・免疫・病気との意外な関係
・犯人は乳酸菌だけじゃなかった!犬のプロバイオティクスとは?
・パッケージの罠を見抜け!「犬の腸活サプリ」失敗しない5つの選び方
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・トイ・プードル編|第二話 スキップ歩きの犯人はパテラ?
・トイ・プードル編|第三話 「かゆいだけ」に見える耳と皮膚のSOS
・トイ・プードル編|第四話 「食べてるから大丈夫」に潜む罠!口臭と歯のSOS
・トイ・プードル編|第五話 涙やけに潜む目のSOS
・トイ・プードル編|第六話 「ただの興奮?」に潜む罠!咳とハアハアのSOS
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